102話 レンタロウの夢だから
あの後ハネナガとチヨの命で、ヒノヤマト国内にレンタロウの、名誉回復の立て札とお触れが回り。
国民のレンタロウへの誤解は解けた。
それだけでなく、レントは王家を人知れず守り続けた英雄、と称えられるようになった。千年ちかく一人で闘ったんだから誤解が大きい分、そうなるだろうね。
しかし俺たち一人ずつに、輿を用意して町中を練り歩いたのは、いただけない、罰ゲームだろう。目じりに涙を浮かべるレントを、見れたから良しとするけどさ。
「チヨから全て聞きました。伝説の勇者様のおかげで、ヒノヤマトを苦しめたあやかしも倒されこの国は平和になった。国士と呼ぶべきタキタ殿を疑い、千年に渡って名誉を汚したのは、このハネナガの不明と申すところじゃ。タキタ殿大変申し訳なかった」
「大殿に頭を下げてもらい恐縮でござる、とはいえ拙者もヒノヤマトの民の一人、国と王と仲間の民を守るのは当然の事ゆえ――」
ハネナガもだけどレントも話が長いよ、俺たちは慣れない正座をしてるんだから、要点だけ話して、早く済ませてくれないかな。
そりゃさ、「郷に入っては郷に従えでござる、その土地のルールがあるゆえ、これを守り拙者の顔を立てていただきたい」、と真面目な顔で言われれば協力するよ。
だといってさ、もう30分も正座をしてるのだからいい加減にしなよ、と愚痴を言いたくなる。
「ごめんレンタロウ」
声の方へ視線を向けるとセーナは、足を崩していた。
足のしびれでぐぅとかくっと唸っている。俺も崩したいずるい。
そのとき俺の肩に手を置きながら
「アベル様どうぞ足を崩してください。異国の方々は正座に不慣れじゃからの」
部屋に入ってきたチヨが、微笑みながら言った。正直彼女が救い主に見える俺。
ヴォルフとルーも足を崩すなか、見るその顔は安堵になっている。
「姫のおっしゃる通りでござる、皆も気遣いは無用でござるぞ」そんなレントの言い方を聞いて、俺たち四人は怒りを覚える。
あのやろう後でぶっ飛ばしてやろうかしら。
「「挨拶もこのぐらいにして、アベル (様、殿)そなたの掲げる【ななつのくに】にヒノヤマトも参加させてくだされ」」
ハネナガとチヨは本題をハモリながら言った。
結構、緊張してるように見えるね。
「いいよ。こちらから頼みたいくらいさ、と言うことでトウ・ダーラとヒノヤマトは今から同盟締結だね」
「おお、末永くよろしくなのじゃ」
「アベル殿は拙者のために。かたじけない」
まぁそうなのだ。
レントの夢はヒノヤマトと俺達をつなげることだから、同盟は俺から言うつもりだった。
向こうも同じ気持ちだから、すぐに話が決まるのはありがたいぜ。
「後日、万象の神々の下で同盟締結式をしましょう。その時までお元氣で」
俺は四人を連れて城を後にした。
▽
「拙者もルーヴァン殿の完全な転生法でこうして人間に戻れたし、めでたい氣持ちでござる。皆に抱き着きたいw、なんて」
レント君、きみ俺達に正座させてその後なんて言ったか忘れてないかい? 俺はむーと不機嫌を顔に出すとレントに一歩歩み寄る。
「あっ怒ったでござるか? 勘弁して、でござるよー」
などとレントはほざくが、聞く耳なんて持つかよ。
ぎゅっ とレントに抱き着きおなかに顔を埋める俺。「心配したんだ」口から出た幼馴染を失うのを怖がるそんな声。
「アベル殿……すまぬ。ルーヴァン殿、セルバス殿も待たせてしまって、すまないでござる……」
俺だけじゃなく、ルーもセーナもレンタロウを抱きしめている。
嬉しいときは自分に、”正直”でいいんだ。
で、三人がレントから離れたところで
「レンタロウ生きていてくれて嬉しいぞお」
「……あ、氣持ちだけで、結構でござ……」
ヴォルフと言う名のゴリラに全力で抱き着かれた、言い直せば鯖折りを喰らったレントは白目になり、泡を吹いて倒れるのだった。これさ、オーバーキルだよ
▽
魔法のスクロールを使い、ヒノヤマトと同盟は締結されてヒノヤマトは正式に、【ななつのくに】の加盟国になる。
ヒノヤマトコウはヒノヤマトの傘下であるため自動的にななつのくに、に組み込まれる。
おかげで新鮮な海の幸、魚介料理が食い放題だぜ。ヒノヤマト滞在の時
「俺ここの子 (ヒノヤマト民)になる」
「ははは、冗談がうまいなアベルは」
みんな冗談と思ったようだが本氣だったりする。
ここの魚介類がうますぎるのがいけないのだ。俺はおかげで体重が増えたし……少しだけどね。
いろんな漁港から、魚介類を輸入できるようにしたいぜ
靈刀四季は俺の神越えの力でコピーした物を、国で研究して量産できるようにするつもりだ。
「アベルがいれば増やせるのに、研究する必要あるの?」
「そうでござる」
セーナとレントが不思議に思うのは理解できるが、俺一人に頼るようではいけないのだ。
例えば俺がいなくなったら、それだけで問題が発生してしまう。
何が起きても、問題なく量産できるようにしなければ、靈刀事業は成功しないだろう。
誰かに頼ること自体は悪い事とは思わないけどね。
刀の材質は解析されてカラットから、材量となる鉱石が輸入されてミコット達、武器製造部門で量産される。
だが問題が発生した。
「靈刀のカラダつまり、剣はミコ達で作れるけどココロは無理だぜ。アップルの考える靈刀の量産はレンタロウの精神を量産できるようにしないと、ただの丈夫な刀で終わっちゃうよ」
確かにねー。ミコットの言うように、靈刀四季の強みは武器自体の攻撃力、とアドバイスできるレントの魂にある。
……問題解決のアイデアはあるにはある……。
しかたない、ジョフレ・パンデリック。
あいつに、俺の、最期の仲間を迎えに行くか。
【ななつのくに】
加盟国ー1グォウライ
2魔法学院
3剣士の里
4ゴドーリン
5悪党窟
6アルカイン
7ヒノヤマト
8ヒノヤマトコウ
同盟国はななつで固定で、加盟国は現在8とありますが、8より多くなってます。トウ・ダーラを頼ってくる小国が多く、魔王タイセイの人柄を知って庇護を求めます。
特に表記しなくていい小国はカウントしていませんので、加盟国は8表記です
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