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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第5.5章 大変な変態たちは気がすむまでもふもふしたい!
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第22話 ケモミミっ娘に優しくしたい

好きなものに熱中できることは、とても素晴らしいことです。

でも、なかなかできるものではありません。

作中にもある通り、経済的な問題や世間体など、色々な問題が立ちはだかるものです。

でも、ほんとに好きなら、そんな障害はむしろ、焚き付ける燃料にしかなりません。


さて、今回はそんな話です。

それではどうぞ。

 「ダメンズ」の優しさの半分は、性的な欲望でできている。


 この会議の中で、僕の思ったことは、それに尽きる。


 異世界に召喚されたという利点を最大限に活かすために、ケモミミっ娘をもふもふしたいという、あからさますぎる欲望をなんとか叶えたい「ダメンズ」のキモオタ4人集。

 そのための情報収集の結果を報告し合い、今後の方針を決める作戦会議を開いていた。


 ここサッシー王国では、人間以外を王国民として認めていない。

 つまり、言葉を話すケモミミっこ達「異種族」の者は、他の動物と同じ扱いだった。

 でも、それは愛玩動物であることを意味するわけではない。


 奴隷として働かさせられているのはまだいい方。

 野生動物と同様、町の内外で野良として生活していた。

 おそらく、そうそう長くは生きてはいけない。

 さらに、人権的な配慮もあるはずがなく。


 なんなら食肉として加工されてしまうこともあるらしい。

 いや、そんなの食べるの無理。

 そんなひどいこと、ゆるせない!

 そう思ったりするのは、おかしいことだろうか。


 僕たちの最終目標である「もふもふ」のためには、大きな障害があった。

 町にいるケモミミっこ達は、「ごわごわ」だった。

 決して「もふもふ」できる状態ではなかったのだ。


 原因として挙げられるのはまず、経済状況と生活状況の問題から、毛がとても汚れていること。

 そして、文明的・経済的な問題で、これをきれいにすることができないことだった。

 根本的問題として、警戒されるので近づくことすらできなかったけれども。


 逆説的に、普段からひどい目にあっていることが、手にとる様にわかった。



 この調査結果に、普段は温厚な吉澤ボスは激怒していた。

 妖怪の様な面構えの彼ではあっても、心の中は思いの他純情だったり純粋な部分もある。

 自分の大好きなケモミミっこ達の境遇・待遇のあまりの酷さに、怒りがおさまらなかった。


「私は怒っているんですよ? この国を滅ぼすことも辞さない程度に。何なら私が大魔王になって、この国を滅ぼして差し上げてもいいんですよ?」


 実際にやりかねないので、周りの3人で宥めて、なんとか落ち着かせた。

 勇者だから。

 いろいろ特殊な技とか魔法とか使えてしまうから。


「そこで、私は考えました。簡単に言えば、孤児院の様な保護施設を作ることが、一義的には有効だと考えられます。」

「いくら何でももふもふしたいからって、ケモミミっこ達を囲って、毎日もふもふ三昧しようって言うのは、吉澤ボスの所業としても『鬼畜』だと思います。」

「現状よりは、いくらかいいと思いますよ? もっとも、資金もなければ、差別意識も無くならず、何より国がそれを認めないでしょう。実行するのが困難な案であることは認めます。」


 今日の吉澤ボスは、思ったより真面目だった。

 いや、どちらかと言えば、「本気」だったのだろう。


 これでも、2年7組のクラスメイト。

 学年トップのクラスだ。

 頭が切れるのは当たり前。

 キレたら怖いのも当たり前だ。


「さて、それでは次のミッションです。今度は、この国だけではなく、他の国でケモミミっ娘達は、どの様な扱いがなされているのかを、聞き込み調査してきて下さい。なんなら、ケモミミ王国とかあるのなら、そこへ移住することも視野に入れておきましょう。」


 吉澤ボスが提案してきた、と言うよりもほぼ指示してきたことは、的確かつ正論だった。

 この国に「勇者」として召喚されてしまった僕たちにそれが可能かどうかは別としてだ。


百市もものいち殿。拙者、早いところケモミミ王国へ移住したいのでござるよ。ケモミミがいる以上、この異世界のどこかに、そんな桃源郷が必ず存在するはずなのでござるよ!」

「お前も落ち着け。まだ、決まったわけじゃない。それを知るための聞き込みだ。」


 そんな、欲望ダダ漏れの話にため息をつきつつも、僕たちは再び城を抜け出して、城下町での情報取集に勤しむのであった。



 情報収集には、お金が必要だ。

 話を聞こうにも、相手だって世間話程度なら何とかなっても、明らかに情報収集しようとしている相手なら、足元を見てくる。

 つまり、金を要求してくる。

 商店なら、品物を買えと、酒場や食堂なら、注文しろと要求してくる。


 いいじゃないか。

 なんだか異世界っぽくて。


 しかし何だな。

 この僕が無一文とか、どんだけだよ。

 金ならある、が口癖になっていたくらいだったのにな。

 ないなら、稼げばいい。


 と言うわけで、当たり前にあった冒険者ギルドを覗くと、すでに見知った先客がいた。


 守道もちだった。


 あいつにしては、考えた行動だった。

 口数の少ない、と言えば聞こえはいいが、単に口下手なだけだと言うこともできる。

 そんな彼を知る僕としては、どうやって情報収集したのか、知りたいところではあった。

 十中八九、パンチで口を割らせたのではないかと思っていた。


 奴とて、7組の仲間だった。

 それなりに頭が回るらしい。


守道もち。冒険者になったのか?」

「そうだ。昨日なった。ボスがそうしろと言っていた。効率的だ。」


 既に依頼をこなし終えて、その手には貨幣の入っていると思われる袋があった。


「これで、情報を買えばいい。」


 しかし、そこからが彼にとっての難場だった。

 昨日は何とか依頼をこなして、大金を注ぎ込み、僕がただで手に入れてきた情報を手にしていた。

 なんとも馬鹿らしいとも思うが、彼はこう言うのに疎い、真っ直ぐな性格でもある。


 もう、長い付き合いなんだ。

 「ダメンズ」は、異世界風にいうのならパーティーと言ってもいいだろう。

 ならば、その次にすることは決まっていた。


「お前もわかる通り、口なら僕の方が立つ。情報を買うなら、協力しないか? 僕の口八丁で情報を安く聞き出す。君はお金を払う。効率的だろう?」

「そうか。確かに。それで。」

「その前に、僕も冒険者登録をしておきたい。異世界に来たんだ。それくらいやっておかないとな。」

「分かった。着いてくるといい。」


 言葉少なく守道もちは、僕をたくさんあるカウンターの一つに連れてきた。


「あら、モチさんのお友達? あなたも登録するの?」

「そうです。モチがお世話に?」

「はい。寡黙な方で、痺れますよね。周りの方がバカにしたり囃し立てたりして、違う意味で痺れさせていましたよ、昨日は。」


 すでに彼の「パンチ祭り」は終わった後だった。

 これが後の祭りと言うのだろう。

 それでか。

 周りの視線が微妙に痛い。


 情報収集する上で、ハードルが上がっているじゃねぇかよ。

 なんてことしてくれるんだ。

 それで、素直に協力を受け入れたのか。

 僕でも、これは難易度高いぞ? おい。


「じゃあ、ここに手を置いてくれるかな? ステータス転送するから。」

「はい。」


 難しいことはわからないが、そう言うものなのだろうと右手を水晶玉の上に置いた。


「はい。モモノイチさんね。冒険者タグができたわ。これを首につけておいて。タグを握って、『パネルオープン』って言えば、操作パネルが出るから、後はその指示に従って? 冒険者マニュアルとかも入っているから、死にたくなかったら読んでおくといいわ。」


 そう言われて、銀色の首飾り付きのタグを受け取った。

 すぐに解放された。

 王都の冒険者ギルドは忙しそうだ。

 すぐに次の人の対応に移っていた。


「職業はどうする?」


 守道もちが、不思議なことを聞いてきた。


「いや、勇者なんだが。僕たちみんな。」

「違う。勇者は『称号』で、『職業』じゃない。」


 なんだと?

 勇者って職業で無双できるんじゃなかったのか?

 異世界ものだろ?

 日本人の知識を有効活用して、無双するんだろ?


 そして、気に食わない奴らを片っ端から「ざまぁ!」していくんだろ?

 していくんだよな?


「後で、職業安定署にも連れていく。職業があれば、モンスターを討伐しやすくなる。」

「確かに。システム的に大抵はそうだよな。分かった。で、後で、ということは、その前に何かすることがあるのか?」

「ここの酒場で、情報収集だ。忘れるな。」

「お、おう。まかせろ。」


 忘れていた。

 ちょっと、冒険者気分になって情報収集とかどうでも良くなっていた。

 ここから、僕の冒険と活躍の物語が始まると思っていた。

 モンスターをバッサバッサと討伐する予定になっていたよ。



 酒場ででかいの(守道)とチビ(僕)が、異種族の情報収集をしている。

 そう言う噂が流れるのに時間はかからなかった。

 金払いがいいと言うので、チンピラ達が押し寄せてきた。

 僕が口先でいなし、手が出てきたやつには、守道もちのパンチ祭りが。


 案外いいコンビなのかもしれない。

 結果として、昼前には目的の情報が集まってしまった。

 そして、昼ごはんを食べていた。


「いいのか?」

「お前、よくうまいものご馳走してくれていた。逆にオレがご馳走できる機会は、今くらいだ。気にするな。」


 守道もちの奢りで、異世界らしい食事にありついていた。

 パンは硬かった。

 歯がダメになるかと思った。


 周りを見て理解した。

 パンはちぎってスープにつけて、柔らかくしてから食べるもの。

 そうしないと、そもそも味もないので美味しくない。


 スープには、ほとんど肉入っていない。


 根菜類と葉物野菜がメインだった。

 香り付けに、ハーブの様なものがのっていた。

 ミントの様な匂いがした。

 水も、ミントの様な香りがした。


 そして、それだけだった。


「うまいが、どうなんだ? お前は体が大きいから足りないんじゃないのか?」

「いい。城に帰ったら、厨房でいくらでも食べられる。今後のことを考えたら、街の食事に慣れておいた方がいい。」

「そういうことか。」

「そうだ。たくさん注文すると目立つ。金を狙われる。」


 ああ、荒くれ者と盗賊達の世界という感じがいい。

 異世界に来たって感じ、半端じゃない。

 そして、城下町に出張って2日目なのに、完全に順応している守道もち

 お前も半端じゃない。何者だよ?


 後に、彼が有名なMMORPGの無課金勢廃プレイヤーであったことを知ることになるのだが、それは今じゃない。


 情報も収集し終えたので、城に帰ろうとしたら、腕を掴まれた。


「職安に行く。」


 ああ、そういう約束だったな。

 僕は、守道もちによって、職安に連行されてしまった。

 なぜ?



「なんじ、もものいち。はんざいしゃでないことをちかうか?」


 職安で神官のような爺さんに、職安と関係なさそうなことを確認された。

 少なくとも、この世界にきてほとんど日がない。

 犯罪者になるはずもない。


「誓おう。」


 そう答えた。

 僕の周りに光の壁ができ、その中を光で満たした。

 一瞬だけ、視界が白で埋まる。


 しかし、何も起こらなかった。

 後で聞いたところによると、犯罪者ならここで、「犯罪奴隷」にジョブチェンジするらしい。

 勇者は称号なのに、犯罪奴隷は職業なのかよ?

 納得いきません!


「よい。では、はじめよう。なんじ、もものいちのてきせいなしょくぎょうは、『しょうにん』、『ぎんゆうしじん』そして『ゴールドフロッグ』じゃ。」

「いや待て! 『ゴールドフロッグ』って、何だよ! いくら顔がガマガエル顔だからって、それはひどいだろ!」

「なんじには、そのてきせいがあるとでておる。うるとられあじょぶ、じゃ。おおきなフロッグにへんしんしてたたかうのうりょくもてにはいるぞい。このあたりではほぼむてきじゃ!」


 いや、ダメだろ。

 冒険者としてほぼ最強だと言われても、人間辞めちゃだめだろ。


百市もものいち。私情はすてて、それを選べ。大魔王討伐にはかなり有利なはずだ。」

「『ゴールドフロッグ』になると、ぶつり・まほうダメージをはんぶんカットするジョブとくてんがつくぞい。レベルがあがると、カットりつもあがるぞい!」


 すごい、ゴールドフロッグ押し。

 守道もちまで押してくる始末。

 もうそれでいいよ!


「じゃ、それで。」

「よい。なんじが『ゴールドフロッグ』になること、くにとかみとがみとめよう。」


 そして、さっきと同じ光の柱に包まれ、眩しい光に視界が消えた。

 元に戻ったけれども、何の実感もない。


「『フロッグ』ととなえるのじゃ。フロッグにへんげできるぞい! もとにもどりたいときは、そう、ねんじるだけでよいぞ! しゃべれぬからの。」


 服を脱いでから、試しにフロッグになってみた。

 かなりデカくて、職安の人たちはびっくりしていた。

 狭いところとか、ダンジョンでは使えない能力だなこれ。

 具体的には体高だけでも3メートルはあった。


 もちろん、元に戻った時は全裸だった。

 女性の職員が顔を両手で隠しながら、キャーキャー言いつつ、鼻息荒くもその指の隙間から僕を覗き見ていたことは、決して忘れはしない。



 夕方まで、守道もちと2人で、城下町の外の森まで出張って、ギルドの常時依頼として出されている魔物を討伐しまくっていた。

 フロッグつえぇ。

 このあたりなら、ほぼ無双できそうだった。

 武器・防具がいらないのが特に経済的だった。


 懐がかなり温まったところで城に戻り、夕食を食べた。

 城内では、クラスメイト達が色々と問題を起こしていたらしいことも伝え聞いた。

 今の僕たちには、関係ないし、眼中にもない。

 そして、何事もなかったかの様に、今日、2回目の作戦会議が開かれた。


 

「ケモミミっ娘王国は存在した!」


 それが僕たちの第一声だった。


「本当か!」

「マジでござるか? 百市もものいちどの!」

「本当だ。オレも一緒に聞いた。」


 驚く2人。

 やはり、ギルドの力とお金の力は大きかった。


 ちなみに、その情報はこうだった。


 どうやら、この国では、奴隷扱いのケモミミっ娘だが、周辺他国ではそうでもないらしい。

 なんなら、ケモミミっ娘だらけの国もあるらしい。

 通称、荒波の国。

 人間が住むには、厳しい環境の国らしい。


 自然と、ハードな環境に耐えられる種族中心の国が出来上がったらしい。

 あと、北にある帝国では、種族差別や奴隷制度は厳しく禁止されているそうだ。

 それどころか身分制度もなく、貴族とかも存在しないらしい。

 なんでだよ!

 なんで、お前らそんなに極端なんだよ!


 会合としては、吉澤ボスが興奮気味に仕切っていたのだが、結論はみな、一緒だった。

 じゃあ、なんとかその桃源郷に行こうよ作戦会議が始まった。


 荒波の国ってところが、ケモミミ王国だと言うことが分かった。

 なんとかそこへ行ける様に手配しようということになった。

 問題がいくつか出てきた。


 吉澤ボスが城内から調達してきた地図によると、その桃源郷は、この城から見ると遥か北西。

 高い山をいくつも超えた先にある、通称の通り、海のそばにある国。

 そして、海は常に荒れていて、漁とか無理らしい。


 問題はまず、その国の過酷な環境が、人間向きじゃないこと。

 でも、ケモミミスキーの前に、その程度の障害は意味をなさない。

 現代日本の知恵を集結すれば、どうにでもなるだろう。


 次に、辿り着くまでの行程が厳しすぎること。

 4000メートル級の雪山を、この真冬にいくつも踏破する必要がある。

 普通に考えれば単なる自殺行為だ。

 しかし、そんなもの、僕たちの心を折る材料にすらならない。


 最後に、これが一番問題なのだが。

 王国が、勇者を召喚した王国が、果たしてそれを認めてくれるかと言うこと。

 逃亡者として、追手をかけられてしまうのではないかと言う心配があった。

 返り討ちにしてくれるわ! と吉澤ボスが頼もしく吠えていた。



 こうして、「ダメンズ」は、荒波の国へ向けて出発することになった。

 次のオーダーは、それを具体的に可能とする方法の模索だった。


 そう。

 三度、吉澤ボスから情報収集の指令が下ったのだった。

ブックマークがじわりじわりと増えて、うれしいことこの上ありません。

増えているのを見て、テンションが上がり、無駄に文章が長くなりがちなこの頃です。

PVも最近だいぶ増えてきて、1日で1,000を超えてくるとかびっくりです。

ありがたいことです。


さて、本文の話です。

異世界に来たキモオタって、こうなるよねって話です。

もちろん、今のところ順調なようですが、立ちはだかる壁は普通に考えれば無理な壁です。

でも、こう言う人たちって、普通の人が無理だと思う様なことを、何とかしてしまうことが多いですよね。

コミケとか見ていると、いつもそう感じます。

一般人では、そんなの作るの無理だろ? って作品、いっぱいありますしね。


さて、明日もこの続きからです。

なんか、突然、プラモデル組み立てるんじゃ〜! とか言ってはまったりしていなければ明日の12時過ぎに。


訂正履歴

 国過酷 → 国の過酷

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