93話 七代目ギルドマスター
俺は中央大陸のギルドメインの町に降り立った。
飛行船は発着場所がなかったので、町のはるか上空で待機している。
この町で用事というより、目的を果たしたら迎えの昇降光をおろしてもらうようになっている。
開けた大通りを曲がることなく進んでいくと、街の真ん中にでかいとしか形容できない建物がそびえている。
豪華というような感じはなくて昔ながらの老舗という風情をかもしている、ただし古臭い印象もないそんな建物だ。
アドベンチャー・ウィアートル―【冒険】と【旅人】の意味を持つすべての冒険者が知るギルドの本拠地である。
七代目ギルドマスターが運営していることで有名なのだ。
俺はここに来た目的を果たすため建物の中に入る。
俺たちを見た途端、恒例のあらくれがからんできた。
しかし俺が手を出すまでもなく親衛隊長のオージが、素早くあらくれの腕をひねり上げて動けなくさせた。
俺はあらくれに「B級冒険者チ-ム【ゴブリンとゆかいな仲間たち】のリーダーのソンクウだ。お仕事ご苦労さん」と耳打ちする。
あらくれは、はなしてもらえた腕をさすりながら「名ばかりのB級じゃないみたいだな、歓迎するぜ」というと席に戻っていく。
あらくれの言う名ばかりとはワイロを払い昇級した冒険者だ。
人がかかわる以上貴族や王族が金を払いズルで肩書だけもらうことがある(試験もワイロですり抜けて)。
中には冒険者でも昇級するためにワイロを支払い成り上がる者もいる。
なげかわしいことではあるけれど仕方ない、どうしたって楽に名誉を得ようとする者は出てくるものさ。
受付まで行くと受付嬢はいつもの挨拶をする。
「いらっしゃいませ。何か変わった情報はございませんか? ギルドで買い取らせていただきます。それとも依頼を受けられますか? 依頼はソロで受けられてもかまいませんし、パーティーで受けてもいいですよ。B級冒険者チーム【ゴブリンとゆかいな仲間たち】様ですね」
「ギルドマスターに会わせてくれ。こう伝えてくれればギルドマスターは俺たちに会うはずさ。アベル・オーリンジ・ミコット・ヴォルフがあんたに会いに来た」
「!? はいっ。お、おまちください」
ギルドマスターは持っている権力よりも世界トップクラスの情報をねらわれることから正体は秘匿されている。
俺の発言はギルドマスターの正体を知っている……言い換えるなら、ギルドマスターの仲間だと話したのだ。
受付嬢はそれがわかったので大急ぎで俺の旧友である、ギルドマスターに取り次ごうとしている。
すると
「お前は受付をしていればいい。勇者アベル殿は私が案内しよう」
フードをかぶる大男が低い声で言いながら続けて「どうぞ私の後についてきてください」といった。
俺たちはそれぞれの顔を見て頷くと、大男についていく。
▽
案内された部屋は魔法により外部から隔絶された異界になっている、音漏れそれとスパイ対策か。
ギルドの心臓のギルドマスターを守るためなのだろうが、用心深さは他国の王などおよびもしないだろ。
だからこそ歴代のギルドマスターは正体を隠せてこれたんだろうね。
「皆さんお久しぶりです。とくにアベルとオーリンジは会えて嬉しいです、転生したことは伝え聞いて知ってはおりましたが」
俺の前の仮面のギルドマスターは麗らかな声で、俺たちへ挨拶をする。
……冒険者で仮面する奴は珍しくないけれどね、母さんがつけてた仮面と同じなのはいただけないなぁ。
あの仮面はやってるのかな?
その後自分の側近、まぁ正体はギルド長なのだが、フードの大男二人を退席させた。
「では我々は隣の部屋におりますので」
「わかりました。何かあれば念話で呼びます、私の仲間たちですから、まぁ万が一もないでしょうけれどね」
大男たちが消えてしばらくすると――
「も~来るなら言ってよ~。急に来られてもだめだよ~心構えとかあるんだよ~」
俺たちのよく知る間延びしたいつもの口調で話し出すギルドマスター。
褐色の肌をした獣人の女性でオージのパーティーの仲間。
アンサリー・オニトリが現在のギルドマスターだ。
俺とオージの転生組は彼女が七代目なのをミコットから聞いて知っている。
「それで~用件は~? アベルとオージがそろってるから魔神がらみかな~」
「んや~。アンサリーに会いに来たのは魔神と七勇者関係なのかいアップル?」
間に入るミコットをよしよしとなでる仮面を外したアンサリーは、のほほんと笑顔を見せる。
「俺がアニーに会いに来たのは魔物の国そう、俺のトウ・ダーラに冒険者ギルドをつくるためさ」
「へぇ」
俺の発言を聞いてアンサリー……七代目ギルドマスターは不敵に笑う。
アンサリーが出てきました。残りの仲間は二人だけレンタロウとジョフレだけです。ジョフレはエルフで、アベルはジョフレとミコットの仲は悪いと思っているので、ジョフレは最後に出るかもしれません
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