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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第2章 僕の考えた最強の拠点作り
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第22節 召喚魔法(仮)「プレートレイヤー」

従順なキャラクターばかり、と言うのは現実でもそうですが、そうそうありえません。

生きて生活している以上、意見はぶつかり、喧嘩したり仲違いしたり、そう言った人間らしい行動があるものです。

最も、それは非生産的、と効率房の肩からはバッサリ言い切られてしまうのでしょうが。

今回は、そんな話です。

では、どうぞ。

<前回の3行あらすじ>

  ロッコに寝込みを襲われて、奪われる。精霊を維持する何らかのエネルギーを。

  召喚魔法なので、ロッコが必要なくなったらいつでも消せるらしい。

  でも、ロッコ本人からすると、それは殺されることと何も変わらないことだった。



「で、ロッコ。」

「ん?」

「保線の精霊って、知っているか? 知り合いなのか?」

「知らない。 マスター、まだ理解が足りない。 保線の精霊は、今からマスターのイメージで造られる。 だから、ロッコは知らない子。」

「でも、ロッコはレインのこと、知ってただろ?」

「ん。そう。だってレイン様は……」


 レインがロッコの口を体で無理やり塞ぐ。


「いいですから。もう、そういういうのはいいですから。早く、仲間を増やしましょう!」


 レインは、まだ何か隠しているようだ。

 まあ、順を追って、必要なときに聞き出していけばいい。



 そうして、今日も朝一発目からMPを限界まで消費する「召喚魔法(仮)」を使う。

 結局のところ、どれだけ最大MPが増えても、あるだけ全部使う仕様のようだ。

 でも、召喚直後の精霊は、レベル0。

 じゃあ、余計に使ったMPは一体何に使われるのか?

 ここ、結構重要なことじゃないだろうか。


 それは、まあ、今必要ないので、後回しだ。


 あと、今朝けさ聞いた話では、僕のイメージが、精霊に影響するとのことだ。

 ロッコを召喚した時も、確かに、ロッコのイメージに近い女の子のことを考えてしまっていた。

 あ、もし、直前に伊藤さんに殴られて、伊藤さんのイメージを引きずって召喚したら。

 そうしたら、伊藤さんそっくりの精霊が召喚されてしまうのでは?


 ああ、これはいけない。


 うっかりそんなの召喚したら、頭皮に深刻なダメージが。

 すでに今日2発喰らっているのだ。

 これ以上のダメージは避けたい。

 というか、僕を攻撃してこないような、守ってくれるような精霊がいい。

 でも、それと保線とは、あまり合致しないよね。


 とりあえず、心を無にして、保線のこと、レールのことを考えて召喚しよう。



「プレートレイヤー!」



 あ、ちょっとコスプレイヤーのこと考えてしまった!

 これ、魔法のネーミングが悪いよ。

 基本、人のせいである。


 そして、駅務室の中央に、光の柱が現れ、光が消えると、精霊が立っていた。



 女の子だ。

 そして、ロッコと同じくらいの身長だった。

 おそらく、120センチメートルくらい。

 これが、僕のイメージ通りだとすると、自身に対して幼女趣味疑惑が発生する。


 自分の知らないところで、そんな性癖があったとか、認めたく無い。


 そして、そんなことがどうでも良くなることがあった。

 この女の子、兜を外して手に持ってはいるが、鎧と盾、そして槍を装備している。

 しかも、腰には鞘に収まっている長い剣。

 装備品は全て青みがかった黒に近い銀色の不思議な金属。

 騎士か?

 騎士なのか?


 ああ、イメージ失敗した。

 どうしてこうなった。

 僕は茫然自失として、立ったまま固まっていた。


 彼女は、装備品とお揃いのその紺の瞳と紺色の髪を腰まで伸ばしていた。

 夜の星空のように光を反射していて、見惚れるほど綺麗だった。


「マスター? お前がマスターなのか?」


 そして、態度は尊大だった。

 あれ、おかしいな。

 こんなはずでは。

 これ、騎士になったのは、守ってくれるような精霊がいいと思ったからじゃないのかな?


 保線のイメージで、ヘルメットをかぶっているのを考えたのがいけなかったのかな?

 あれは、どう見ても騎士の兜、なのだが。


「おい、聞いているのか。お前がマスターなのか? しっかりしろ!」


 彼女は、槍を背中に背負うと、両手でこちらを揺さぶってきた。

 両手にはやっぱり鎧とデザインの共通した籠手こてというかガントレットをはめていた。

 ガチャガチャと激しい音が鳴った。

 それで、やっと現実逃避から帰ってこられた。


「あ、ああ。僕がマスターだ。召喚したマスターだ。野中、野中 浩平だ。野中の方がファミリーネームだ。」

「そうか。分かった。こーへーだな。よし。では名前をつけろ。私のだ!」


 えー。

 なんか、相手のペースだ。

 というか、精霊ってこうじゃ無いと思うのだが。

 しかもこれだけ態度がでかいのに、ロッコと同じでちびっ子だ。

 そう思って見ると、背伸びしているようで微笑ましい。


「そうだな。じゃあ『ラスト』、これが君の名前だ。」


「!!!」

 レインとロッコがこちらに首をぐいっと向いた。


「マスター。 その名前はやめませんか? もう少し、いい名前をですね。」

「ん。マスターはまだ引きずっている。癒しが必要?」


 散々な言われようだった。

 そういう意味じゃ無い。

 おそらく彼女たちは、僕がもう召喚魔法を使わないと決意して、この子が最後という意味で「ラスト」と名付けたのだと判断したのだろう。

 でも、そうじゃない。


 保線は、鉄道の要だ。

 鉄道という言葉がそれをよく表している。

 鉄道の主役は、鉄オタ的には、どうしても列車がメインとなる。

 そう言うイメージからすると保線は裏方だ。


 でも、「鉄道」つまり、鉄でできた道を作るのは、保線なのだ。

 維持するのも保線なのだ。

 いや、厳密には今ある線路を維持管理するのが保線だ。

 だから、保線は鉄道そのものと言っても過言ではない。


 最後の殿しんがり

 そういう意味を込めて、「ラスト」と名付けるつもりであらかじめ準備していたのだが。


 そうして気がついた。

 これか!

 これがいけなかったのか!


 最後の殿しんがり

 まんま、騎士のイメージだった。

 そう、丁度彼女、ラストのイメージだったのだ。


 納得した。


 そして、結局のところ、名前の重要性について再認識した。

 名前を準備していた、ということは、そのまま、彼女のイメージを準備したことになる。

 つまり、名前を付けたイメージが、彼女を形作ったのだ。

 ああ、それならイメージ通りだ。


 本当は、癒し系女子が欲しかったのだが。

 次があったら気をつけよう。



「レイン様、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。レイン様が配下、ラスト推参いたしました。」


 レインの前でひざまづいて、右拳を地面につけた姿勢で、そうご挨拶していた。

 推参って、召喚(仮)したの僕なんだが。

 そして、レインのこめかみの血管が、ピクピクしている。

 あ、ちょっと怒ってる。

 レイン、おこだ。


「ラスト! あなたはマスターに召喚されし者! 主人を間違えるな!」


 珍しく大声を上げて叱責する。

 やっぱりあれだ。

 精霊には上下関係があるっぽい。

 ロッコも「レイン様」だしな。


「こ、こんな軟弱そうな男につかえろというのですか? なぜです! 私は嫌です!」


 あ〜あ、言い切っちゃった。


 ロッコが僕に抱きついてきた。


「マスター、いらない子発言、されてる。消す?」


 こちらはこちらで物騒なことを言い出した。

 意に沿わない精霊を召喚(仮)してしまったことに対して、「消しますか?」と。

 リセマラじゃねーんだよ。

 いや、まあ、この言葉にカチンと来て、再召喚が必要なのではとちょっとは思ったけど。

 でも、召喚(仮)した以上、責任を持って仲間にするよ。

 ちょっと強そうだし。

 戦闘向きっぽいし。


「ロッコも! そんな男にくっつくな。 軟弱が感染うつるぞ!」

「ラストは、くっつかない? 絶対?」

「当たり前だ! 誰がそんな男にくっつくものか!」


 あ、ロッコ、それ、言わせてしまうんだ。

 そしてロッコ、表情が少ないと思っていたが勝利の悪い笑み。

 おい、イメージ崩れるから、そんな顔するんじゃありません。


「ラスト、本当に、マスターいらない?」

「くどいっ! 騎士に二言はない!」


 あ、やっぱり騎士なんだ。

 仕えるのは僕だけど。


「ラスト、あなた、いきなり消えるの?」

「レイン様、いきなり何をおっしゃるのですか? ラストは末長くレイン様をささえます。」

「でも、マスターにくっついて色々と補充しないと、あなた、明日には消えますよ?」

「くっ! そうか! 何ということだ!」


 すんごい苦悩している。

 あ、多分あれ、言ってしまいそうだ。


「くっ! 殺すなら殺せ! お前がどうあろうとも、私はレイン様につかえる!」


 くっころ、いただきました。

 やっぱり騎士なのね。

 うんうん、そうだと思っていたよ。

 ああ、これが、イメージ通りと言う訳ね。

 納得した。

 多分に残念な結果ではあるが。


「貴様、何を納得したような顔をしている! わ、私がレイン様に仕える続けるためには、仕方なく、仕方なくだぞ! お、お前を抱いてやっても、いいんだからなっ!」


 いや、この騎士、何だか僕にエロい目を向けてきている。

 おい、ちょ、こいつ、絶対勘違いしている。

 きっとやる気だ。

 そこまでする必要ないのに。


「ロッコ。ラストは、おそらく勘違いしているぞ?」

「ん。それでも回復する。一番効率がいい。」


 その言葉に、外野の伊藤さんが反応していた。

 どこに反応したのかはちょっとわかりにくい。

 ま、効率房だしな。

 効率に反応したんだろう。

 自分の中ではそういうことにした。


「ま、ラストも召喚直後で混乱しているようですし、落ち着いてから話を聞きましょう。マスター? それでいいです?」


 会話の途中で、言葉遣いがガラッと変わるの、心臓に悪いのでやめてほしい。

 精霊同士で話をしている時と、言葉遣いが変わるのは何とかならんのかね。


「お、お前、まさか私では不満だとか、ふざけたことを言うつもりじゃないだろうな?」


 ラストは、まだ、勘違いしたまま、恥ずかしいことを大声で吠えていた。


 頭の上のユリが大きくあくびをした。 

本日3話目。

次は、お昼過ぎに。

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