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すっきりしない事への確認事項として

 水野達は魔女軍団に掛けられた汚水により肌が爛れており、すぐさま相模原第一病院へと搬送された。

 あの気丈なケダモノ達でさえ、顔に痕が残ったらとかなり不安になって脅えていたのだ。

 普通の女性が顔に酷い爛れを負ったとしたら、精神が崩壊してしまうのは当たり前だろう。


「あの子達の機転が今回は本当にいい仕事したよね。」


 全てが終わった後、楊と髙は水野達が向かう予定だった最上階の奥の部屋を確認したのだが、そこから戻って来た時に、髙がしみじみと呟いたのだ。

 彼が言うには、その部屋に入った時点で二人は命が無かったそうである。


「酷いよ。大穴が開いているの。部屋に飛び込んだら下の階に落ちて、下の部屋に仕掛けてあった竹串のようなもので串刺し、かな。」


 楊は本当に嫌そうに髙の言葉の後を継いで俺達に説明し、その後は課長席に座ったままぼんやりと宙を眺めている。

 彼の昔の友人達が、人殺しの加害者で、殺された被害者、だったのだ。

 確保された魔女の手下四人には、水野達を襲撃した公務執行妨害以外に、横浜港で引き上げられた今野茉莉の殺害と死体遺棄の容疑がかかっている。


 但し彼女を含めた四人の魔女達は水野達よりも顔面に酷い爛れを負っており、彼女達も警察病院の方に搬送されることとなった。


 今回の功労者である玄人は医務室だ。

 彼は恋人の俺を捨てて、医務室で加瀬の看病をしているのである。


「俺が倒れてもあんなに献身的じゃなかったよな。」


 バシッと肩が叩かれた。


「山さんは何を焼餅焼いているの。加瀬の中にあの化け物の力を注ぎこんだから様子見がしたいって、クロが言っていたでしょう。」


「だって友君。クロトはね、僕に電話しといて何も教えてくれなかったんだよ。ただ一言、髙さんの言うことは聞けって、僕に呪いだけ掛けただけなんだよ。」


 葉山は笑い出した。


「髙さんの言うことを聞けって、呪いなの?」


「呪いだよ。実際、髙さんの声で体がピキって固まっちゃったからね。僕が問い詰めたら平然とね、説明しても言うことを聞かないでしょって、酷くない?僕は恋人だよね。」


 葉山は矢張り鬼畜だった。

 俺を慰めるどころか酷い一言を言い放ったのだ。


「清い関係は恋人でないでしょ。」


 俺が葉山にワナワナとしていると、後ろからいい声の笑い声が響いた。

 百目鬼だ。


「それなら、俺と山口の方が恋人だなあ。」

「やめて!」


 俺は慌てて立ち上がると同時に百目鬼に叫び、彼にしがみ付くように掴み掛かった。

 だが、俺の姿に百目鬼は驚くどころか物凄い良い笑顔を返しながら、なんと、俺の尻肉をつかんだのである。


「ぎゃあ。」


 驚いた俺は彼からズサっと飛びのいて、その反動のまま後ろにステンと転がってしまった。

 なんて情けない俺。

 そんな俺の醜態に、葉山は目を丸くしてからの大爆笑だ。

 畜生。


「百目鬼、俺の部下を虐めるのは止めてくれ。それよりもちびを一人にして大丈夫なのか。あんなに今日は呼び出すなメールをしておいて。」


 百目鬼は楊に軽く肩を竦めてから俺の椅子に座ると、長い足を見せつける様に投げ出してから彼に軽く答えた。


「髙がついているなら大丈夫だろう。それよりもお前に聞きたい事があってね。」


「何だよ。」


「ここに来る車の中でさ、玄人が俺があの魔女軍団と寝ていたって言い張るんだよね。いくら無節操な俺でもね、やった奴の顔と名前くらいは覚えているからさ。気になってね。」


「おぉ、無節操だとようやく認めたか。お前は成長したな。」


「うるせぇよ。とにかく、何かあいつらの写真か何かないか?クロにそれで確認をさせたい。」


 楊は眉根を寄せると、自分のデスク下をごそごそと探り、無駄に大きくて分厚い写真集を取り出した。


「卒業アルバムなら。」


「どうして高校の卒業アルバムが都合よくここにあるんだよ。」

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