マリン
ブックマークありがとうございますm(_ _)m
今回登場するキャラはある意味重要人物ですね!
本編ではあまり出番は無い方ですが……
ピサロ北門
「なあ、あの駆け出し帰ってこねえぞ……」
門番の一人がもう一人の門番に話しかける。
「ヤバイな、ギルドに報告するか?」
「だな、もしかしたら南門から入った可能性もあるが……、俺ギルドに報告行ってくるわ!」
二人が心配しギルドに報告しようとしていたその時、北の森方向から駆け足でこちらに向かって来る人影が見える。
「すみませーーん!」
大声で謝りながらこちらに近づいてくるのは、心配していた駆け出し冒険者のケンヤだ。
「コラ!! まだ駆け出しのクセしやがって、こんな時間まで何やってた!」
無事に帰ってきてホッと一安心だが、ちゃんと注意しないといけない!
冒険者は危険な仕事だ、少しの油断で簡単に命を落す。
「今ギルドに捜索の手配しようとしてたんだぞ!」
全く! まあ駆け出し冒険者にはよくある事だが……ん? な、なんだあれ?
「ほら! お前のせいで叱られたじゃないか!」
肩に乗った何かに話しかけている。
「な、なによ! あたしのせい? あたしは何も悪くないもん! ケンヤが転ぶから悪……ぐふっ」
小さな頬っぺたを人差し指と親指でケンヤに挟まれて……
「……なあ、それってもしかしてそれ妖精か?」
肩に乗っかっている奇妙な生き物……妖精のようにも見えるが……
「妖精? なに言ってんのよ! 私は森と風のせ……ムギュ」
指で挟まれまた黙らされる。
何故か脱力感……どうでもよくなってきた。
「……いいから早く街に入れ! もう少ししたら門閉めるぞ」
「はーーい! すみませんでした」
ぺこり頭を下げケンヤは街に入って行った。
……
「なあ?」
「なんだ?」
「妖精って喋れたっけ?」
「知らん! 喋ってたし、喋れるんじゃねえか?」
妖精自体はそれほど珍しい個体ではない。
北の森に行くとたまに見かけたりもする。
ただ妖精は人の気配を感じると直ぐに隠れてしまうし、人には懐かなくて知性も低いとされていた。
「あの小僧……大物になるかもしれんな」
思わずボソリ呟く。
「たしかに妖精を連れて帰って来た奴なんて初めてだしな」
ってかアレ本当に妖精なのか?
まあ、ただの門番がいくら考えても、答えなど見つかる訳もない。
「とりあえず門閉めるぞ」
北門を閉め、夜の担当の門番と交代。
「ふう……駆け出しも帰ってきたし、一杯呑みにいかないか。」
「いいねえ〜」
そうして本日の仕事を終えた二人、街の飲み屋街に消えていった。
酒の肴は、妖精を連れて帰った駆け出し冒険者と不思議な妖精についてだ。
街に入ったケンヤはオリブの宿を目指し、その道すがらシルウェストレに話しかける。
「なあシルウェストレは街に入った事あるのか?」
「あるよ! たまにだけど姿を消して覗きにくるの!」
姿を見られたら色々問題って事は理解してるのね……
「ならなんで今は普通に姿見せてるんだ? さっきすれ違った人こっち二度見してたぞ?」
「ん〜、ケンヤと一緒だから?」
なんで疑問形?
「意味わからん、ってか精霊って人に見られていいのか? この世界じゃ普通に精霊って見られるの?」
妖精なら居そうだけど、精霊は滅多に人には姿を見せないイメージ……俺的な勝手な想像だけど。
「まあ滅多に見せないわね〜、けど精霊自体はたっくさんいるのよ。この街にもいっぱい居るよ。ただ自我持ってる様な高位の精霊はなかなか居ないかなあ。位が高くないと人間と意思疎通出来ないし、その姿を具現化出来ないの」
なるほど!
「じゃあさあ、さっきと同じ質問になるけど、シルウェストレはなんで具現化してるんだ?」
シルウェストレは顎に人差し指を当てながら首を傾けて……
「ケンヤと一緒だから?」
……堂々巡りである。
「もういいや……けど、精霊って事は内緒な!」
「ええ〜! なんでよ!!」
シルウェストレはクチビルをとがらせる。
「そりゃお前、精霊を連れてる戦士なんて大騒ぎされるぞ! 妖精って事にしとこうな!」
言い聞かせるが……妖精連れてる戦士もギリアウトのような……
「絶対イヤ! あんなのと一緒にされるは絶対イヤ!!」
プンプンである。
まあ確かにどっちにしろ、シルウェストレを連れてる時点で騒ぎになるし……諦めるか……
「分かったよ! ただ聞かれたら精霊って答えるけど、こっちからはシルウェストレは精霊だなんて事は言わないからな」
シルウェストレもそれで納得したみたいだ。
「あと、シルウェストレって長いからシルって呼ぶからな! 」
シルウェストレはパッと顔を輝かせ
「あ、あだ名ね! あだ名なのね! シルって良いね ! グッ」
親指を立ててる……
シルとそんな会話をし、ピサロの街並みを眺めながら歩いていると……
ドンッ
「ご、ゴメン」
誰かとぶつかってしまった……
振り替えると身長二メートル近くあるんじゃね? 筋骨隆々、恐らく職業重戦士であろうと思わせる金髪の女性? だった。
後ろには魔法職っぽい細身の男二人が控えている。
その男が睨みを効かせながらケンヤに迫って来た!
「こら! どこ見て歩いてやがる! お前誰にぶつかったか分かってんのか! ああ?」
絡んできやがった……
「このお方はなあ、このピサロでただ一人のCランク冒険者マリン様だぞ!!」
へえ〜、Cランクかあ! 思わずマリンに視線を移す。
マリンはほんのり顔を赤らめそっと視線を外した……
な、なぜ……
するともう一人の男もケンヤに噛み付いてくる。
「マリン様はなあ、マリンって名前とその見た目とのギャップに日々悩……グハっ!!」
無言でマリンが腕を振るう。
鈍い音と共に男は吹っ飛んでいき建物の壁に激突! 泡を吹いて倒れていた……
こ、こえ〜、マリンさんこえ〜
それを見てたもう一人が「兄貴〜」っと叫び駆け寄っていく。
「あ、あの……彼、大丈夫ですか?」
「……問題ない」
そっすか……
とりあえず、ぶつかったのはこちらだし、ちゃんと謝らないと!
「よそ見しててすみませんでした! ぶつかった肩大丈夫ですか?」
頭を下げるケンヤ、その姿に何故か更に顔が赤くなるマリン。顔を背けた後、恐らく問題ないってことなのだろう、手を振りながら男達のもとに歩み寄る。
「お前達なに勝手に人に絡んでんだ? あれほど素行には気をつけろって言ってるだろ!」
マリンに凄まれる男達、ガタガタ震えながら
「ヒィ〜!」
悲鳴を上げ抱き合い怯えている。
申し訳なさそうに頭をかき、此方に振り返るマリン。
「なんか悪かったな。コイツらには後でしっかり指導しておく」
男達はさらに「ヒィ〜!」と叫び震えていた。
ケンヤは去り際に再度謝罪をし、その場を立ち去った。
マリン達の姿が見えなくなった頃、
「ケラケラ」
シルがお腹を抱えて笑っている。
「泡吹いてたよ! そんでヒィ〜! だってケラケラ! やっぱケンヤについて来て正解」
シル……人の不幸を笑ってはいけません……けど
「確かにヒィ〜! はないよな」
「でしょう! グハってなってドーンで兄貴〜でヒィ〜だよ?」
二人で笑い合いながらのんびり宿に向かった。
去って行くケンヤの後ろ姿をマリンは暫く思案顔で眺めていた。
不思議なヤツだ……普通私とぶつかれば大概の相手は吹き飛んで行く。それがどうだ、私の方が弾かれそうになった! まるで巨大な岩にでもぶつかった様な……
あんな細身で礼儀正しく可愛いイケメン……ん?
いやいや! そうじゃない! あれはかなり強い、どれほどかは分からんが化け物じみた力を感じた。それにアレは妖精? 違うな、精霊か? 確か以前読んだ歴史書に、数百年前の勇者は精霊を連れていたって伝承が……まさかな……
あっ!
「ま、マリンさん? どうしたんです?」
深刻な表情を浮かべていたマリンの表情が一変、男達は不審に思いマリンに恐る恐る訪ねてみる。
「……名前聞くの忘れた」
もじもじしながら言い放った一言に恐怖を感じ、男達は聞かなかった事にしようと心に誓うのであった……
本日中にもう一話修正し投稿予定です。
……予定は未定……