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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第2章 僕の考えた最強の拠点作り
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第16節 ここを駅にしますか?

いろいろあって、寝台列車に乗ることが多いのですが、他の列車にはないワクワク感があります。

もちろん娯楽や趣味として乗るわけではないので、その利点を有効活用して、しっかり寝るのですが。

今の列車にはシャワーとかもついてますし、昔と比べるとだいぶ快適になりましたね。

浴衣とか、毛布とか、バスタオルとかの、アメニティーにも興味をそそられますし。


今日は、そんな経験を踏まえたお話です。

<前回の3行あらすじ>

  小屋に入ると、ほとんど何もないが、かまどがあった。

  大きすぎて収納不可の熊肉を食べるために、凍ってしまう前に捌く。

  そして、かまどで焼いて食べる。異世界での初めてのまともな食事は、肉のみでした。



 目が覚めると、毛布の上に寝かされていた。

 そして、体にも毛布がかけられていた。

 寝ている間にレインがかけてくれたのだろうか。

 というか、どこから手に入れてきたのだろう?


「おはようございます。マスター。」


 眼前にしゃがみ込んでこちらを見つめるレインとユリ。

 ちょ、近いよ。


「おう、おはよう。この毛布、ありがとうな。」

「どういたしまして。」


 どうやらレインが毛布を用意してくれたということで間違いないようだ。

 起き上がると、隣には伊藤さんが寝ていた。

 敷いてある毛布的に一つ隣に。


「レインは寝ていないのか?」

「寝ました。マスターより後に寝て、マスターより先におきました。」

「アォン!」


 レインとユリは、この一晩でだいぶ仲良しになったようである。

 何なら、定位置変わって欲しい。

 このままでは頭皮が。


「マスター。イトーが起きません。脈と呼吸はあるのですが。」

「血は?」

「止まったみたいです。」

「ならそのうち起きるだろ。朝ごはんにするか?」


 レインは、ユリに肉塊を与えると、ユリは喜んでひと飲みにした。

 あれ、マインウルフの肉じゃ無いよな。

 同族だぞ?


「マスター、とりあえず、クマしゃぶです。」

「クマしゃぶ?」


 見ていると、レインはお湯を張った鍋に薄く切った熊肉を投入して、湯がいていた。


「あ、ツユとか無いので、そのまま食べてください。今はこれが精一杯です。」

「いや、思ったより贅沢な朝食にびっくりだよ。」

「本当なら卵とか、パンとか準備したかったのです。でも、無いので肉で我慢してください。」

「今はこれで十分だ。」


 レインとユリと一緒に朝ごはんを食べる。

 ちょっとゆったりした時間が流れた。

 コーヒーなんかが出てくれば申し分ないのだが、贅沢を言ってはいけない。


「今日は、どうしますか?」

「と言うと?」

「あの女神(仮)をやっつける算段として、今日は何をしますか?」


 レインはる気満々だった。


「いや、まずはここでの生活を安定させないと。食糧とか。」

「あ、そ、そうです。ちょっと前のめりすぎました。」

「と言うか、大魔王の前に女神なのか?」

「大魔王には何の恨みも被害もありません。女神(仮)は違います。」


 長期的指針として、女神(仮)を討伐するもしくはザマァすることが決定した。

 今のままでは、だいぶ無理だと思われるのだが。

 後、女神(仮)を討伐してしまったら、元の世界に帰れなくなるとかないよな?

 そこで詰むのは嫌だぞ?


「とりあえず、当初の計画通り、ここを拠点にすると言うことでいいか?」

「そうです。鉱山の中で食事はしたくありません。ここを衣食住の拠点にしたいです。」

「まあ、着るものは全部レインの鉄道鞄から出ているんだがな。」

「それだって、何でも出てくるわけではありません。依存するのは危険ですよ?」


 短期的指針として、ここ、鉱山入り口の小屋を拠点とすることが決定した。

 とりあえず、外は相変わらずの吹雪。

 思ったよりも雪が高く積もらないのが幸いだ。

 雪下ろしとかしなくて良さそうだし。



「それでは、ここを拠点とするために、技能スキルを使ってください。」


 レインが、不穏なことを言ってきた。

 拠点づくりのために、技能スキルを使えと。

 あれか?

 僕の技能スキルは、村づくり系の技能スキルなのか?

 スキルポイントで建物ができる感じなのか?


「レイン先生。質問があります。」

「はい、マスター。何ですか?」

「どのスキルで、何をすれば拠点になりますか?」

「いい質問です。では、設定スキルの説明をします。」


 結論から言えば、設定スキルを使用すると、ここを拠点にできるらしい。


「マスターの技能スキル『設定』は、以前にお伝えした通り、レベル1です。」

「そうらしいな。」

「レベル1で設定できるのは、『駅』です。」

「『駅』だと? じゃあ何か? こんな乗客もいないようなところに『駅』を作るのか? いきなり秘境駅から始めるのか?」



 「秘境駅から始める異世界生活」



 何となく、そんなタイトルになりそうだなと感じてしまった。

 いや、そうじゃない。そうじゃないだろ?


 レインの言っている「駅」は、僕の考えている「駅」と本当に同じかどうか不安になる。

 曲がりなりにもトレインの恩寵おんちょうによる技能スキルなのだ。

 鉄道の駅として考えるのが妥当だろう。

 しかし、こんな誰も来ないような場所に駅を作っても意味ないだろ?

 拠点って言ってもなぁ。


「マスターは、もう少し鉄道に詳しいかと思いました。残念です。」


 レインは手のひらを両方上に向けて、やれやれですぜ、という顔を作った。


「ん? 僕は何か変なことを言ったのか?」

「はい。そうです。誤解を生まないように『駅』と言いましたが、正確には『停車場ていしゃじょうを設定できる技能スキルです。』

「『駅』と『停車場』は、別なのか?」

「はい、分類がちょっとあります。」


 そう言って、レインは説明を始めた。


「『停車場』は大きく3つに分類されます。『駅』と『操車場』そして『信号場』です。」

「おう、何となく、イメージできた。列車が停車するから、『停車場』なのな?」

「そんなところです。そして『駅』は、『旅客駅』と『貨物駅』そして『仮駅』に分かれます。」

「むぅ、ここはそのうちのどれにするつもりなんだ?」


 レインがドヤ顔で言い放った。


「『貨物駅』です。と言うよりも、レベル1では『貨物駅』と『仮駅』しか設定できません。」

「確かに言われてみればそうだよな。ここ、鉱山だったし。」

「そうなのです。ここは鉱山なので、人を運ぶところじゃありません。鉱石を運ぶところです。では、スキルを使ってみましょう。」

「おう、じゃあ、ここを『貨物駅』に設定しようとすればいいのな?」

「そうです。起きたばかりなので、MP満タンです。今ならいけます。」


 そう言われたので、とりあえず乾かしていた作業服に着替えた。

 あの「異世界鉄道株式会社(笑)」と入っているやつだ。

 ちなみに、今まで着ていた浴衣と、敷いてある毛布にも模様の中に入っていたよ。



 そして、レインが鉄道鞄を手に持った。

 技能スキル使用準備完了である。



「じゃあですね、大きな声で、『設定』って言ってください。」

「恥ずかしいのだが。」

「戦士が必殺技を放つときに叫ぶのと同じです。さあ、どうぞ!」

「じゃ、じゃあ、『せってい』」


 しかし、何も起こらなかった。


「声が小さいのです。誤操作防止のために小さな声では発動しないようになっているのです。」

「わかったよ。わかりました。」


 恥ずかしい。

 本当に恥ずかしいのだが、ここは異世界。

 それに誰もこれを笑う人はいないのだ。

 やってやる。

 設定してやる。


「『設定っ!』」


 しかし、何も起こらなかった。


「ぷっ」


 しかも、後ろから吹き出す声がした。

 伊藤さんだ。

 今の叫び声で、伊藤さんが目を覚ましたのだ。


「な、何してるの? ぷっ、おおきな声で?」


 恥ずかしい。

 一番聞かれたくない人に聞かれた上、笑われてしまった。

 今は無視だ。

 それどころじゃないんだ。


「おい! 何も起きないじゃないか!」

「イトーが起きました。あと、しばらく待ってください。ロード時間がかかるのですよ。」

「いや、なうローディングってか? どう言う……」


 言い終える前に、目の前の空間にパソコンのウィンドウのようなものが展開した。


「操作パネルに従って、設定してください。誤操作防止のために、全ての設定前に確認が入ります。連打しないでくださいね?」


 空中のウィンドウを見ると、単純なメッセージが書いてあった。


「この建物を駅に設定しますか? (はい/いいえ)」


 迷わす、「はい」を指で押した。

 反応しなかったら恥ずかしいなと思っていたが、ちゃんと反応して、次のメッセージが表示された。


「今、設定できる駅は貨物駅と仮駅です。貨物駅に設定しますか? (はい/いいえ)」


 ここでも「はい」を選択した。

 確かに、このスキル、戦闘で役には立ちそうにないな、なんてことを考えていた。

 戦闘中にパネル操作とか、自殺行為だ。

 続いて次に、レインの言っていた確認メッセージが表示された。


「この建物を貨物駅に設定します。よろしいですか? (はい/いいえ)」


 これが最終確認か。

 異世界初めてのスキル使用だからな。

 ちょっと感慨深いな。

 そして、ここでも「はい」を選択した。


 これで設定完了。

 確かに、パソコンとかスマホの設定によく似ている。

 設定スキルというだけのことはある。

 そう思っていたとき、さらにウィンドウが開いた。


「駅の名前を決めてください。 字数制限100字以内。」


 そして、キーボードのようなコンソールが現れた。

 すでにデフォルトの名前として「ウーバン鉱山」と入力されている。

 これでいいのでは? と思って「決定」を押そうとしてレインに止められた。


「ちゃんと考えてください。名前は大事です。初めての駅の名前ですから。」


 まあ、そうだな。

 レインに言われてちょっとめんどくさくなっていた部分もあったことに気がついた。

 異世界に来て、名前をつけること3回目。

 レインに名前をつけて、ユリにも名前をつけた。


 そこへ来て今度は駅にも名前をつけろという。

 名前つけるの好きだな?

 ネーミングライツで売り飛ばしたいぞ、と後ろ向きなことを考えてしまっていたのだ。


 だから、深く考えずに「鉱山」を削って、「ウーバン駅」にしようとした。


「近くに『ウーバン村』があります。それでもこの名前を使用しますか? (はい/いいえ)」


「!」


 このスキル、そこまで確認してくるのか?

 いや、それはいい。

 それよりもだ。


「レイン! 『ウーバン駅』に設定しようとしたら、近くに『ウーバン村』があるからそれでもいいのかって聞かれているんだが。」

「え、ということは、近くに人が住んでいる、ということです。なら、線路を伸ばした時のことを考えて、元の名前にしておいた方がいいです。」

「伸ばすのか? 線路。」

「伸ばさないのですか? 線路を伸ばすのは鉄道のロマンですよ。ロマン。」


 そもそも、線路も引いていない。

 レインの中では村まで線路を伸ばすことが決定しているらしい。


「じゃあ、『ウーバン鉱山』、決定、と。」


 コンソールを使って入力し、決定ボタンを押した。


「この建物は、『異世界鉄道株式会社(笑)ウーバン鉱山線ウーバン鉱山駅』に設定されました。(確認/戻る)」


 ?

 こっちに決定権があるのは、駅名だけかよ!

 名前をつけることをちょっと面倒に思っておきながら、そんな勝手なことを考えていた。


「暫定的に、この建物を『異世界鉄道株式会社(笑)本社』に設定しました。(確認/戻る)」


 こちらも、決定権がないらしい。

 最も、暫定的にと書いてあるので、いずれは変更可能なのだろう。


 こうして異世界鉄道株式会社(笑)は、テープカットもなく始動したのであった。

電波の届かないところにいたので、直近の状況はわかりませんでしたが、ネットがつながったタイミングで確認すると、PVが徐々に増えていて小躍りしました。

ゲームやラノベの異世界ものでは、書くべきものもないので端折られることの多い登山、と言うか山道を移動する話ですが、涼くなってきた今の時期でも、たくさん汗をかくものですね。

温泉に入って汗を流したのですが、ああ、温泉もいいなと。


そう、温泉回、必要なのではないかと感じました。

今のところ、書き終わっている部分までにはありませんが。

どこかに入り込ませる余地がないか検討中です。

自分の欲望に素直になりなさいと、温泉の神様から啓示があったようななかったような。

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