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愛すればこそ、愛する者の死肉だって喰らえるはずだ(馬12)  作者: 蔵前
十一 探し続けるのは変わらない
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晃平君の家

 水族館から玄人を連れ出すと、俺は最初の地に立っていた。

 此処が最初の地、発端の場所。

 俺が虫に塗れて、子供達の溶けた死体があって、佐藤晃平のものらしき「足」が見つかった家。


 車のエンジン音に振り向くと、楊の支給車である古い型の黒セダンが到着していた。

 楊と髙が降り立った。

 死人が関係する場合は必ず髙を通す。

 元公安で事件処理、それも事件を闇に葬れる髙がいなければ、死人の事件は解決しないのだ。

 死人は一般人には内緒の存在である。

 こんなにも増えて、生まれてくる子供の数よりも死人の数の方が多くなっている世界なのに、だ。


「ちび、それで佐藤晃平はどこにいる?」


 楊の掛け声に、玄人はスっと屋根を指さした。


「彼は屋根裏です。眠ったように縮こまってそこにいます。」


「どうしようかね。そこから出してあげて、眠らせてあげた方がいいよね。」


「僕は眠らせたくないです。」


 髙が誰に尋ねるわけでも無いように口にしたのだが、珍しく言葉を被せて来た玄人が断言までもしたのである。


「玄人君、それはどうしてかな?」


「だって、彼は何も悪いことをしないし、痛みを感じないから苦しくない。それに、彼は誰かに会いたいみたいなの。誰だろう。よく見えないから判らないけど、その人に会うために頑張っているから、僕は彼に何もしたくない。」


「そっか。」


 楊は軽く答えた。

 そして、矢張り軽い感じで玄人に尋ねた。


「彼の本名だけ教えてくれる?彼の正体を暴いたら、俺達の仕事はここで終了だからね。」


 だが、出来る事ならその彼が会いたい人物を探すのだろう。

 仕事の合間に、時間が掛かっても何年も忘れることなく、見つかるまで楊は探すに違いない。

 それが楊だから。


浜口はまぐちゆう。佐藤晃平は彼に車をぶつけた少年です。あぁ、彼が会いたいのは晃平君なんだ。彼は晃平君に「いいよ」って言ってあげたかったんだ。友達だったから。」


 ハハハと、楊と髙が同時に乾いた笑い声を上げ、髙が情けない声で呟いた。


「結局僕達は佐藤晃平を探し続けないといけないんだね。」

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