考察
今回も少しの修正と、ケンヤがなぜ鈍感なのかの説明文の追加です。
「知らない天井だ……」
在り来りな表現だけど知らない天井だ。
ゆっくり身体を起こす。
周りを見て昨晩宿屋に泊まった事を思い出した。
「…………やっぱり夢じゃなかったな」
窓からの景色はまだ薄暗い、とりあえずベッドから降り、部屋の明かりをつける。
この世界電気はないが、蛍光灯の様な魔道具がある。
明るくなった部屋の片隅に、細長い全身鏡を見つけた。
何気なく鏡の前に立つ。
その鏡に映った自分の姿に驚愕する!
「誰!? このイケメン君……」
改めて言おう! 驚愕である!
短く切り揃えた黒髪は、転移前の自分の物だ。
ただそれ以外が全くって言って良いほど別人である。
クッキリ二重に意志の強そうな目、美しい鼻筋、キリリと引き締まった口元、身長も本来の自分とは違いかなり高そうだ!
これ、俺がキャラメイクしたアバターだよな……
ゲーム内で使っててたキャラが現実になると、ここまでイケメンになるのねえ……
なんとなく宿で受付してたオリブちゃんが、赤くなってた理由が理解できました!
もし転移前の自分が、今の自分にニコって微笑みかけられたら……ドキドキしてしまうかもしれん!
そんな趣味はないですよ! はい。
「オリブちゃんて十歳前後だよな……」
元アラフィフの男からすればほぼ孫である! 幼女趣味はございません!
とはいえ中身はアラフィフのおっさんだし、少々見た目が良くなったとはいえ、この世界の女性から急にモテ出すとは思えない。
とりあえず容姿の件は後回しだ! 現在の装備について考察してみよう。
剣は外して寝たけど、他の装備は着替えるの面倒臭くて、そのまま寝てしまってたから昨晩のままだ。
ふむ……、やはり戦士を選択した時の初期装備。
頑張って寝る間も惜しんで手に入れた装備やアイテムの数々、まさか転移と同時にリセットされた?
泣くぞ! 泣いちゃうぞ!
そこでふと思い出す。
「アイテムボックス!!」
急いでステータスボードを開き、アイテムボックス内の一覧を開く。
「あった!」
ちゃんと一覧に賢也が手に入れた装備やアイテムの数々が記載されていた。
「これちゃんと取り出せるのか?」
試しに最後に使っていた超強力な武器を取り出してみる。
「うおー! ちゃんと出たよ出た! 斬魔刀!!」
斬魔刀
高レベルの戦士用の武器で、レベル80以上の戦士でないと装備出来ない武器である。
単純な攻撃力も凄まじいが、斬魔と言うだけあって、物理攻撃耐性を持つ魔物や、ゲーム終盤や裏ダンジョンとかに現れる強力な魔人と呼ばれる者たちにもダメージを与えてくれる、いわゆる魔特化武器である。
元々の攻撃力が凄まじいので、魔特化と言えど対人や対物にも優れた武器であり……etc
長くなるので省略します……
良く考えたらアイテムボックスから、普通にお金取り出せてたよな……テヘペロ
斬魔刀をアイテムボックスに戻し、ついでにステータスも確認。
ケンヤ レベル90
種族:ヒューマン
職業:戦士
HP:935
MP:75
攻撃力:525
防御力:637
魔力防御:255
スピード:152
ラック:105
スキル
攻撃力upLv10 防御力upLv10 アイテムボックス
所持金2,432,800G
…………これ明らかにチートだよな……まあ戦士職だから魔法は使えませんが。
スキルも攻撃力と防御力が上がるだけだし。
最初戦士職にもMPがあるし、レベルが上がったら凄いスキルが使えるのかも? なんて思ってたけど……いくらレベル上げてもスキル取れないから運営に問い合わせした所。
運営
このゲームの世界ではどんな人種でも大なり小なり魔力を持つという設定で、その為魔法の使えない戦士でもMPが存在します!
レベルが上がると戦士も、少しづつ最大MPが上がって行きますが、それは生活に必要な魔石に魔力を溜める為だけのものであり、戦闘に使う為のMPではありません!
と、言う回答……なんか納得出来るような出来ないような……
変な所でリアル感出そうとしやがって!
話しは逸れたけど、チートには変わりない。
今後色々気を付けないと。
もし最後に使ってた装備そのままにピサロに来ていたら多分大騒ぎになってたかも……
初期装備で転移させてくれた神様? 創造神? って、結構空気読めるヤツ?
ところで今のこのピサロの冒険者のレベルってどれぐらいなんだ?
まあ最初に来る街だし、そんな皆レベル高くはないだろなあ。
ただもしかしたら、ゲームと若干の違差もあるかもしんない。
よし! 今日はそこら辺の情報収集含め、冒険者ギルドに行って冒険者登録しよう!
「身分証は必要だしな!」
ぐるぐる……
その前に腹ごしらえだ! 外も大分明るくなって来たし、朝食の準備も出来てるっしょ!
軽く身支度し、部屋を出て一階の食事処に向かう。
食事処に入ると昨晩のオヤジと違い、ふくよかなおばさんが声がをかけてきた。
「おはよう、あんたが昨晩来たイケメンさんかい? うちのオリブが昨日から大騒ぎでさあ!」
「ちょっ! お母さん!」
オリブが真っ赤顔でおばさんを睨んでる。
どうやらオリブのお母さんのようだ。
「イケメンかどうか分かりませんが、昨晩からお世話になってるケンヤって言います。しばらくこの宿にお世話になるつもりなんで、宜しくお願いします!」
イケメンって言われた事や、オリブちゃんの態度になんとなく恥ずかしくなって、ほほをポリポリかきながら頭を下げる。
「あらあ、若いのに礼儀正しい子だねえ、私はジータよ、よろしくね。じゃあ早速朝食にする? オリブ朝食一人前運んできて」
はーいと返事をし、真っ赤な顔で逃げるようにオリブは厨房にかけていった。
とりあえず適当に空いてる席に座り、食事が運ばれてくるのを待つ。
しばらくするとオリブが食事を運んでくる。
テーブルの上に食事を並べたオリブは、コチラをチラッと覗き見ると、何故かまた真っ赤になり走り去って行ってしまった……
い、いや、さっきも言ったが別に幼女趣味はな無いんですが……なんか切ない……
特にここの人達と親しくしようとは思わんが、幼女が逃げる様に去って行くのは……
…………オジサン泣いちゃうぞ。
ゲームのイケメンアバターになってしまった事は理解したケンヤだが、今の自分の容姿がどれ程女性に影響を与えてしまうのかまでは考えが及ばない。
女性に ” モテる ” なんて経験は無いのだ!
一応結婚はしていたが、何となく付き合い始め、なんとなく結婚した次第である。
その奥さんにも愛想を尽かされ出ていかれたケンヤからすれば、少しばかり容姿が良くなろうと女性にモテるなんて思えなかったのだ!
しかしケンヤは気付いていない! 今の自分が超絶イケメンだという事に! しかもレベル90という実力!
中身がおっさんだからと、モテるはずが無いと、女性の気持ちに全く気付かないケンヤ……
今後、超絶鈍感な彼に振り回されるこの世界の女性陣の姿が目に浮かぶ様である……
まあ振り回されるのは彼だったりしなかったりするのだが……
それはさて置き、朝食を済ませたケンヤはオリブに避けられた悲しみに少し涙目で、冒険者ギルドに向かうのであった。
最後のくだり、元の作品を読み返すと余りに恥ずかしく、むず痒くなってしまった為削除しました……
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