ココロノコリ。
ねぇママ。わたしね、ネコちゃんがかいたいの。
「ダメよ。お世話は大変なんだから」
だってたすけてあげたいんだもん。
わたしがそう言ってもママはわからない、ってかんじのかおしてた。
だからね、わたしは言ったの。
あの子、いままではずっとお外でおさんぽしてたんだよ。
おうちにかえるときによくなでなでしてたんだよ、わたし。
こっそりパンをもっていって、ネコちゃんにあげたりもしてたよ。
まっくろできれいで、すてきなネコちゃん。
でもね。ある日とつぜんいなくなっちゃった。
さがしてもみつからなくて。
でもねでもね、わたしみつけたの、オリの中に入れられて。
なんかいっぱいすうじが書かれててるの。
みせものみたいにされてたの。かわいそう。
出して、出して、ってネコちゃんもないてて。
だからね、いいでしょママ。わたし、あの子、かいたい。
それからわたしね、なんどもなんどもおねがいしたの。
でもママはダメって。
だからある日ね、またあのネコちゃんとあそびたいな、っておもって。
いつものパンをもって、たべさせにいったの。
でもね。あげられなかった。
「ごめんねお嬢ちゃん、そういうことはしちゃダメだよ」
でもでも、わたしのパンずっとたべてくれてたもん。
そういうとおじさんはこまったかおして。
「ママにお願いしておいで」
って。もうなんどもおねがいしたけどダメだったもん、っていったけど。
ダメだった。わたしはただ、またあのネコちゃんとなかよくなりたかったのに。
だからね、わたし、ないちゃった。
どうして、やだやだ、あげたい、って。
そしたらね。
「あのネコちゃんは今病気なんだ。
ちゃんとしたご飯を食べないともっと病気が悪くなっちゃうんだ」
って。
でもわたしのパンをたべてたけどげんきだったもん。
やだやだ、ってないて。そしたらね。
「貴女のせいでこの猫ちゃんが死んじゃってもいいの?」
「こら、君……こんな幼い子に」
こわいおねえさんが言ったの。
わたしがしてるのはギゼン、っていうんだって。
わたしね、たすけたかった。
でもね、ネコちゃんがめのまえにいるのに。
わたし、なんにもできなかった。
ごめんね、ネコちゃん。
そのうちだれかがきっとあのネコちゃんをかってくれるの。
わたしにはまだかえなかったけど。
もし、いつかどこかで、あのネコちゃんがおさんぽしてるのに会えたら。
いっしょにぽかぽかのたいようさんのしたで、いっしょにパンをたべるの。
そうするってきめたの。
だから、このはなしはもうおしまい。