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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第2章 僕の考えた最強の拠点作り
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第26節 最強の拠点作りに向けて

夏も終わり、寝苦しい夜も少なくなってきました。

夜中、中途半端な時間に目が覚めてしまって二度寝すると、起きた後、無駄に眠かったり、そもそも寝坊してしまったりと、散々な目に遭いやすいものです。

今回はそんな散々なお話です。

よろしければ、どうぞ。


<前回の3行あらすじ>

  線路を引く作業を一時中断して、昼食にしたらラスト激おこ。

  線路を造ったりする保線には保線基地が必要で、無いと効率が悪いと。

  駅舎の線路を挟んで向かい側に保線基地を設定した。ラストに当直室に連れ込まれた。



  暑苦しくて目が覚めた。

  夢の中では何か、こう、満員電車でもみくちゃにされていたような感じだった。

  寝汗がひどい。

  そして、真冬にもかかわらず、いまだに暑い。


  しかし、たった一枚の毛布すら、その暑さに蹴飛ばしていたようだ。

  毛布はどこか近くにあるだろう。

  そして、暑さの原因に気がついた。

  ロッコとラストが僕のことを左右から抱き枕にしているからだ。


  絵面的にはとても危険だ。

  伊藤さんに見つかったら、大変なことになる。

  でも、彼女たちは精霊。

  召喚者である僕から、夜のうちにエネルギーを補充しないと翌朝には消えてしまう。

  そんな儚い存在。


  それはそれとして、暑い。

  とりあえず、喉も乾いていたので、水を飲みに行こうと思った。


  ガッチリとホールドされている腕を、起こさないように優しく解いて宿直室を出る。

  隣の台所の勝手口から外に出ると、今度はとても寒かった。

  真冬なのだ。

  そして、風と雪。


  すぐそばの井戸から水を汲み上げて、冷たい水を飲む。

  冷たい、と言っても井戸水。

  キンキンに冷えていると言うわけでは無い。

  冬の寒さの中では、ちょっと温かく感じるくらい。

  だがそれがいい。


  雪雲のせいでわかりにくいが、夜明けが近そうだ。

  逆に言えば、いまだ夜。

  そして、再び寝床に戻ろうと台所に入ると、ロッコとラストが待っていた。


「まだ、夜。きちんと寝る。」

「うー、まだ寝足りない。エネルギーも足りない。早く戻って。」


 そうして両腕を両者に確保されて当直室に戻った。

 戻る途中にちらりと見えた駅務室では、ダルマストーブの前でレインとユリが肩を寄せ合って暖を取っていた。


 ユリ、またちょっと大きくなったような。

 すでに中型犬の成犬ちょっと手前くらいの大きさはあるように見える。

 肉、いっぱい食べていたからな。

 レベルもいっぱい上がったし。


 そうして、宿直室で蹴飛ばして伊藤さんの方まで行っていた毛布を回収して寝直そうとした。



 ふと、目があった。



 ロッコとかラストとかじゃ無い。

 彼女たちは、身長が低いので、僕を抱き枕にするときは胸くらいの位置に頭がくる。

 普通に横を向いても視線が合うことはない。

 そして、伊藤さんは後ろだ。


 毛布を取ったときにちょっと確認したので、間違いない。

 じゃあ、誰と目が合っているのか。


 もちろんレインやユリではない。

 さっき見た。

 駅務室で不寝番だ。


 寝ぼけて回らない頭で考えても、ピンと来る答えに辿りつかなかった。

 それでも目の前の「眼」から、視線を逸らせない。

 しかし、それ以上に眠気が襲って来ていた。

 気がついた時にはいつの間にか寝ていたようで、すでに朝だった。



「おはようございます。野中さん。」


 優しく丁寧な声で起こされた。

 何だかホワホワして幸せになれる感じの温かい声だ。

 もう一度寝てしまいそうな、何だか優しさに包まれるような声だった。


 いや、誰?

 今、この駅にいる中で、こんな対応できる人、該当者なしなのだが。


「野中さん? どうしたのですか? 具合でも悪いのですか?」


 目を開けると、目の前に、そう、至近距離に顔があった。

 あ、昨日。

 いや、今朝だ。

 井戸で水を飲んで、寝ようとした時に見た顔だ。


 しかもこの女、僕の名前を知っている。


「あ、ああ、おはよう。」


 そうして、上体を起こすと、その女に挨拶を返した。


「え、あ、あら、まぁ。」


 そうして、僕の上体には2人の精霊が、浴衣のはだけた状態でくっついていた。


「ましゅたー。ラストにもっと、もっと、ロッコはもういいから、ラストに。」


 ラストはよだれを浴衣と僕の胸に垂れ流しながら、今日も不穏な寝言を口走っていた。

 ロッコはすぐに浴衣と髪型を整えると、挨拶をしてきた。


「マスター、おはよう。あ、おーいわい、気がついたの?」

「ええ、そうです。えーっと、あなたは?」

「マスターの1番目のおんな、ロッコです。」

「違うから。技能スキルで召喚した、召喚獣のようなものだ。」

「ポケ……」

「おっと、それ以上はダメだ。だが概ねそんな感じだ。」

「おーいわい、嘘だった。ごめんなさい。ロッコはレイン様の次で2番目。」


 大岩井さんが目を覚ました。

 とりあえず、井戸まで案内して、水を飲んでもらった。

 点滴も何もないので、後もう少しで殺してしまうところだったからな。


 本来なら、ほんわかした雰囲気に合致した巨乳にあるまじきナイスバディなのだが。

 さすがにやつれていて、見る影もない。

 まあ、食事をしていれば、そのうち元に戻るだろう。


「しばらくは、寝て、休養していた方がいいと思うのだが。」

「いえ、みなさんが働いているのに、わたしだけ寝ているなんてできません。それに、少しくらい動いていた方が、リハビリにもなりますし。」


 炊事場で、鍋から直接クマしゃぶをしていた時に、寝ていたはずの大岩井さんが入ってきた。

 何なら僕から箸を奪って、肉を簒奪して行った。

 いっぱいあるからそんなことしなくても食いっぱぐれないのに。


「いや、事情があってな。しばらくは休養していてくれ。後、何なら、怪我をしている伊藤さんの世話をお願いしたい。」

「あ、反対側に寝てらしたのは、やはり伊藤さんでしたか。ふふふ。わかりました。」

「ああ、お願いするよ。」


 大岩井さんは、肉を食べるだけ食べると、宿直室に戻って行った。


「ゆったりとした女性なのです。」

「ああ、あのペースに流されると、何でも『はい』って言ってしまう魔性の女だ。」


 クラスの中では大人しい女子だったが、口は大人しくても、見た目がそうじゃない。

 巨乳のナイスバディは、男子の心を鷲掴みにし、女子からはヘイトを稼いだ。

 そう。女子には敬遠されて、ぼっちだった。

 でも、放っておいても男子が声をかけるので、一人でいることはほとんどなかった。

 しかも、お屋敷のお嬢様だ。

 彼女の近所の人に言わせれば「おひいさま」だ。


 さっきから、ラストが歯軋りをしながら唸っている。

 とても怖い。


「お前! あんな女にたぶらかされるなど修行が足りんぞ! 鼻の下を伸ばして、恥ずかしくないのか!」


 なぜだが、ラストは対抗意識を燃やしていた。

 いや、むり。

 ラストでは話になりません。

 あ、だからか。


 朝食時には、大岩井さんと言う話題が、全てを持っていってしまっていた。

 大岩井さん。

 彼女、どこにも隙がないからな。

 トップにはならないけど、全てがほぼトップクラス。

 そして温和な性格。

 実際僕だって、こんな女性をお嫁さんにしたいと思ったよ?


 でも、人気がありすぎて、そんなこと言ったら刺されかねない。

 ま、この駅に男は僕だけだから、その心配はしばらくないと思うけど。



 朝食を終えて、レインと外に出た。

 改めて、初めて引いた線路を見るためだ。


 小春日和の暖かさ。

 快晴だった。


 レインは上空へ飛んでいって、上から線路の様子を眺めていた。

 あれ、いいな。


 そして、レインは、さらに高く飛んで行った。

 何かを探しているようだ。

 そして、明らかに「見つけた」と言う動きをした。


 地上に降りてきたレインは、言い放った。


「マスター! 村、村なのです! やはり村があったのです!」

「いや、村って、あ、あれか、ウーバン村か?」

「おそらくそうなのです。ちょっと距離がありますが、家がそこそこあったのです。」

「じゃあそうだな。今日は村に行ってみるか?」

「そうするのです。晴れている日に行かないと、きっと春までたどり着けないのです。」

「マスター。ロッコも、行く。」

「なら、ラストもだ。万が一、一泊するようなことがあったら消えるからな。」

「ん。マスターから離れることはありえない。」


 そうして、すぐにその村へ出発する準備が整えられた。

 これは、大岩井さんが復活したことがとても大きい。

 伊藤さんの面倒を見る人ができたのだ。

 最も、大岩井さんも復活したばかり。

 本調子になるにはしばらく時間がかかるだろう。


「マスター。服はどうする?」

「学生服は、もう、ズタボロだからな。この作業服で行くしかないだろう。」

「ロッコとレイン様は、いつもの制服で。ラストは鎧姿で行く。」

「ラストがメインの護衛なのな?」

「そうです。ユリにも活躍してもらうのですよ?」


 ユリはもう、中型犬くらいの大きさだった。

 さすがに頭には載らない大きさだ。

 でも、僕が座っていたりと油断していると、以前のように呪いの兜になろうとする。

 さすがに厳しいのだが。


 そして、今の新しい定位置は、レインの下である。

 前もやっていたな。

 レインに馬乗りにされている。

 レインは空を飛べるので、乗る必要は全くないのだが。


 まあ、毎晩1人と1匹で不寝番しているから、仲良しなんだよな。


 レインがいつの間にか造っていた干し肉を大岩井さんに預けると、急いで出発した。

 なぜなら、距離が読めないからだ。

 森の中、道なりに行けば到着するのだろう。

 何しろ、元々、その村の鉱山だったのだ。

 日々往復していた道があっても不思議ではない。

 むしろ、この鉱山のために作られた村なのかもしれない。

 それにしては、ちょっと距離がありすぎるような気もするのだが。



 そして、僕たちは、大岩井さんと伊藤さんに見送られて、ウーバン村へと出発した。

第2章はこの話で終わりになります。

明日からは幕間となる第2.5章です。

みんな大好き女神様(仮)が出てきますよ。

あの悪いキャラクター、作者は大好物なのですが。

設定資料を見ると、作中とぶれていることが多いので、そっと資料の方を訂正してみたり。

それでは、また明日、15時頃に。

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