世界の終わり?
少し長めのお話しです。
修正も難しい回でした……
上手く伝わるか不安ですが、一旦これで投稿致します。
ご意見、ご感想お待ちしておりますm(_ _)m
マモル達が去ったダンジョン最深部。
熾天使四体と対峙する勇者パーティとルシファー。
「先程は油断して不覚をとったが、こうなれば私も本気を出す!!」
ケンヤ達に向い吠えるラファエルだが……
「お前……さっきも普通に本気だったじゃん! 仲間が来たからって何カッコつけてんの? バカじゃね?」
「な、なんだと!!」
「ラファエル待ちなさい! その勇者が貴方を挑発し、冷静さを失わせようとしているのが分からないの!」
ミカエルに指摘されハッとするラファエル。
「くっ、姑息な真似しやがって……だがもう大丈夫! ミカエル、悪かった」
い、いや……そんなつもりは全く無かったのだが……思った事をそのまま口にしただけのケンヤである。
目の前で繰り広げられるやり取りに、ポカーンと目を丸し、あんぐり口を開いてしまう……
ブッ!!
思わず吹き出してしまうトオル……
「と、トオル殿……吹き出すのはダメでござるよ! あの天使達が可愛そうでござらぬか! あっ! サラ様まで……顔を背けて笑いを堪えるのもどうかと……」
サラは口元を手で押さえ顔を背けているが……その背中は小さく揺れている……
「あ、アバロンさん……こんなの無理だよ……プっ! だってさあ、仲間が来て急に強気になったと思った所にケンヤさんのツッコミ……プっ! そのツッコミに真面目に返すミカエルさん? だったかな? にコレまた真面目に応えるラファエルさん……プっ! こんなん耐えられないって!! 姑息な真似しやがって……だよ? それに最後のケンヤさんの顔……ブっ! あははははははははははは!」
とうとうトオルは腹を抱えて笑い出してしまった……
サラもしゃがみ込んでしまい、お腹を抱えている……
色々と違う意味でケンヤに鍛えられている二人の弟子……全く失礼極まりない……
「貴様ら舐め過ぎだ!!」
ウリエルとガブリエルは一歩前に出ると、二体でトオルとサラに向かい魔力弾を放つ!!
一発や二発ではな無い! 数十、数百の魔力弾が撃ち込まれて行き、ダンジョン内に土埃が舞う!
魔力弾を打ち終えたウリエルとガブリエルはハアハアと肩で息をし、土埃が消えるのを待つ。
土埃が消えると……トオルとサラはキョトンとした表情でウリエルとガブリエルを見つめていた。
トオルとサラは無傷……その周りだけ魔力弾によって抉られていたのだ。
その様子をずっと眺めていたルシファー。
「ウリエルにガブリエル、君達がトオル君とサラちゃんに攻撃を当てる事は無理なんだよ? この子達や魔人のアバロン君はケンヤ達の様な転生者じゃ無い! この世界で生まれた人族と魔人だ。僕達上級以上の天使はこの世界の人族と魔人を守り育てる為に生まれた存在。知ってるだろ?」
こ、この二人がこの世界の人族!?
この少年から感じる内なるパワー、そして少女からはとてつもない魔力を感じる……
「まあ、この子達は神龍を宿しているけどね!」
なっ! 神龍!?
「お久しぶりです熾天使様、フロストドラゴンです」
サラの指輪からフロストドラゴンの声が!
「フッ!」
光龍は相変わらずである……
「たとえ神龍が力を貸していなくても、この子達は強いよ? 転生者である勇者アキラに匹敵する程に! これがどういう事か分かるかい? 人族は間引きなどしなくても強くなれるという事! 努力すれば人はここまで強くなれるんだ!!」
ルシファーの話しに引き込まれて行く熾天使達。
だが……
この時誰も気が付いていなかった……コメカミをヒクヒクさせているケンヤに!!
ハッとその様子に気付いたシルが叫ぶ!
「や、ヤバイ! あんた達! 早く、早くトオルとサラに謝るのよ!! け、ケンヤ……落ち着いて……」
「シル……これが落ち着いていられるか!? 確かにルシファーから聞いてはいた……熾天使達はトオルとサラに攻撃を当てる事は出来ないと! けどな! コイツらはトオルとサラを殺す気だっただろ? だったよな! これが許せるか!? いや、断じて許さん!!」
ツカツカと無防備にウリエルとガブリエルの元に向かうケンヤ……
「お前達、ウチのトオルとサラに何してくれちゃってんの? ああ……そうか……死にたいのか……じゃあいっぺん死んでこい!!」
そう言い、おもむろに腕を右に振るい、返す手で左に振るう!
ドゴッ! バゴッ!
鈍い打撃音かダンジョン内に響く!
ドゴーーーーン!!
ズガーーーーン!!
ウリエルとガブリエルは吹き飛び左右の壁に激突!! 壁にめり込むウリエルとガブリエルを引きずり出すケンヤ……二体をズルズル引きずりながら中央に集め……
ドカっ! ドカっ! ドカっ! ドカ!
脇腹を蹴り上げる!
「「グハッ!!」」
気絶していたウリエルとガブリエル、あまりの痛みに意識が戻り嗚咽をもらす!
その二体の脇腹をひたすらガツンガツン蹴り続けるケンヤ。
「ねえ、トオルとサラに何してくれちゃってんの? ねえ、ちゃんと応えようよ!」
何処かで見た事のある光景……
アバロンはかつての記憶を思い出しカタカタと震えている……
ハッとし、トオル、サラ、ミコトはケンヤに飛び付く!
「け、ケンヤさん! それ以上は死んじゃいます!!」
「ケンヤさん! 私達の為に怒ってくれるのは嬉しいけどやり過ぎです!」
「もうその辺で……ね! この人達も十分分かったと思いますから!」
必死で説得を試みる……
その様子を目を見開き、仲間がボコボコにされているのに見つめるだけのミカエルとラファエル……
助けなきゃと思うが……身体がすくんで動けない。
すると、トオル達の説得が効いたのか、ケンヤの動きが止まる。
ホッとするトオル達だったが……そうでは無かった!
ラファエルをキッと睨み付け……
「そう言えば……元々の原因はお前だったな……」
ツカツカとラファエルに向かって行くケンヤ。
「ヒッ!」
ラファエルは恐怖で小さな悲鳴をあげ後ずさる。
見かねたルシファー、ポンっとケンヤの肩に手を添えた。
「もうそれぐらいで勘弁してやって。そもそも君達が挑発したからでしょ?」
ん〜……確かに……
「ゴメンね。やり過ぎちゃった! テヘペロ」
て、テヘペロ!?
膝から崩れ落ちそうになる熾天使達……
トオルとサラは苦笑い……ミコトはヤレヤレと肩を竦め、アバロンは……膝を抱え震えていた……
シルは溜息を吐き、ボコボコの熾天使二体に回復魔法をかけている……
シルに回復して貰いながら、お互いの目を合わせ、何やら頷き合うウリエルとガブリエル。
当のケンヤはというと……、トオルとサラの身体に本当に怪我がないのかぺたぺた確認中……お父さん感が半端ない。
暫し流れるシラケた空気……
「…………それでルシファー様、貴方は何がしたいのですか?」
呆れ顔でルシファーに問うミカエル。
ようやく話しを聞く気になってくれた事に笑顔を見せるルシファーだが、ウリエルとガブリエルが居なくなっている事に気付く!
「あれ? どうせなら熾天使皆に話を聞いて欲しかったんだけど……ウリエルとガブリエルは?」
急に消えた二体の熾天使……
あっ! と口元を押さえるラファエル、何やらミカエルに耳打ちをしている。
ラファエルの話しを聞いたミカエルは大きく目を開く!
「アルファ様に報告? 転移していたのね! まあ私達はその義務があるけれど……あの二人がどう言う報告をしたのか……不安ね……」
そのミカエルの不安は最悪な方向で的中する事となる……
しばらくすると、アルファの元から報告を終え、ウリエルとガブリエルが戻って来た。
その顔色は青く動揺を隠せずにいた……
ケンヤ達をチラリ横目で見ながらミカエルに耳打ちを始める……ミカエルの目がどんどん見開かれて行き焦りの表情を見せる。
「それは本当なの? 貴方達どんな報告をしたの!?」
「我々が見て聞いたそのまま伝えたよ! ルシファーが戻って来た事、ラファエルから聞いたルシファーが別世界を開拓し、移民出来る様にした事、異世界から来た者達のとんでもない戦闘力……」
ウリエルはそこで言葉を詰まらせ、口を閉ざしてしまった……、言葉に詰まるウリエルに代わりガブリエルが口を開く。
「アルファ様は大変お怒りだった……イヤ、あれは怒りより絶望か! アルファ様は異世界の勇者云々にはあまり興味ない様だった。ルシファー、貴方が帰って来た事に心底驚いておいででした。そして別世界の開拓を終え、移民を受け入れる様にしたとお伝えした所、アルファ様は……もうこの世界は要らないと……一から作り直すと仰って……我々にその旨をルシファーに伝えてこいと、あの場所を叩き出されてしまい……」
なっ! せ、世界を作り直す!?
「ち、ちょっと待って! 君達ちゃんとアルファに伝えた? 間引くのではなく増えすぎた人口問題を解決する為の移民だって! わざわざ邪神を使って間引きなどしなくても、人は進化してるって事も! 後……アルファの身体も僕は手に入れたんだ! それは伝えてくれた?」
あ、アルファ様の身体!?
「ちょっと待って下さい! 我々はアルファ様の身体が手に入ったなど聞いておりません!!」
驚くミカエル!
「い、いや……ラファエルには……あっ! そう言えば身体の事を伝える前にラファエルに話しを遮られて……」
愕然とするルシファー……
そのルシファーにガブリエルが口を開く。
「ルシファー……いえ、もう以前の様にルシファー様と呼ばせて頂きます。アルファ様に身体の事を伝えても無駄だったかと……貴方が帰って来た、別世界を開拓して。恐らくアルファ様は、完全にルシファー様がこのアルファ様が作った世界を見放したとお思いの様です。我々の伝え方にも問題があったのかもしれません。急ぎもう一度アルファ様の元に向かいます!」
アルファの元に転移しようとするガブリエルだが……
「う、嘘だろ!? 転移出来ん!!」
えっ?
熾天使達に戦慄が走る!
「まさか! では私がアルファ様の元へ!」
転移しようとするミカエルだが……
「嘘……私も……」
ラファエルもウリエルもアルファの元へ転移出来ない様だ。
愕然とするルシファー。
「君達までアルファに……アルファはどうするつもりだ?」
そんなルシファーの元に青い顔をしたウァプラが現れた!
「皆、急ぎ地上へ! とんでもない事が起こっているぞ!!」
まさかアルファが何かしたのか!?
熾天使達、ルシファー、ケンヤパーティは急ぎ地上に出る。
まだ日が差す時間だと言うのに辺りはまるで夜の様に暗い。
焦った様子のマモルがケンヤ達の元に現れた。
「ケンヤ! アレをみろ!!」
マモルが指差す先は……
太陽が丸い何かに遮られ、薄ら太陽のコロナだけが見てとれる。
「皆既日食か?」
ケンヤは呟くが……マモルは否定する。
「ケンヤ、この世界に月は無いよ! あれは明らかに人為的な物だね……太陽を隠せるなんてとんでもない事を出来るのは……」
アルファしか居ない!!
上空を見上げるケンヤ。
「これは不味いな……太陽光が遮られると先ず光合成を行う植物は枯れて行ってしまう。そうすると植物を糧にしている草食系の生き物も死に絶え、その草食系の生き物を糧にしている肉食系の生き物も……」
それにとミコトが付け加える。
「太陽光が遮られると地表の温度がどんどん下がって行って……氷河期が来ます! この世界の地表全て雪と氷の世界に……」
科学知識の無いトオルとサラはケンヤとミコトの話しに腰を抜かす!
隠された太陽をじっと見つめるルシファー。
彼の中でとある決断が下されるのであった。
熾天使をボコるケンヤカタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ