103話 エワードで見つけた照陽
なんだい? 騒がしいね。
城下町の憲兵は何しているんだ。
人だかりができて、大きな騒ぎになってるじゃないか。
俺は「通るぜどいてくれ」、と人だかりの一番外の人へ声をかける。
「いてぇな押すな馬鹿!? これは王様と、とんだ失礼を」
何度も頭を下げる男に「氣にするな」とわらい、背中をポンと叩いて前へ進んでいく。
この男が「道を開けろ、王様のお通りだ。さっさとしねえか」
大きな声を出してくれるおかげで、楽に進むぜ。
あいつらはちゃんとついて来てる? ヴォルフとオージもちゃんといるね。
さて人だかりの先頭だが、何が原因なんだろう。
「も~~やめなよ~。どっちも悪い部分があったでいいじゃない~、ごめんなさいで済ましなって~」
「偉大なる祖ヴィルヒャートの名誉にかけて許さん。必ず撤回してもらうぜ!」
「あら? 土臭いドワーフが偉大などと笑わさないでくださいまし、そのヴィルリヒャル? 何でもいいですわ。私の氣分を害したのだから、貴女が謝るべきではなくて」
女三人がけたたましく言い合っているね、それだけでこの人だかりと思ったのだが、なるほど、三人が三人美人の範疇に収まらない。
冒険者に言い換えるとAクラスの美しさがあるだろう。
美人でCクラスだから、かなりの差がある。
そんな三人が可愛い声で言いあうさまは、劇の場面のようでもあり、集まる群衆の目を引き付ける。
「バーカバーカ」
「ちんちくりんのくせにうるせーですわー」
内容はともかくとして。
俺はほへ~~とうなだれている獣人の娘に、事情を聴いた。
この三人はパーティーは組んでなくて他人だという事。
最初に金髪のエルフ (ですわ口調のあの子か)、がちっちゃいドワーフの娘 (全体的に、プニプニした雰囲気のあの子ね)、をからかったのが原因な事。
自分はエワードのギルドに登録に来たけど、喧嘩を見過ごせなくて仲裁している事。
獣人の娘アンサリー・オニトリは俺に
「君は強そう~。お願いだから私と一緒に彼女たちを止めて~~」そう言う。
俺のエワード王国でこれ以上騒ぎを起こす氣はないから、頼まれなくてもやるんだけどさ、俺はヴォルフに目で『やってよ』と合図した。
「見物もここまで、である。さぁ散った散った」
「憲兵も見とれていてどうする? 仕事をしなさい」
オージに言われ憲兵は我に返ると動き始める、ヴォルフの声で人だかりもわらわらと、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
恐がられているのではなく世界を変えた英雄の、一人の言う通りにしたのだ。
その証拠にみんな笑顔で中には「はいヴォルデウスさん」、と返事するものまでいる。「いよっアベル様世界一」と言う人もいたが俺は何もしてないよ、動いたのはヴォルフとオージだしさ。
なんか勘違いしてるな。
さてどうしたもんかね。
あとに残った二人は俺を見ながら、ドワーフの娘が不機嫌そうに口を開く
「なんだい、あんた周りの人間を思うように動かして……王様にでもなったつもりかよ」
良い堪してるぜ、ま、本当は皮肉で言ってて、わかってないんだろうがね。
「勘が鋭いではないか。冒険者には必要なスキルだぞ貴公の言い分は当たりである」
「アベル先生。あ、面白い人材見つけた時の顔してますね」
俺がこの顔になるのはオージの時以来だから、そりゃあオージもわかるか。
「当たりだぜ、ドワーフちゃん。俺がこのエワード王国の新王アベル・ジンジャーアップルさ。戦いに向けて仲間を探していたんだよ。君達三人、俺のパーティーに来なよ」
「「は?」」
▽
オーリンジ・バナナシェイク
アップル・アベルジンジャー
ダンベルマン・ヴォルフ
ミコット・ワーグナー
アンサリー・オニトリ
ジョフレ・パンデリック
後に魔族の再侵攻を食い止めて【覇権戦争】を終わらせる、オーリンジのパーティー【境界なき照陽】はこうして誕生した。
▽
「ソンクウ様が長く悩まれるなんて珍しいですね」
やさしく柔らかい声でアンダルシアが俺に聞く。
アンダルシアの胸に倒れこんで「あ、甘えんぼさんですね」なんて言われても人選が決まらないんだよぅ、アニーの時みたいに【境界なき照陽】メンバーでいこうと思ったのにさ。
「私はパ~~ス。いまレベリングで忙し~し、ようやく【ふつうのソンクウ】と戦えるレベルまでいったんだからさ~」
しゅっしゅと口で言いながらシャドーボクシングするアニーに断られて、オージには
「アベルすまない、俺もついて行きたいのはやまやまなんだが。ヒト三郎君とテイイチ殿と合体技の練習をしていてね、完成したらアベルもどうだい? 四人のリーダーで合体技とか、聞いただけでワクワクするだろう。そういう事だから今回は見送らせてくれ。」
断られてしまった、なのでオージのパーティーでいくことをあきらめる俺。
メンバーが集まらないだけならここまで悩まないんだけどなぁー。
アンダルシアの胸から顔をあげた後、膝にのせてもらう、最近は彼女と距離が近いのでこんな感じである。
頭を撫でられながら俺はむむうと考えた。
ミコットについてだ。アニーとオージに断られた時に「ジョフレを迎えに行くなら、ミコットを連れて行きなさい」そう言われたのだった。
ミコットとジョフレは仲が悪いんだぜ、連れて行くだけでケンカになるだろうに。
もう!!
「ソンクウ様は判断を間違われませんから、思うように選んでみてはいかがでしょう? きっとうまくいきます」
「うん。アンダルシアの言う通りだね、俺らしくなかったぜ」
ありがとうアンダルシア、俺は俺らしくが一番だよね。
明朝、俺は選んだメンバーを連れてエルフの集落。ジョフレのいる場所へ出発した。
オーリンジのパーティー結成の話でした。
アベルの考えでは魔族の再侵攻が起こると思っていて、この時対抗できる戦力を探しているのです。
アベルの考えが正しかったは歴史が証明しています
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