プロローグ 勇者魔王の小妖精(ゴブリン)
俺はアベル、もう一つの名をソンクウと言う。
ここ魔族の領土であるトウ・ダーラ国の魔王城に一人の小妖精が鎮座している。
今日の予定は何だろうなどと、副王のアンダルシアにだかれて足をパタパタと動かし思案している。
俺がこの小妖精だ。
ゴブリンといっても、その見た目は少しとがった耳と牙があるだけで、外見は小人そのものである。
肌の色は白人の様に白く、ハーフリングというより、小柄な人間種に見えなくもない。
「いたいた、大兄貴。さっきからサンちゃんとオージさんが探してたっすよ。今日はガウじゃなくアンダルシアさんのほうですか?
この大兄貴を抱っこしていい身分っすねえ。仕事の国営はどうしたんです?」
この男はヒト三郎。魔王である俺の親衛隊兼軍事力の魔王将の一人だ。
「各部署からの意見や問題が挙がってまして。
私じゃだめなものだけ我が君に決めてもらってるんです。抱っこですか? 趣味です。
だって我が君は可愛いんですもん」
そう何ら恥じることなくこの国NO2(副王)であるアンダルシアはヒト三郎の質問にこたえた。
「アンダルシア少し休憩。リストは後で見るからここに置いといてよ。ヒト、サンとオージだったよね。ありがとう探してくるぜ」
魔王の親衛隊の隊長のオージは今の俺と同じ存在といえる。
そんな風に言っていたらサンと一緒にいるのを発見した。同じ理由で俺を探していたんだろう。
「ソンクウさーん。【七勇者と魔神】についてお知らせしたい事があるっす」
彼女はサンという。最初の頃のツンケンした態度はもう見られない。パーティーメンバーの一人だ。
「アベル、公務中に悪いな。おっと、この口調はプライベートだからな。咎めるなよ」
こっちはオーリンジ。俺と前世で縁が深く信頼できる人物だ。
二人からの用事を済ませて城の中を散策する。
うーん。疲れている時に、最も会いたくない人物が見えてしまった。
もと来た道を戻ろうとするも、彼女に瞬間移動したように回り込まれる。
この世界で十指に入る強さを持つ魔族の少女。
「ソンク~、キルくんどこぉ? あのね、あのねジイに内緒で遊びに来たんだけど見つからないよぅ」
「ヒトなら、ケシ太郎(魔王将筆頭)と打ち合わせがあるって言っていたから武闘場にいるんじゃないかな? 行ってみなよ。
仕事の邪魔はしないであげてね〜」
「当然じゃん! この僕が愛する人の不利益をすると思う?」
ミラルカは、そう言って姿を一瞬で消した。
まったく。魔王として生きる中で、勇者としてサンをつれて諸国をめぐり【七勇者】を探す。忙しくも俺が望んだ日々である。
どうしてこうなったのか?
トウ・ダーラ国魔王であり、そして前世は勇者であったアベルことソンクウ・ゴウジャはその過去に思い返していた……。
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