表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/224

第133.5節 聖女と呼ばれて

聖女様のお話です。

詐欺?

いえいえ。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後70〜80日目くらい>

場所:ヨーコー嬢王国ウーバン領オールドコソナ町

視点:重光しげみつ


 「聖女様」


 そう呼ばれる様になってしまいました。


 どういうことなのでしょうか。


 わたくし自身としましては、想い人の洞川どろかわ様に、良く思っていただきたい。

 ただ、それだけのために行動しただけですのに。


 ことの始まりは、洞川どろかわ様のお言葉でした。


「今度、この国で子どもの面倒を見る施設を作るんだ。野中と一緒に僕達も頑張ろうと思うんだ。キミもどうだい?」

「わたくし、子どもは、どう相手にしたらいいか、わかりませんの。」

「そうかい。みんな、最初はわからないんだ。僕が教えてあげるよ。」

「そんな、いけません。子ども、好きなんですね。」

「そう。将来は、陸上のコーチになりたいんだ。子どもたちを育てたい。その練習かな。」

「そ、それ、なら。」


 そして、野中たちの用意した施設に、国内各地からたくさんの子どもが集まりました。

 正直なところ、子どもの相手は苦手です。

 わたくし、一人っ子ですし。

 小さい頃に、ご近所の子供と遊ぶ時間もなく、習い事をさせられていました。


 その結果として、今のわたくしがあるのです。

 でも、このまま、苦手なままでは、洞川どろかわ様にふさわしくありません。

 この機会に、苦手を克服するのも、子ども好きをアピールするのも、大切なこと。

 頑張ってみようかと、思います。


「重光様、ちょろいです。」

「チョロすぎるだろ、いくらなんでも。」


 一緒に手伝ってくれると言う、張本とぶんのが何か言っていますが気にしません。


 とにかく、期待に応えるために、子どもの相手をがんばりました。

 小さい子は、暴れ回るパワーに溢れるもの。

 その無尽蔵のパワーを使い果たさせることができれば、おとなしくなってくれます。

 そうなればもう、とても管理しやすいですわね。


 ですから、午前中はたくさん運動をさせて、お昼ご飯を食べさせると、お昼寝タイム。 

 運動させる前と、お昼寝後に、ちょっとだけ、お勉強。

 運動させる前には、数のお勉強。

 お昼寝後には、文字のお勉強。


 やったことは、それだけですのに。


 もちろん、子どもたちの中に入って、一緒に遊びましたよ?

 精霊3人衆ほど、子どもと同レベルに動き回れるわけではありませんけれども。


 わたくしは、子どもたちに、いろいろな遊びを教えました。

 なぜなら、有り余る体力を削る必要があったからです。

 なるべく、体力の消耗が大きいものをチョイスしました。

 できれば、水泳なんかが理想なのですが、この季節ではちょっと無理ですわね。


 ちょっと、この子達匂いますので、どの道、水浴びはさせたいところです。

 あとで、プール的なものを作っていただきましょう。


 体力を削るといえば、走り回るものがいいですね。

 それで、鬼ごっこ的な遊びを教えました。


 ただ、それでは面白くないので、逃げられる区域を区切りました。

 その区域の中央に、立入禁止区域を作ります。

 小さい周回の、陸上トラック的な部分が、行動可能範囲になります。

 その結果、子供たちが逃げると、陸上競技が始まった様な感じになりますね。


 鬼は、その必死で逃げる子供たちを追いかけます。

 一番遅い子がタッチされて、鬼が交代して10秒数えると、また追いかけはじめるのです。

 こうして、だいたい30分に5分、休憩を入れると、いい感じにお昼にはお腹が空く様です。


 そして、昼食のガーター芋を、思う存分食べるのです。

 必ず水を用意します。

 なぜなら、みなさん、慌てて食べますので、喉につっかえて、むせるのです。

 いつも、お腹いっぱい食べられないので、食べられる時に、いっぱい食べようとしますの。


 そうしてきなさいと、親から言われている様です。

 なんなら、1日の食事が、これだけ、という子供もいるようです。

 お持ち帰りは、禁止しています。

 そうしないと、持って帰ろうとする子供が、あとをたたないのです。


 昼食が終わって、午後はお昼寝タイム。

 ここで寝かしつければ、わたくしたちは少し、ゆっくりできますの。

 このタイミングで、精霊3人衆とユリさんが、それぞれ仕事に出かけていきました。


 夕方になる前に、子供たちが起き始めて、文字を教えます。

 たくさん正解すると、どんぐりクッキーがもらえる仕組みです。

 みなさん、必死です。

 どんぐりクッキーは、お持ち帰りできるので、もう、かなりの競争率。


 勉強も、捗ると言うものです。


 夕方になって、精霊軍団が、トロッコで旧山賊団の親分たちを連れて戻って来ました。

 そのトロッコで各方面に子供が帰って行きます。


 この世界では、このような慈善活動を、普通の街の教会が行っているそうです。

 財政的に余裕がなくて、どうしても実施できないところが多いそうですが。

 それを毎日、送り迎え、ご飯、お菓子付きで実施しましたの。


 結果。


 1週間経たずに、国内から、私たち女子3人は、勝手に「聖女」認定されてしまいました。

 「聖女様」と言われて悪い気はしないのですが。


 芋を作っているのは、大岩井さんですし。

 トロッコを動かしているのは、旧山賊団の方々ですし。

 精霊3人衆も手伝ってくれています。

 精霊さんたちは、そもそも精霊なので、聖女には認定されない様です。


 その辺りの感覚が、難しいですね。

 日によって、シルバースライムさんや、ガルダ族の方々が来て、面倒をみてくれたりもします。

 野中さんが言いますことには、異種族に差別意識を持たせない様にしたいとのこと。

 ご立派な考えですが、すぐには難しそうですね。


 でも、「聖女」生活。

 大した奇跡は起こせませんが、それでいいじゃないですか。

 期待されると、頑張ってみたくなるものですね。

 なんなら、恩寵も、ありますしね。


 ちなみにぶんのは、恩寵のスキルで、子供を寝かしつけます。

 笛を吹くと、子供たちが寝てしまう便利なスキルがあるのです。

 不便な点は、聞いてしまうとわたくしたちまで寝てしまうということ。


 彼女は、日本の曲をお得意の笛で吹いて、子供たちを喜ばせていましたよ?

以前、聖女成分が足りないと言っていましたが、こうなりました。

斜め上な感じで、ぜんぜん聖女じゃありませんが、自称ではなく、他称聖女です。

本来は、こう言う人たちのことを言うんでしょうね。

中身はどうかとも思いますが。

それでは、がんばれれば、また。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ