表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/70

俺のせいで事件名称が変わりました!

 佐藤と水野が足立が乗っていたというバイクから持ち主を捜索したが、バイクは一月前に盗まれたもので、持ち主の少年からも足立晃平という人物に結びつかなかった。


 九月からの新人組、大作りな目鼻立ちの加瀬かせ聖輝まさき巡査と栗色の長い髪をキャバ嬢のように盛った藤枝ふじえだたまき巡査によると、足立が行方不明だと通報した金田少年達から話を聞き直したが、誰もが足立が誰かの友人だと思い込んでいたと、所轄の報告と同じ結果であった。


「ていうかさ、その程度の仲なら、靴のことだって詳しいわけないでしょ。足立自称の餓鬼が死体というか足を見つけて、気に入らないナンパ野郎をからかっただけじゃない?」


 藤枝の言葉に一同納得した。

 彼女は勘のいい刑事でもあるのだ。

 性格が最悪だが。

 しかし、藤枝は性格と口が悪い事を決して隠さない。


 そんな彼女が海外旅行の土産を俺達に配るとは思わなかった。

 トルコ土産のキナコ味の綿菓子のようなお菓子は玄人が好きそうだな、と俺は思いながらそのお菓子をありがたく食べたのである。


 玄人は洋菓子も好きだが、麩菓子や水羊羹などの方を好む。

 ああ、玄人。


 さて、俺が玄人に会えないまま、そんなこんなで行き詰まった足立晃平行方不明事件は、俺の活躍により身元不明少年少女遺体遺棄事件と名称を変えた。


 何の事はない。

 俺が二階に上がったら、腐った二階の床が一気に落ちたのだ。

 俺は下まで落ちなかったが、落ちた梁の一つが下の階の床板を突き破り、そこから大量のウジやハエ、ゴキブリに、死体を食う甲虫やらがバフっと溢れて、噴出した黒い生きている煙に俺は逃げ惑う事もできずに襲われたのである。


 そして黒い煙を生み出した床下には、確実に少女一名と少年二名の遺体らしき物が、ビニール袋に入れられてドロドロになった状態で埋められていたのが発見された。


 そんなものを調べなければならない羽目に陥った鑑識班に、特に主任に俺は凄い目で睨まれた。

 彼は玄人を恋慕する男でもあり、彼が俺を見る目は殺気しかないから、主任を除いた鑑識班メンバー達にさえ俺は殺気を向けられたが正しいかもしれない。


 皆に嫌われてしまった俺が幽霊屋敷にいた訳は、俺が自分勝手に此処に来たからではなく、無理矢理に連れ込まれたからだ。


 最悪の上司二人に。


 俺の余計な言い出しに基づいて百目鬼を呼ぶ前にと、翌日の早朝に楊達によって俺は現場に連行されたのだ。

 楊達も何も無い所で厄祓いの経を上げさせられた場合の百目鬼の怒り具合は想像できるようで、俺はそんな事が無い様にとのただの確認だ。


 恐ろしい物を玄人に確認させるわけに行かないし、恐ろしい物だったら、そんなものを玄人に見せたと百目鬼が怒り狂うのは想像するまでもない。


 しかし、ただの確認でありながら、家の前には鑑識班が控えていた。

 腕を組んだ鑑識班の主任は、そういえば、玄人の来る場所であるならば、どこにだって駆け付けるという玄人ストーカーでもあった。


「あの、かわさん、あれは?」


 楊は笑顔のまま、俺に行けと言う風に俺の背中を押した。


「大丈夫。お前が倒れたら百目鬼を呼んでやる。」


「止めを刺してもらえって?」


「それでもちびが手ぐらい握ってくれるでしょ。最後のチューとか。」


 楊の最後のセリフに、「行きます」と言い、ボロ屋に入り込むと、玄関からすぐにあるボロボロの階段を上がったのだ。

 髙はそんな危険な階段を呼ばれもしないのに上がるわけもなく、今回も下で微笑を顔に浮かべて俺に手を振っていた。

 俺は彼のその姿に、確実に髙は助けを呼んでも来ないだろうと確信した。


「教官、あんたはまっこと酷い人だぁ。」


 そうして二階にに上った俺に待っていたのが、前述の床の大崩落だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ