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第132.5節 ラストのターン!

あらぶるラストさんを、なまあたたかい目で見守ってくださいませ。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後66日目午前>

場所:ヨーコー嬢王国ウーバン領ウーバン鉱山駅付近山中

視点:ラスト


 ラストは、ラストだ。

 職業ジョブは、精霊騎士だ。

 マスターであるちょっとポンコツな男「ノナカ」にスキルで創造された、「保線」の精霊だ。

 精霊騎士として、この国を守り、ひいては世界を守るのが使命だ!


 つい先日、レベルが一定値に達したので、クラスアップを果たした。

 これで、さらにみんなの役に立てるぞ!!!

 精霊のクラスが、「保線」から「鉄建」になった。

 ステータスは、かなり上がったのだが、基本的にできることはほとんど変わらなかった。


 ただ、レベルさえ上げれば、鉄道関係の中規模な建設ならなんでもできる予定だ。

 中級職だからな!

 あと、ロッコと同じで、チビラストを召喚して働かせることができるようになった。

 特に保線では、人海戦術が必要だからな。


 ラストと同じ働きのできるのがいっぱいいると、仕事が捗る。

 そして、ここに来て、また、新しく線路を引いてくれとマスターが泣きついて来た。

 もう、しかたがないな、マスターは。

 ラストがいないと何もできないんだからな。


 もう、いっそ、ラストのものになってしまえば良いものを。


 マインウルフたちと戯れ合いながら、どう線路を引いたのもかと相談した。

 地元民の意見を下地に山の中を駆けずり回り、新しい線路を引く良い感じの場所を選定した。


 延伸の起点であるウーバン鉱山入口は、すでに結構な標高になっているのだ。

 だから、接続先の線路である「国境線」とは、高低差はほとんどなかった。

 なんなら、鉱山入り口の方が高かったくらいだ。


 山を等高線に沿った形で、線路を引く計画を立てた。

 ロッコには、その計画に沿って、存分に斧を振り回してもらった。


 以前よりも攻撃力が倍増しているので、樹木の伐採作業はすぐに終わった。

 ロッコは、チビロッコも召喚して、手際良く木を切り倒してくれたのだ。

 チビロッコでも一撃で木を切り倒している。

 まずいぞ、これはかなりまずい! ラストの精霊騎士としての立場が危うい!



 マインウルフたちに頼んで、岩石魔法で切り株を掘り出し、線路用に整地した。

 山の中は、岩石だらけだ。

 マインウルフたちは、これを逆手にとって、粘土を削り取る様に、魔法で路盤を切り取る。

 彼らの魔法精度は、日に日に上達していて、保線仲間に欲しいくらいだ。


 いや、違った。

 もう、事実上、保線仲間だった。

 なにしろ、細かいことを言わなくても、ロッコが木を切り倒せば、作業を開始してくれる。

 指示がいらないのだ。


 マスターは、何か焦っていて、早く線路を繋げたがっていたが、そんなに早くは繋がらない。

 結構、大量のレールが必要なのだが、そのレールの原料供給先の鉱山が被災しているのだ。

 別ルートで、レールを確保する必要があった。

 でも、鉄鉱山なんて、他にないぞ?


 1日目で路盤の整備が終わって、バラストと、枕木の準備も完了した。

 あとは、レールだけなのだ。

 そのレールがない!

 そこで、何とかならないか、マスターに相談した。


 困った時のマスターだ。


 そして、マスターの提示した解決策に激怒してしまった。

 当然だ!

 もうすでにあるレールを、引っこ抜けと言うのだから。

 最初は、落盤を起こした、鉱山の中から、うまいこと拾ってこいと言うのだと思った。


 だが、マスターの考えは、異なっていたのだ。


 山の反対側、コソナ側に行って、そこから旧国境警備隊本部のあったところまで伸びている線路から、レールを外してくれば良いとか考えていたのだ。

 せっかく作った線路を、廃止にするつもりらしい。

 確かに、鉱山が通過できなくなれば、あの路線は一見無駄だ。

 だが、今までいっぱい使って来たのだから、それを見捨てるなんてできない。


 マスターとロッコに、3時間ほど説得された。


 泣く泣く、レールを取り外しに行った。

 なお、取り外したレールは、空間魔法のかかっているポーチに収納できてしまった。

 かなりの量が入ると調子に乗って入れていたら、全部入った。

 このポーチ、魔族のドロップアイテムなんだが、すごく使える。


 2日目には、このレールをうまいこと使って、線路を完成させていった。

 レールを犬くぎで枕木に固定すると、バラストを調整して完成だ。

 完成した側から、ロッコがトロッコを使って、線路幅が間違っていないか確認する。

 ラストに間違いはないはずなんだが、ロッコは検査の手を緩めてくれない。


 信用がないと言うわけじゃない。

 ロッコは、真面目で、マスターが大好きだからだ。

 自分がちゃんと検査しなかったせいで、マスターが怪我をしたら自分を許せない。

 そう、ラストに言って来た。


 ラストだって、同じだ。

 そんなことになったら、自分の技術が許せない。

 だから、ロッコが検査するのは止めなかった。

 トロッコに、ノギスの様なものがついていて、ミリ単位で計測できる様だ。


 そうして3日目の昼過ぎ、線路は、きちんと繋がった。


 繋いだ部分に分岐器ポイントを設置するのに、ちょっと手間取った。

 しかし、どうしようか。

 こんな山の中、何もないところに、分岐器があると、常識的には、危険でしかない。

 せめて信号場にしたいのだが、マスターはしてくれるだろうか。


 真摯にお願いすれば、みんなの安全のためだから、やってくれると思う。

 

 その事を、一仕事終えて休憩していたロッコに伝えた。

 きっとロッコも一緒にマスターに、進言してくれるはずだ。


「ラスト、あそこ、見て?」

「ん? なんだ? ……何だあれは?」

「駅。」

「は?」

「だから、ここには駅がある。分岐器があるのは、駅構内。何も問題ない。」

「え? あ? う? 何で? なんでこんなところに駅があるのだ?」


 マスターの行動は理解できない。

 こんな、完璧な秘境駅、なんで設置したし?


 国境の壁に貼り付けられているその駅名標には、こう、記されていた。


「ウーバン街道駅」と。

ラストさんには、延伸とか新線とか言うと、無条件で着いてきそうな不安があります。

そんなぽんぽんと、線路は延ばせぬのです。

この物語では、びっくりするほど伸ばしまくりですが。

それでは、がんばれれば、また。

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