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愛すればこそ、愛する者の死肉だって喰らえるはずだ(馬12)  作者: 蔵前
十六 特定犯罪対策課の長い一日
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同じ顔の魔女たち

「死人だけでも厄介なのに、魔女ってなんだよ。」


 運転席の良純和尚は、何度も大声で悪態をついている。

 昨夜から今朝、おまけに午前中かけて人の体をいいように玩んだ男は、午後もそれを続ける気だったらしく、中断させた髙に憤慨しているのである。


 反対に僕は髙からの電話に、救いの手だと嬉しさを持って感じた。


 良純和尚の行為が嫌なわけではない。

 確実に彼の行為に耽溺してしまっている自分が怖くなってきたのである。

 目を瞑ると、山口の悲しそうな顔だけが浮かび上がる。

 だけど、それだけな自分。

 最悪だ。


「おい、お前が言い出したのだから説明しろよ。」


「上手く言えませんよ。髙さんの電話で映像が見えただけですから。この間の良純さんの女友達が魔術を行っている映像が浮かんだだけですって。」


「俺の女友達じゃねぇよ。」


「友達ですよ。あの黒ドレス達は全員良純さんと寝た事がある人です。特に黒ドレス四番は子供を堕胎していますよ。」


 キキーと車が急停車した。


「知らねぇよ。覚えていないじゃなくてさ、本当にあの女達とはやってないって。」

「えぇ、嘘吐き。しっかりやっていますって。」


 良純和尚は大きく溜息をついて顔を上に上げ、そして再び僕に顔を戻した。


「で、その四番とやらの名前は何だ?」


「覚えていません。」


「お前、あいつらと仲良くなったとか言ってなかったか?」


「だって、全員似た様な黒ドレスに似た様な顔で見分けがつかなかったんです。」


「お前は酷い奴だな。」


 彼は鼻で笑うと車を再発進させ、楊との待ち合わせ場所へと急いだ。

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