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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第3.5章 エロい猿渡パーティー発生条件となった過去の日々
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第15話 人脈とネットと異世界と

せっかくエロいのに人気のない(大人げもない)大岩井さんのお話です。

彼女の荒ぶる姿をお楽しみいただければ幸いです。

では、どうぞ。

 今私は、たくさんの犬たちと暮らしています。



 ここは、異世界。

 日本じゃない、と言うことだけはわかるのですが、じゃあ何処なのでしょうか。

  

 その疑問にいい感じに答えてくれそうな相手が今はそばにいます。

 以前なら、いませんでした。


 わたし、そもそも、友達とかいませんでしたから。

 でも、チヤホヤしてくれる男には困りませんでしたよ?

 チヤホヤしてくる男たちには困らさせられましたが。


 私の家は、一家で、と言いますか、何軒か集まって、農業をしています。

 集約農業とでも言えば良いのでしょうか。

 とにかく、広さと人数で、他の耕作者を圧倒する作戦に出た農業をしていました。


 それが元で今まで、たくさんの動物たちと暮らしていました。

 犬は番犬としてたくさん飼っていました。

 広い敷地内で放し飼いにしていました。

 私有地ですから、問題ないはずなのですが、よく、警察とか役所の人に怒られます。


 なぜなのでしょうか。

 勝手に人の家の敷地に入って、噛まれた人は数知れず。

 警察も、役所の人も、泥棒の肩を持つのは何故なのでしょう。

 ですから、犬なんです。

 本当ですよ?

 いえ、ちょっと大きいかもですが、犬なんです。

 え? クマ?

 絶対に違いますから。

 血統証付きじゃありませんので、そこはなんとも。

 でも犬ですよ。

 名前もポチですし。



 あ、失礼。

 話が逸れました。

 

 今の私はぼっちじゃないんです。

 この異世界に来てから、友達とか友人とか言えるような間がらの人たちと一緒にいます。

 素直にこれはいいものですね。

 友達と一緒にいるのは、楽しいものです。

 そして、集団でいることに安心感もあります。

 何か問題が発生しても、みんなでなんとかしようとするのは、大変ですがいいものです。


 その中でも、私がいいなって思ったのは、褒めてくれる人がいると言うこと。

 今まで、たくさん料理して来ましたが、褒められたことなんてあまりありませんでした。

 この間、クマ料理にキクラゲを混ぜてお出ししただけで絶賛されてしまいました。

 私としては、決して納得のいく味ではありませんでしたのに。


 でも、殿方も含めて、皆さん美味しい美味しいと言ってくださいます。

 残さず食べてくださいます。

 これって、すごく嬉しいことなんですね。

 思わず、毎食、ご飯を作ってしまっているところです。



 さて、私の家のお話、ええ、特に私のお父様のお話をします。

 先ほども言いましたが、私のお父様は、大きな農園の経営者です。

 近所の友人と一緒に、広い農園を経営しています。

 農園の規模としては、国内で随一らしいです。


 もちろん、大手スーパーなどと提携して、美味しくて安い野菜を大量生産していますので。

 そうです。経営としてはかなり順調ですね。

 でも、地元の協同組合を通さない手法には、批判があるんですよ?

 ちゃんと協同組合を通してくれって、日々苦情が来ます。


 でも、協同組合を通すと、もちろん値段は組合価格になってしまいますでしょ?

 美味しいのはともかく、安く消費者に届けることはできなくなるようです。

 何しろ、農家の生活のための組合です。

 消費者のための組合ではないのですから。


 それでは敵を作りすぎると、お父様はお考えのようで。

 地元にもそれなりに貢献すべきだと言うのです。

 コストカットとか、経営的には決していい方法ではありませんが。

 地元のその協同組合に頼み込まれて仕方なく。

 機材やら肥料やら農薬やらを、大口で購入させていただいているのです。



 先日来、お父様のご様子がおかしいので、どうしたのかと伺いました。

 信じられないことに、経営がうまく行っていないご様子。

 私も、経営に営農に、多少なりとも手伝いをしているので、状況は理解できます。

 でも、あり得ないのです。


 そもそも、大量の資金の持ち逃げでもされない限り、経営が傾くことはありません。

 肝心の農作物も、問題なく育っていますし。

 なんなら最近始めた、野菜工場なんかは、農薬すら要りませんし、不作もありません。

 畜産業だって、大量の作物を作っている影響で、飼料も資材も安く手に入りますし。


 そこで、何が問題なのか、お父様を問いただしました。

 少なくとも、パソコンの上では、問題が発見出来ませんでしたので。


「なんかな? 協同組合から来るはずの、トラクターとか、肥料とか農薬とか、後、これが重要なんだけどな、軽油とかガソリンとかが、納品されてこないんだよ。」

「どうしてですの? 発注は間違えなくされていましたよ? 先方からも、発注の確認と納期について返答が来ていましたけれども。」

「わからない。ただ、担当者に電話しても、もう少し待って欲しいの一点張りで。もう1ヶ月くらい待っているんだ。まあ、在庫が山のようにあるので、実被害はまだ出ていないんだけどね。」


 私は、パソコンの画面と睨めっこしていてもわからなかった部分に気が付きました。

 そういう人と人の部分は、画面に出て来なかったのです。

 当たり前ですよね、納期遅れますなんて、メールで送ってきません。

 直接謝罪に来るか、最低でも電話で謝るのが普通です。


 ふと、気になったので、調べてみることにしました。

 そして、いくつかの知り合いのメーカーさんにも電話をしてみました。

 流通の上では、どの製品も、いつも通り翌日には納品できる状況を維持できていました。

 なんなら、直接取引しましょうか、明日には納品しますよ? と言われましたけど。


 そのことをお父様にお伝えすると、渋い顔をしてしまいました。

 恩があるのはこちらではなく、先方のはずなのですが、今回は電話すらしてきていないと。

 これは何かあるぞと、お優しいお父様では、一年以上待ってしまわれるぞと。

 そこで、もう一度、それそれのメーカーに探りを入れてみました。


 二日から三日で、それぞれのメーカーから不穏な情報が上がってきました。


 曰く、


「大岩井と取引しないようにと圧力をかけられている。」


と。


 はて、どう言うことなのでしょう。

 間違いなく、大岩井は筆頭の大口取引先のはず。

 普通に経営のことを考えれば、取引しないこと自体、自殺行為以外のなんでもないはず。

 そして、そんなバカみたいなことを言い出したのは誰なのか?


 気になりますよね?

 気になっちゃいますよね?


 私、調べちゃいました。

 メーカーさんも、協同組合を通してではあっても、在庫が捌けなくなるのは。

 みんな、みんな気になって、調べまくってくれました。

 で、結果なのですが。


 まず、一枚噛んでいるのが、この地域の銀行でした。

 経営者の一族は、あれです。

 地方議員さんです。

 そして、私のクラスメイトのお父さんじゃなかったでしょうか。


 そこから、直接に間接に、取引の自粛を求められたと言うのですから、許せません。

 そもそも、協同組合自身、信用組合? 信用金庫? 銀行的なものがあったはずです。

 ですから、地方銀行に何か言われたぐらいで、グラつかないはずなんですが。

 じゃあ、やはり、政治家からの圧力なんでしょうか。


 まあ、そうでしょう。

 協同組合は、政治家と深い繋がりがありますし。

 大きな票田でもありますし。

 持ちつ持たれつ。


 お父様は、どうでしょう?

 そういうの、気にされるんでしょうか?

 とりあえず、今のところ実害はないと言っていますがさて。

 それも、本当でしょうか。



 農園を周り、厩舎を周り、お父様のご友人方を回って現場を確認しました。

 刑事さんも言うじゃないですか。

 現場百回って。

 私も、現場、確認して回りました。


 お父様が頭を抱えていた理由がわかりました。

 ほとんどのものについてはなんとかなるのですが、タネとかになると、そうは行きません。

 たね、蒔かないことには、農家は立ちいかないのですから。

 接木とか、葉っぱからとかもそうです。


 なるほど、ピンチです。

 しかも、こう言うのに限って言えば、協同組合が牛耳っているところです。

 確かに困ります。

 困ってしまいます。


 なんとかしないと。

 でも、どうやって?

 誰を動かせば?

 何をどうすれば、手元に回ってくる?



 困ってしまって、うんうん唸っていた時、ちょっと閃きました。

 私の好きな殿方のことです。

 背が低いことを気にされている可愛い方です。

 でも、学業では学年トップ。


 エロさでも学年トップと言われているのが玉の傷ですが。

 でも、私、この方にエロい視線で見られたことがありません。

 思ったよりもシャイで紳士なのでは?

 その方よりも、その方の親友の方が、私の、特に私の胸に、エロい視線を向けてこられます。


 でも、気がついて私が見つめ返すと、顔を真っ赤にして、視線を逸らすんですよ?

 これはこれで可愛いのですけれど、その動きは、私の想い人にして欲しいのですけどね。

 でも、この方のお父様は、確か、大きな会社の重鎮だったはず。

 流通系の大会社なら、或いは。


 そう思って、お父様に、言いつけました。

 私のクラスに、私の胸を凝視してくる不届き者がいると。

 ちょっと、保護者の方に連絡して、抗議して欲しいと。

 なんなら、その方に、流通が止まっているのをなんとかしてもらいなさいと。


 お父様、ちょろいんです。

 私のこととなると、いきりたってすぐに電話をかけてしまいました。

 ああ、作戦とか何もなしに、どう切り出すんでしょうか。

 お父様、あまり口が上手な方じゃないはずですのに。


「娘がお世話になっています。同じクラスの大岩井の父親です。」

「ん? ああ、え? まさか、大岩井先輩ですか?」

「まさか? お前、まさか野中なのか? 野球部の後輩の野中なのか?」

「そうですよ大岩井先輩。どうしたんですか? うちの息子が何かやらかしましたか?」

「いや、そんなことはどおでもいい。野中、お前確か、大学でも野球をして卒業後、実業団に入ったんだよな?」

「そうです。流石にもう歳なので、野球は無理ですよ? 草野球の誘いなら、勘弁してください。」


 お父様は、ご機嫌だった。

 私のセクハラの話は、どうでもいいらしい。

 そこ、大事なところだから。

 交渉を有利に運ぶために、大事なところだから。


「ちょっと助けてもらいたいことがあってな?」

「お金以外ならなんとかしましょう。」

「お金は問題ない。農園の経営も順調だしな?」

「存じています。今、仕事で、そっち関係も扱っていますから。」

「なら、話が早い。困っているのは流通のことでな?」

「うちのメインの仕事ですよ、それ!」

「だからだ。なんかな? 協同組合が、全ての流通を止めてくれてな? 全ての納品をのらりくらりと遅らせて、もうすぐ出荷します、もうすぐ納品しますって、全然持ってきてくれなくてな?」

「それ、すでに詐欺なのでは?」

「まあ、そうかもしれないが、お金は後払いだからな。」


 そう。

 協同組合を信用していない私が主導して、お金は後払いを徹底している。

 支払いを遅らせれば遅らせただけ、利益が大きくなるのは、ちょっと難しい話。

 支払い自体は同じ額なのにね、経済学の不思議。


「手配しますよ? とりあえず、今、必要なリストをメールで送っていただければ。ものによってはそれこそ明日には。」

「いいのか? なんか銀行とかから圧力をかけられているらしいぞ? 政治家からも?」

「何を言っているんですか? 水臭いですよ? それに、うちは、自前の銀行がありますし、地方銀行とか、都市銀行とかとは、あまり大口の取引はしていないんですよ? なんなら競業他社といったところです。あちらの損失は、こちらの利益ですよ?」

「助かる。娘にメールさせる。」

「で、本題は?」

「ああ、娘がな…」


 やっと本題を話し始めたお父様には悪いのだけれども、私は野中のお父さんにメールを送っていた。

 どうやって、アドレスを知ったのかは秘密。

 そうして、電話口で、メールが届いたことに驚いている先方。



 翌日の昼過ぎ、必要なものは全て、野中のお父さんの勤めていいる会社のロゴが入ったトラックで、大量に運び込まれた。

 昨日のうちに、協同組合への注文をキャンセルするのも当然忘れてはいない。


 なんなら、協同組合の担当者が、菓子折りを持って青い顔で今、目の前に土下座している。


「どうか、どうか、何卒、今後も、取引を!」

「取引、ほんとにしていただけるのですか?」

「もちろんでございます。一番の大口顧客様です。失ったら莫大な損失です。あり得ません!」

「では、なぜ納品を渋ったのです? 流石に種まきの時期を過ぎてから納品されても、意味がないことは専門の協同組合職員なら、よくご存知のはずですが?」

「そ、それは…。」


 どうしてもそこは、言えない立場のようだ。

 この人も所詮は言われてやっているだけの立場。

 この人に何を言っても変わらない。


「見て下さい。私のクラスメイトのお父様の会社のトラックです。昨日、あなたのところをキャンセルしてから注文をしたのですが、一日もしないうちに、全て納品されましたよ? しかも、あなたも知る通り、流通が専門の会社ではあっても、農業が専門な訳ではありませんのに。」

「うっ。」

「見たまま、帰って、上司に、報告、しなさ〜い。流石に私、怒っているんですよ?」


 そう言ってお帰りいただいた。

 もちろん、その後の取引先は全て変更となったのは言うまでもない。

 結局、メーカーとの間に入る企業が協同組合から民間企業に変更になっただけ。

 実は、それにもかかわらず、値段は三割から四割安かった。

 民間企業とはいえ、卸業社ではなくて、運送業社だったので、マージンをほとんどとっていないからだ。


 協同組合は、今回の件で、ほぼ潰れかかったそうだ。

 最も、末端の組織なので、いくらでもやりようはあったそうだが。

 今日も細々と、なんとかやっているのだろう。

 半年と経たずに、近隣の組合と合併して無くなったのは別の話だ。


 つまり、どう言うことなのか?

 結論から言えば、メーカーと直接契約をして、運送業者に配送してもらっている。

 ただそれだけのことだ。

 そして、組合は中間搾取できなくなった。


 もちろん、それだけでは面白くないので、周辺の農家に、この手法をお伝えした。

 メーカーや運送業者にも、もちろん得意先として紹介した。

 結果、割高な協同組合を利用する農家がほとんどいなくなってしまったのだ。

 組合を維持することができなくなったので、隣の組合と吸収合併。

 事実上の倒産。



 今回、実はこの協同組合は、被害者でしかない。

 圧力をかけられ、仕方なく言うことを聞いた。

 結果として経営を圧迫、倒産へと一直線。

 しかし、圧力をかけた側は知らんぷりだ。


 でも、それならなぜ、言いなりになったのか。

 解せぬ。


 納得のいかない私は、さらに調べ物をしてみた。

 そうしたら、どうやら、お金の動きがあったようだ。

 いや、他の職業ないざ知らず、議員さんがお金で人を動かしちゃだめでしょ?

 でも、情報はそれだけに止まらなかった。


 選挙期間中も、いろいろなところでお金を配っていたよ?

 戸別訪問して、お金を無理やり渡していたよ?

 取り巻きが、投票しますって念書を書かせていたよ?

 いろいろなところから、お金を吸い上げていたよ?


 おいおい。

 なんでやねん。

 この人真っ黒やん。

 放置しちゃいかん案件やん。


 だから、わたしは。

 必要な書類をメールで送信しておいた。

 警察じゃない、でも、ちゃんとこう言う困った隣人を対応できる人のいるところに。



 大事なことなので1度しか言いません。



 わたしはただの善良な一般市民です。

 善良な市民として当然のことをしたまでです。

大岩井さんのような女子を怒らせると、大抵は面倒なことになります。

人気があることを自覚している子になると、なおさらです。

うっかり、好きになられた日には、好きなわけでもなければそれはもう、罰ゲーム。

そんな地雷を踏み抜かないように、上手に生きていきたいものですね。


明日からは、予定通り新章突入。

第4章は「ウーバンヴィレッジの死闘」です。

「ヂ」じゃないですよ? それでもいいのですけれども。

珍しく、次話は本編ですが伊藤さん一人称視点でのお話です。


それでは、地雷原に突入するとか不思議な体験でもしていない限りにおいては明日の15時頃に。

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