ローレンス伯爵
評価のお星様、復活して参りました!
評価して下さった方々、本当にありがとうございます! 感謝━━━(≧∀≦人)━━━感謝
投稿一日遅れてしまいました……スミマセンm(_ _)m
さて、ようやく本編の再開です。
元の作品を読んだ事のある方は、デイル君のお話しを挟む事により、少し見え方が変わるかも知れません。
ご意見、ご感想お待ちしておりますm(_ _)m
ケンヤ達がダンジョンに篭っていた頃、ピサロの街に一台の馬車と、それを取り囲むように五十人近い騎馬が入る。
街の人々は何事か? と、その一団を見ようと大通りに集まった。
その様子を馬車の中から覗う三人。
一人はソフィアの父であるローレンス伯爵、その右向かいに近衛騎士団から派遣されたロキ、左向かいに軍から派遣されたサザンが座る。
ロキもサザンもニメートルを越す大男だ。
そのニ人が並んで座っていても窮屈な感じはなく、むしろ普段使っている馬車と比べ格段に居心地は良かった。
今回使っている馬車は伯爵家の物ではない。
王家の紋章の入った豪華な馬車に三人は乗っていた。
世界規模の異変! それに対応出来るかもしれない少年。
その少年や周りに、王家からの正式な使者と分からせる為、わざわざ王家の馬車を貸し与えたのだ。
貴族達は良い顔をしなかったが、王のルイスはローレンス伯の言葉を重く受け止めていた。
ピサロの街の様子を見渡すロキ。
「ピサロとはこの様に賑わっている街なのですか! 人の数だけで言うと王都とさして変わらない様な……」
サザンも同様の意見のようで、
「ロキ殿の言う通り、辺境の街がこれ程賑わっているとは……」
二人の話しを聞きローレンス伯が応える。
「どうやらケンヤなる人物がこの街を訪れてから、大量の魔石が売りに出されているらしい。その魔石を求め商人達が集まる。商人が集まれば色々な物がこのピサロに持ち寄られる。それを求めてまた人が集まる。今ピサロは稀に見る好景気に見舞われているようだ」
成程と頷く二人に、ローレンス伯は更に続ける。
「最近では帝国でしか手に入らない様な、上位種の魔石まで売りに出されているらしい。恐らく異変後のダンジョンからであろうな!」
ロキもサザンも、今回のピサロ訪問はあまり乗り気ではなかった。
上からの命令で仕方なく訪れたのだ。
表向きの理由は攻略済のダンジョンにて、兵士達の戦力の底上げ。
だが、上からはケンヤなる人物の評価をする様言付かっている。
正直、たった一人で異変後のダンジョンを攻略しただのは眉唾物と二人は思っていた。
Aランク冒険者、ソフィア様の功績が大きいのであろう。
ケンヤと言うヤツも恐らくソフィアと一緒にダンジョンに入って、それなりにはソフィア様のお手伝いをしたのかもしれないが……
民衆と言うものは目新しいヒーローを望む傾向がある。
尾ヒレが付いたウワサではないか? ニ人はそう思っていた。
だが目前の光景……ローレンス伯はケンヤと言うヤツのおかげで、街が潤ってる様な言い方をする。
一人だけの功績ではないと思うが、これほど街を潤す存在……
二人の中でケンヤの評価が少し上方修正された。
領主邸に入り、一通りの堅苦しい挨拶を終えると、ローレンス伯の表情が和らぐ。
「久しいな、ネイス・ダグラス卿」
「ですな、ローレンス伯様。後、ここではネイスで結構です」
ネイスとローレンス、二人は王都貴族院での同窓生だ。
伯爵家と男爵家、立場の違いはあれど、学生時代から交流は深く、それは今も変わらない。
「今回の件も他の貴族が来られて、ピサロを引っ掻き回さぬ様、ローレンス様が配慮して下さったのでしょう?」
「そなたや、ギルド長、ソフィアからの報告で、ケンヤなる人物の人となりは理解している。中々厄介な人物の様だな……下手に手を出し我が国と敵対、もしくは他国に取られる訳にはイカン。ピサロの為もあるが……まあ国の為だな」
その話しを聞き、ロキが問う。
「失礼ながら、そのケンヤなる人物。それほどの者なのでしょうか?」
サザンも納得しかねてるい様子でロキに続く。
「私も噂しか知りませんが、正直信じられません。色々な噂……真実なのでしょうか?」
「ふむ、その辺の話しを直接見ていたソフィアに聞いてみたいのだが……ソフィアは今何処に?」
ネイスはソフィア付きのメイドを呼び、ソフィアの動向を聞く。
そのメイドは伯爵の前で緊張しながら応えた。
「そ、ソフィア様は今朝早くから北の森のダンジョンに向かわれました。なんでもケンヤ様がピサロの主要冒険者達を連れて、攻略後のダンジョンでレベル上げを行うとか。それに同行すると仰っておられました」
頭を抱えるローレンス伯。
「あのお転婆娘は……誰か直ぐに帰って来るよう伝えてくれ……」
その言葉にネイスは首を振る。
「ダンジョンは北の森のかなり深い所にあります。森の奥にはオーガ等の強力な魔物も居まして……ギルドの主要メンバーがダンジョンに入っている今、そこまでたどり着ける者はこの街にはおりません」
するとロキが鼻息を荒くし、
「なら私の部下に行かせましょう! 数人で向かわせます。普段から厳しい訓練をしているもの達です。オーガならなんとかなるでしょう」
サザンもロキの意見に乗る。
「では私の部下も! 皆、久々にソフィア様に会えるのを楽しみにしておりましたから」
二人からの提案にローレンスは礼をいい、ロキとサザンの部下にソフィアの事を任せる事にした。
「お父様! いったい突然どうしたと言うのですか! ピサロに来るなんて、私聞いておりませんでした!」
ボス部屋までケンヤについて行くつもりでいたソフィア、父に邪魔されおかんむりである。
その様子にローレンスは溜息を吐く。
「文は送っておる。どうせまた封も切っておらぬのであろう?」
「はい。ローレンス様からの文は届いております。ソフィア様はそれを後で読むと言い、封も開けず熟練値上げに精を出しておられました!」
「ちょっ! デイル!」
ソフィアは慌てるがもう遅い……ローレンスは更に深い溜息を吐く。
「その事はもうよい! ケンヤと言う人物の事だ。色々報告は受けておるが、全て事実なのか?」
ケンヤの話しになり、ローレンス伯と共にソフィアの帰りを待っていたロキとサザンも耳を傾ける。
ソフィアはケンヤとの出会いから、北の森での決闘、異変後のダンジョンで助けられた事、今日もダンジョンでオークロード三体を簡単に倒してしまった事など、こと細かく説明する。
話しを聞いてくうちに三人はどんどん顔色が悪くなっていった。
そしてソフィアはひと振りの美しい剣を抜き放つ。
「先程、決闘のお話しはしましたよね? その時私の剣を折ったお詫びとして、この剣をいただきましたの! 折られた剣も表面にミスリル処理を施した中々の一品だったのですが、この剣に比べれば玩具みたいな物ですわね!」
その剣をウットリと見つめるソフィア……
「そ、その剣私にも見せて頂けますか!」
ロキはその素晴らしく美しい剣をマジマジと見ながらソフィアに尋ねる。ソフィアはその剣を自慢したかったのだろう、嬉嬉として斬れ味や使い心地を説明しなからロキに剣を渡す。
「す、素晴らしい!! この剣もしやフルミスリルでは?」
その言葉に目を丸くするサザン。
「フルミスリルだと!! ロキ殿、私にも見せてくだされ!」
ロキはサザンにミスリルソードを渡す。
「こ、これは……私やロキ殿が使っている剣……同じミスリルだが、この剣と比べれたらまるでメッキですな……、どうすればこれ程の剣を手に入れられるのだ?」
サザンの言葉にソフィアはウフフと意地悪な表情を浮かべる。
「ケンヤさんはそれと同じミスリルソードをニ本、二刀流でお使いになってます。最低でも私に頂いた物を含め三本所持していた事になりますわ! それに恐らくですが、この剣以上の物もお持ちだと推測しています」
「この剣以上……」
ニ人共固まってしまった……、固まっているロキとサザンにローレンス伯は「ゴホン」と咳払いした後、
「私には剣の事はよく分からんが、素晴らしく美しい剣と言う事は分かる。それでその剣の価値、どれ程の物なのだ?」
ローレンス伯の問にロキとサザンは少し悩み
「そうですな……この剣一振りで、このピサロの領主邸が建つかと……」
ロキが応え、サザンも悩みながら口を開く。
「正直、私もフルミスリルの剣など初めて見たもので、何とお応えしたらよいのか……、ただ間違いなく三本の剣だけで冒険者などする必要なく、一生遊んで暮らせるかと……更にこれ以上の剣を持っているとなると……」
「なるほど、それ程のものか! だとすればケンヤをこの国に取り込む場合、まず金銭等で釣るのは難しそうだな。権力欲の様なものも無いと聞く……では女はどうだ? ソフィア、そのほうケンヤと懇意にしておるのであろう?」
実の娘に何とも応えずらい質問をする。
それにはソフィアではなく、デイルが応えた。
「ローレンス様、ケンヤ殿はソフィア様に全く興味はございません!」
「そ、そんな事、ハッキリ言われなくても分かってるわ!! い、今は興味無いかもしれませんが、必ず落としてみせます!」
ロキとサザンは驚きを隠せない!
ソフィアと言えば、近衛騎士団や軍の間では憧れの存在である!
アイドルと言っても良い。
ソフィアが通るだけで皆見とれて訓練にならない程だ。
そのソフィアに興味を持たない? ソフィア様自身は驚きだがケンヤに惚れている様……
もしかしてケンヤはそっち系なのか?
ニ人の考えを察知したのかデイルは首を横に振る。
「お二人のお考えは違っております。ケンヤ殿にその様な趣味はございません。恐らくですが、今は弟子達を鍛える事に夢中になっている様子ですね。決して女性に興味が無いわけではありません」
ローレンス伯はデイルに問う。
「ならデイルよ、ケンヤをこの国に協力させるのに、何か良い考えはあるか?」
デイルは溜息を吐く。
「ありません……ケンヤとは本当に厄介な方で……興味のあった事でも此方から提案すると、途端に興味を失うような方でして……ピサロのギルド長もよく頭を抱えています。変に裏で画策するより、直接お会いになる方が良いかと……」
それにはソフィアが口を挟む。
「ですけどケンヤさんは多分しばらくダンジョンから出てきませんよ? 前回もダンジョンに入ってからまるニ日出てきませんでしたから。今回は更に長く居るようでしたし」
「「「だ、ダンジョンにまるニ日!?」」」
ローレンス、ロキ、サザンの声がハモる。
「ええ、父上達がいつまでピサロに滞在するのか存じ上げませんが、一日ニ日では出て来ないんじゃないかしら?」
ローレンス伯は目を白黒させながらも
「今回は国王の勅命を受けておる! ケンヤを説得するまでは王都には帰れん! いつまでも待つぞ!」
ロキとサザンも同様のようで、
「私達もケンヤなる人物に興味がございます。それにダンジョンで戦力の底上げもしなくてはなりません」
三人共、覚悟を決めてピサロに来たのだ。
だか…………
…………まさか一週間も待たされるとは
ローレンス伯、ロキ、サザン、ケンヤの異常さの一端に触れたのだった……
一波乱ありそうですね。