シルウェストレ
とりあえず本日二話目です。
今回も結構お気に入りの回ですね〜。
ネタバレしちゃうかもなので、初めて読まれる方の為に余計な事を書くのは止めておきまするw
ケンヤの心情の追加と、何か変だった言い回しの修正です。
ご意見ご感想よろしくお願いいたします。
北の森に入ってからかれこれ数時間、はぐれゴブリンを倒した事で調子に乗ったケンヤは、見つけたゴブリンを手当り次第倒していた。
その数なんと五十に手が届きそうな勢いだ!
二十匹ぐらいまでは数えてたが、途中から面倒くさくなって数えるのをやめた。
最初の五匹までは魔石回収時に吐く……
六匹目からはなんとか我慢出来る様になり、十匹超えた辺りからは流石に慣れた……今では鼻歌を歌いながら魔石を回収している。
今も倒したゴブリンの胸にナイフを刺し、魔石回収作業中である。
「いや〜、人間の適応能力って凄いね!」
ザクザクとナイフで胸を切り裂き魔石を取り出す。
数を伸ばせたのは二十匹ほどの集落を見つけたからだ。
集落を攻めた際、数匹に囲まれたりしたが、ゴブリンに傷を負わされるようなステータスはしていない。
それに何故か自然と身体が反応し、訓練もしていないのに達人のような剣技を披露していた。
訓練もせずに何故? 戸惑いながらも剣を振るっていたケンヤだが、途中からは面倒くさくなって考えるのを放棄……、元来のお気楽気質炸裂である。
恐らくだが、ゲーム内では高レベルの魔人達とも剣だけで戦ってきたケンヤ、現実世界で反映されるとそうなるのであろう。等と無理やり自分を納得させていたのだ。
そんなこんなで、一通り魔石の回収作業を終えたケンヤ。
「さてそろそろ帰らないと、その前に何処に川でもないかな? 返り血でベタベタだ……」
ゲームでは気にもしなかったが、血糊ってだけでも気持ち悪いのに、不潔で汚いゴブリンの血だ!
「病気になったりしたら大変だし…」
って、思っていたら……
……こっち
ん? なんか聞こえたような……
こっちだって!
辺りを見渡すが何も見つからない。
だがよく観察すると、斜め右方向の木の枝の一部がユサユサ揺れていた。
ん? 何かいるのか?
良く目を凝らすが何も見えない。
しかしその枝の一部から確かになんらかの気配を感じる。
あっ! そっか! コレじゃあ見えないよねえ、ちょっと待ってて!
揺れていた枝の上にうっすらと何がが現れる。
最初は薄く段々と存在感が増していき、とうとうハッキリとその姿を捉えることができた。
枝に乗っかり腕組みをする謎の存在。
「どやっ!」
めっちゃドヤ顔でケンヤを見下ろしていた……
全長は15~20cmぐらい? 黄緑色の髪の毛に人の様な形で、着ているのは髪の毛と同じ黄緑色の膝丈のワンピース、足元も同じ色のブーツ? を履いている。
その背中には半透明の羽が!!
フ、フェアリー? 妖精か? そんなんゲームには居なかったぞ!?
初めて見るその存在にフリーズしてしまう。
「なによ! 反応薄いわね! せっかく姿見せたんだから、なにかリアクションしなさいよ!」
なんかプンスカ怒ってます……
意思疎通出来る見たいだし、とりあえず話しかけてみよう。
「お前妖精か? 妖精なんて初めてみたからビックリしただけだよ」
なんて聞いてみたら、なんか更に顔を赤くして怒りだした。
「よ、妖精ぇ!? あんな羽虫と一緒にしないでよね!! あたしは精霊よ! 森と風のせ、い、れ、い!!」
精霊ね〜
「ほうほう! 精霊……妖精との違いってなに?」
「ぐっ!」
あ! 言葉に詰まった……
「と、とにかく妖精なんかよりずっと凄いの! 偉いの! カッコイイの!!」
……らしい。
「んで、精霊なのは分かったけど俺になんか用?」
「あっ! そうそう、あんた面白すぎだからついて行こうと思って! 良いでしょ? 精霊がついてるなんて自慢出来ちゃうよ! どやっ!」
どやっ! ってなに?
「ついてくる……てか何が面白いんだ? 俺ゴブリン狩ってただけだぞ?」
「だってさあ〜、ゲロゲロ〜になってて、その前はズコーって転んでてさあケラケラ」
…………
無言でロングソードを抜いて振りかぶる。
うん! 消滅させよう! 今すぐ消滅させよう! 瞬時に消……
「ちょ、ちょ、タンマ! タンマ! 剣を収めて! 忘れる! 記憶消去するから、とりあえずその殺気抑えてえ〜」
おっと! 思わず暴走しそうになった……精霊が剣で切れるのかどうかも分からんし、一旦落ち着こう。
ロングソードを鞘に収める。
「ふう〜、何今の殺気! 人間が精霊に恐怖を抱かせるなんて……あんた何者?」
「ただの戦士職の冒険者だよ」
ただしレベル90だけどね!
「ただの戦士? 確かにゴブリンと剣だけで戦ってたね〜 、なんかスキル使ってる風でもなかったし……ただ有り得ないくらい強かったけど……」
ずっと見てたのね……
「なあ、それより水場案内してくれね〜の?」
話しを逸らす意味でも訪ねてみる。
「あ! 忘れてた。てへぺろ」
てへぺろって……
「よし! 案内してあげる。あたしシルウェストレ! あんたは?」
「ケンヤだ」
「ケンヤね! では水場に向かってレッツラゴー!!」
レッツラゴー……ちょい引き気味でシルウェストレの後をついて行った。
シルウェストレに案内されてしはらく歩く。何やら水の流れる音か聞こえてきた。
「もうすぐだよ!」
早く早くと手招きする。
その姿に少し苦笑しながら歩いていると、小さい沢が見えてきた。
それほど水量は多くないが、身体や装備を洗うには十分だ。
早速装備を脱ぎ身体を洗う。
…………
「……なに見てんだ」
シルウェストレが両手で顔を隠してる……ただ指は全開に開いていた……
「み、見てないし〜! に、人間の男の裸なんて興味ないし〜!」
なんだかなあ……
精霊って皆こんななの? 神聖なイメージ持ってたけど、実物はそんなもん欠片も感じねえ……
精霊に少し残念な気持ちを抱きながら身体や装備を洗い終える頃、辺りはかなり薄暗くなり始めていた。
「ヤバイ! 早く森を出なくちゃ!」
流石に暗くなってから街に帰るとまた門番さんに叱られてしまう!
急いで装備を付け直し、足早に帰路に着こうとした所、後から焦った声が聞こえて来る。
「ちょっとちょっと! あたしを置いて行く気!?」
シルウェストレが急いで追いかけてきた。
「お前本気で俺についてくる気なの?」
「当たり前田のクラッカー! 絶対ついて行く!!」
意味わからん……
「多分ついて来ても特に面白い事なんて起きねえぞ? 俺は冒険者として成り上がろうなんて、これっぽっちも思ってないし、お気楽にこの世界を楽しみたいだけだからな!」
波乱万丈の人生なんて必要ありませぬ! ビシ
「問題ないよ! あたしがケンヤを気に入っただけだから!」
う〜ん……、精霊を連れた戦士……なんか色々厄介事に巻き込まれそうな予感しかしない……
ここは心を鬼にして……
「連れて行ってくんないなら、あんな事やこんな事ピサロの街の人に言いふらしてやる!!」
うぐっ!!
こいつ悪い子です……精霊って名の悪魔じゃないかしら……
「それに戦士と風の精霊って相性良いんだよ? 知ってた?」
知りません……だってソードマジックファンタジーに精霊なんて居なかったし……
「まあそれはおいおい説明するとして、断られても絶対ついて行くからね!」
う〜ん……、四十九年間ここまで誰かに気に入られた事ないからなあ……自分でも戸惑っているけど別に嫌な気分ではない。
人付き合いは面倒臭くて苦手なはずなんだが……あっ! 人じゃ無かった!
まあ、ああは言ってるけど、直ぐに俺に飽きて森に帰りそうだし、ここは了解してあげよっか!
「分かった! そこまで言うならついておいで、そんで飽きたらいつでも森に帰っていいからな!」
仕方なく折れてやる。
「やっふぃ〜!! じゃあ改めて、ケンヤ宜しくね」
手を差し出して来た。
「こちらも宜しくな!」
少し照れ隠しで苦笑しながら人差し指を出した。
俺の人差し指をシルウェストレの小さな右手が掴んで握手をする。
お互いなんか恥ずかしくなって少し顔が赤い。
「あっ、やっべっ! 早く帰らないと! シルウェストレ、急いで街に帰るぞ!」
「了解!」
ケンヤとシルウェストレは急ぎ足でピサロに向う。
暗くなりかけてる森の中、ズドンと言う音の後にケラケラと笑い声が響く。
ケンヤとシルウェストレ、今後長きに渡り相棒となる二人の出会いであった。
最後の最後までケンヤと一緒にいるシルの初登場!
前にも言いましたが、やはり感慨深いものがありますな。