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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第2章 僕の考えた最強の拠点作り
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第19節 「製作」技能(スキル)の理不尽

章タイトルどおり、駅の拠点化をすすめるお話です。

町によって異なりますが、今だに駅は町の出入り口であり、中心となることが多いです。

駅ができたからそこが町になったのか、町があったから、そこに駅ができたのか。

東京にある、大きなお城のような駅から、線路の脇に使用済み枕木を積み上げて駅名標を立てただけの駅までいろいろな規模の駅があります。

この駅はどうなっていくのか。

特に、自分の住んでいる町の駅だと、すごく気になるものです。


今回は、そんなお話です。

<前回の3行あらすじ>

  鉱山の6階層まで降りると、半分水没しておりユリを渡してきたストーンゴーレムがいた。

  そして、意識の無い大岩井さんをこちらに押し付けてきた。呼吸も脈もあった。

  また、レベルが上がっていたので、技能スキルをレベルアップさせたよ。



「早く技能スキルを使うのです!」


 レインの叫び声で目が覚めた。

 夜の見張りをすると言ったら、スキルに必要なMPを回復させるのが先と言われてしまった。

 結局、一日中寝ていた伊藤さんとレイン・ユリ組が半分ずつ不寝番をしていた。

 何事もなくてよかった。


「寝ぼけてないで、使うのです!」


 レインは、何か切羽詰まっていた。


「わかった。じゃあ、やってみる。」


 寝ぼけていたが、昨日も濡れてしまったので、洗濯ロープに干していた作業服を着た。

 そして、レインが鉄道鞄を持っているのを確認すると、寝起きの一発をかましてみた。


「設定っ!」


 空中にパネルが広がる。


「『ウーバン炭鉱駅(貨物駅:レベル0)』があります。これを選択しますか?(はい/いいえ)」


 だんだん、このパネルにも慣れてきた。

 「はい」を押すと、次の表示に移った。


「『ウーバン炭鉱駅(貨物駅:レベル0)』を選択しました。今できることは、レベルアップと駅種の変更です。レベルアップを選択しますか?(はい/いいえ)」


 む?

 駅種の変更?


「仮駅にもできます。しないでくださいね?」

「ああ、そういうこと。じゃあ、レベルアップ一択だ。」


「レベルアップを選択しました。必要な素材が確保できています。レベルアップしますか?(はい/いいえ)」


「レイン。これ、レベルアップする前に、外に出なきゃダメな感じがするんだが。」

「だから、みんな、移動しました。急いで使ってください。凍えてしまいます。」


 悪い予感がした。

 レインのクラス女子に対する扱いはよくない。

 そう、雑な扱いなのだ。


 不安になったので、外に出てみた。

 出口の外に2人ほど、毛布にくるまって寝かされていた。

 おい!

 殺す気か?


 今日は、吹雪も止んで、雪も弱い。

 しかし、この扱いはないだろう。


「野中、早く技能スキル使って。寒い。死にそう。」


 苦情が来たので、思った通りらしい。

 すぐにレベルアップのパネルの「はい」を選択した。


 駅務室とその周りが光った。

 そして、眩しさが消える頃には、確かに建物が1ランクアップしていた。

 具体的には、木造の土台部分、窓ぐらいまでの高さが、石作りになっていた。

 頑丈になって、少し広くなっていた。


「早く入れて!」


 悲痛な叫びを聞いて我にかえる。

 レインとユリと協力して、伊藤さんたち2人を新しくなった駅務室の中に運んだ。


「なっ、いきなり近代的に!」


 まず、寒さ対策用の二重玄関を入ってすぐの部屋が事務室のような感じになっていた。

 そして、ダルマストーブ。

 ダルマストーブですよ。

 石炭しかないから。


 そして、玄関の反対側の扉を出ると、廊下になっていた。

 廊下には、扉が駅務室と反対側に2つ。そして、突き当たりに1つあった。


 反対側の扉、鉱山側を開けると、角型になったカマドがあった。

 鍋が3つ置けるようになっている。

 今は、以前にあった鍋1つしかない。

 おそらく台所、炊事場といったところか。

 そして、外に出る扉があった。


 外に出ると、井戸があった。

 位置的にどうかと思う。

 これ、鉱山内の坑道に直結していないよな?


 とりあえず、滑車と紐の付いた桶があったので、水を汲んでみた。

 きれいな水が汲めた。

 まあ、よしとする。


 そして、もう一つの部屋に入ろうとして、入る前に何となくわかってしまった。

 だって、木札で、「宿直室」って書いてある。

 木札はぶら下がり方式なので、開け閉めすると鳴るよね、これ。

 寝てる人、起きそうだよ。


 扉を開けると、というよりも、ここだけ引き戸になっていた。

 引き戸を開いて、という段階で、何となく予想はできていた。

 入って半畳の靴脱ぎ場、一段上がって4畳半、押入れ付き。

 表現に畳が入っているので気がつかれたと思うが、畳敷きの和室である。

 相変わらず、外の窓はガラスではなく木。ただし、この部屋だけ引き戸だが。

 僕からすると、雨戸のイメージだ。


 最後に、突き当たりの扉を開ける。

 予想では、予告通り、トイレがひとつあると考えていたのだが、外に繋がっていた。

 柱と屋根が付いている通路が20 メートルくらいあって、その先にトイレがあった。

 イメージとしては、工事現場とかイベントとかで使われる簡易トイレだ。

 個室が一個だけ。

 最も、こちらも下半分は石造りで、上物が木でできている。


 不思議なことに、隣に井戸がある。

 いや、ダメだろ。

 この位置に井戸って。


 しかも、何のいじめか、ここだけ手押しポンプである。

 ここ、手押しポンプにできるなら、あっちもそうしようよ。


 で、試しに手押しポンプ、動かしてみた。


 重い。


 旅行中に触ったことがあったが、こんなに重くなかったはず。

 それに、呼水よびみずが必要なはず。

 バケツに水、用意しておかないと、水が汲めない仕組みのはず。


 それで気がついた。


 呼水は、あっちの、カマドのある方の井戸で汲んで持ってこないといけないのかと。


 しかし、その予想は間違っていたようだ。


 トイレの上の方から、水の落ちる音がした。

 そうなのだ。

 この手押しポンプには、水の出るところがない。

 なんか違和感があったのはそれか。


 そして、トイレの扉を開けると、水洗和式トイレだった。

 

 大切なことなのでもう一度。


 「水洗」和式トイレだった。


 おい!


 無駄にレベルアップしたな!


 そして、ぶら下がる長いひも。


 無意味な物ではないはず。

 配管があって、水洗だと思われるにも拘らす、その「ひも」以外には何もない。

 トイレの外、というか屋根の上には井戸のポンプで水が入る。

 なら、正解は!


 じゃー!


 ひもを引いたら、水が流れた。

 そういうことね。


 そして、このトイレ、金属製である。

 見覚えのある金属製である。

 なぜなら、これ、列車の中にある、あの金属製の和式の便器だ。

 そして、水が流れ落ちていく先が、真っ暗である。


 そう、水洗式ではあるものの、下水道があるわけではないので、下に貯める方式だ。

 いわゆる「ぼっとん」である。

 もっとも、本来の「ぼっとん便所」とは異なり、下に落ちる心配はない。

 そして、もっとも大事なこと。



 紙が備え付けられている。



 どこからとってきた?


 この異世界にトイレットペーパー。

 白くて水に溶けるにくい奴。

 おお、そなたはこの世界にも。


「トイレットペーパーは、昨日切った木の枝から無理やりスキルで作っています。」

「レイン。これ、この異世界では一番衛生的なトイレなのではないだろうか。」

「そうです。そもそもこの世界にはトイレ自体があまりないのです。」

「!」


 中世恐るべし。

 確かに、何かの本で読んだことがある。

 中世ヨーロッパにはトイレがなかったと。


 日本には、縄文時代からすでにあったといわれているというのに!(いや、それどこ情報?)


「レイン。しばらく、ここが拠点になりそうだな。」

「ふふん。そう言ってもらえると、鼻が高いです。」


 ちなみに、これ、僕のMPで作ったんだよね。

 あ、でも、レインはトレインの精霊だから、レインの能力でもあるわけか。


 そして、風のような素早さで、大怪我で寝ていたはずの伊藤さんがトイレに駆け込んだ。


 仕方ないので、手押しポンプで水洗用の水を補充してあげる。

 そして、気を遣って、駅務室に戻った。



 駅務室ではまだ、大岩井さんが寝ていた。

 そうだよね、まさか宿直室までできていると思わなかったから、ここに寝かせていたよ。

 宿直室ができてしまうと、途端にひどい扱いをしていたような罪悪感に苛まれる。


「レイン。大岩井さん、宿直室に運ぼうか。」

「そうです。そうなのです。」


 大岩井さんを宿直室に寝かせると、伊藤さんの毛布も宿直室に移動させておいた。

 というよりも、畳の上で使うので、きれいな毛布に取り替えた。

 我ながら、日本人的な発想だなと感じた。



「マスター。これで、拠点として、この駅、使いやすくなりました。」

「レベル1でこれだからな。レベルをあげたら、どうなるのか逆に心配だよ。」

「大丈夫です。レベルを上げるには、必要なMPも資材も、すごく多くなります。簡単にはレベルは上がりません。」

「ちなみに、別の駅を作っても、これ、できるのか?」

「できます。ただ、全部同じデザインになります。特色のあるデザインにするには、だいぶ工夫と努力が必要です。」


 駅が増えれば、トイレも増えるのか。

 異世界生活しやすくなるな。

 よし、頑張るか。




 と、頑張る決意をしたお昼前。

 ダルマストーブで暖まっていると、レインが声をかけてきた。


「マスター。そろそろ制作スキルも使って欲しいです。」

「いや、資材が足りないだろ?」

「資材なら、調達済みです。」

「いつの間に。」

「戦闘とか、崩落とか、全部鞄の中です。」


 ああ、そうか、と思い出す。

 何でもかんでも鉄道鞄に空間魔法で詰め込んだ結果か。


「じゃあ、レベル1の『トロッコ』使ってみようか。」

「マスター、ごめんなさい。MPが足りません。」

「何で言ったし?」

「ごめんなさいです。あ、お昼寝。昼ごはんを食べてお昼寝をしたら、使えるのです。」

「そうか。まあそうする。駅で結構MP消費したのな。」

「かなり燃費の悪い技能スキルなのです。1日1回が基本だと思ってください。」


 戦闘では使えないな。

 改めて感じた。



 レインによって、クマの焼肉が昼食として振る舞われて、その後昼寝をした。

 お腹がいっぱいになったので、よく寝てしまい、起きた時には夕飯前だった。


「では、整いましたので、マスター、技能スキルの発声を。」



「じゃあ、『トロッコ』!」



 技能スキルを使うと、目の前に光の柱が現れた。

 光が徐々に消えていくと、その中から小さな女の子が顕現けんげんした。

 何で?


「おい、レイン。トロッコではなくて、女の子に見えるのだが。」

「ふぇ? そうです。女の子ですよ? 何が不満なのです?」

「いや、トロッコを召喚する魔法じゃないのか?」

「そんな簡単な魔法じゃないですよ? 精霊を召喚して、顕現させる魔法です?」


 いや、聞いていないんだが。

 そして目の前の小さな女の子は、トテトテと僕の前に走ってくると、誰何すいかしてきた。


「ん。トロッコの精霊。マスター、名前を教えて?」


 ちょっとぶっきらぼうな感じの精霊だった。


 こうして、僕たちに拠点に、新しい仲間? が召喚された。 


ブックマーク、ありがとうございます。

後、PVも2000を超えました。

これもひとえに読者の皆様のおかげです。

今後もより良い作品作りに努めていこうと思います。

本当に、ここまでになるとは思っていませんでしたので、びっくりしているところです。


いっぱい読んでいただけたので、こちらも頑張っていっぱい書きました。

明日は、何話か分散して投稿しようと思います。

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