負け組の中年男
元プロローグのお話しにタイトルを付けて第一話としました。
少し説明を付け加えただけで、殆ど元のお話しと同じであります( ̄^ ̄ゞ
朽ちかけたアパートの一室、ゲームのコントローラーを右手に持ち、左手には缶ビールを握る一人の中年男性。
佐藤賢也四十九歳、バツイチ、独身、職業アルバイト、月収十万と少々……
所謂負け組である。
三十代半ばで長年勤めてた会社がまさかの倒産。
一応それなりに貯金はしていた為、どうせならと一念発起! 以前から憧れてた自分の店を持ちたいと起業するも僅か数年で店を畳む事に……
特に資格もない四十過ぎの中年男性に、まともな仕事など見つかるはずもなく、現在の職場でしがないアルバイト生活を送っている。
ちなみにだが、店を潰した際に奥さんは離婚届を置いて出て行ってしまった。
何となく結婚までしてしまった奥さん、最初は賢也の優しさに惹かれもしたが、余りにいい加減な性格、お気楽、またそれまで興味があった事柄も、此方から提案すると突然興味を失うという気難しさ……我慢の限界であった。
奥さんに愛想を尽かされても仕方がない……
そんな彼だが実は今の生活をかなり気に入っていたりする。
元来のお気楽気質(だから店を潰してしまったのだが……)人生なるようになる! がモットウ。
まあ現在の日本ではアルバイトでもとりあえず働いてさえいれば食ってはいけるし、独身になり責任感からの解放! むしろ以前より清々しく見える。
負け組だが……
そんな彼の唯一の楽しみが、缶ビールをチビチビ呑みながらプレーする超王道オンラインRPG
【ソードマジックファンタジー】
なんてチープなタイトル……、思わず突っ込んてしまった彼だが、プレイした途端どっぷりハマってしまった。
よくある剣と魔法とモンスターの世界、オンラインでありながら個人プレーも問題なくでき、昔ながらの往年のRPGを彷彿させた。
ゲーム内で知り合って仲間たちとパーティーを組む事も普通に出来るのだか、彼は単独プレーに拘った。
なぜ? 単純に人付き合いが面倒臭いから。
以前から彼は人付き合いが苦手で、サラリーマン時代も誰かと呑みに行くでもなく、一人でゲームを楽しんでいた。
別に人付き合いが出来ない訳でもないのだが、先程も言った様にただ単に面倒くさいのだ……
そんな彼、今日も一人黙々とレベル上げに励む、缶ビールをチビチビ呑みながら……
『ピロローン!』
モニターから軽快なサウンドが流れる、キャラのレベルが上がったのだ。
「おお! やっとレベル90かあ、長く険しい道程であった……」
感慨深気に腕を組みウンウンと一人で感傷にひたる賢也……何故か背中に哀愁が漂っている……
手に持つ缶ビールの残りを一気に流し込む。
「さて、とりあえずレベル上がったしそろそろ寝るか」
本日の作業終了とばかりログアウトしようとしたその時、一瞬くらっと目眩が……
「なんだこれ? 呑みすぎたか?」
しばらくすれば落ち着くか? 治まるのを待っていたが一向に治まってくれない。
おいおい、コレ……まじにヤバいやつかも?
どうする事も出来ずどんどん酷くなる……
このまま死ぬ? マジか……まあ特に今死んでも……、ろくな人生じゃなかったなあ……次生まれ変わるとしたら、もう少しまともな生き方したいなあ……
そして意識が途切れた。
こんな男と結婚……
奥さんお疲れ様でしたm(*_ _)m