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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第4章 ウーバン村(ヴィレッジ)の死闘
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第48節 冒険者的なものの見方・考え方

今日のお話は、「冒険者としての見方・考え方」を育てようという観点です。

主人公が袈裟斬りにされてしまいましたので、袈裟斬りにした方の視点から世界を見てみましょう。

現実世界でもそうであるように、それぞれの立場で、それぞれの正義があるものなのですね。

相入れない時、そこに紛争が発生します。


今日はそんなお話です。

では、どうぞ。

 ガーター辺境伯領。


 その中心に位置するミャオー町。

 そしてそこを支配地とするガーター辺境伯。


 俺は、その部下で兵士長のストライクだ。

 辺境伯とは随分長い付き合いになる。

 もちろん、腐れ縁、古い友人としてだ。


 ガーター辺境伯は、名を「オーンズ」と言って、これまでいろいろな領土を治めてきた。

 今でこそ、辺境伯までのし上がったが、元々は一介の冒険者だった。

 いまでこそ、お「貴族」様だが、元々は平民。

 それも、孤児だったと聞いている。


 それゆえ、元来の貴族たちからは忌み嫌われ、馬鹿にされ、嘲笑の的とされてきた。


 俺としては、主君となるべき相手というよりは、昔から一緒に馬鹿をやってきた相手だ。

 よく、冒険者として一緒につるんで、クエストに挑んでいた。

 そして、ひょんなことから悪徳領主に陥れられて、殺されそうになった。

 そこを、偶然通りかかった男に救われた。


 今でもこの男のことはよくわからない。

 ただ、冒険者としては、とても強いと感じた。

 大抵のものは、そのどす黒い短剣で一刀両断していた。

 スカウトらしいのだが、そんな枠に当てはまる強さじゃない。


 男とはその時から、ごく稀に出会うことがある程度の関係だった。

 名前も顔もわからないが、声は同じだ。

 そして、恐ろしいくらいの強さも。



 悪徳領主を瞬殺したのはその男だったのだが、その功績で、オーンズは領主代行とされた。

 そして、オーンズを中心として4人いたパーティーのメンバーがそのブレーンとなった。

 貴族たちからはブーイングが。

 領民からは称賛が。


 しかしその称賛も、そう長くは続かなかった。



 なぜかはわかると思う。

 俺たちは、冒険者ではあっても貴族ではなかった。

 もちろん、貴族のやり方は知らないし、領主としての仕事の流れもわからない。

 手探りでの領主としての生活は、長くは続かなかった。


 結論から言えば、貴族たちの腐敗が原因なのだが、そんなことは領民にはわからない。


 悪徳領主が治めていたくらいなのだから、もちろんそれを支えてきた貴族が腐っていないはずもない。

 できうる限りの腐敗があったのだが、領主としての領地経営でいっぱいいっぱいだった俺たちには、そのいっぱいいっぱいになった原因が、そもそもその腐敗あることすら気づくことすらできずに、失脚した。



 国王に呼ばれ、移封となった。

 左遷だ。

 さらに田舎の狭い領主として派遣された。

 今度の領地には、貴族がいなかった。



 その代わり、ならず者がたくさんおり、今までの領主たちもサジを投げて短期で異動していった。

 まさに、元冒険者である俺たち向きの領地と領民だった。

 ならず者たちを各個撃破して配下にしていった。

 殺すなんてもったいないことしなかった。


 ならず者なのだから、配下にすればもちろん悪いことをする。

 領民のことよりも、自分の欲望を満たすことしか考えない。

 だが、それでいい。

 わかりやすくてとてもいい。


 8年の歳月が過ぎた頃には、俺たちに討伐されていないならず者はいなくなっていた。

 ならず者がいなくなったわけではない。

 何ならほとんど全員生きて領民となっていた。

 蛇の道は蛇。


 ならず者たちが、それぞれ領民として自分の欲望を満たすために頑張った結果。

 後ろ暗いところは多いものの、領地は10年前とは比較にならないほど栄えた。


 例えば、商売のうまい奴が、他の領地からたくさんの金品をせしめてきた。

 決して褒められた方法じゃないことは聞かずともわかる。

 だが、それでいい。


 金回りがいい奴が一人できると、どう生活しても、その生活を支えるために、その周りの金回りも良くなる。

 そして、そのことによって金回りが良くなった奴の周りも、金回りが良くなって。

 循環することで、時間をかけて金回りのいい領地になっていた。


 だが、その歯車も長いことうまくいくとは限らない。


 領地経営に関する不正だとかどうだこうだと突かれ、王都の大貴族から、領地を取り上げられた。

 そして、不毛の大地が広がる、古い町を中心とした領地へと移封された。


 そこでは、領主ですら食うものに困るほどの生活。

 前領主に至っては、餓死したと聞いた。

 領民の話では、とんでもなく清貧な領主で、「いい人」だったらしい。

 領主の人気は高かったが、評価は低かった。


 いい人だったので頑張ったのだが、成果は一つとして上がらなかったからだ。


 でも、それは、その前の領主も、その前の前の領主も同じで。

 下手げに人間性の良い領主なだけに、領民の期待値が上がり過ぎて、ハードルが高くなって。

 結果としては同じであったものの、領民の落胆は大きかった。


 そこへ来て、不正だなんだと、黒い噂の絶えないパーティーリーダーのオーンズが領主として来たのだ。

 そう言う意味で、領民たちは俺たちに、何の期待もしていなかった。

 これは、ある意味、前領主にお礼を言わなければならないほど有利だった。


 この領地経営でも、冒険者としての知識と知恵、経験が役に立った。


 まず、不作。

 食べ物を確保できなければ、どの道前領主と同じ道を辿ることとなる。

 食料の調達が、急務だった。


 俺たちが不思議だったのは、そんな貧しい領地から夜逃げしない領民たちだった。

 もっと豊かな土地に引っ越すことが叶えば。

 そう言う思いはなかったのかと、聞き込みをした。


 そこで、俺たちは自分たちの思い違い、前領主の失敗に気がついた。

 領民が生きていると言うことは、何らかの手段で生き延びられると言うこと。

 その手段に行き着いた。


 ダンジョン。


 この不毛な大地の広がる領地には3つの隠しダンジョンがあった。


 隠しダンジョンというからには、巧妙に隠された、国の把握していない、危険なダンジョンだった。

 だが、その3つのダンジョンは、それぞれ性質は異なるものの、不毛な地上と比較すれば、そこそこ豊かであった。


 そこで、住民たちは、その住居にカモフラージュしたダンジョンの入り口を秘匿しつつ、そのダンジョンからの収穫で、なんとか生き延びていた。

 逆に言えば、ダンジョンに入れるだけの一定の強さを持った住人が何人もいた。

 そして、ダンジョンを秘匿するために、この町には、冒険者ギルドが存在しなかった。


 しかし、腐っても元冒険者。

 流れの冒険者のふりをして街に潜り込んだところ、ダンジョンでの収穫の話を聞きつけた。

 潜り込むこと半年と、随分時間を使ったものだが。

 そして、腕に覚えがあるのならと、ダンジョン攻略へと誘われた。


 ダンジョンには植物系のモンスター、動物系のモンスター、それ以外の物質系のモンスターと、生活必需品が満遍なく生息していた。

 後に、高名な魔術師の調査によって、この領地が不毛である原因は、そもそもダンジョンがエネルギーを吸い取っていることそのものが原因だと知ったのだが、後の祭りだった。


 おれは、領民たちと共にダンジョンに潜り、植物系モンスターを刈り取っては、領民の食料とし、生活雑貨の原料とし、動物系モンスターを狩っては、食料とし、物質系モンスターを討伐しては、家や町の資材として活用していった。


 この活動に、身分を隠してパーティーメンバーの4人が参加することで、この街の経済は、少しずつではあったけれども上向いてきた。

 もちろん領主としてはほとんど何もできなかった。

 でも、領民は、そこのところ、何も期待していなかったので、さして問題はなかった。


 それから8年。

 相変わらず不毛の大地で、周辺貴族からは馬鹿にされ嘲笑され続けたが、町は立派になった。

 俺たちの活躍で、領民の栄養状態が良くなって、俺たちに続くダンジョン攻略専門の冒険者が何人も出てきた。

 そのことによって、街の経済がよくなり、さらに冒険者の数もレベルも上がった。


 周辺の岩石砂漠のような荒野から見るとオアシスのように見えるこの町。

 ダンジョンからまれに発見される、貴重な宝石や武器防具類。

 そして、荒野を踏破できるようになった冒険者が、それらで商売をし、町はさらに潤った。


 それがいけなかった。


 出どころの不確かなこれらの高級品について、王都の欲深い大貴族たちが放置するはずもなく、街の繁栄について、気づかれてしまった。

 そして、移封となった。


 今のガーター辺境伯領へとだ。


 辺境の地ではあっても、いくつかの町や村を束ねるこの領地は、ある意味いたって普通だった。

 俺たちは拍子抜けした。

 左遷的な移封と思っていたのに、普通の領地、しかも辺境伯ではあっても伯爵だ。

 何か罠があると疑いながらも、ここに住むこと8年。


 その間、領地の金回りをよくしようと努力はした。

 ところが、この領地だけは何故だかうまくいかなかった。


 辺境伯領の北に、鉱山があることを知った。

 貿易の大きな武器とするべく、すぐさまその鉱山を自分たちのものとした。

 鉱山を経営していた村から、産出品だけを半ば取り上げるような形で。


 村人たちは反発するが、そもそも産出されるのは僅かな石炭と鉄鉱石と銅鉱石。

 珍しいものなどひとつもなく、村がほとんど繁栄していないのもそれが原因だった。

 しかも、産出される鉱石は質が悪かった。


 しかし、よくよく調べてみると、この辺境伯領は、どうやらこんな細々とした鉱山で支えられている部分もあった。

 山を挟んで海に面した街の海産物と、国境を隣接している北の帝国との、独占的な貿易。

 細々としている、この2本柱を、今住んでいるミャオー街の商売力で何とかしているというのが現状だった。


 どれか一つ欠けても、この領地は経営が成り立たなくなる。

 いわば、自転車操業だった。


 前の領地と違うのは、領民がそれなりの生活をしていること。

 自然が豊かで、生きていくだけなら何とかなってしまうこと。

 それ故に、領主の手腕が直接には生活に関係しないこと。


 これらが相まって、辺境伯の評判は、概ね悪かった。


 そこに来て、鉱山がやられた。

 報告では、鉱山から大量の魔物が湧き出したと、訳のわからないことであった。


 しかし、情報をかき集めると、どうやら国中の、ほかの鉱山でも同様の被害に遭っているらしい。

 そして、村人たちに、なんとかその鉱山を取り返せと無理を言った結果。

 ウーバン村からは、子供以外の男がいなくなってしまった。


 はじめは、夜逃げを疑った。

 だが、村の教会の裏に広がる、真新しい墓所の前では、その疑いも意味はなかった。

 何ならどうかと、俺たちもちょっとだけ潜り込んでみたが、無理だった。

 敵が強過ぎた。


 こんなの、村人がなんとかできるレベルじゃねぇ。


 気がついた時は手遅れだった。


 そして、おれたちは、この村を捨てた。

 そもそも、商売をする連中から、山賊が出て村にたどり着けなくなったと言われた。

 ちょくちょく追い払ってはみたものの、しつこく復活してきて埒が明かない。

 結局、追い詰められていく領地経営のこともあり、次第に放置することとなった。


 その急場を何とか凌ぎつつ1年が過ぎようとした頃、街の狭い流通網に、不思議なものが引っかかった。

 凶悪な強さのモンスターであるホワイトベアーの毛皮だ。

 1枚くらいなら、まあ、帝国との貿易で入り込んだのかと考えることもできた。

 しかし、これが複数枚となると、話は変わってくる。


 ものを確認すると、なめしてから日が経っていないのが分かった。

 しかも、機械的ではあっても一定の水準に達した技量が認められた。

 これは、輸入物とか、商売で流入したものじゃないと気がついた。


 すぐに調べさせると、街のギルドから流れ出たものだと分かった。

 単純に、他の地域で刈り取ったものを、商売で有名なこの町で売り捌いた、それだけのことらしいとの情報だった。

 馬鹿なことを言っている場合じゃない。


 そんな見えすいた嘘に騙されるほどの歳ではなくなっていた。

 いや、そもそもこの話に嘘はないのかもしれない。

 でも、本当に知りたい部分を巧妙に隠しているのは、冒険者ギルドらしくいやらしい。


 そこで、街の後ろ暗い情報屋に金を握らせて、もっと欲しい情報を探らせた。

 その結果、このホワイトベアーは、ウーバン村で討伐されていたことが分かった。

 ウーバン村の冒険者ギルドに、討伐証明として持ち込まれたものだというのだ。


 おかしい。

 ウーバン村がまだ生き延びていたことじゃない。

 ウーバン村からこの街までそんな高価なものを運び込まれたということがだ。


 けっこうなしぶとさの賢しい山賊団は、どうしたのだろうか。


 単純に考えれば、いなくなったとも考えられる。

 なにしろ、ホワイトベアーが討伐されたのだ。

 逆に言えば、ホワイトベアーが徘徊していたことになる。

 もし、山賊団と出逢ったのなら、壊滅していてもおかしくはない。


 逆に考えれば、ウーバン村にはホワイトベアーを討伐できるだけのレベルの冒険者がいる。

 そういうことになるだろう。

 そいつは、俺たちのことをどう思うだろうか。

 俺たちの敵か、味方か。


 あとは、もうひとつ、信用できない不確定情報があった。

 ウーバン鉱山は、ホワイトベアーを討伐したパーティーによって魔物を討伐されていると。

 いまでは、宝石を産出する、優良鉱山なのだと。


 情報の出元は、時折俺たちの前に現れる、神出鬼没の黒いスカウト。

 そしてその証拠として、若干の黒光を放つ、赤色の宝石。

 それを木箱で一箱。

 ネックレスの形なので20個ほど。


 女性が身につけると、魔族から攻撃されなくなり、筋力も男並みに増加するアイテム。

 ただし、一度身につけると、しばらくは外してもらえない、なかば呪いのアイテム。

 それをもらった。


 俺たちはパーティーで検討した結果。

 配下の兵士を引き連れて、鉱山を制圧することになった。

 この、宝石たちが、俺たちの未来を作ると。

 そう信じて。



 そして、村に到着すると信じられないことを言われた。



「ウーバン村は、既に、サッシー王国の領土ではありません。」


 領主のオーンズに向かって、そう言い放った。

 村の看板にも、確かにその旨が記載されている。


「ヨーコー嬢王国ウーバン領ウーバン村」


 そう、真新しい看板で表示されていた。

 嘘と疑うことはしない。

 この、町や村を示す看板は、入り口にある一つだけは、特徴があり、神が与えたものと言われている。

 すなわち、この看板に書かれていることは真実。


 ウーバン村は、ガーター辺境伯領どころか、サッシー王国ですらなくなっていた。


「これはチャンスだ。」


 普段は無口なオーンズが口を開いた。


「俺は、王になれるぞ。新しい国の王を討伐すれば良い。」


 そうして、すぐに作戦は開始され、半日もたたないうちに、この村の村長や、村唯一の商店よろず屋の店員、そして嬢王を確保し、領主の館の地下牢に閉じ込めることができた。

 オーンズは、このままいけば王になる。

 もう、王都の大貴族に、成果を簒奪されることもない。

 俺たちの時代が来た!


 初老に差し掛かっていた俺たちは、そう歓喜していた。

 それは、あたり前で、基本的で、魅惑的な喜びで。

 かつ、致命的な喜びだった。


 

 村の住人から色々と鉱山の話を聞き出したのだが、確かに、嬢王とその仲間たちが鉱山を復活させ、ホワイトベアーを討伐したということだ。

 実際に動いたのは、嬢王の騎士たる「こーへー」とかいう長身の若い男だという。

 まずは、こいつを討伐すべきだ。


 俺たちは正直強い。

 長年冒険者もどきではあったが、並の冒険者よりもよっぽど場数を踏みレベルを上げていた。

 経緯を考えれば、こいつは普通じゃない。

 おそらくは北の帝国を蝕んでいると噂の「魔族」なのだろう。


 それなら位置的にも能力的にも合点が入った。

 この鉱山は、北の帝国との国境にある。

 その上、俺たちでも討伐困難だった鉱山を復活させた。

 しかも、新しく、宝石まで産出しているじゃないか。


 急いで討伐しないと、我が国も、こんな魔族たちに席巻されてしまう。

 俺は、俺たちは、そんな根源的な正義感から、「こーへー」の討伐を決意していた。

昨日の投稿前まで含めて、ブックマークしてくださった方に感謝を。

たくさんの方に読んでいただけると、そのことがさらに他の方にも読んでいただける機会に繋がるようですので。

ありがたいお話です。


そして、本文の方は、ありがたく無いお話です。

主人公側から見た世界と、敵さん側から見た世界が同じであるとは限らないのですよね。

なんなら価値基準とか、考え方とか、前提条件とか。

そういうのを面白く表現できないかなと思っていたところです。

みんな違ってみんないいけど、けんかしないでね?


それでは、明日もこの視点の続きになります。

けんかに巻き込まれていなければ、明日の15時ころに。

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