99話 アベルの真意
使いの人に、城の中の泊まる部屋へ案内されている最中のこと。
セーナは納得がいかないからか、俺にがなっている。俺がレンタロウ退治の依頼を、受けたのがすごくショックみたいだ。
「私は承知しないからな、あいつらはレンタロウを殺したヒノヤマト人の子孫だぞ。アベルはレンタロウの死を何とも思わないのかよぅ!!」
使いの人は大変申し訳なさそうな顔、と氣まずそうな顔をしていた。
セーナ本人はそんな氣はないのだけど、遠回しに非難されている風に思うのだろう。
ごめんね普段は凄くいい子なんだけどセーナとレンタロウは仲が良かったから、どうしても抑えが効かない、いやはや、なげかわしいものである。
俺もこの件ではセーナのことを言えないけれどさ。
セーナにふりかえり自分でも驚くような冷たい声が出た。
「俺の決断に文句があるのかセーナ」
普段通りにいかないな、いつもなら流せる事も、ついカアっとなってしまう。
レントの死は俺をかなり怒らせているようだぜ。
「も、文句じゃねえよ。姉者は判断を間違わないし。だからって納得はできないよ、ヒノヤマトじゃレンタロウは今でも悪党で罪人だからよぅ……そんな奴らは助けたくないよ」
セーナは俺に睨まれ、たじろぐも意見を言う。悔しいのは、俺だって一緒だよ。
「よさんか。我らは仲間を探しに来たのであろう。ここで仲間割れしても意味がないではないか、それからアベルが仲間の死をだな……そうだ、仲間をどう思うのかは貴公ならわかるであろう」
ヴォルフありがと。
なかに入って止めてくれなかったら、俺もセーナも爆発していたね。
まぁヴォルフが視線を向けるルーは微笑を浮かべて顔に、青筋が浮かんでいるので切れる手前なのは明白だ。キレると怖い。
ルーを『怒らせてはいけない』は【永夜の夜明け】メンバー共通の認識なのである。
いやほんと止めてくれてありがとう。
「セルバス、アベルを困らせるものではありませんよ。ここで謝りなさいね」
「ひゃいっ! 姉者……じゃなくてぇ。アベル私だけ辛いわけじゃないのに、あたってごめん」
俺が氣にしないでと言うとセーナはいつもの彼女に戻った。
おそるおそる見たルーヴァンさんも怒りを鎮めてもらえた様子である。よかった~
滞在用に用意された部屋は四人で泊まるには広すぎる。
窓から海が見えるようになっており、ふすまは職人が丹精込めた虎や竜の絵があるが落ち着かないが俺の正直な意見だ。
あと屏風、すごい邪魔!
食事 (俺の要望で刺し盛りとふぐ鍋にしてもらった)を終えた頃である。
ルーが「どうして依頼を受けたのか我々に話してください。アベルのすることですから、信頼はしていますが私も何故、レンタロウを殺したヒノヤマトを助けるかの理由が知りたいです」
そうなるよねぇ。レンタロウが関わっていなければみんな氣づきそうなものだけど、怒りが思考を鈍らせるようだ。
俺は「知りたい?」と聞くと全員「知りたい知りたい」と答える。
なんとも微笑ましいなぁ。
「よし、もっと近くに来なさい」
近くに来させる意味はないんだけど雰囲気重視で。雰囲気はとても重要なのさ (たぶん)
ヒノヤマトを救う理由は魔物の攻撃で困っているからだ。
俺たち【永夜の夜明け】が千年前、魔族の支配から国を解放して、人々を助けたことと実は何も変らない。
事態をややこしくしているのは【レンタロウの死】なのだ。
混同してしまうからセーナはおろかルーと、あのヴォルフまでヒノヤマト憎しで救う必要はないになってしまう。
「俺もレントを殺したヒノヤマトは許さないよ。でもさレントを殺したのは、千年前(当時)のヒノヤマトで現在のヒノヤマト人は関係ないんだぜ」
みんなはやっと気が付いたみたいで「あ……」と言った。
やはり怒りは思考を鈍らせるね。
さて助けるにしても条件を付けないといけない、仲間全員が納得してヒノヤマト国を助けられるようにね。
なにより俺が納得して助けれないと、意味がないのである。
借りてきた靈刀はセルバスに「抱いて寝なよ」と預ける。
大事な刀をポンと預けるあたりあの姫も豪胆だね、信じてみてもいいだろう。
いや追い詰められているからなのかもね。
すぐにでもあやかしヤローを退治しないと。
俺の意識は布団の中で、考え事をするうちに闇の中に沈んでいった。
▽
次の日、俺はチヨに依頼を受ける条件を約束させる。
・王家から国民へ、レンタロウの名誉の回復を必ずする事
・謝礼として1億ディオン支払う事、靈刀をトウ・ダーラに譲る事
この二つだ、そんなに難しい事ではないし、チヨは渋ったが靈刀はあやかし退治をした後は必要ないから最後は納得してくれた。
あやかしを倒すことの方が大事と思ったのだろう、俺が「条件をのめないなら無かったことにしてもらう」と帰えられても困るわけだし。
この後だけど俺は、ヴォルフ達とチヨを連れて城下町を散歩している。
レンタロウを倒すための【四季】は俺の言う通りにするセーナが肌身離さず持っている。
なにがなんだかわからない顔をしたセーナは、いくら不満があるとはいえ靈刀を握りしめたままだった。それでいいんだ。
あやかしが出たら目にもの見せてやるさ。
さてヒノヤマトの国なのだが、なかなか発展している。
ニホンコクで言うなら『たいしょう』と『えど』が混ざったようだと印象を受ける。
どういうことか説明すると国民の恰好は和装が多くて『えど』なのだが、上流階級は和装と洋装が混ざる『たいしょう』の恰好なのだ。
それから建物は大通りに面した部分は江戸家屋を感じさせる、茶屋があり琵琶の葉売りが往来で商売をしている。
かと思えば、通りから離れると俺が知る大陸の建物をヒノヤマト流にアレンジした建物が見えていて、これがニホンコクの『たいしょう』を感じてなんとも浪漫を感じさせられる。
俺はこのハイカラな感じは嫌いじゃない、昔ハジメからも「アベルさんなら大正浪漫とか好きになれますよ」と言われたっけ。うむ、このモダンな感じは大変素晴らしいぜ。
遠くに魔導列車もあるし、動いてはないようだからあるだけみたい? もったいないよね。
茶屋で四人とも腰掛けて、注文したクリームソーダを飲もうとしたとき「アベル様いいですか、町だとレンタロウが出た時に民に被害が出ます。ゆえに妾は先日町から離れた山でわが身を囮にしてレンタロウをおびき寄せたのです。ここは危険じゃ」などとチヨはクリームソーダを飲む俺の、邪魔もとい正論を言う。
ちゃんと考えてあるってまかしときなよ。
チヨがおれをアベルと呼ぶわけは俺がチヨに、俺たちとレンタロウがイフマイータを倒したパーティーだと話したからだ。
チヨが信じてくれたからこそ条件の王家から国民へレンタロウの名誉の回復を飲んでくれたわけである。
実際いい子だし、短い時間の中で俺だけでなく、セーナ含む三人と打ち解けている。
おっとクリームソーダ片づけないとお客さんさんが来ちゃうからね。
ビュウウウウとぬるい風が吹くとたくさんの子分を引き連れて、例のお客がやってきた。
大通りの奥で場所を見て、勝ったと思うのかいやらしい邪悪な笑みを浮かべている。あやかしレンタロウの登場だ。
「「アベル」」
「なにっレンタロウ!? アベル様奴じゃ」
チヨは驚き、三人が俺を呼ぶ中タンっと立ち上がる俺。
「ヴォルフ、ルー、セーナ腹ごなしの運動をするぞ。暴れるぜ!」
あんたの名誉は俺たちが回復させるからさ、安心して戻ってきなよレンタロウ。
この話の中で永夜の夜明けメンバーは揃っております。アベルの目は真実を見抜くので変装が聞かない設定なんですけど、それを見たときからレンタロウと見抜いてました
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