表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/224

第137節 サーフェイズ金山制圧 探索編

金山に入ったら、金を掘りたいというのが本音なのですが、そうも言ってはいられません。

まずは、魔族たちから取り返さなければならないのです。

今回は、その攻略回。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後71日目朝>

場所:ヨーコー嬢王国ウーバン領ウーバン村

視点:野中のなか


 サーフェイズ金山は、拠点であるウーバン鉱山からちょっと遠い。


 まず、トロッコじゃないと行きにくい。

 ルートは、ウーバン鉱山駅から、この間新線を引いたウーバン街道駅まで北上する。

 そこから、国境線を西へ進み、ド・エッジ東駅まで進む。

 トロッコはここまで。


 あとはそこから、国境の壁の北側に降りて、街道を北西に進む。

 途中で街道から逸れて、西の山の中に入って行くと、金山に到着する。

 歴史ある金山なので、たくさんの坑道が、口を開けて待っているということだ。

 入口が多いのは、ダンジョン完全攻略を目指す上では、多大な障害だ。


 だが、まあ、どうやって行けばいいのか理解できているのは、大きなアドバンテージだ。

 知らないところに突っ込むのよりは、断然いい。


 今回の攻略メンバーは、ちょっといつもと違う感じだった。


 僕と、レインが行くのは、いつも通り。

 ハイドエルフになったユリもついてくる。

 精霊のロッコとラストは、来ないが、パンドラがついてくる。

 レベル上げが必要だからだ。


 あと、道案内役として、山神様やまのかみさまもいらっしゃる予定だ。

 どこで落ち合うのかは知らないが、そのうちきっと湧いて出てくるから心配はいらない。

 なんと、今回の攻略メンバーはこれだけ。

 たったの5人。


 舐めてるんじゃないだろうか。

 まあ、冒険者のパーティーとしては、5人は多めだが。


 まず、山神様やまのかみさまは、案内役で、戦闘の役には立たない。

 逆に、いつでもいなくなれるので、やられることもない。

 守る必要がないのは、大変助かる。

 やられるところを見るのは、精神衛生上、大変よろしくないのだが。


 レインとパンドラは、「BAN!」魔法とお札で、魔族を素早く攻略できる。

 ユリは、元々ハイドウルフだったので、もし、元帝国兵のマインウルフがいた場合には、ウルフ語的なもので、意思の疎通が可能だ。

 あと、戦闘力高め。

 敵に回してはいけない。


 ああ、忘れがちなので数に入れていなかったが、シルバースライムのカタリナもいたよ。

 今回は、かなり暑いダンジョンらしいので、鎖帷子にはなれないらしい。

 カタリナが言うことには、体が熱を帯びてしまい、僕の体に根性焼きができてしまうそうだ。

 一般的には、火傷って言うけどね。 


 だから、今回は、鎖帷子という鎧スタイルではなく、独立した同行者となっていた。

 レインが定位置の右肩に座っているのだが、カタリナは、左肩に座ってきた。

 ちなみに、レインと違って、金属なので、それなりに重かったりする。

 だが、女子に体重の話は禁句だ。


 銀なんだから、それなりの密度があって、見た目よりもはるかに重いんだよ。

 配慮して欲しいところだよ。


 もっとも、過保護なカタリナが、僕から離れる様子はなかった。

 本来なら、くさりかたびらスタイルで、常に密着していたいらしい。

 まあ、鎧として装備していれば、最強の防御力を誇る訳だから。

 自分で外すことができない呪い装備なので、納得はできないけれども。


 そんなメンバーで、トロッコを走らせ、金山へと突入した。


「マスター。金山には、本当に金があるのです? マグマばかりが見え隠れしているのです。これは、危険な予感しかしないのですよ?」

「こんな状態の坑道で、本当に大丈夫なのか? 正直、生きて出られる気がしないのだが。」


 現地で合流した山神様やまのかみさまの案内で、最短ルートを進む。

 目指すは、マインウルフたちと、それを作った魔族、そしてその親玉だ。

 まずは、マインウルフたちを確保して、それから、魔族を討伐していきたい。

 人質にされたくないからだ。


 最後に、満を辞して親玉討伐といきたいもの。

 予定は予定なので、敵がその通りになってくれる保証は、一切ない。

 まあ、出たとこ勝負な部分が、大勢を占めているのは仕方のないこと。

 がんばるしかない。


 金山に入って、初めての斜坑、普通のダンジョンなら、下り階段にあたる部分に辿り着いた。

 鉱山は、鉱石を運ぶ都合上、階段が存在しない。

 あっても立坑の梯子だ。

 だから、移動しやすくもあり、場所が分かりづらくもなる。


 斜坑を降りたところが広いホールとなっていた。

 そこには、黒毛のウルフがたむろして、寝ていた。

 おおよそ、10匹だろうか。

 さっそく、ユリが交渉に出ていった。


 ちょっと、交渉が長引いている様だ。

 なにか、ネックがあるのなら、早目に知らせて欲しいもの。

 そして、ユリといっしょに、マインウルフ10匹がついてきた。


「マスター。このマインウルフたちは、予想通り、元帝国兵の男たちです。そして今は、魔族の手によって、マインウルフのメスにされています。なんとか慰み物にはされていないそうですが。」

「まじか。なんで、交渉が長引いた?」

「持ち場を離れると、仲間が殺されると言うのです。」

「なら、離れなければいい。」

「は?」

「ここで、そのまま、寝ていれば殺されずに済むだろう?」

「ですが、」

「まずは、こいつらから、魔族の情報を引き出すんだ。何匹倒せば、こいつらを安全に救助できるのかを。」

「はぁ。わかりました。」


 もっとも、マインウルフたちには、僕たちの話している内容が理解できている。

 だからすぐに、ユリが回答を伝えてきた。


「わからない。それが答えです。少なくとも10体前後。あと、一番奥にボスがいるそうです。悪魔らしいですよ?」

「まじか。こんなところでサボってんじゃねーよ。ちゃんとサッシー王国に攻め込んどけよ。」

「ま、仕方がありません。あとでまとめて討伐いたします。」

「ほんと、たのむ。逆に、帝国兵は、この金山にどのくらいいるんだ? 生きている数で。」

「待ってくださいね。」


 マインウルフたちは、ばふばふ言い争っていた。

 回答に、いくらかのブレがある様だ。


「はあ、1個中隊で来たそうです。人数にすると40人。その他に、もともとこの金山で金を掘っていた者たちが、30人ほど。合わせて70人。ただ、その全てがメスのマインウルフというわけではないそうです。」

「なんだと?」

「一部は、別の魔物にされていると言います。はあ、ほんとですか?」

「何と言っているんだ?」

「はい。信じたくはありませんが、マインスパイダーと。」


 おいおい。

 聞いてないよ。

 何だよ、マインスパイダーって。

 蜘蛛ってことだよな?


「うっかり踏み潰してないだろうな? そこまでは気をつけていないぞ?」

「ご心配なく。マインスパイダーは、マインウルフたちと同じくらいの大きさですから。」

「まじかよ。普通に戦って勝てそうにないんだが。」

「そこはマスターが囮になってくだされば、私がなんとかしましょう。」

「いや、囮、いらないよね? 別に普通に討伐できるんだよね?」

「蜘蛛の糸で縛られたマスター。そして、わたしに助けを求めるマスター。すごくいいです。」


 何か、焦点のあっていない目をして身悶えるマインエルフのユリ。

 あれか?

 結構Sっ気強いのな?

 そこまでは、付き合えないよ?


「マインウルフは、クラスアップするとマインエルフになれるだろ? マインスパイダーはどうなんだ?」

「そうそううまく行くとは思いません。レイン様はご存知ですか?」

「クラスアップの時にしか分からないのです。でも、希望を捨ててはいけないのですよ?」

「いや、絶望的だろ。」

「クラスアップの時には、いくつかの選択肢が提示できるのです。がんばるのですよ?」

「まあ、やるのはレインだしな。」


 こうして、2階層の入り口で、10匹のマインウルフたちと別れた。


 4階層に降りたところで、また、マインウルフ軍団に出会った。


「魔族の匂いがぷんぷんするのです! 消すのですよ!!!」

「いや、拷問するから。話を聞き出すから。」

「も、問答無用なのです! 魔族を前にすると、我慢できないのですよ!!!」

「ま、魔族のみなさん! 逃げて! 消されますよ! 僕なら拷問だけですみますから!」

「な、何でバレたし?」


 マインウルフ軍団に変身して紛れ込んできい魔族が3体。

 マインウルフはここでも10匹。

 とりあえず、この魔族を確保するか。


「いや、魔族討伐を専門にしているんで。」

「なんて迷惑な人たちなんだ。出口はあちらだ!!!」

「知ってる。30分くらい前に入ったばっかりだから。」

「どうしよう、この非常識な人たち。お、お、おまえら、やっつけろ!!!」

「ほんと、そういうの迷惑なんですよ。人間は、自分の国に帰ってください。」

「いや、帝国兵とか、鉱山労働者とか、返してもらいに来たんだが? いるだろ?」

「生きてるわけねーだろ? みんな、大魔王様の元へ送り飛ばしたわ!!!」

「ばっかじゃねーの? 魔族は人間を殺して、魂まで奪うんだぜ? お前らのもな!」


 なんか、残念な魔族と、やんちゃな魔族たちだった。

 自ら正体を現してくれたので、個別に判別する手間が省けた。

 ちょっと、頭が弱い可能性、大だった。


「お前らの仲間の、マインウルフはいただいた。殺されたくなければ大人しくするんだ。」


 そう言って、近くにいたマインウルフの首を抱え込む。

 困惑するマインウルフ。

 僕の後ろから、ユリがこっそりウルフ語で説得している。

 後で、必ず助けますからとか言っているらしい。


「帝国兵の皆さん。助けに来ました。あの魔族は、ウルフに変身させる情報、もっていそうですか?」

「は? お前、なんでウルフ語が? って、ウルフかよ!」

「元に戻す方法を探しに、この金山に来ました。あいつらは知っていそうですか? 拷問して聞き出そうと思っているのですが。」

「あいつらは、下っ端なんだよ。おそらく、やれるのはボスの悪魔だけみたいだぜ? たまに来る人間とかを、魔族がウルフ化させているとこ見たことないからな?」

「ありがとうございます。」


 という、会話がウルフ間で成り立っていたらしい。

 もちろん、人間である僕たちには認知できない言葉と音なのだが。


「レイン様。そいつら、何の情報も持っていません。やっちゃってください。」


 僕を差し置いて、ユリが結論を告げると、勝手に魔族攻撃許可を出していた。


「行くのですよ!」

「BAN! BAN! BAN!!!」


 レインが、魔法を使おうとした時には、すでに魔族はいなかった。

 一瞬でパンドラが、3枚のお札を魔族に貼り付けて消していたからだ。

 レインは、大いに空ぶっていた。


「は、速いのです! パンドラにも意外な特技が!!!」

「いえ。レベル上げに来ているのですから、レイン様にもっていかれるわけには参りません。」

「ま、負けないのですよ?」

「私も、レベル上げのために、負けられません。」


 パンドラは、レベルが1から3に上がっていた。


 Lv1 きっぷ扱い きっぷ等の扱いがプロとしてできるようになる。

 Lv2 案 内   いろいろな案内ができる様になる。

 Lv3 保 安   駅や列車で、異常を感知できる。


 ステータスを見せてもらうと、車掌のスキルはたいへん微妙だった。

 Lv1のきっぷ扱いは、やらせれば素人でもできそうな気がしてならない。

 どのあたりが、スキルなのだろうか。

 あと、なぜ、「扱い」は漢字なのに、「切符」は漢字ではないのか。


「車掌のスキルは、こう言っては何だが、どうなんだ? いい感じなのか?」

「先ほど、使いました。『BAN!』のお札を貼る時に使いました。『きっぷ扱い』を。」

「いやいや、ぜんぜんきっぷじゃないよね? おかしいよね?」

「きっぷ等をプロ級で扱える様になるのです。お札もぎりぎり入ります。」

「うそだろ?」

「入りました。だから、レイン様より先に、3枚も使用できたのです。」

「マジか。」

「マジです。」


 まだ、きっぷも作っていないのに、きっぷ扱いとは、無駄スキルだと思ったが違った様だ。

 レインの、「BAN!」の札と合わせ技で、すごく活躍するスキルだった。

 なにしろ、本家のレインよりも早く使用できる。

 パンドラも、恐ろしい子だった。


 しかし、これで帝国兵が20匹。

 残り20匹と言ったところか。

 マインスパイダーが出てきたらどうしようか。

 うっかり戦っても、負けそうなんだが。


 そこんとこ、どうなのよ。

 マインウルフたちから、情報をもらった。


 曰く、マインスパイダーたちとは話が通じないそうだ。

 あと、どのマインスパイダーが元人間なのか分からないというのだ。

 なんとマインスパイダーには、モンスターの本物も混ざっているらしい。

 さらに、魔族が化けたのも、同じ様にいる。


 正直なところ、マインスパイダーにはお手上げだった。

 もう気にせず、マインウルフだけ回収して、一旦引き上げるのがベターな気がしてきた。


 とりあえず、監視が消えたので、2階層にいるマインウルフたちと合流する様に伝えておいた。

 すぐさま走り去るマインウルフたち。

 あと、半分だ。


 6階層にたどり着いた。

 かなり暑くなってきたが、また、マインウルフたちが待ち構えている。

 20匹ちょっとだ。

 おそらくこれで、全部だろう。


 ちょっと多い分が、魔族なのだろうが、さて、どうしたものか。


「BAN! BAN! BAN! BAN!!!」


 パンドラが、いきなり荒ぶっていた。

 どうやって見分けたのかわからないが、正確に魔族だけを消し去っていた。

 そして、レベルが4に上がった。

 スキルは、「車両扱い」だった。


「何をするスキルなのか分からん。」

「貨物を連結したり、ドアを開けたり閉めたり。いろいろできる様になります。」

「それは、スキルじゃなくても、できるんじゃないのか?」

「スキルなら、一瞬でできます。スキルというよりも、魔法です。もちろん、この魔法を使用しなくても、全部可能ですが。効率の問題です。」

「そういうものか?」


 まあ、パンドラがそう言うのなら、そうなのだろう。


 こうして、元帝国兵のマインウルフ(メス)40匹の確保に成功した。

 一旦40匹を金山の外へと連れ出す。

 仲間がやられる心配をしていたのだが、とりあえずそれは解消した。

 少なくとも、帝国兵は助けられたのだから。


 次は、マインスパイダー対策をしてからじゃないと、助けることができない。

 どうしたものだろうか。


 とりあえず、金山からそのまま街道を北西に進み、ヴァイスフロストの城へと向かった。

 そして無事、皇帝陛下に要求されていた「マインウルフ」を、届けることができた。


「いや、こいつら、皆、低レベルではないか?」

「レベル上げは、そちらでお願いしますね? それよりも、こいつら、元帝国兵ですから。」

「なんだと? どういうことか説明せい!」


 こうして、また、面倒な話が始まったのだった。

結局のところ、マインウルフ回収しかしていません。

地味にパンドラのレベルが上がりますが、まだまだですね。

でも、レベルが上がると、何ができるようになるのか、気になって仕方がありません。

それでは、がんばれれば、また。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ