新たな出会い
今回もあまり修正しておりません。
数字と少し言い回しだけであります。
バサン捕獲成功でのんびり丘を降り、ピサロの帰路につくケンヤとシル。
「流石に見習いの仕事だけあって楽勝だったな!」
ケンヤの言葉にコテり首を傾げるシル。
「ケンヤ毎回楽勝だよ?」
そ、そうかしら……
「けど、これで初依頼は達成だな! 冒険者らしい仕事をしてしまった」
感無量である。
俺が感動に浸っている最中、シルは目を細め、遠くを見つめて指をさす。
「ケンヤあれ!」
シルが指差す方角には……男女二人組(パーティかな?)がスライム十数匹に囲まれていた。
……フラグ回収……中学生ぐらいかな?
男の子の方は戦士系の職業、女の子の方は魔術師だ。
男の子が剣でスライムを弾き、スライムの動きが止まった所を、女の子が魔法で仕留めていた。
なかなか良いコンビだな! ただスライムの数が多過ぎて捌ききれてない。
「シル、手伝った方が良いと思うか?」
「そだね〜、聞いてみたら?」
俺も軽いけどシルも中々だ。
近づいて行き「おーい」と声を掛ける。
「手伝おうかあ?」
「えっ!」
驚いたのか此方に視線を向け、固まってしまう二人。
おいおい……その状態で固まっちゃあ不味いっしょ……
男の子はハッと我に返り
「お、お願いします!!」
了解だ! すぐさまダッシュ! 流石にデコピンはマズイと思い、腰からロングソードを抜く。
ロングソードの一振りで数匹のスライムが弾け魔石に変わる。
次の一振りでほとんどのスライムはいなくなってしまった。
男の子と女の子はあんぐり口を開けて唖然としている。
「怪我とかしていない?」
俺が聞くと二人は我に返り
「あっ、ありがとうございます! 助かりました」
ウンウン、ちゃんとお礼を言える子はエライ!
「俺トオルっていいます。こっちは双子の妹でサラです。見習いの冒険者をしてます」
二人とも栗色の髪に栗色の瞳、若干トオルの方が背が高い。
ツンツンの短髪にケンヤと同じ様なレザーアーマー(但しケンヤの装備より格段に安っぽい)、右手にはケンヤが持つロングソードよりも短いショートソードを持ち、左手に小さ目のバックラーを装備している。
妹のサラの髪型はいわゆるおカッパで、首の辺りで綺麗に切り揃えられており、前髪は眉の辺りでパッツン、魔道士がよく着る様なローブ姿で、手には先に小さな宝玉が付いた杖を持っていた。
「あたしシルウェストレ! シルって呼んでいいよ! ビシっ」
俺より先に自己紹介しやがった! まあ、あの変な名乗りしなかっただけでも良しとするか……
「俺はケンヤ、冒険者としては俺も新人だよ」
すると二人は目を顔を見合せた後、キラッキラの視線をケンヤに向ける。
「やっぱり貴方が今、ギルドで話題の新人ケンヤさん!!」
そ、そんな話題なの? 目で訴えるケンヤ……
トオルは早口で応える。
「そりゃ噂ではスライムをデコピンで倒したとか、冒険者登録初日に北の森でゴブリンやオークを一刀両断とか、色々ですよ!」
確かに色々やらかしてる……けどオークは初日に倒してません!
「極めつけはその精霊さんですね! 私、精霊っておとぎ話の中だけの存在かと思ってました」
……俺も思ってました。
「ケンヤさんって普通の戦士って聞いたんですがホントですか?」
するとシルが
「そだよ! ふっつうにめちゃくちゃ戦士! ってか戦士の中の戦士?」
シルやめなさい……
「うおーっ! 戦士の中の戦士っすか!」
それどっかで聞いた事のあるやつだからやめようね……
恥ずかしくなってきたし……話題変えよう。
「そんで、あんなにスライムに囲まれる前に、なんで逃げなかったんだ?」
少し悔しそうにトオルが答える。
「イキナリあの数に囲まれたんです……多分これのせいです……」
首を落とし、足を縛ったバサンをトオルは三匹背負っていた。
サラも少し青い顔をしている。
「私達、バサンの丘にこれまで三回程捕獲に行ってるんですが、こんな事初めてで……もしケンヤさん達が来てくれていなかったと思うと……」
なるほど! まだ経験も少なく、魔物に囲まれるかも? とは思わなかったんだな。
バサンなら簡単に捕獲出来るから、二人だけで丘に行ってバサンは捕獲(死体だけど……)出来たが帰りに襲われた訳だ。
ゲームでも画面いっぱいにスライム現れることもあったし、そりゃ囲まれる事もあるよねえ。
「多分血の匂いに誘われて来たんだろな、血抜きしていても匂いはするだろし」
それらしい事を言ってみる。
ホントかどうかは……知らん。
「やっぱりそうですか……俺達だけで丘に行くのはまだ早かったようです……もう少しレベル上げないと」
だねえ〜、レベル上げ頑張ってねん! なんて思ってたら
「ケンヤが鍛えてあげたら?」
こ、コラ! シルさん、何言ってらっしゃるの?
「だってえ〜、だってえ〜! ケンヤが鍛えてるトコ見たい!!」
こ、この子達を強くしたいんじゃないんだ……
シルの発言を聞き、トオルとサラは期待に胸を膨らませ、またキラキラした視線を俺に向けて来た!
や、やめてくれ〜、そんな希望に満ちた純粋な目で俺を見るな! 汚れきったオジサンにはオジサンには……
「二人共、後ひと押しだよ!」
シル……そんなに見たいか……
ズサッ!
二人共土下座してるよう……そしてシルが悪い顔をしているよう……
この世界にも土下座文化があったとは……
土下座した二人が上目遣いで俺をみる。
みる……
見る…………
観る………………
「分かった! 分かりました!! しばらく面倒見ます!」
二人はパッと顔を顔を上げ
「「よろしくお願いします!!」」
……
「よろしく……」
その様子にシルは
「じゃあ、あんた達今日からケンヤの弟子ね! ってことは、あたしの方がセンパイだから、あたしの事はシル姉さんと呼びなさい!」
お前いつから俺の弟子になった!
トオルとサラは真面目な顔で
「「シル姉さんよろしくお願いします」」
…………素直すぎる。
「シル……本気にしてんじゃねえか! 悪ノリし過ぎ!!」
シルがお腹を抱えて笑っている。
最初戸惑ってた二人とも釣られて笑いだす。
それを見ていた俺は思わず苦笑。
「とりあえず街に帰るぞ!」
「「「はーい」」」
最初このゲームに似た世界、一人気ままに楽しむつもりが、シルが仲間になりそしてまた今日二人弟子? が増えた。
(ゲームでも人付き合い苦手で、ずっと単独だったんだが……)
面映ゆい気持ちでビザロに帰るケンヤだった。
トオルくんとサラちゃん登場!