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女には妬みと嫉妬とマウンティングがつきもの

 加瀬は九十九から得た情報、今野殺害までを語ってくれたが、楊はそこで自分が気になっていた事を加瀬に尋ねた。


「今野が根津を物凄く恨んで化けて出ていたのはなぜだい?」


 楊の問いに、加瀬は言い難そうに口ごもった。

 加瀬は楊に申し訳なさそうな視線を動かし、察しの良い楊は軽く右手の指先を振ってみせてから、加瀬の心労を軽くする言葉をかけた。


「俺を気遣う必要は無いよ。」


「ええと。クロさんが見たのはずぶ濡れの遠野のはずです。遠野にとって根津が自分を不幸にした張本人だからです。今野を殺した時に日比野達の意識を遠野が乗っ取ってしまったので、九十九が遠野の意識を今野の体に封じ込めたのです。それから、実際の遠野を殺した女達は根津側の人間です。百目鬼さんと別れる事になった援助交際の噂を流されて、子供の流産で子供が生めなくなって、仕事で成功したら殺されたのは全部根津のせいだって。遠野の意識は根津への恨みだけの塊でした。」


「百目鬼と別れるって決めたのは遠野だろうにね。結婚を決めたころなんか、もうすでに百目鬼は山だし、高校時代の事なんか関係ないぐらい時間が経っていたでしょうに。」


「あの。でも。」


「どうしたの?いいよ、言ってごらんって。俺を気にせずにね。ここには山口も葉山も、髙先生だっているんだから、情報は全部出してくれた方が俺のためなんだよ。俺が辛かったら、彼らがぜーんぶ被ってくれる。」


 口ぶりの割にはそれほど傷ついて見えない楊は、隣に座っている髙に軽く肘で突かれ、俺と葉山はいつものように彼らの姿に笑い声をあげてみせた。

 新人の加瀬はそれで安心したのか、ようやく楊の質問に答えたのである。


「根津の友人からは課長と百目鬼さんの噂話が聞けるからと、彼女はそれで根津を切れなかったようです。仲間内ではナンバーワンの男の彼女扱いですしね。」


「そっか。」


 楊は溜息混じりに呟いて、それから、俺達が一番知りたい事を尋ねた。


「それで、九十九はどこから関わってくるんだ?あいつは根津達と接点などないだろ?」


 加瀬は膝にある自分のノートパソコンを開き、俺達にとある画面を見せた。

 その画面はインテリア照明会社のホームページであり、そこにはその会社の顔のように遠野可穂子がにこやかに微笑んでいたのである。


 加瀬は画面上にいるとある人物を、すっと指さした。


「彼女の後ろに映っているスタッフのこれが九十九です。」


 俺達は一斉に加瀬の指差した九十九を見て、何度も見直す羽目になった。


「ちょっと、マッキー。これオバちゃんじゃない。九十九は二十代でしょ。」


 葉山の驚いた声に答えたのは髙である。


「戸籍調べたら、彼女は六十二歳だったね。亡くなった姉だと言われていた九十九つくも茲乃ここのは娘だ。九十九乃亜の本名は九十九いさ子。」


「彼女は遠野の若さと才気が羨ましかったんですよ。この事務所を定年退職したあとに街を歩いていたら、友人達に囲まれて誕生祝をしている遠野の姿を見つけたようです。そこで眺めているうちに憎くなって、遠野の取り巻きたちの劣情を煽ったのです。遠野が根津と付き合ってから、遠野の友人は百目鬼さんの取り巻きから根津の女友達に変わりましたから。百目鬼さんと寝た事のない人達です。ずっとずっと遠野を妬んでいた人達だったのです。」

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