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98話 靈刀(れいとう)とあやかし

 レンタロウははりつけにされている。

 大きな刑場は杭になった柵でおおわれており、刑場の中と外は国を出た罪人の最期をあざ笑ってやろうと、見物人でいっぱいだ。

 レンタロウ目掛けて石を投げながら「掟破りめ恥を知れ」「のこのこ戻ってきやがって、何様のつもりだ」と多くの見物人は心ないやじを飛ばす。

 何故ここまで憎むのか理解に苦しむ。


 見物人の投げる石など高レベルのレンタロウからすれば何のダメージにもならないが、心にズキンとくるものがある。


 それに国を出たのは彼の意志ではない、道場の仲間と漁に出ているときに、嵐でヒノヤマトの海域の外へと流されたのだ。

 つまりは漂流だ。

 事故であり個人ではどうすることもできない、仲間たちが長い漂流生活で亡くなる中レンタロウは意志の力で生き延びた。


 レンタロウを乗せた船は海流の気まぐれか、万象の神々の導きかは今となってはわからないがなんとか陸へたどり着いた。


「ヒコイチ陸でござる。!? ヒコイチ……。拙者だけ生き残ってしまったでござる」



 その時から異国を渡り歩き魔族の用心棒をしながら、日銭を稼ぐ日々を続けるレンタロウは【祖国へ帰る】、と夢というよりは、望郷の念を強くしていた。


 日々の中でレンタロウは〈この魔族に支配される国を解放する〉、と乗り込んできた4人組のパーティー【永夜の夜明け】と戦い敗北する。

 だが勇者リーダーは彼の願いを聞くと「俺のパーティーの仲間(五人目)にならないか?」とレンタロウを誘ってくれた。


 「魔王を倒さないと自由にどこかへ行くなんてできないもんね。俺に力をかしてくれ、その代わりあんたを無事に故郷に、帰してあげるよ。」


 レンタロウに屈託のない笑顔を向ける彼女は、戦闘時とはこんなに違うのかと思える年相応の少女の笑みをみせる。

 旅の中でレンタロウの夢は【故郷に帰る】という単純なものから【旅の内容を書物にして、世界をヒノヤマト人にしってもらう。ヒノヤマトと仲間たちをつなげたい】へ変化する。

 理由については、やはりレンタロウを助けた勇者アベルの存在が何より大きいだろう。



 レンタロウは魔王を倒した後仲間たちと別れ、魔族に独占されていた大型の船、軍船なのだがこの船でヒノヤマトへ帰国した。

 あれだけ荒れていた海の魔物たちも魔王がいなくなったことで、嘘のようにおとなしくなり来る時と違い、楽に帰ることができた。

 しかし帰ってきたレンタロウをまっていたのは【魔物が人に化けているという疑い】だった。


 ヒノヤマトは鎖国で外の魔物から国を守っていたために、ヒノヤマト人が中から出ていくことはあっても外から戻ることはなかったからである。

 一方向からしか見てない考え方なのだ。


 それから魔物の疑いが晴れても一度下した裁決を覆すのは、ヒノヤマト王家の面子がつぶれるという言い掛かりに近い事情から、レンタロウは魔物ではないけれど掟を軽んじ、守らなかった大罪人となり、処刑が撤回されることはなかった。

 アベルたちから見ればくだらない。

 くだらなすぎる理由である。


 処刑寸前になってレンタロウは呪文をつぶやく。

 あるいはここにいるレンタロウ以外の人間へ、呪詛を撒いているのかもしれない。

 呪詛は止まることなく空は曇りだしたかと思うと、土砂降りの雷雨になり刑場は桶をひっくり返したような大雨になった。

 このおぞましい天氣の変わりは、絶対にレンタロウがしているに違いない。


 刑は執行され大罪人が死ぬと同時に天氣は元の青空に戻る。

 このレンタロウの首と胴体は灰にされた後でわざと別々の場所に埋められた。

 往生際が悪いと見えるレンタロウの行動は悪あがきでしかない



 この時は刑場にいる人間はそんな風に思っていた。





 ヒノヤマト国の城に通された俺は、助けた姫武者マツダイラ・チヨから千年前レンタロウの処刑の様子を聞いている。

 チヨはヒノヤマトしょうぐんマツダイラ・ハネナガの娘であり、すなわちこの国の姫だそうで。

 彼女を助けた俺たちは国の恩人らしい。


 ちっとも嬉しくないや、俺とヴォルフとルーは我慢できているがセーナは話の途中で何度も興奮して、剣を抜きそうになる場面があった。

 話だから我慢できている。

 ルーが「映像魔法で見せましょうか?」そう言うが、やめさせて正解だった。

 かけがえのない俺の仲間レンタロウを殺される場面を見たら、はっきり言って我慢なんてできやしないよ。

 その事をあとから氣づいたルーは、失言だったと沈んだ様子だ。何故か俺を抱っこして、これさ、かっこつかないからやめてほしい。

 チヨは話をつづける。


 目の前にいる四人がレンタロウの仲間だとは夢にも思わないだろうね。


「処刑より一年がたつころから、ヒノヤマトに病が蔓延するようになったのじゃ。やがて城をも飲み込む病をこれはただ事ではない、と見た妾の先祖は国一番の陰陽師に原因を探らせたのじゃ。陰陽師は城を覆う黒い影が見えると言い、妾の先祖は死者の怨念によるものと見た」


 チヨの口調は話が進むにつれて熱くなる。怒りか。

 千年間、自分と仲間と国を苦しめてきたチヨからすれば憎い、レンタロウの話だからこうなるのは仕方ないと言える。


 俺は客観的に見ているからこんな感想を言えるけど本音は、お前たちが俺の仲間を殺したからじゃないか、どの口が言うんだ!! である。

 レントは事情を話してなおかつ鎖国は無用になったって【ヒノヤマトと世界をつなげたい】とレントの夢を語ったはずなんだ。

 当時の価値観では理解できなかったかもしれない、それでもさ少しづつでいいじゃないか。

 現に千年後のヒノヤマトはヒノヤマトコウを玄関にして、他国と交易をしているんだ。

 なんで殺しちゃうんだよ。


……愚痴だな。文句はいつでも言えるから、今は続きを聞こう。


「死者の念は魔物の形をとると当時の将軍と娘の命をねらったそうじゃ。そのとき姫が持っていた刀が光り輝き、ひとりでに魔物を斬りつけ、撃退したと記録には残っておる。以来霊刀【四季】は春夏秋冬の一年をとおして、レンタロウの魔の手から、われら将軍家を守ってきたのじゃ」


 チヨは陰陽師はこうも言ったと話を続ける。その目は期待にみちているが、おそらく頼み事なんだろうなぁ。


 「【異国の勇者と霊刀がそろうときヒノヤマトを苦しめる魔物は退治されるでしょう。】代々ヒノヤマトの姫には強い霊力 (魔力)が宿るが、力が足りぬのかレンタロウを殺すことはできなんだ、せいぜい眠りにつかせるだけなのじゃ。たのむ予言の勇者はおぬしたちに違いない、このチヨに合力くだされぃ」


 レントを殺したヒノヤマト人の末裔が、困っているのはわかった。


 セーナは「受けるなよアベル。レンタロウの話を聞かないで、こいつらは一方的にレンタロウを殺したんだ」と俺にくぎを刺してくる。

 俺だって同じ気持ちだよ。だけど


「いいぜ。本当に困っているなら、助けるにいやはない」


口から出たのはそんなセリフで、俺が断ればエラリオは悲しむよね。



 胸の奥の火はあの人(お母ちゃん)と並んで見た夕日の色を映していた

レンタロウは死の前に国を呪ったのか? その結果があやかしレンタロウなのか

アベルが姫の願いをきき助ける理由はなぜか

次回でわかります


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      彦馬がよろこびます

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