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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第5章 辺境じゃないですから!
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第58節 温泉の街 コソナ

温泉回です。


詐欺っぽいけどほんとですよ?


それでは、どうぞ。

「ん? ヨーコー嬢王国のウーバン村支部だと? 知らない国だな?」


 僕は、取調べを受けていた。

 さっきの金色騎士(仮)直々にだ。

 冒険者ダグの確認によって、ヨーコー嬢王国のウーバン村支部で、冒険者登録したことが発覚している。


 レインの告げた通り、ヨーコー嬢王国は、女神と国とが認めた公式の国だ。

 ただ、周知されていないだけで。

 しかし、冒険者タグの様に、神の力とかが働く魔法アイテムには、効果が出てしまう。

 つまり、すでにウーバン村は、サッシー王国の所属ではないのだ。


 しかし、この頭の硬い金色騎士様は、部下にどこにある国なのか詳しく調べさせていた。

 もちろん、誰もが知っていて、そして知るわけもない。

 まさか、隣の村が、別の国になっているとか普通考えないし。


 場所的に、攻め込まれにくいし、入り込みにくい。

 そして、守るには固い天然の要塞が3方にひろがる。

 そもそも、ウーバン村を制圧するなら、その前に手前のミャオー町を制圧しなければならない。


 そんな基本が頭に完全に叩き込まれていた兵士たちには、理解できなかった。

 だから、ぼくは教えてあげたかった、というか何度も教えていた。

 そのウーバン村は、君たちのよく知っている隣村のことですよと。


「だから、何度も言っている様に、隣のウーバン村から来たんです!」

「そうなのです! 山越えしてきたのです。冬だと思って油断して、街の入り口に人を配置しておかなかったそちらのミスなのです!」

「いや、不可能だろ。お前たちの装備で、あの雪山を超えてきたとか、誰も信じないぞ?」

 

 全くもってその通り。

 返す言葉もございません。

 そして、あっさりと取調室に侵入してきたレイン先生。

 怖いもの知らずだな、おい。


「あと、隣のウーバン村、タグにある通り、別の国になったから。」

「そうなのです! 分離独立したのです! 女神様が認めたのです!」

「いや、独立って、あんなとこだけ独立しても、国としてやっていけないだろ?」


 全くもってご指摘の通りです。

 だから、苦労しているのです。


「いや、しかし待て。冒険者タグの記録は、神の認めた記録だ。嘘はない。何か他に証拠はないのか?」

「あるのです!」


 そして、火に油を注ぐレイン。

 女神様の、スクロール、消えちゃったからね。

 レインがとりだしたのは、ガーター辺境伯の書いた書状。


「む、これは、辺境伯の字だな。何が書いてあるんだ? ん? は? なんだと? ここもか? ここもなのか? なんじゃきょりゃ〜!」


 金色騎士(仮)が、その書状を破らん勢いだったので、レインが空間魔法ですぐに取り上げた。


「どうなのです? 間違い無いのです。」

「そ、そうだが、そうだが。それどころの話ではないだろうが!」


 机を両手でばんっと叩きつけ、金色騎士(仮)は叫んでいた。



 そして、一旦、取調室から出ていく金色騎士(仮)。

 入れ替わりに入ってきたのは、年配の男性兵士だった。


「隊長に随分絞られた様だね。すまないね、頭の硬い騎士でね。」


 なんとなく、この人の方が話が通じそうだ。

 そう思ったのだが。


「ふぇ? 魔族の人に言われてもって感じですよ?」


 なんだと?

 レイン先生、そんな明後日の方向につっこみをいれてくるとは思いませんでしたよ?

 こいつ、この国の兵士じゃ無いのか?

 魔族なのか?


「な、何を言っているんだい? 魔族なわけないだろう? これでも、国境警備隊は結構強いんだぞ? そうそうやすやすと魔族が入り込めるわけないだろう?」

「よいのですよ。よいのです。精霊レインが命ずる。真の姿を真の姿に。ディスペル!」


 なんか魔法唱えましたね?

 ほんとにレイン先生は、トレインの精霊っていう設定忘れていらっしゃるんじゃないでしょうか?

 ちょっと、自重して欲しいところです。


 それはそれとして、兵士はツノとツバサのある黒っぽい魔族だった。

 そして、10秒経たないうちに魔法を唱えて元の兵士に戻った。


「な、何のことですかな? 魔族などと言いがかりもいいところです!」

「いや、さすがに今のは無理だろ?」

「そうなのです。すぐに変身しておけばバレないとか、悠長すぎるのです!」


 そこに、金色騎士(仮)が帰ってきてしまった。


「た、隊長。こいつらが私のことを魔族だって言い張るんです! なんとか言ってやってください!」

「いや、副長。おまえが魔族なのは皆知っているぞ? 流石に真の姿をチラチラ見せられては、誰でも分かるだろう? お前を討伐するより、まじめに仕事をしてくれるのでこき使った方がいいんじゃないかという、皆の優しさだ。感謝するんだな。」


 なんて大雑把な職場だよ!

 魔族からの侵入を防ぐのも仕事のうちじゃないのかよ!


「ふぁ? なんですと? すでに皆にばれていたのに、生暖かい目で見守られていたというのですか?」

「そういうことだ。先方は、この大きさで空を飛んでいるんだ。魔族でなければ精霊だろう。出会った時から魔族とバレても不思議じゃないと、どうして思わなかったんだ?」

「いや、でもですよ? こいつこそ魔族かもしれないですぞ?」


 何やら内輪揉めに発展してしまった。

 残念なのは、レインだけでなく、兵士たちの間でも、すでに魔族だと発覚していたこと。

 討伐しておけよ。


「なぜ、討伐しなかったし? 被害が出てからでは遅いんだぞ?」

「こいつらは、魔族だからな。悪魔と同じで契約にはうるさい。考え方自体は相容れないが、我々人間よりもかなり真面目で実直だ。部下として使う分にはこれ以上ない逸材だぞ? もっとも、魔族らしい考え方をするから、頻繁にトラブルを引き起こすのだがな。」

「いや、それはそれとして、明らかにスパイでしょ? 情報流されまくっているよ?」


 副長と呼ばれていた魔族の兵士がうんうんと、何度もうなずいていた。


「はたして、その話をうけとった上官は、そんな虫のいい、こいつの話を鵜呑みにすると思うか?」

「まあ、普通は信じないだろうな。」

「ああ、そうなのですよ。あまりに杜撰なのです。逆説的に、説得力がないのです。」

「そうだ。あり得ないことに警戒するならば、副長の話は信用されない。騙されていると受け取るのが普通の上官の判断だろう。」

「なんてことだ。なんてことだ!」


 副長は、めそめそと泣いていた。


「僕は、真面目に仕事をしていただけなのに。何がいけなかったんだろうか。どこで選択肢を間違えたのだろうか。」


 自分の世界に入っていっている様だ。

 ちょっと可哀想になってきた。

 でも、魔族だしな。

 だから、ちょっとだけ慰めてあげた。


「いや、君は、何も間違えてはいないし、仕事はきっちりとしていた。それは誇っていいことだと思う。ただ、相手が悪かっただけだ。こんな杜撰な隊長のいるところに入り込んだのがいけなかったんだよ。」


 しかし、その言葉に隊長はやや激昂してきた。


「いや、お前は何も分かっていない。よく考えてみてくれ。私は騎士だ。物理専門だ。そこそこ強い自覚はあるが、魔族に対抗できるとなど思っていない。つまり、副長を討伐することは到底できないのだ。他の兵士たちもそうだ。だから、泳がせていた。」


「ダメじゃん。」


「隊長、隊長とは何度も手合わせをして、一度も勝てたことがありません。魔族を買い被りすぎです。」

「そうなのか?」

「物理だけなら圧勝だ。だが、魔族の本質は物理じゃない。むしろ、物理は苦手な部類なものが多いと聞く。魔法との連携があって、はじめてその脅威を測ることができるのだ。」


 隊長も副長も、相手が強すぎて手を出せないと思い込んでいた様だった。

 でも、この話からすれば、隊長の言う通り、魔法を使ったら魔族の副長が圧勝するのではないだろうか。


「で、どうするんだ? みんなにばれていることが、副長にバレてしまったのだが。」

「本人次第だ。同族の元に任務失敗と言って戻るもよし、私と最後の決闘をするもよし、このままここで副長として国境警備の任務に励むもよし。」


 いや、懐深すぎるだろう。

 なんで受け入れちゃっているの?

 ダメじゃん。


「田舎に帰って、畑でも耕して過ごします。上司に報告しても、このままではなんなら処刑されてしまうかもしれません。ならば、今の仕事をやめて、細々と家族4人で暮らしていきます。」

「おい、家族がいたのか? おまえ、女子から結構人気があったのだが。」

「不倫はいけません。当事者以外皆を傷つけます。私には愛する妻も子供も愛人もいますので。」


 ダメじゃん。

 どう考えても不倫してるじゃん。


「そうか。寂しくなるな。ちなみにどこなんだ、田舎は。」

「はい。ノルトシー王国のさらに北のサッカリン魔王国です。その一番北にあるアキハという町に暮らしています。」

「遠いな。どうやって帰るんだ?」

「魔族ですから。飛んで帰れます。」

「まあ、そうだろうな。次の副長を、指名してからにしろよ? 帰るのは。」

「わかりました。ならば、私の一番の部下。ポーロが良いかと。」

「いや、だめだ。ポーロだけはダメだ。一緒に国に帰れ。」


 他にもいたのかよ、魔族。

 しかも、そいつを副長につけようとするのかよ。

 どっちもどっちだな。


「わかりました。それでは、ミーシャ、副官にはミーシャが適任かと。」

「伝令のミーシャをか?」

「そうです。隊長とは息がぴったりあっています。剣の強さはまだまだですが、隊を率いるという点に関して言えば、あなたが隊長でいる限りは、彼女が適任です。」

「でもなぁ、あいつ、おまえの愛人だろ?」

「め、めっそうもない。」

「のろけてたぞ、あいつ。おまえが、もう妻とは別れるって言っていたって。」


 だめじゃん。

 とってもダメじゃん。

 この国境警備隊、大丈夫なのかよ?

 早くなんとかしないと。


「その、ポーロさんを連れてきて欲しいのです。」


 突然レインがそう言い出した。

 特に反論することもなく、ポーロが連れてこられた。


 ポーロは、少年というか青年というか微妙な年頃の男の子だった。


「息子のポーロです。」

「親父が、迷惑をかけてすまない。」


 礼儀正しいのか、そうでないのかはっきりして欲しい挨拶だった。

 確かに言われた通り、よく似ていた。


「それでは、回収するのです。悪・束・(BAN)!」


 レインが早口で呪文を唱えると、一瞬、カメラのフラッシュの様に当たりが光ると、光が止んだ時には、副長とポーロの体は消えていた。

 服とか装備品とかが、床に音を立てておちていった。


「な、何をする!」


 突然のことに、隊長はレインに向かって叫んでいた。


「魔族は、この世全ての生き物の魂を掠め取って作られた存在なのです。見つけ次第回収しないと、世界から、普通の生き物がいなくなってしまうのです。女神様の管理する魂から外れてしまっていたのを、女神様の元に戻しただけなのですよ?」


 レインは優しく諭す様に言う。


「き、貴様は何者だ!」


 その時、突然、取調室の外が騒がしくなってきた。


山神様やまのかみさま、今、隊長は取り調べ中でして、勘弁してください。」

「レイン様に用があってきたの。放して。」

「いや、山神様、放したら、取調室にはいられますよね?」

「そうよ。そのために来たのだもの。」


 そして、最近知り合った声の主が現れた。


「レイン様! 大丈夫ですか? 酷いことされていませんか?」

「いや、今、レインが酷いことしていたんだが。」


 部屋に入り込んできた兵士の中にはミーシャもいた。

 副長の甲冑に抱きつき、匂いをすんすん嗅いで、レインをキッと睨んだ。


「なんて酷いことするの!」


 そう言って泣き叫び始めた。


「あ、ああ。こうなるとミーシャは手がつけられなくなるんだ。」


 呑気なことを言う隊長。

 傍観する兵士たち。

 そして、なぜがミーシャに胸を拳で叩かれ続ける僕。

 どうしてこうなったし?


「ああ、遅かった。遅かったの。レイン様は容赦ないから。」

「魔族に、悪魔に、大魔王には容赦はしないのです。レインは酷い目に遭わされているのです。絶対にゆるさないのですよ!」


 そして、隊長が、山神様に尋ねた。


「山神様。貴方様が、『様』付けで呼ばれる方ということは、このレイン様は何者なのです?」

「精霊の上位のもの、とだけ知っておいてくれればいいわ。私よりも上位の。」


 どんだけ偉いんだよ、トレインの精霊様は。


 精霊って言うけど、日本で言えば、トイレの神様とか農業の神様とか、そういう神様とかと、同義くらいの感覚なのかもしれない。

 概念で言えば、トレインという言葉は、かなり大元の言葉だ。

 ○○の神様式に言うなら、山神様のいうとおり、上位精霊なのだろう。


 それこそ、魔族を一瞬で消滅させることができるくらいには。

 おそろしいな、レイン。


「れ、レイン様。ご無礼をお許しください。」


 隊長が、跪いてそう言ってきた。


山神やまのかみは、おしゃべりなのです。言い過ぎなのです。こんなに態度が変わってしまってやりにくくなったのですよ?」

「それは、レイン様が自重されないから。」

「これからは、少しは自重するのです。気をつけるのです。」


 そして、レインは隊長の頭に、チョップをくらわした。

 全く痛そうにないところが、ほほえましい。


「隊長は、自分の仕事をしたまでなのです。問題ないのです。これから、コソナの町をガーター辺境伯領から、ヨーコー嬢王国領に書き換えるのです。この街の町長はどこにいるのです?」


 きょとんとしてしまう隊長。

 しかし、すぐに返答した。


「ここ、コソナの町は南北に長い町です。ですから、大きく3つの区画に分かれています。今いるここが、『オールドコソナ』。コソナ砦ができるのと同時期にできた町です。その南、この街の中心部にあるのがサンコソナ。サンコソナはビーチあり、温泉ありのリゾート地です。町長は、今そちらの庁舎で執務に当たっているはずです。」


「分かったのです。それでは、そこに向かうのですよ!」


 有無を言わさず、取調室から僕を引っ張り出すレイン先生。

 すぐに、他の人たちも解放されたので、その足でサンコソナに向かった。



 サンコソナは、オールドコソナの南端からおよそ2時間の距離にあった。

 すでに、同じ街というのが難しい距離だった。

 ウーバン村と、ミャオー町でも、ここまで離れていない。


 そして、サンコソナの入り口には長くて大きな橋がかかっていた。

 幅の広い川からは湯気が上がり、そのまま、海へと注いでいた。


 注目すべきはそこじゃない。


 川の中には、素っ裸の人たちが、思い思いにつかっていた。

 これ、川が丸ごと温泉なのかよ!

 場所によって温度が違うから、位置を変えることで自分のベストな温度にできるっぽい。


 そして、川のサンコソナ側には、洗い場の様なものや、更衣室の様なものがあった。

 壮大な、大、露天温泉だった。

 しかも、源泉掛け流し。

 これをそう表現してもいいのかどうか悩むくらいだ。


「マスター! 早く脱ぐのです! 温泉に入るのです!」


 すでに待ちきれなくなって、タオル一枚を腰に巻いた状態のレインが催促した。

 そうですね。

 空間魔法持ちがいると、更衣室の意味、ないんでしたね。


 橋を渡って、川面に近づくと、レイン先生の空間魔法で、僕の服は奪われていた。


「温泉! なのです!」



 マインウルフまで含めて、全員で露天風呂につかる。

 かなり、癒される。

 そして、レインに抱きつかれていた。


「水深が深すぎるのです。もっと浅いところが安全なのですよ? 流されるのですよ?」


 どうにか、自分のベストポジションである浅瀬に連れ込もうとするレイン先生なのだが、そこにいってしまうと、僕の方はへそくらいまでしかお湯に浸かれないのだ。

 でも、まあ、つきあってやるか、仕方ない。


 そして、浅瀬にいくとレイン先生は大満足だった。

 ラストとロッコに、何度もお湯をぶちかけられた。

 湯冷めしない様にとの、やさしさ半分、水遊び半分。



 そして、心ゆくまでいやされるのであった。

ブックマークと評価ポイントをいただきました。

有難うございます。

今後の励みにしたいと思います。


それでは,今回のお話しについてです。

今日は、バレているのになぜか排除されておらず、なんならいい様にこき使われている魔族のお話でした。

そして、レイン先生は容赦無くバンしました。

今回はちょくちょく、重要な設定のお話も入り込んでいました。

でも、そんなのは作者以外にとって重要なところではないのです。


温泉回ですよ温泉回。

でも、書いていて気がついてしまいました。

今回コソナにきているこのパーティーには巨乳が足りないと。

なんならみんな、そうじゃない派だったと。


ああ、パーティー編成考え直すんだった。

いまから大岩井さん呼んできますわ!


それでは、大岩井さんにボコされて、再起不能になっていなければ明日の12時頃に。

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