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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第6章 教科書知識でチートな国家運営(笑)
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第73節 嬢王陛下は稼ぎたい

お金を稼ぐのはとても難しいです。

継続的に稼ぐのは、もっと難しいです。

稼ぐというのは、お金の話になることが多いのですが、例えば経験値を稼ぐとか、色々な方面で使うことができる言葉でもあります。

さて、今回はそんな「稼ぐ」話です。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後26日目午後:コソナにある魔物の森/伊藤洋子視点>


「一太郎! あの木、攻撃して!」

「ワン!」


 吠え声の後に、マインウルフの一太郎から強力な岩石系魔法が放たれる。

 隣にいた一太郎の弟の六助も、同時に魔法を放った。

 この二匹の攻撃で、目の前の紫がかった魔物の木は、沈黙した。


 そして、沈黙したのを確認すると、ガーター町の木工職人たちが、早速仕事をしていた。

 ほどなく、魔物の木は枕木と燃料に変化していた。


 私たちは、ウーバン村の線路が完成した後、海沿いのコソナとガーターの2つの町を訪れていました。

 その結果として、鉱山から直接ガーターの町に線路を引くことになったの。

 コソナと線路を繋ぐのは後回しにしたわ。

 鉱山の9階層を掘り抜いて、コソナ側に出られるようにはしたんだけどね。


 今、私たちが戦闘しているのが、そのコソナ側の出口付近。

 うっかり魔族とか魔物とかが溜まってしまった魔物の森と呼ばれるところ。

 山神様やまのかみさまからの依頼で、この魔物の森の、木の魔物を殲滅してほしいと言うの。

 ちょうどいい硬さの木が大量に確保できるからって、線路を引くのが何よりも好きなラストちゃんが狂喜乱舞していた。


 それで、私とマインウルフたちがその魔物の木殲滅作戦に繰り出されていた。

 野中からは、できるだけ線路を引くことを考えて、うまいこと直線で更地にしていってほしいという、なんともわがままなお願いをされていた。

 無理!

 戦うだけでも精一杯なのに、どうして、そんな後のことまで気を配れると思ったのかしら?



 この作戦にガーターの町から職人を連れてきて巻き込んでみたの。

 ガーターの町の職人たちは、みんな頑固で個人事業主。

 私から見たら、とっても、非効率。

 だから、木工職人だけ集めて、枕木を作るのに借り出してきたの。


 ちなみに、この人たちを呼ばなくても、ラストちゃんの魔法で、すぐにできるのは秘密。

 ラストちゃんは、一生懸命線路を伸ばしているから、邪魔しないように気を使ったの。

 でも、そんなラストちゃんも、この職人たちが満足いく枕木を作れるのか心配していた。

 最初は、つきっきりで作り方を教えて、完成度を確認して、最終的には、満足して帰っていったわ。


 木工職人さんたちも、ボランティアで働いてもらっているわけではないから。

 ちゃんと、報酬を用意しました。

 石炭。あと、鉄鉱石。

 そうしたら、全員釣れました。


 やっぱりあの職人の街では、石炭、とっても大切みたい。

 なら、こっちは国営で取り放題なのだから、現物支給の報酬として活用させてもらいましょうと。

 職人さんたちもとても喜んでいたので、結果オーライ。

 あと、魔物の木も、できれば報酬としてほしいと言うので、それも報酬に加えました。


 職人さんたちが頑張って、大量の枕木を作ることができました。

 やはり、職人さんたちが集まって一緒に仕事をすると、とっても早く仕事が終わります。

 私の真の目的は、これ。

 個人事業よりも会社にして、しかも規模を大きくすればそれだけ効率が上がって、利益が大きくなるということを体験してもらいたかったから。


 木工職人たちは、今までお互いに結構喧嘩ばかりしていたみたい。

 でも、実際に今日一緒に作業をしてみたら意気投合して、この仕事が終わったら一緒に仕事をしようとか言い出している。

 作戦通りのとてもいい傾向。

 だから、嬢王として、一押ひとおししました。


「木工職人の皆さんは、全員で一つの会社を作ってもらいます。そして、大きな工房を作れば、今までよりもより多くのものをより早く完成させることができますよ。今まで作れなかった大きな家具とかもトロッコで町や村に運べますし。いかがでしょう?」

「分かった。今日、一緒に働いていて、嬢王さんが言っていることの意味がわかったよ。俺たち、一緒に働いて、他の職人たちに、見せつけてやるよ!」


 とりあえず、私の作戦は成功。

 それからは、ひたすら魔物の木を討伐して枕木にしていきました。


 主戦力のマインウルフたちの中に、一匹だけメスがいて、奈々子と名付けていました。

 この子、実は魔族の呪いによって種族と性別を変化させられていたことが発覚しました。

 元々は、ウーバン村の前村長のゴンザレスさんだったのでした。


 奈々子がレベル20に達したのでクラスアップしたことで判明。

 クラスアップしてマインエルフになったら、言葉を話せるようになってしまったから。


 本人から語られる驚愕の事実。

 実のところ、一太郎から助六までの6匹は、ゴンザレスの息子たちなんだそうだ。

 ゴンザレスは、現村長パトリシアの夫なので、もちろん男だったはず。

 ゴーレムにした息子もいるし。

 それが、マインウルフにされた上にメスにされて。

 挙げ句の果てには、魔族が変身していたマインウルフに無理やり犯されたと言う。


 結果として、子供が6匹生まれたと。

 この話を聞いて、パトリシアさんは、息子ができたと複雑な顔をしていた。

 犠牲者という見方もできるけれど、悪く言えば不倫を疑ってもいい。

 メスになった途端、オスに尻尾を降っていた可能性も。


 まあ、さすがにそれはないと思うけれども。

 


<異世界召喚後27日目:コソナにある国境の森/伊藤洋子視点>


 今日は、昨日よりも国境に近づいて、国境の街にも近づいている。

 魔物の木を結構な数やっつけたから、かなり広く、空き地を作ることができた。

 その勢いのまま、どんどん魔物の木を枕木と燃料にしていく簡単なお仕事。

 そうしたら、ちょっとした問題が発生した。


 枕木を結構なハイペースで生産しても問題がなかったのは、山賊団ロアバストスの親分が、トロッコを頻繁に往復させていたから。

 簡単に言えば、スピード狂の親分が、ヒャッハーしているのが原因。


 でも今、その生産のスピードが落ちていた。

 魔物の木を狩り尽くしたと言う訳でもなく、枕木が要らなくなった訳でもなく。

 魔物の木をやっつけていたことを、さすがに気づかれてしまったのだ。

 魔物の森に住む、魔物の木を一生懸命増やしていた魔族や魔物たちに。


 いけない!

 私自身には、ほとんど戦闘能力がない。

 狙われたら終わり。

 今のところは、全てをマインウルフたちがやっつけてくれている。


 魔物を結構倒しているので、しばらく肉には困りそうにない。

 ただ、これを目の当たりにして、木工職人たちがびびってしまっている。

 一箇所に集まって震えていた。

 仕方のないことだとはわかっていても解せない。


 か弱い女の子が戦っているのに、いい大人の男が、集団ヒステリーとかない。

 それでも、マインウルフたちは親であるゴンザレスの指揮の元、上手に立ち回っていた。

 魔族の攻撃が苛烈になってくると、ゴンザレスはエルフの姿に変化した。

 そして、私に代わって矢継ぎ早に指示を出していた。


 その指示は、すばやく、的確。

 さすがは元村長。

 指示を出したり、状況を把握する能力は、高く感じられた。


 一匹、また一匹と、森の中から湧いて出てくる魔族や魔物。

 絶望しても不思議じゃないくらいのペース。

 それを、確実に一体一体仕留めていく。

 そうしつつも、魔物の木も、少しずつ仕留めていた。


 しばらくすると、マインウルフたちの安定した戦いぶりに安心したのか、木工職人たちも、枕木の制作を再開し始めた。

 制作に夢中になると、魔族や魔物の姿が目に入らなくなるらしい。

 枕木の回収に来た親分が、それこそ驚いていた。

 お前らおかしいと。


 枕木運搬の合間を縫って、討伐した猪型の魔物とかをよろず屋に運んでもらった。

 お金になるからだ。

 あと、村人たちの生活が安定するから。

 食料がたくさん供給されると、その値段が下がる。


 いつまでも保存できる訳じゃないから。

 値段が下がれば、村の人たちでも、肉を手に入れられるかもしれない。

 そうすれば、芋ばかりで栄養に偏りのある村人たちの食糧事情を改善できるはず。

 一国の王として、地味に国民の役に立とうとしていた。



 夕方になって、親分から、枕木が敷き終わったので、もう生産しなくていいとラストちゃんに言われたと伝達された。

 だから、散発的に襲撃してくる魔物たちを相手にしつつ一休憩していた。


 今、休憩している場所は、国境の壁のすぐそば。

 そこまで、森を切り開くことができていた。

 ここからは、国境の壁に沿って、国境警備隊の人たちが毎日歩いて、踏み固めた道がある。

 結構な広さがあるので、線路を引いてもお釣りがくる。


 つまり、コソナの町の一番北の部分、国境の街までの、線路を引く用地を確保することができたのだ。


 そして、休憩していたら、5匹ほどのリザードマンが接近してきた。

 鉱山側から。

 国境の壁を背中にしていたので逃げ場はなかった。

 すぐに応戦した。


「待って! 攻撃してはダメ!」


 6匹目のリザードマンが接近してきたところで、そのリザードマンの肩に乗っていた山神様やまのかみさまが、攻撃をするなと言ってきた。


「イトー、援軍に来たの。リザードマンにお願いしたら、魔物の討伐なら任せてくれって言うから。」

「あ、ありがとう。いきなりリザードマンですか? かなりびっくりして討伐してしまうところでした。」

「いいの。魔物の森、かなりやっけたみたいね。ありがとう。このままの勢いで、根こそぎ討伐してね?」


 山神様やまのかみさまは、辛辣だった。

 こちらは、朝から、ずっと討伐を続けていて、疲労困憊だった。

 もう、マインウルフたちのMP底をついた。

 援軍が、ギリギリ間に合った感じ。


山神様やまのかみさま、ごめんなさい。もう、マインウルフたちのMPがないの。ぎりぎりで援軍が間に合った感じだったのよ? このままじゃ、魔物とか魔族たちにやられてしまうところだったわ。」


 その言葉に、山神様やまのかみさまは、びっくりしていた。

 確かに、一見して、マインウルフたちはきっちりと魔物に応戦できている。

 しかし、MPがない今、できることは物理攻撃だけ。

 徐々に相手にもそれが分かってきて、ジリジリと後退を余儀なくされていた。


 結構、危なかったのだ。


「そうなの。ごめんなさい。でも、じゃあ、朗報かも。」



 日が沈んだ頃に、びっくりするくらいの数のマインウルフと、大岩井さんがやってきた。


「伊藤さん、お疲れ様。後は、私たちが何とかします。交代で休んで、坑道の出口を死守します。

伊藤さんは村に戻って休んでくださいね。明日からは、国の内政も、結構大変かもしれませんから。」


 なんだか、面倒な予感しかしない。

 でも、渡りに船だったので、大岩井さんたちに守られながら、鉱山の出口まで送ってもらった。

 今日は、大岩井さんたちが、この出口付近に陣を張って、夜通し魔物の襲撃に備えるそうだ。

 確かに、出口付近には、たくさんの松明が焚かれていて、夜になったのに、かなり明るかった。


 この松明は、全部大岩井さんがやったとしか考えられない。

 だって、他は全部マインウルフだったから。

 まさか、マインウルフと意思の疎通とかってできないよね?


 そう思ってみていたら、火に薪をくべるマインウルフを見てしまった。

 すごい光景だった。

 火に近づくと、マインウルフの毛皮が燃えそう。

 でも、そんなこともなかった。


 私たちが魔物の木を討伐して、木工職人さんたちが枕木に加工した残りが、燃料として、鉱山の出口付近に山のように積み上げられていた。

 松明の燃料は、全てそこから賄われていた。

 経済的。


 未だ、散髪的に戦闘を行っている鉱山の出口から、私達を迎えに来た親分たちのトロッコに乗ると、ウーバン村のお城まで、帰還するのでした。



<異世界召喚後28日目:コソナにある国境の森/伊藤洋子視点>


 大岩井さんの言っていた、面倒なことが発覚した。

 国内に、新しい街が組み込まれていたからだ。

 ガーターの町が組み込まれているのは流石に理解していた。

 だから、1町1村体制だと、そう理解していた。


 規模で言えばそれでも2倍以上。

 工業製品の生産地ということも考えれば、経済規模で言えば4倍から5倍以上。

 流石にいろいろと、国として考えなくちゃいけないことが発生していた。


 朝、お城で目を覚ました後、朝食を終えたところでゴンザレスに言われた。


「息子たち6匹を、騎士にしてくれんか? 今まで通りと言えばそれまでなんじゃがのう。どうやらラストちゃんに感化されてのう。俺たちも騎士になる! とか言ってきかないのじゃよ。もう全員Lv18〜19じゃ。そろそろ儂と同様、マインエルフにクラスアップできるからのう。儂に似て、美形の男子6人を侍らせることができるぞい?」


 朝から疲れるような話だった。

 じゃあ、後少しレベルを上げたら、本当に美形エルフ男子を侍らせる、どこの乙女ゲーだって話になるような生活が、私を待っているということになる。


 嬉しさ半分、残念感半分。

 ああ、やっぱりここって、異世界なんだな。


 そんなことを感じさせられる、朝なのでした。

稼ぐに追いつく貧乏なし。

これは、実の父に言われている家訓の一つです。

全くもってその通りで、返す言葉もありません。

日銭を稼いでは、溜め込むことで、ある程度まとまった額を作ることはできます。

でも、それを継続するとなると、なかなか難しいものです。

それでは、稼げなかったとか言って夜逃げとかしていなければ、明日の12時ころに。


訂正履歴

 散髪的 → 散発的 ※誤字報告ありがとうございます。

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