閑話~マリン視点~
ブックマークありがとうございますm(_ _)m
日付け変わる前に、今回の修正終わらせたかっのですが……間に合いませんでした……
冒険者ギルドの会議室、深夜だと言うのにその部屋には十数人の女性職員達が集まっていた。
その中の一人がホワイトボードの前で口を開く。
「ではケンヤ様をこっそり見守る会、第二回定例会議を開催いたします」
皆がパチパチと拍手。
ちなみに、第一回会議はケンヤがギルドに現れた初日の夕方、急遽開催されたようだ。(まだギルド営業時間にも関わらず……)
会議という名のメイを弄り倒す会だったようで、この時からメイは何かが吹っ切れたらしい……
そしてその夜に第二回会議……皆何か事件があったのか? ワクワクドキドキで集まった次第である。
「ええ〜、今回議長を務めさせていただくサチです。皆さんよろしくお願いいたします」
サチがぺこりと頭を下げる。皆、再びパチパチと拍手。
「では先ず本題に入る前に、皆さんに報告があります。我々ケンヤ様をこっそり見守る会に、新たなメンバーが加わりました!」
皆が「おお! 流石ケンヤ様」と、ザワザワし出す。
サチがそれを手で制し
「では新たなメンバーに入って来て頂きましょう。どうぞ入って来て下さい」
ガチャっ! 会議室の扉が開き、かなり大柄な女性が入って来た。
「では紹介しましょう! この街唯一のCランク冒険者マリンさんです。皆さん拍手を」
パチパチパチ
「これは心強い!」
「あのマリンさんが!」
「流石ケンヤ様!!」
等など、皆が口々に喋り出す。それをまたサチが手で制し
「マリンさんはそちらの席について下さい」
マリンはサチに示された席に着席する。
(もしかして私、早まったかもしれない……)
マリンは冷や汗をかき、今この場にいる事を後悔した。
つい先程ケンヤと出会い、彼の事が気になっていたので、副ギルド長のメイにケンヤの事を聞きに行ったら、この会に参加する様に言われたのだ。
そのメイはサチの隣に座り、にっこりマリンに微笑みを向けている。
(い、いつものクールさがない……あんな楽しそうな副ギルド長初めて見た!)
マリンは目を丸くし、メイの普段とのギャップに少し怯えてしまう……
「さて、本日ギルドから出発したケンヤ様は、少し遅い時間ですが無事オリブの宿に戻った様です」
また皆が「おお!」っとざわめく。
(なんだ! 冒険者が探索して、少し遅い時間に帰ってきただけで、なんで「おお!」なんだ?)
「では詳細に説明いたします。ケンヤ様はピサロの街を出た後、数匹のスライムに遭遇したそうです」
「おお!」
(だから何が「おお!」なんだ? そりゃ外歩いてたら、スライムぐらい出くわすだろ! ってかギルド内に居る職員が、なんでそんな事知ってるんだ?)
「さらに驚くべき事に、ケンヤ様はそのスライムをデコピンで倒していったそうです!!」
コレには皆が目を点にした。マリンもまさかと思う。
「確かな情報です。我々が依頼したDランクの女性冒険者ナナイさんの証言です」
(ぼ、冒険者雇って何してんだ! ってかナナイって確か職業シーフだったな、専門家じゃね〜か!)
ナナイはすっと立ち上がり証言をする。
「はい! 確かにこの目で見ました。かなり遠くからの隠密行動でしたが、私のスキルなら確認する事が出来ます。数匹のスライムを全てデコピンで倒して行く姿に、私もう私もう……ああケンヤ様っ!」
(ダメだ! 昇天してる……ただデコピンって……私にも無理だぞ? 本当なのか? だがナナイは信用出来る冒険者だ……やはりあの時感じた力は本物だった様だな!)
「ご、ごほん失礼いたしました。数匹スライムを倒し、ケンヤ様はそのまま北の森に入っていきました」
報告を終え、まだ少し興奮気味のナナイ。
「ハアハア……」
荒い呼吸を整えながら席に着く。
「ナナイさんありがとう」
サチはナナイに労いの言葉をかけて皆に問う。
「さてここまでの報告で何か質問はありますか?」
一人が手を上げて質問する
「あの〜、スライムをデコピンで倒すって可能なんですか? スライムって物理攻撃効きにくいですよね?」
(確かにスライムはある程度のレベルがないと物理攻撃で倒すのは難しい、パーティに魔術師がいれば低レベルの魔法で簡単に倒せるが、私が剣で倒せる様になるまで暫くかかったな。ましてやデコピンなんて……)
「Cランクで職業重戦士のマリンさんには可能でしょうか?」
……
「試した事がないんで……だか多分無理だな」
(そんなこと誰もした事ないだろ!)
「なるほど! では現時点でケンヤ様はマリンさん以上に実力があると?」
サチの質問に応える。
「ああ! 間違いないと思う。肩がぶつかった時も、なんとなくだが物凄い力を感じた」
マリンの応えに何故かザワつく室内。
「ケンヤ様と肩が……羨ましい……」
(そっち! そっちなの?)
「そうですか……、ケンヤ様と肩が……羨まし……ご、ゴホン! なるほど、ケンヤ様はとてつもない力を秘めていると! そしてその力をケンヤ様は隠しているって事でよろしいですか?」
(サチ……少し心の声が漏れてる……)
すると副ギルド長のメイが発言をする。
「確かにケンヤ様は、ご自身の力が公になる事を望んでないように思われます。初登録の時も、ご自身のレベルを聞かれなかった事に安堵していたようでしたから」
(ふむ、何故隠すのか疑問だが、大きな力を持つってことは、色々と気苦労も多いのだろう。私程度では理解するのは難しいか……何故か寂しいな……ん? 寂しい? 何を言ってるんだ私は!)
「では我々見守る会のメンバーは、ケンヤ様がそのお力を隠されてる間はご協力致しましょう! よろしいですか」
メンバー皆が「はい!」と返事をし、私も何故かウンウンと頷いていた。あれ?
「では次の報告です。少し空が薄暗くなってきた頃、ケンヤ様は北の森から出てこられました。そしてなんとケンヤ様は妖精の様な者を連れていたそうです!」
またまた皆の目が点になる。
「ナナイさんの報告では、その妖精の様な者はケンヤ様となにやら会話をしていた様なのです」
(あの時も何やら会話してて、私に気付かずにぶつかったんだったな)
「あの〜、妖精って喋れるですか?」
一人の職員が質問をする。
「今までその様な報告は受けておりません。妖精はそれ程珍しくはありませんが、臆病な生き物で知性は低いとされています」
(確かにその認識だな)
マリンもそう思う。
「故に、ケンヤ様が連れていた者は、多分ですが精霊だと思われます」
「「「せ、精霊!!」」」
皆が驚くのも無理はない。
何故なら精霊の存在はここ数百年確認されていないからだ。
(多分あれは精霊だろうな……なにやら不思議な力を感じた)
マリンは思い返す、ケンヤ自身の力もそうだが、その肩に乗る存在に強い存在感を感じていた事を!
「精霊の存在は古い書物に記されています。かつて勇者と共にかの魔王を倒したと、そして勇者と精霊はまるで友のようであったと」
皆がシーンとなる。
(私が読んだ書物にも似たよう記述があったな)
「で、ではケンヤ様は勇者様なのでしょうか?」
その質問に皆がザワついた。
そこで副ギルド長のメイが即座に応える。
「いえ、ケンヤ様は間違いなく戦士です。もし受付時に嘘の職業を書けば、魔道具が反応するはずですから」
なるほど、確かにあの魔道具なら騙せはしないだろう。
なら勇者でないケンヤが何故精霊と? 勇者だから精霊を従えてた訳ではないのか? 理由は分からない。
だかケンヤは精霊を連れている! もうそれでいいじゃないかと思うマリンだ。
だが、そのマリンの耳に不快な発言が届く。
「勇者じゃないんだ〜ちょっと期待したのに」
カチンときたマリン、意を決し手を上げ発言をする。
「何故精霊がケンヤに懐いているのかは分からない。たが、事実としてケンヤは精霊を連れている。それでいいじゃないか! レベルはともかく、勇者でもないただの戦士に、精霊が懐いてもいいじゃないか! 私はそう思う」
シーンとなる室内……
(や、やらかしたか!)
パチパチとメイが拍手! それに応えるかの様に皆が立ち上がり、全員がマリンに向かって拍手をしだした! 中には涙を流している者もいる……
「マリンさん素晴らしいわ! そうね、そうよね! マリンさんの言う通りよ! ケンヤ様の素晴らしさを先程入ったはかりのマリンさんに教えられるなんて! 私達まだまだだったようね」
皆が涙を流してマリンを讃える。
「あ、ありがとう……なんか気が高ぶってしまってつい……」
今までその強さを讃えられる事はあっても、自分の意見をこんなに、涙を流してまで褒め讃えられた事のないマリンだ。
(ああ! 私、居場所を見つけたのかもしれない)
感動である。
その光景を見ていたサチが手を「パンパン」と打ち鳴らす。
「素晴らしい意見をありがとうマリンさん。今回の定例会議は素晴らしいものになったわ!」
職員全員が頷いている。
「今後もケンヤ様を裏から支え、他の方達にもケンヤ様の素晴らしさを説いて行きましょう!」
なんか宗教っぽくね? とはすでに思わなくなっているマリン……サチの言葉に拍手さえ送っている……
「ではそろそろ今回はこれでお開きにしましょう! 皆さんお疲れ様でした。」
サチが会議を閉める。
皆に囲まれながら「いや〜」と照れ笑いしながら会議室を出ていくマリン。
それを見送るメイとサチは、テーブルの下でひっそり握手をし、お互い目を合わせ……
ニヤリ!
とても人に見せられない悪い顔でニヤつくのであった……
Cランク冒険者を手玉に取るメイとサチ……
カタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ