96話 困ったときは【ラーマオブゴブリン】へ
アニーの手腕は確かで魔物を登録できるギルドだというのに、どんどん人が入ってくる。
「アベルが下地を固めてくれたおかげだよ~」そうアニーがいうけど、詳しく聞くとこういうことらしい。
昇級できずにくすぶっている冒険者はソンクウ道場で基礎を固めて、魔王タイセイが定期的に行う国民訓練日に参加してレベルを上げる。
他に教導業で修行してもらう方法もとるみたいだ。
教導業は大金がいるがコーチがつきっきりで教えてくれるため、達人以上のレベルの冒険者に人気がある。
そしてレベルを上げた冒険者はあらためて昇級試験を受けて、冒険者クラスをあげるようで
みんなすんなり合格することから冒険者の間には【昇級で上がれなくなったらトウ・ダーラに行こう】などと格言ができてるらしい。
あと魔物の仲間を〈魔物使いの部下〉ではなく対等の仲間として扱いたいと、いままで暗黙の了解に甘んじていた冒険者はうちのギルドに来る。
彼らはそこで魔物使いとその魔物という嘘を取り除いて、冒険者の仲間に生まれ変わるのだ。
「魔王タイセイ万歳。トウ・ダーラにきてよかった」とみんなが言ってくれる。
……しかし彼らの感謝するタイセイは赤髪の魔族で、俺ではないのは説明しておく……。
アニーのおかげで繁盛している。これはアニーが弟子の八代目グランドマスターに【ラーマオブゴブリン】の宣伝をさせていることも大きいだろう。
もっとも大きな声で言うのではなく、各地のギルドにきた冒険者たちに「こんなギルドがありますよ」と耳打ちさせただけなのだが、それで十分なのだ。
昇級に困る冒険者と、魔物使いと魔物の立場が嫌になっていた冒険者は、俺のギルドに集客できたわけだからね。
そうそうオージの情報を待つ間【ゴブリンとゆかいな仲間たち】が活躍したギルド【メラーンジュ】の冒険者たちだけれど、全員がうちに移籍してくれた。
メラーンジュのギルド長はアニーの下で補佐をしている、アニーがギルドを留守にするときは彼が代役する。
ちなみに空になったメラーンジュは、【アドベンチャー・ウィアートル】―〈ギルド本部〉から人が派遣されて、営業してるので問題はないよ。
なつかしい面々と再会する俺たち。
ヒトを慕ってきた新勇刃隊はイフマナスでヒトの下で働いている。
魔帝ミラルカの相手がヒト(人間)なのでみんな人間だけれど、魔族の文句は少ないようで、魔族たちもあたらしい世の中に順応していこうとする意志が見える。
サンは姿をくらました。
「わざと寄せ付けないために、あの態度なのに! マネージャーはなんで追ってくるっすか」
「俺が言いくるめて、諦めるようにしとくからさ。しばらく旅行でも行きなよ」
アーガシアのところに、そういう経緯で避難している。
許可をもらった後に開発してドラグニルの領土に温泉街をつくったから、サンはアーガシアと二人で温泉につかっているだろうね。
オウの場合だと。
プライベートの時間にオウから相談があると言われ――
「姉さんトウ・ダーラに加盟したいって国があるんだけど」
「あぁ……。お前を国お抱えの冒険者に登用した国だね。オウの目から見て信用できる相手かな?」
「いい人たちだよオークの僕への偏見もないしさ。あの人たちなら裏切りもないし、姉さんの力になってくれるよ。だからおねがい……」
いいかけるオウを手で止めてから、俺はうなずく。
「オウがそう判断したなら問題ないさ。連絡付けてくれるかい。明日の朝会おうじゃないか」
オウの喜ぶ顔を見ると俺まで嬉しくなるね。
自分でもこの子に甘いなぁ~と思うが不思議と悪いと思わない。
そういうわけで【ななつのくに】に加盟国がひとつ加わった。
俺の目から見ても王は邪悪ではないので問題はなかったのだ。
あとは俺かな。
説明を省いて要点だけ言うとウエディーマはトウ・ダーラお抱えの冒険者になり、俺が昇級を手伝ったあのパーティーはトウ・ダーラお抱えの冒険者を目指して奮闘中だ。
「ソンクウさーん会いたかった―」と涙するのはジーンとくるけれど、尻を触られるのはいただけない。
偶然は恐ろしいものさ。
それと昇級を手伝ったパーティーとウエディーマは俺がタイセイだと知っている、王家の力になる人に正体を隠す必要はないからだ。
とこういう経緯からギルド【ラーマオブゴブリン】は今日も大繁盛なのだ。
それからいつかの魔法最奥の会のメンバーは、学校を卒業させてトウ・ダーラで鍛えている。
魔神との対決に備えて卒業なんか待ってられないよ。
俺が思った通り魔法だけでなくいろんな方面に伸びしろがあり、さながら異世界人のようにマルチな才能を持つ。
彼らは魔神との戦いで大きな助けになるだろう。
【ななつのくに】
加盟国ー1グォウライ
2魔法学院
3剣士の里
4ゴドーリン
5悪党窟(戦争で最初に突撃させられたりする国)
6アルカイン (オウをお抱え冒険者にした国)
レントのやつが恋しいかな。仲が良いセーナにも会わせてあげたいし。
悪党窟は情報収集、犯罪者を一箇所に集める独房の他に戦争で使い潰しできる駒です。
戦争で使われますが悪党は悪党窟で築いた自分の地位を捨てられません。アベルからみたら、なくしても惜しくない存在だから使い勝手がいいです。
信頼を集めて、汚い手段をとってもその信頼は微塵も揺るがない。
それが魔王タイセイの魔王としての在り方なんです
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