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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第3.5章 エロい猿渡パーティー発生条件となった過去の日々
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第12話 モンスターとの遭遇

作業中のBGMは例の曲で


学校は閉鎖社会であるだけのことはあって、いろいろな冤罪を押しつけられた記憶があります。

ガラスを割った犯人にされた時は、犯人たちが複数で目撃証言をしていました。

シューズの中に画鋲をたんまり入れられた時は、自分でやったと決め付けられました。

先生の立場から見ると、まあ、そう言うことにしたい気持ちもわからないではないです。

ただ、学生という当事者の立場では、これはもう如何ともし難い、やるせ無い気持ちになりますね。


そういうなすりつけモンスターに遭遇した場合、冴えたやり方があれば、人生もっと変わっていたのでしょうか。

今回はそんなお話です。

ざまぁダウト回でもあります。これは許してください。

 気がついたのは、病院のベッドの上だった。


 背中の痛みで気がついた。


 ここは、ここはおそらく桜井病院。

 市内で一番大きな病院。

 その病棟のベッドで寝かされていた。


 親父は、外科医。

 この病院の院長。

 刺されたことは覚えているので、手術は成功したんだと思う。



 江藤さんをいじめるのをやめるように言っていた時のことだった。

 阿部さんを突き落として殺そうとしていたいじめっ子達は、2ヶ月で学校に復帰した。

 そして懲りずに江藤さんを虐めようとしていた。

 流石に見ていられなくて、直接止めるように言っていた。


 効果はあったようで、私が常に見張っていたこともあって、江藤さんをいじめることはできなくなっていた。

 このままじゃ、この病院に入院している阿部さんの他に、そう時間を待たずに江藤さんも加わるんじゃないかって心配したから。

 当たり前のことだけれども、私がいじめの新しいターゲットにされるのに時間はかからなかった。


 それでも、江藤さんを守るために、頑張った。

 私、頑張っちゃいました。


 そして、自分がいじめられていることを気にすることなく、臆することなく。

 いじめっ子たちに、江藤さんをいじめるのを止めるように継続して言い募っていた。


 その日の話し合いは思ったより淡々と進み、もしかするとなんとかなるかなと思っていた時。

 交渉相手が一人居なくなっている事に気がついて、後ろを振り向いたら、刺されていた。


 ざまあみろ!

 ギャハハ!


 遠のく意識の中で、そんな声が聞こえていた



 江藤さんが心配して、病室に来てくれていた。

 前回、阿部さんが突き落とされている場面を見ているんだから、心的外傷になってもおかしくないのに。

 そして、本人の言では、どうやら自分が刺されるはずだったとか言い出す始末。

 何回も諭して言い聞かせたつもりだったけど、やっぱりわかっていなかった。


 構図は大体簡単なので見えやすい。

 いじめっ子軍団は、江藤さんをいじめたい。

 いじめている自分が好き。

 そして、いじめていると気分がいい。


 だけど、阿部さんが友達になって守ってしまったので、いじめにくくなった。

 でも、江藤さんをいじめたい。いじめたくて仕方がない。

 いじめられないと、とてもイライラする。

 阿部さんに対して、とってもイライラする。


 じゃあ、そんな邪魔な阿部さんは、いなくなればいい。

 そうすればまた、江藤さんをいじめていい気分になれる。

 じゃあ、どうしようか。

 簡単だよ。学校に来られないようにすればいい。


 そして、学校ではなく病院にいる、今の意識不明の阿部さんが出来上がった。

 そして今度は、阿部さんの枠に、私がハマった。

 結果まで同じなのはいかがなものなんだけど。

 でも、まあ、2回も事件を起こしたら、あいつらも終わりだろ?



 そう思って、ベッドの脇にいた親父に声をかけたら、なんと、叱られてしまった。

 初めはどう言うことなのかさっぱりわからなかった。

 親父の話を聞いて、江藤さんもあまりの話にキョトンとしてしまっていた。

 何がどうしてこうなったと、傷がなければ叫びたいところだった。


「バカもん! お前、議員さんの娘さんを刺し殺そうとしていたんだってな? 丁度、近くをその友達が通りかかって助けたから殺さないで済んだものの。なんてこと、しでかしてくれたんだ!」


 そう言うと親父は、病室に備え付けてあるテレビをつけた。

 昼下がり、丁度ワイドショーの時間だ。

 そして、映し出されるこの病院の玄関。学校の正門。

 そして、アナウンサーは、親父と同じことを言っていた。


「なぜ? どうして親父ともあろう名医が、そんな結論に達した? 私の身体、縫合したのは親父なんだろ? 直接刺し傷、見たんだろ? なら、真相はわかるはず。冷静になるんだ親父。」


 そして、親父のプライドをくすぐりつつ、真相に一番近い証拠を持っているはずの親父に聞いてみた。


「いや、手術はさせてもらえなかった。丁度警察から事情を聞かれていた。手術したかったんだが、それどころじゃなかった。手術を録画しておくようにと言っておいたのだが、それすらさせてもらえなかった。ある意味、証拠を警察に消されたようなもんだ。」


 なるほど、私の傷が痛むのは、若手の医師の下手な手術が原因か。

 納得いかないし、できない。


「親父、手術、やり直しだ。これ、おそらく、ダメだぞ? きちんと縫合されていないどころか、もしかすると内臓、腹の中で出血が止まっていないかもしれないぞ? このままだと失血死するかもだぞ? ちゃんと血圧とか確認しろよ? 輸血だけで誤魔化せるもんじゃないんだぞ? それでも名医と言われたプロかよ!」


 親父はそんなこと言われるとは思っていなかったらしく、キョトンとしていた。


「誰から聞いた? その私が人を刺そうとしていたってストーリーは誰から吹き込まれた?」


 当然の疑問を投げつけた。

 おそらく、そのストーリーを作ったのは、私を刺した奴らだ。

 そして、それを広報したのがマスコミ、そして警察なのだろう。

 学校も、一枚噛んでいるかもしれない。


 利害があるんだ。

 例えば学校には、私や江藤や、殺されかけた阿部さんがいじめを受けていたことを公表されたくないし、そんなことなかったことにしたい。

 それには、今回のストーリーは最適だ。

 口論になって、かっとなって刺した、と言うことにすれば、全てが有耶無耶にできる。


 マスコミは、先日、校舎から「自殺者」が出たと言われている香ばしい学校だ。

 これほどネタとして美味しい相手はいない。

 今度は刺されたってよ?

 どうして、誰が?

 みんなが知りたがっていること、教えますよ?

 視聴者も、読者も喜ぶ。

 マスコミも儲かるのでみんなが幸せだ。

 人の不幸で、喜び儲かる。

 人としてそれはどうなのだろうか。

 少なくとも私には理解できないし、理解したくもない。


 そして警察はどうなのだろうか。

 学校は、前回の阿部さん突き落とし事件を、「自殺」としている。

 遺書のようなものがあったからだ。

 現場を見ている人間としては、絶対に自殺ではないし、遺書も本物じゃない。

 でも、そう言うことになっている。


 そして、警察は、きちんと捜査したのか?

 そこは流石に私にもわからない。

 でも、彼女たちは2ヶ月もの間、学校を休んでいたのだ。

 何か、それ相応の処罰がなされていたと考えるのが普通だ。

 でももし、前回の事件、マスコミには自殺とされてしまっている事件が違うとバレたなら。

 警察が捜査して、学校とは違う結論に達していたのに、報道されていないのだとしたら。

 今回の事件の真相も、警察の捜査とは関係なく、報道されることとなるだろう。


 そうして、親父の話に戻れば、納得がいく。

 私を刺す前から、ストーリーが出来上がっていたことに。

 そしてそれに、戦慄を憶えた。



 そして、目が覚めたことで警察が話を聞きにやってきた。


 凶器の包丁は、どこで買ってきたのか?

 包丁に指紋が完全に残っていたのだが、どうしてか?


 どうやら、街のスーパーで私がその包丁を買っている場面を見た人がいるらしい。

 その上、防犯カメラにも、その私の姿が写っていたと言うのだ。

 ああ、それ、かなりの計画的犯行じゃないの?

 私に偽装して、包丁まで買ったことがバレたら、殺意を認定されちゃうんじゃないかな。


 そして、包丁の指紋。

 刺された後に、握らされてるよね、それ。

 だって、自分が刺されているのに、指紋、残らないよね?

 最後に刺した人の指紋が残るのが普通じゃないかな。


 もう、この時点で、矛盾だらけ。

 警察が帰った後、そのことを親父に言い募ったら、ブチ切れていた。


「ダウトだ。許せん。じゃあ、奴らはこのテレビを見て、お前たちを嘲笑していると。」

「親父に、医者に、真相を解明できるのか?」

「当たり前だろ? お前の親父だぞ? お前にできて、親父にできないことはない!」


 なんとも頼りにならなさそうな親父であった。


 その後、親父は、信頼できるメンバーだけで、私の背中から腹にかけての刺し傷を手術し直すと、さらにブチ切れていた。

 私は、もう少しで、本当に殺されるところだったらしい。

 気がついてよかった。


 その後、一人部屋から、二人部屋に移された。

 阿部さんと同じ部屋にされた。

 江藤さんが学校を休んで、ほぼずっと付き添っていてくれた。

 これは親父が無理やり頼んだらしい。

 なぜ?


 それから、1日も待たずに、阿部さんは意識を回復した。

 しかしそれは、ほぼ個室であるこの病室内だけで伏せられた。

 今回の事件を考えれば、当然だ。

 そして、阿部さんのお父さんが来た。

 親父も同席した。


「話は簡単だ。真実を公表できるのか、もしくは真実に辿り着けるのかだ?」

「娘を殺されかけたんだ。無理もする。絶対に許さない。ただ、今回の件からは、外されている。そもそも刑事じゃないからな。」


 阿部さんのお父さんは、刑事じゃなかった。

 でも江藤さんは、ご両親と一緒に相談した相手が、阿部さんのお父さんだったと言っていた。

 何者?

 その疑問は当然で、親父も聞いていた。

 交番のお巡りさんらしい。

 もちろん、厳密には交番に立っているわけではないようだ。

 交番のお巡りさんたちの上司に当たる立場の人らしい。

 でも、交番と刑事とは、違う部署なので、口出しできないと。



 その日の夜は、親父が珍しく、夜中中、そばにいてくれた。

 江藤さんは家に帰ったようだ。


 そして、翌日昼過ぎ。

 江藤さんが、何かを持ってきていた。

 鞄に入れた、巾着袋。

 そこから取り出したのはカメラのようだった。


 そして、それを見てガッツボーズをする阿部さん。


「見てみれ?」


 そして、その画面には、私が刺されている場面を写した動画が、流れていた。

 どう見ても、どう言い訳しても、私が刺そうとしていたというには無理のある動画だ。

 しかも、画像は粗くても一部始終録画されていたので、編集も何もない。


「これさ、ネットに全編アップしたら、どうなる?」


 すごい悪い顔をして、阿部さんが言ってしまった。

 それ、私も思ったけど。


「これ、盗撮? だから、結局、裁判とか、警察とかじゃ、使えない。でも、ネットにはアップできるよね?」

「えっと? ネットに流すと、どうなるの?」


 一人、事情が飲み込めていない子がいた。

 今回のいじめられっ子の中心人物、江藤さんだった。


「これ、見たら、どう思う?」

「あー、なんかワイドショーと、話が違うなって。」

「で、ワイドショーとか学校とか警察とかが、この動画と違うこと、言い続けたら?」

「え? そんなことできるの? これ見た人、誰も納得しないよ?」

「そう。そうなる。ネットって怖いね。」

「ほんとのこと、みんながわかると、なんで怖いの?」

「すぐにわかるよ?」


 そうして、彼女、阿部さんは、私のリンゴマークのパソコンを奪うと、動画をネットにアップしてしまうのだった。

 もちろん、海外から、アップした人が分からないように、あれを通して。


 そうして、阿部さんが自分のスマホを操作すると、その動画の再生数が、とんでもないことになっていた。

 パソコンを取り返して、動画サイトを見てみると、結構すぐに見つけることができる位置に掲載されていた。

 最初は、英語のコメントばっかりだったけど、すぐに日本語のコメントで埋め尽くされていた。



 その後、一番最初に病室に駆け込んでこようとして止められていたのは意外な人物だった。

人間は証拠に弱いものです。

簡単に信じてしまいますよ?

例えば、実際には起こっていないことでも、目撃者が3人くらい同じことを言えば、起こったことになります。

実際には、悪者じゃなくても、マスコミが報道すれば、悪者になります。

ちなみに訂正放送をされることもありますが、それを認知できる人はほとんどいません。


一度世に出てしまった情報は、取り返しがつかないものですよね。

作品の批評会をしていて後輩から言われた痛烈な言葉を胸に、作品作りをしています。

「映画監督が言っていた言葉です。『作品の言い訳はするな! 全ての映画館の上映前に、出ていって言い訳するつもりか! そんな労力があったら、言い訳しなくていい作品を作れ!』先輩、言い訳、カッコ悪いですよ?」

あまりに凹みすぎて、もう無理、とかなっていなければ明日の15時頃に。

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