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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第2章 僕の考えた最強の拠点作り
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第20節 スキルを使うためには素材が必要になります

RPGや異世界ものの話では、錬金術とか薬の調合とかレシピとか、心躍る言葉が出てきます。

実際の生活で、レシピとか使うのはお菓子を作るときくらいですが、それでもわくわくしてしまうものです。

今回は、ちょっとそのオマージュといったようなお話です。

それでは、どうぞ。

<前回の3行あらすじ>

  一晩寝てMPが回復したので、スキルで駅をレベルアップした。

  そして昼寝でMPを回復させた後、「製作」スキルのレベル1「トロッコ」も使用した。

  スキルを使って出てきたのは「トロッコ」の精霊。これ、召喚魔法だったよ。



 召喚魔法「トロッコ」を唱えると、トロッコではなく小さい少女が現れた。


 小さいというのは、身長で言えば120センチメートルくらい。

 痩せている、というか幼い体型。

 頭髪は左右で短くまとめている。銀色。

 ツインテール、いや、肩まで髪がギリギリ届いていないので「ピッグテール」だろうか。

 そして、レインとお揃いの紺色の制帽。そして制服。

 靴もお揃いかな、と思ったら、黒いブーツだった。


 訂正します。


 黒い安全靴だった。


 そして彼女は、僕の名前を尋ねてきた。

 おそらくレインと同じ流れなのだろう。


「僕の名前は『野中 浩平』野中の方が苗字だ。」

「ん。わかった。こーへー。私のマスターはこーへー。」


 やはり、平仮名で覚えられている感じがする。

 視線は僕の胸のネームプレート。

 そこをみて覚えたら、ダメだよ?

 ひらがな表記だし。


「マスター。私に名前、つけて?」

「お、おう。そうだな。『ロッコ』だ。トロッコの精霊だからな、ロッコにする。」

「『ロッコ』女の子っぽいいい名前。マスターの6番目のおんな?」


 このちっちゃい子は、僕が5人も女性をはべらせていると思ったのだろうか。

 ハーレムは男の夢だけどさ。

 でも、こんな小さい子をハーレム要員にするほど非道ではないよ?


「じゃあ、ロッコ。今日からよろしくな。」


 帽子の上からロッコの頭を撫でてそう言った。


「ん? よろしく、する?」


 ロッコ。なぜそこで不思議そうな顔をする?


 それはそれとして、こうしてまた、仲間が一人増えた。



 まさか召喚魔法だとはそもそも思っていなかったのだが。

 トロッコそのものが出現すると想定したいたのだが。

 女の子が増えて、びっくり。

 女の子、だよな?


「レイン、レイン。」

「マスター、何ですか?」

「それで、なぜ、彼女が召喚された? トロッコの精霊って何ぞや?」

「ロッコは、レベルを上げて素材を集めるとトロッコを作ってくれます。」

「ロッコがトロッコを作る。分かった。じゃあ作らせよう。」

「落ち着いてください。人の話を聞いていたのです?」

「え? だから、ロッコがトロッコを。」

「レベルと素材が必要なのです!」


 ロッコに視線を向ける。


「ロッコ。今のレベルは?」

「レベル0。」

「次のレベルになるために必要な経験値は?」

「経験値1ポイント。」

「それは多いのか?」

「戦闘1回で十分。どんな雑魚でも。」


 よし、戦いに出よう。


「レイン。ロッコを僕のパーティーに認定するにはどうすればいい?」

「マスターが召喚したのですから、元からパーティー認定済みです。」

「じゃあ、ちょっとレベル上げに行ってくる。ロッコ、いいか?」

「ん。レベル1で簡単なトロッコ。レベルが上がれば複雑なトロッコ。」

「じゃあ、今日はどれくらいまで上げようか。」

「上げられるだけ。トロッコには材料が必要。時間も。」


 ここでも素材を要求された。

 錬金とか配合とかと同じだと思えばいい。


「じゃあ、一番簡単なの。」

「レベルが上がればすぐできる。必要素材は、

 鉄鉱石 : 10キログラム(石炭と合わせて、精錬後相当量の鉄でも可)

 石 炭 :  1キログラム

 材 木 :  5キログラム(乾燥時重量・スキルで強制乾燥させるので生木可)

 だけ。これで、『簡素なトロッコ(トロッコ:レベル1)』ができる。」

「レイン、ユリ、早速行こうか。」

「マスター、あのですね? 今から夕ご飯なのですが?」

「じゃあ、食べたらな。」

「ええ〜?」



 こうして、夕食の熊肉スープを食べ、食休みののち、腹ごなしの運動となった。

 諸般の事情で、ユリはご飯抜きだ。

 察して欲しい。

 レベル上げ参加メンバーは、僕、レイン、ユリ、ロッコの4人? パーティーだ。



「とりあえず、5階層に行って、骨とコウモリを相手にしよう。」

「きゃぉん。」

「わかりました。」

「ん。」


 そうして、5階層でユリの遅めの夕食が始まった。


 結果として、

  こーへー レベル 7

  ユリ   レベル 7

  ロッコ  レベル 4

と、順調にレベルアップを果たした。

 ……何となく、ステータス名までひらがなのような気がしてならない。


 ちなみにレインのレベルは非公開ということだ。

 ちょ、教えろよ、それくらい。


 ご一緒にスケルトンオークからおそらく鉄製の兜・盾・剣の3点セットを3組簒奪さんだつした。



 ホクホク顔で駅に帰ろうとすると、鉱山の入り口にホワイトベアーが待ち構えていた。

 あれ?

 前、倒して、美味しくいただいたはずなのだが。


「レイン。やばいな?」

「ひぃ、ふー、さん? 3匹もいます。」

「いけるのか?」

「しばらく熊肉三昧でもよければ。」

「レイン。ゴー!」


 レインは躊躇なく飛び出すと、入り口に群がるホワイトベアーの攻撃を綺麗にかわして、外に出た。

 ホワイトベアーはレインに集中した。

 そして、レインの低空爆撃。


 爆弾は地面に落ちて爆発した。


 3匹ともダメージをちょっとは受けているようだが、致命傷には全然至っていない。


「レインー。爆弾、湿気しけってるんじゃないのか?」

「空間魔法で保管しているのです。それはありません。ホワイトベアーの爆発抵抗が元からかなり高いのです。」

「おい、まさかとは思うが、詰んでるんじゃないだろうな?」

「へ? そんなことはありません。」


 レインは、もう少し高度をあげた。

 具体的には3メートルくらい。

 そして、ホワイトベアーは3頭とも、後ろ足で立って、口を開けて威嚇している。


「えい、えい、えい!」


 レインは、爆弾の導火線に火を付けると、ホワイトベアーの口に向かって爆弾を投擲した。


 結果、前回と同じ、頭のないクマの死体が3匹分、生成された。


 あ、前回はそうやっていたのね。

 何で、頭だけしかダメージを受けていないのかわかったよ。

 体表面は、爆発抵抗かなり高いから、口を開けさせて内側から爆破したのね。

 器用だな。


「1発目は、爆発の時間と高さを測っていたのです。予定通りですよ?」

「失礼しました。レイン様。」

「うむ。」

「偉そうにするの、下手だな。」

「うるしゃいです! それと、強敵ホワイトベアーを3匹もやっつけたのでレベルが上がっていますよ?」

「何だと?」


 ホワイトベアー3匹をやっつけた結果、

  野中  レベル 8

  ユリ  レベル 9

  ロッコ レベル 7

と、予定外にレベルが上がってしまった。


 そして、駅務室内で、素材が揃ったことに小躍りしつつ、ロッコにトロッコを作ってもらっている。


 あ、トロッコは魔法とかで一瞬にしてできるのかと思っていた頃もありました。


 確かに、ロッコは魔法を使っていますよ?

 木材の加工とか、金属の加工とか。

 でも、すごい町工場感まちこうばかんが出てるよ。

 トンカントンカンと金属とか木材を加工する音がするんだよ。

 魔法だから音だけだけど。

 ロッコが熟練工の親方に見える。


「ん。もう少し。」


 僕の視線に気が付いたロッコが、進捗状況を大雑把に告げる。

 車輪はもうできている。

 台車もできている。

 今、合体させて調整中だ。

 わくわく。


「マスター、ロッコにガッつきすぎです。あまり近づくと危ないのです。」

「いや、機械いじりって、男のロマンだろ?」

「分かります。分かりますから、ちょっと離れてあげてください。」

「無理。」

「マスター、もう少し。鼻息、当たってるから。」


 ロッコがちょっと冷たい目で僕を見てきた。

 あ、これやばい。

 怒らせたかも。

 自重するために、一旦お手洗いに行った。


 用を足し終えると、お手洗いを出たところで普段通りのあの行動をしようとした。

 しかし、あれができないことに気づく。

 そう、このお手洗いには、その名前が詐欺であるかのように手洗い場がなかった。


「レインー! レインー!」


 早速レインに相談した。

 だって、トイレの後に手を洗わないとか、文明的じゃない。


「マスター、わがままなのです。トイレだって、今日できたばかりなのですよ?」

「それはわかっているのだが。トイレの水タンクのところを工夫して、何とかならんかね?」

「水道管を繋いで、蛇口をつけるだけなので、すぐです。まだ、剣とか盾とか残ってますから。」

技能スキルで、できるの?」

「いえ、レインがします。鉄道は配管『命』です。」


 そう言うので、レインとトイレ脇の井戸までやってきた。


「この井戸のレバー、トイレ内に設置できないかな? トイレに入ってから水が無いってなったら、悲劇だよ?」

「そうですね、今は無理です。次のレベルアップで頑張ってください。」


 ちょっとレインさん冷たい。


「で、どうするの。」

「あ、レインの魔法で。」


 レインが空間魔法を使うときのように、何らかの呪文を唱える。

 でも、声が出ていることはわかるのだが、何を言っているのかわからない。

 電子音に近いような、ちょっと人間には発音するのが無理くさい呪文だ。


 そして、トイレが光った。

 トイレの隣に、水道の蛇口と、洗面台がついた。

 洗面台、と言ったのは、鏡までついているからだ。

 1箇所だけだが、屋根のついている通路から利用できる。

 駅務室側から、井戸、洗面台、トイレの順番に綺麗に並んだ。


「レイン。すごいな。」

「えっへん。もっと褒めてもいいのですよ?」

「レインは何でもできるんだな。」

「へへへー。それほどでも。」


 レインは、はにかんで後ろ頭をかいている。

 ちょっと可愛いと思ってしまったのは秘密だ。

 あと、結構ちょろいと思ってしまったのも秘密だ。



 トイレのある通路は石畳でできているので、雪が入り込んで凍っていると滑って危ない。

 注意しながら駅務室に戻った。

 レインは、空を飛んでいるので、滑ることはない。

 気をつけないといけないのは、僕だけだ。


「ん。」


 駅務室に入ると、ロッコが床を指差した。

 あ、トロッコ完成している。


 駅務室で作るのはちょっとどうかと思ったが、他に作業場所がないのでしょうがない。


 トロッコは、鉄製の直径20センチくらいの車輪が4枚。

 その車輪を両端につけている金属の丸い棒である車軸が2本。

 その上に平らな板をのせたような見た目。

 車輪から少しだけ外側にはみ出している車軸の両端を鉄製の丸い輪の中に入れている。

 輪の中で自由に回るようになっているので、これで車輪が自由に回転する。

 その輪を頂点とした正三角形を逆さまにした形の金具。

 その三角形の車軸と反対にある上側の辺が、木の柱に固定されている。

 これが車軸2本分で2箇所。

 固定している木の柱は、両側の車輪の上にそれぞれできているので、その上にまた、今度は車軸と平行方向に木の柱を通して釘で固定している。

 最後に、その上に板を敷いて固定し、簡素なトロッコとなっていた。


 トロッコなんて、まじまじと観察したことはなかったので、普通の列車の車輪とは、仕組みがちょっと違うんだなと感心していた。

 ロッコが、「簡素なトロッコ」と言っていたので正直間に受けていたし、一見本当に簡素なトロッコに見える。

 でも、よく見てみると随所に工夫があり、それぞれの固定箇所にはほとんど隙間がない。

 シンプルだが、手の込んだ作りだ。

 まさに職人芸。


 そんなことを思ってトロッコを凝視していると、ロッコに腕をつつかれた。


「まだ、レールが無いから。」


 そう、ロッコがつぶやいた。


 言われて気がつく。

 レールが引かれる前の時点で、2本のレールの幅にどうやって合わせられるというのか。

 というよりも、レールも引いていないのに、トロッコを先に作るのってどうよ?

 改めて考えると、ロッコにはだいぶ無理を言ったのかもしれない。


「ロッコ、すまないな。」

「ん。別にいい。レールの幅、早めに決めて?」

「レイン! レイン、レールの幅に制限はあるのか?」

「はいです。一番初めは、ナローゲージしか制作できません。」

「なぜ?」

「分かりません。レベル順的に、そういうものなのです。」


 ロッコがレインに尋ねた。


「レイン様。ナローゲージって、どれくらいの幅ですか?」

「あ、えーっとですね。標準軌の大体半分くらいです。」

「ミリメートルでお願いします。トロッコ、合わせますので。」

「う、標準軌が大体1.4メートルだから、70センチちょっとくらい、かな?」

「レイン様、標準軌は1435ミリメートルです。」

「じゃあ、700ミリちょっと、です。」

「ですから、正確に。」


 大人しめのロッコであったが、あろうことがレインに噛み付いた。

 あと、気になったのが言葉遣い。

 僕のことをマスターと言っている割に、レインに対する言葉遣いの方が丁寧だ。

 しかも「レイン様」である。


「レイン。ナローゲージって、日本語の方でいいのか?」

「そうです。レインたちトレインの精霊は日本の鉄道に準拠しているのです。」

「じゃあ、あれだな。762ミリメートルの方だな。」

「どういうことなのです?」

「ナローゲージっていう英語、直訳するとそもそも『狭軌』だから。標準軌より狭いの、全部ナローゲージっていうことになる。」

「そうなのです?」


 ロッコがうんうんとうなづいている。


「マスター。このトロッコ。ナローゲージ用に作ってある。」

「あ、ロッコ。ありがとな。」


 ロッコの頭を撫でてやる。

 無表情な顔が、ちょっと笑顔になった、そんな気がした。

ブックマークありがとうございます。

最初の頃と比べて、かなり増えてびっくりです。

頑張る力になります。


それはそれとして、今日は、何話か投稿します。

第2章の終わりぐらいまで、できたら幸いです。

それでは、次は昼前くらいに。

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