忘れられない笑顔
僕はあの子と遊んだ公園を探す旅に出ていた
「――は50年に1度の寒さで、カイロを離せない1日となるでしょう」
それは僕がまだ9歳だった頃
その日は都会では珍しく雪が積もっていた
真夜中に偶然目が覚めた僕はベランダに出て
積もった雪を初めて目の当たりにした
次の日までなかなか眠れず
少し寝不足だった
だがまだまだまだまだ気力が余っていて
母さんに初めて行く公園に連れて行ってもらった
そこで1人雪だるまを作っていた時の事だ
突然僕と同じくらいの年齢の子が話しかけて来て
一緒に雪だるまを作っているうちに仲良くなっていた
そして最後に
「これっ!さっき見つけたどんぐり!君にあげるよ!」
そう言って雪が解けるほど明るい笑顔で季節外れのどんぐりを手に差し出してきた――
それから10年経った今でもあの時貰ったどんぐりは大切に持っている
そしてまだあの笑顔が忘れられない
だからあの公園を探す旅をしているのだが
あの時公園に連れっていってくれた母親は
もうこの世にはいない
父親の仕事の都合で転勤が多かったから
僕も覚えていないし、実家で暮らしている父親も細かくは覚えていない
ただ分かることは○○県という事だけだった
その県の公園を少しずつ見ていき
見覚えがあるか確認するしかないのだ
――そして探し始めて2年経ち
僕が21歳の誕生日を迎えた日
この日はあの時と同じように雪が降っていた
そしてついに残った公園は5か所になっていた
あと4か所、3か所、
そしてついた次の公園
ここは紛れもなく
あの時の公園だった
ベンチに座って様々な事を思い出していると
学校終わりの小学生たちが来ていた
雪合戦をしたり雪だるまを作ったり、
懐かしいな、なんて考えていたら
そろそろ帰らないと遅くなってしまうからと
ベンチから立とうとしたその時
公園に少し見覚えのある女性が入ってきた
急いで駆け寄って行くと相手の女性から
とても驚いた顔をされた後
「もしかしてあの時の……」
と聞かれたので
急いで首を縦に振ったそして
「ずっと探してました!」
と言ったら
忘れられずにずっと探していた
あの暖かい笑顔を向けてくれた――