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第138.5節 手ブレーキ!

正しいトロッコの運転方法について


このトロッコには安全装置がほとんどついていないので、人間の知恵が重要になります。


スピードを出しすぎないこと、その一言に尽きます。


他の車両が動いているのを見たら、徐行しましょう。


それでは、どうぞ。

<異世界召喚後72日目朝>

場所:ヨーコー嬢王国ウーバン領ウーバン村

視点:ロッコ


 ロッコたちの朝は早い。


 ロッコたちは拠点で生活する。

 拠点は、ウーバン鉱山。

 その前にあるウーバン鉱山駅。


 その宿直室、8畳間に布団を敷いてみんなで寝ている。


 一番早く起きるのは、ロッコ。

 次に、パンドラ。

 ラストは、なかなか起きない。


 ロッコは、朝起きると、本屋ほんおくの裏庭にある井戸で水を汲む。

 桶いっぱいの水で、顔を洗って、体を拭く。

 それから、厨房のかまどの火を確認する。

 燻ってる種火のあるかまどの上の釜に水を入れて、薪をくべる。


 釜の水が温まってくると、蒸気が出て、厨房が暖かくなる。


 その頃には、オーイワイが起きてきて、食事の準備が始まる。

 肉を切るのを手伝う。

 パンドラも、手と口と顔を洗って、朝食の準備を手伝う。

 ラストは、起きてこない。


 今日は朝から、トロッコの運転の教習が予定に入っている。

 だから、いつもよりラストが早く起きてきた。

 マスターにしがみついているラストは、なかば引きずられている。

 半分寝たまま、ラストがマスターと厨房に入ってきた。


 朝は寒い。


 起きてすぐの寝室も人の寝息で少しだけ温まっている。

 でも、寒い。

 だから、一番温かい厨房にみんな集まってくる。

 かまどの火は、常についているから。


 不寝番のマインウルフが、火が消えない程度に薪を定期的にくべてくれているから。


 マスターとラストが、かまどの火で暖をとる。

 レイン様に、朝食の準備の邪魔なのです、と叱られている。

 いつもの光景。


 今日は、ラストとロッコだけ、先に朝ごはんを食べた。

 マスターたちは、ウーオ帝国にある金山制圧戦に向かう予定。

 主にパンドラのレベル上げがその目的。


 ロッコとラストは、「恵みの塔」に行く。

 そこで、勇者4人が暮らしている。

 昨日から、昼間だけ、ちっちゃい子どもを預かっている。

 ちっちゃい子どもは、村からトロッコで運ぶ。


 そのトロッコの動かし方を今日の朝、勇者4人に教習するだけのお仕事。


 間違って教えると、旧山賊団の親分みたいになる。

 ヒャッハーする人が増えるのは困る。

 線路と車輪の摩耗が早くなる。

 脱線しやすくなるから、よくない。


 ラストと二人で、2編成のトロッコを連結した。

 そのトロッコで「恵みの塔」駅に向かった。


 駅では、勇者4人が待ち構えていた。

 教わる立場だからと言って、だいぶ前から待っていた様だ。

 主に、洞川どろかわというイケメンが。


 そして、それにつられて、残りの女子3人も、お外で待っていた、らしい。


 早速、教習を始めた。

 乗る予定のない、重光という高飛車な女も、きちんと聞いてくれていた。

 4人のうち重光以外の3人で、2編成をローテーションするつもりと言っていた。

 予備の予備として、重光も乗ることがあるかもしれないと言っていた。


「動力車の動かし方。これがペダル。回すと前に進む。」

「自転車のペダルだね?」

「自転車ですね。」

「自転車? マスターもそう言っていた。多分それ。」


 自転車という言葉を何度も聞かされて、なんとなく、そう言うものがあるのはわかった。

 でも、実物は見たことがないので知らない。


「ハンドルの下のレバーを引くと、ブレーキがかかる。右が前輪。左が後輪。」

「自転車だな。」

「自転車ですわね。」

「あと、脇にある輪をぐるぐる回すと、タイヤがロックする。これが手ブレーキ。」

「これは、知らない。」

「初めて見た。回してみてもいいかしら?」


 そう言うので、使ってみてもらう。

 流石に鉄道経験がないと、手ブレーキを使う機会はない。

 というか、見る機会すらない。

 何でも、自転車じゃない。


 こうして、実際に子どもを乗せて運転してもらった。

 事故なく、ヒャッハーなく無事に終わる。


「毎日、こんな感じで大丈夫。」

「簡単、ですわね? 私でもできそうですわ。」

「いや、重光さんはここを守っていて?」

「トロッコの運転、面白そうですのに。」

「結構、体力使うからね。男の僕と、そっちの女子2人で、頑張るよ。」


 どちらかと言うと、勇者4人にとって運転はそれほど難しくなさそうな感じ。


 子どもの相手の方がたいへん。

 今日は、チビロッコとチビラストを出して、子どもの相手をした。

 体力の消耗が激しい。

 あと、走っている最中に貨車から落ちそうになるような動きをするので怖い。


 明日からは、パンドラと、そっちの女子2人が頑張ってくれるはず。

 あと、地味に旧山賊団の親分たちも手伝ってくれるらしい。


 絶対に、子どもの教育に悪い。


 早く何とかしないと。


 とりあえず今日一日は、「恵みの塔」で、子供たちの相手をして過ごした。

 お昼寝の時間、ラストもちっちゃい子どもと一緒に爆睡していた。

 寝る子は育つ?

ロッコのお話でした。

ホントなら、もっと細かく説明したいロッコに、もっと大雑把な説明をしたいラスト。

2人合わせて2で割るくらいの説明がちょうどいいと言われて、ロッコががんばりました。

現実世界でも、結構そう言うことってありますね。

技術屋は、技術を説明したい。

事務屋は、運用方法を簡単に説明したい。

目的が違うので、なかなか噛み合わないのですよね。

それでは、がんばれれば、また。

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