107話 貴女を愛しています 2
ジョフレは俺をミコットに見立てて愛の告白をする。
「悪い癖を治して素直な気持ちを言いますわ。ジョフレ・パンデリックはミコット貴女を愛しています」
世界中の誰よりも、とジョフレは言わないが、俺の頭に双子の兄のセリフが再生される。
いい告白だったぜ。
「悪い、荒療治と思ってくれ」
なんですの? と聞くジョフレを無視して俺は、ここにいる仲間たちへ発言した。
「聞いたなミコット今のがジョフレのあんたへの思いさ。あんたの返事を聞かせてあげなよ」
街で買い物して変装して喫茶店に入ってきていた他の六人は、変装を解いてその正体を見せる。ミコットもだ。
ジョフレがミコットに素直になれないのなら、ミコットの姿を視認させずに氣持ちを伝えさせれば良いのだ。
俺はこの後殴られる覚悟もしていたけれど、上手くまとまったようだ。
ミコットは赤面しながらジョフレに抱き着いている。
「……ミコが嫌いじゃないのはわかったぜ。今までの態度も許す、付き合うのはまだ無理だけど、ミコをジョフレがその氣にできたらつ、付き合ってもいいよ……」
「十分ですわーーーー! ミコット愛してますわ。アベルありがとう、ありがとう」
仲間ならなおさらだよ、俺は人が困ってるなら、助けるにいやはないんだぜ。
見ると俺の左腕にアーガシアが、右腕はニャハルが取り付いて腕を絡ませる「さすがニャアのマスターにゃ」「さすがわしの愛するアベル殿じゃ」
褒められながら、動きづらいですなぁなんて思う俺。
「よかったねジョフレさん、よかったねミコットさん」
「いいなぁー帰ったら僕もキル君に、ああやって抱きしめてもらおー―」
「問題も解決したしこの町でも動きやすくなったのだ。ギクシャクした雰囲気の中は嫌なのだ。さすがアベルなのだ」
オウとミラルカ、それからフルベルトが拍手しながら言う。
俺達はこの後楽しく食事をして、この国のお城へ向かう。
エルフ王の【はじまりの勇者】殿が来ているならば見てみたい、というのが理由だ。
▽▲
「バルケスティ様はかまわないと言ってます。本気の戦いを乗り越えれば、アベルの神越えの力の段階が一段上がるかもしれないからだ、と」
「魔神に言われてイヤで来たけど、いまのを聞いてやる氣がでてきた。アリスもロンメル氏も勇者は嫌い。」
アリスは断言する。
自分の生きた時代は勇者至上主義ともいえる風潮があり、大した強さもない魔王を倒した勇者 (笑)が、自分たちを馬鹿にしていた。
英雄は魔王討伐以外の功績を持つ者の称号だが、アリスは国を四つ呑み死霊の世界へ変えた死霊の王ザルトを倒した功績がある。
たまたま魔王ではないからと勇者ではなく英雄の称号をもらった。
それでも守った人たちの笑顔が誇りと思いアリスは生きてきた、その自分に大したレベルもない新参の魔王、人間種と敵対もしていないような魔王を倒して勇者の称号をもらった男は、「勇者の俺の方が英雄のお前より上だ」そう言って見下してきた。
功績で言えばアリスが上だ。
でも勇者と英雄なら功績は関係なく勇者が上だとされたのだ、アリスはあの屈辱を忘れない。ロンメルも自分と似た氣持ちだ。
「英雄は勇者の下。はじまりの勇者アベルの偉業が大きすぎて、俺達英雄はかすんじまうよな。でもな、俺達が生きた時代のクソみたいな勇者とアベルは違うんだよ」
トーマの思いは本物に接するにつれて大きくなっている、子供のころから憧れて、同じことをしてもアベルは超えられないから、と魔王以外を倒す事にこだわった男こそフルツ・トーマだ。
トーマは思う。魔神に命じられて来たエルフの国で、魔神の目を欺くために今回敵としてアベルと戦うが。
憧れの勇者はどれぐらい強いのだろう、とさいわいバルケスティからも戦いの許可が出ている。
興奮と歓喜の表情をつくるトーマ。
「やろうぜロンメル、アリス。勇者アベルに英雄(俺達)の力を見せてやろう」
うなずくロンメルとアリスと一緒に、三人は闇に姿を消した
この後ジョフレはからかう悪癖がなくなりアンダルシアがソンクウにするような態度で、ミコットを可愛がります。ミコットは満足したニャ、というような飼い猫の感じで恥ずかしそうに逃げるようです
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