第49話 世界転移魔法
小松崎先生のターン。
視点は、猿渡ですが。
謎が一つ解けて、二つ増える的なお話です。
それでは、どうぞ。
<異世界召喚後63日目午前中>
場所:サッシー王国王都
視点:猿渡
「ま、魔王軍の攻撃だ!!!」
城の兵士たちからであろう、その叫び声を、何回か繰り返して聞くことになった。
城の窓からでは、未だ、魔王軍の動きは見えないし理解できない。
まずはこのことを、小松崎先生に伝えておこうと思った。
朝の挨拶も兼ねて、先生の部屋に顔を出した。
「先生。おはようございます。」
「ああ、おはよう。どうしたというのだ? 殊勝にも朝の挨拶なぞして。」
「いや、先生、僕のことなんだと思っていらっしゃるのですか?」
「まあ、それはいい。何があったんだ?」
「魔王軍の攻撃だ! とか、兵士たちが叫んでいます。先生は行かないのですか?」
「ああ、そうだ。毎朝、午前9時の定時で攻め込んでくる。午後5時になったら帰って行くぞ? きっちり昼休憩も1時間ある。魔王軍は、さぞホワイトな職場なのだろうな?」
おいおい、とんだ優良企業だな、魔王軍様は。
それだけ余裕があると言うことなのか、それともブラフか。
ただ、前情報では、サッシー王国は、かなりのブラック企業体質らしい。
国王以下が、ブラック企業顔負けの労働条件を叩きつけてくる、すさまじい宮仕えだ。
そこへの皮肉、というか当てつけの可能性もある。
なんなら、毎日同じ時間に攻撃して、決戦の時に、時間をずらす作戦かも知れない。
魔王軍の考えることは、まあ、わからないけれども。
それよりも、先生は、部屋にこもっているけれど、魔法とか使って戦わないのかな?
まあ、望み薄だけど聞いてみた。
「先生は、戦わないのですか?」
「反戦平和主義だと言っていただろう?」
「いや、それは平和な日本でのお話ですよね? 魔王軍に対してそれはちょっと。」
一応、苦言を呈しておいた。
見殺しにされたらかなわないからな。
「では、先生が率先して、生徒を戦場に駆り出してどうしろと言うのだ?」
「いえ、戦場に駆り出さなくても、すでにここは戦場ですが。」
「確かにこの世界なら、戦わねば死ぬが、それを私が率先して行ったとなれば問題だ。」
「何が、問題なんです? みんなから称賛されこそすれ、非難など。」
「元の世界の保護者や社会からの非難は免れないぞ?」
ああ、この先生は、僕と見ている世界が違う。
2ヶ月もこの世界にいるのに、元の世界基準の考え方で生活されていたのだ。
まだ、帰ることができると思っているようだ。
もうそろそろ、諦めてもいい頃だと思うのだけれども。
「それは、もし、魔王軍に討たれて私が死んだとしてもだ。」
「この世界の人たちは、それでも救われますよ?」
「どうだか。そもそもこの小さな体では、町田たちを抑える役にも立たないくらいだからな。」
あー、しまった。
へこんでいるよ。
僕よりも1センチだけ身長の高い、ちびっ子の小松崎教諭は、物理攻撃力が貧弱だった。
まあ、身体に恵まれていないので、無理もない。
「おい、猿渡。お前、今、先生でエロいことを考えていただろう?」
「違います。先生がエロくないという残念な事実を確認していただけです。」
「まったく。先生に手を出すとか、漫画とかドラマだけにしておけよ?」
「出しません。先生の方が身長高いですし。」
「まあ、先生は、大人の女性だからな。」
見た目は完全にお子様なのだが、どの口が言うのかと突っ込みたい衝動を我慢する。
「その、大人な先生から、一つ頼みがある。」
「へ? 大人なお願い?」
「猿渡、お前の内申点が大変なことになるぞ?」
「え? いや、先生の大人の魅力で、ちょっとエロいことを想像させられただけです。」
「じゃあ、もう一年余計に先生と勉強できる様にしてやろうか?」
「なんなりと、ご依頼ください。」
横暴だった。
権力の横暴だ。
しかし、学生は、内申点の恐怖に逆らえないのだ。
「魔族を13匹ほど、生け捕りにしてきてほしい。質は問わない。」
「なんですと?」
「魔王軍が攻めて来たのなら、僥倖だ。そこから13匹ほど、魔族を捕まえてきて欲しいと言っているんだ。」
「なぜです?」
「先生でも、唯一魔族を倒すことのできる魔法を使うからだ。」
「へ? 本末転倒では?」
「いいから連れてくるんだ。ここにな?」
殺してしまうよりも、生捕の方が数倍難易度が高い。
殺すのも難しいのに、なんて難易度の高い依頼をしてくるのだろうか。
「でも、先生の魔法って。」
「世界転移魔法だ。これは秘密だぞ。特に、あの女神にバレると消されかねないからな。それにこの魔法を使うと、先生でも魔族を13匹、一度に討伐できる。お前らが言う、経験値とやらも稼げるしな。レベルも上がるだろう。」
「いや、そんなことよりも、本当に『世界転移魔法』ですか?」
「そうだ。元の学校の教室に戻る。ただし、日時がいつになるのかは、保証しないがな。」
「おおう。」
おいおい。
小松崎教諭、ちょっと見ない間に、なんて恐ろしいことを考えていたんだ?
あれか、頭おかしくなっちゃった系か?
どうしよう。
「猿渡殿。ここは、先生にかけてみるのも一計。元より無理な話。やってみるだけ損はない。」
「そうであるな。」
「わかった。」
こうして、僕たちは、先生の依頼を、受けてしまった。
「ああ、お前らが探している奴らなら、男子は城壁の上で見学、女子は城壁の下で大魔法を放っているから、現場に行けば女子の方はすぐにわかるだろう。」
「だ、大魔法? 町田たちが?」
「そうだ。あのいじめっ子たちが、とんでもない大魔法を放っている。黒焦げにならない様に、ここから無事を祈っておいてやろう。」
「じゃ、じゃあ、行ってきます。」
僕ら3人が、黒焦げになる未来が確定した瞬間だった。
先生は、これまで何度、町田によって黒焦げにされたのだろうか。
まあ、生きているのだから、大丈夫だったのだろうけれども。
城内の廊下をいけない方法で抜け出して、城壁へと至った。
城壁の外を見ると、女子3人は、確かに大魔法を放っていた。
巨大な炎で敵を焼肉にしているのが、いじめっ子リーダー町田。
尖った氷の塊で、敵を串刺しにしまくっているのが、子分その1、楢原。
そして、大地を割り、敵を落下させて屠っているのが、割ヶ谷だった。
3人とも、すごく目立っている。
何しろ、あの3人のそばに、魔王軍が近づいていかない。
3人の移動とともに、魔王軍がいい感じに逃げている感じすらする。
5万の軍勢はどうした。
そんなことではだめだろう?
おまえらもっとがんばれよ!!!
過去にいじめられた経緯から、どうしても魔王軍を応援したくなってしまう小市民だった。
あと、小市民仲間のパッとしない男子4人は、未だ見つからない。
城壁の上には、どうやらいない様だ。
それなりに長い城壁を全て歩いて探したのだが、今日は見学していない様子だった。
「おい、猿渡殿。あれは、三碓ではないか?」
「どこだ?」
高野が指さす方向には、一人だけ厨二病にかかった様な男がいた。
黒光する漆黒の鎧を完全着装して、漆黒のマント。
その両手剣の刃まで漆黒。
ちょっと黒歴史になりそうな騎士スタイルの男が一人、魔王軍と戦っていた。
これも、ある意味、悪目立ちするので、魔族がよってたかって攻撃していた。
しかし、漆黒の剣は、単に厨二病なだけではなく、本当に効果があるもののご様子。
結構いいペースで、魔族を刈り取っていた。
あそこに行けば、魔族を簡単に生け捕りにできそうだ。
「先生の依頼を達成できそうな気がしてきた。」
「拙僧もだ。」
「奇遇ぅ。」
すぐに城壁から降りると、黒歴史作成中の三碓に近づいた。
残りの男子3人も、一緒にいた。
近くに来るまで、全く気が付かなかったよ。
やっぱり影が薄いな。
「三碓殿。その鎧はどうされた? まるで厨二病患者ではないか?」
「そ、その声は、高野。違うんだ。これは恩寵のせいなんだ。決して厨二病じゃないんだ。」
なにやら恩寵を言い訳にしてきた。
積もる話もしたいところだが、そんなことより先生の依頼だ。
「あのな、先生から、魔族を13匹ほど、生け捕りにしてこいと命令されたんだ。この、ピクピクしている死にかけの魔族、もらっていってもいいか?」
「ほ、ほほう? とどめを刺す手間が省ける。気をつけて運ぶんだぞ?」
「ありがたい。」
そこからは、吐田たちにも手伝ってもらって、先生に魔族を13匹、即納した。
僕たちは、やればできる子だった。
試験の点数だけは、すんごいからな。
それ以外は、なんともお察しだが。
「早いな。やはり、お前たちに頼んで間違いじゃなかった。ちょっと地下まで運んでくれ。」
そう言うと、先生は寝室の床にある、床収納みたいな扉を開けると隠し階段があった。
とっても異世界な感じだった。
ここへ来て、やっとそれらしいものを見せていただいた感じだった。
階段を降りると、そこはちょっと狭いホール状の空間になっていた。
20メートル四方はあるだろう。
異世界だと感じさせられたのは、照明が、たいまつでできた篝火であること。
そして、床に、部屋ギリギリの大きさで、丸い魔法陣が描かれていたことだ。
「この魔法陣が、世界転移魔法の魔法陣だ。私たちが召喚されたものとは、一切異なる魔法陣だ。送り返すものだからな。あの魔法陣は、解析したが一方通行だったのだよ。だから、新しいのを制作してみた。」
あれ?
僕らの担任教師である小松崎教諭、確か担当は理科。
しかも物理教師だった記憶があるのだが。
科学の信徒が、魔法とか使っちゃって、理論的には大丈夫なのだろうか。
精神的に、自己破綻とかしていないだろうか?
「ああ、じゃあ、その動けないように縛ってある魔族を、順番に置いていってくれ。そう、その印があるところだ。多少ずれても構わない。魔法陣に乗っていれば、私の魔力でなんとでもなる。」
理科の先生が、平気な顔で魔力とか言っちゃっているよ。
まあ、魔法を使いまくっているので、人のこと言えないんですけれどね。
6人で作業していたので、すぐに終わった。
「準備に、そう、魔法の詠唱に少し時間がかかる。この魔法で私の日記を送り込んでやろうと思っている。1時間くらいしたら、また来てくれ。くれぐれも、女神には言うなよ?」
まあ、魔王軍と戦っている最中だ。
しかも、三碓は、今でも戦闘中。
その手助けに向かった。
慣れている吐田たちの方が、早く三碓のところに着いた。
そして、僕たち3人が、城壁の出入り口から、三碓のところへ出ようとした時。
視界が、炎で埋まった。
魔王軍の攻撃か!!!
恐ろしい威力だった。
目の前の、吐田や三碓は、黒焦げになっていた。
すぐに城壁内の部屋に引き込んで、とにかく火を消した。
その後、神佐味と一緒に、色々な方法でHPを回復させた。
とりあえず、死なせずに済んだ。
「気をつけろ。フレンドリーファイアだ。」
三碓が、なんとか立ち上がって、何やらケッタイな英語を使ってきた。
この火炎魔法の名前か?
「誰が放ったのだ? 聞くだけやぼじゃろうが。」
「そうだ。町田だ。魔王軍の相手もいないのに、僕らに向かって直接攻撃してきた。」
その証拠に、先程4人を運び込むのに使った城壁の入り口は、氷に閉ざされていた。
氷結魔法は、楢原だったな。
「裏切って、的にされたのか?」
「あいつらは、定期的に『誤射』と称して僕らを標的にしてくるんだ。いつもは、雲梯が防護魔法で防いでくれていたのだが。」
あー。
魔族を運ぶ要員にしていたからね。
失敗だった。
「こんなことになる前に言うべきだったのだが。僕たちがここに来たのは、勇者を回収するためだったんだ。王国軍は、早晩敗北する。勇者をみすみす殺させるわけにはいかない。だから、北から戻ってきたんだ。これではもう、しばらくは戦えない。一緒に来てくれるか?」
「そうですね。お願いします。」
吐田が、黒焦げの顔で、そう返してきた。
一応、HPは、死なない程度に回復してはいる。
でも、4人とも戦闘できる状態じゃない。
なんとか歩けるようなので、仲間の待つ城の北側へとうまいこと連れて行った。
「遅い。だいぶ待った。」
「死んだかと思った。エルフたちが、まだ死んではいないと言うので信じて待っていた。」
待たされていた待機部隊の皆さんは、大変不満そうだった。
まあ、寝起きの人もいたが。
「こんな状態だが、吐田たち4人を確保した。残りは女子3人と先生だ。確保したら、僕たちも後を追う。みんなで先に行っていてくれ。」
「あ、猿渡さん。」
「どうした?」
マインエルフの一部が、声をかけてきた。
「わたしたちは、元からこの辺りの偵察任務がメインです。ですから、もう帰られるのであれば、私たちは、元の仕事に戻ります。」
「ああ。ありがとう。大変な仕事だが、がんばってほしい。あと、たまには嬢王国に戻ってくるんだろう?」
「ええ。交代が来れば。今回の遠征で、多少はメンバーを入れ替えていますし。」
そうして、帰還組は崖を降りて行き、残留エルフは、ウルフになって、城に向かった。
え?
やつらは一体どこで仕事をしているのか不安になった。
まあ、プロなのだから、大丈夫だろう。
何しろ、今はマインウルフ。
結構強めのモンスターだがらな。
冒険者に、討伐されるなよ?
そして僕たち3人は、最も困難な任務に、手を付けることになった。
町田たち3人を、先生の元へと連れて行くことだった。
僕たちとしては、彼女たちも勇者なのだから、早く交渉して連れて帰りたい。
あの感じでは、両方とも、まず、無理だと思う。
逆にもし、連れて帰れたとすると、惨劇しか待っていない。
あの恩寵による、強力な攻撃魔法で、みんながひどい目に遭うのだ。
それを思えば、もう後ろ向きな気持ちにしかなれないよ?
とにかく、被害は最小限に抑えたい。
そこで、僕が直接交渉し、神佐味と高野には、城壁の中へと隠れていてもらった。
いざと言う時、魔法をなんとか避けるためにだ。
彼女たちは未だ、派手な魔法を放っていて、すぐに見つかった。
「町田さん。小松崎先生から伝言。元の世界に帰るから手伝って欲しいって。」
そう、先生からはセリフの指定を受けていた。
なるほど、これなら食いつくだろう。
なにしろ、早く帰りたいと言っていた、急先鋒なのだから。
はでな攻撃魔法に味を占めて、帰りたくないとか言い出さなければいいけれど。
「なんですって? あのちびっ子、元に世界に帰るつもりなの?」
「転移魔法で帰るって言っていたよ? 魔法陣も用意したし。」
「その話、詳しくしなさい。楢原! 割ヶ谷! おうちに帰れるって!!!」
「はぁ? そのチビ、こまっちゃんにだまされてんだよ!」
「まあ、帰れなかったとしても、それでバカにすればいいし。」
ひどい言い様だった。
こんな生徒、教えたくはないだろう。
先生の苦悩が、たったこれだけの会話で垣間見られるのだから。
「先生は、どこ?」
「先生の寝室。」
「じゃあ、早く行こーぜ! お前、嘘だったらわかってんだろうな?」
「わざわざリスクを押して来たんだ。嘘をつくメリットがない。」
「リスクっつうなよな? ま、しょーがねーよな? お前はよわっちーもんな?」
「ほら、チビ! 案内し、」
そこで、町田のセリフが終わった。
永久に終わった。
3人が城壁の前に立っている僕に、並んで正対していた。
その3人の首が、見上げるとなくなっていた。
その後ろには、3メートルはある、巨大な悪魔がいた。
赤い血の滴る、巨大な斧を持ってそこにいた。
「おいおい、戦場で隙だらけじゃねーか? 次はおまえらか?」
僕たちも終わった。
これは勝てない。
僕の初級魔法では、まともにダメージが入らないだろう。
茫然自失として、棒立ちになってしまった。
「はっ。諦めたんかよ。つまんねーな!」
そして再び振われる巨大な斧。
しかし、その斧は、突然現れた巨大な岩の塊に阻まれた。
しかも、相当な力で振られたであろうその斧は、岩にしっかりと食い込んでいた。
そして、巨大な悪魔が、顔を真っ赤にして頑張ってはいるが、抜けそうになかった。
「ばふう!!!」
「ばふ、ばふぅ!!!」
マインウルフが、3匹。
たった3匹だが、なぜが近くにいた。
そして、岩石魔法で果敢に攻撃する。
武器を失った悪魔は、ブチ切れていた。
その怒りよりも、マインウルフの岩石魔法の連続攻撃の方が危険だった。
たとえ悪魔であっても、きちんと避けなければ戦線離脱間違いなしの攻撃だった。
マインウルフたちは、そんな地味にすごい攻撃で、いい感じにヘイトを稼いでいる。
気がつけば、僕は体が動かせる様になっていた。
悪魔に威圧されてしまっていたのかもしれない。
目の前の3人の死体は、いつの間にかなくなっていた。
見回してみると、神佐味と高野が、死体を城壁内に運び込んで、回復させようとしている。
しかし、首をはねられて生きていられるはずもない。
もしかするとと思い、僕も生物魔法をかけてみたが、パズルの盤すらイメージできなかった。
もう、生物魔法の範疇外だった様だ。
生物魔法は、生物にしか効果がない。
死体は、もう、生物じゃないと言う魔法の判定なのかもしれない。
生き返らせる、そんな隙もないくらい、3人は死体だった。
マインウルフたちの岩石魔法によるハラスメント攻撃はすばらしかった。
悪魔は武器を奪われ、何回も転倒させられている。
「犬の相手をするのも馬鹿馬鹿しい!!!」
悪魔は、そんな捨て台詞を残して、王国軍の方へと戻って行った。
死体になってしまったが、マインウルフたちと協力して、女子3人を先生のところまで運んだ。
魔法陣の部屋に入ると、先生の魔法詠唱は、ほぼ最終段階まで終わっていたようだ。
「これは、どういうこと?」
「彼女たちも、悪魔にはかなわなかったよ。」
「そう。蘇生も、首から殺されては無理。魔法陣の中央に安置して。せめて体くらいは、元の世界に返してあげましょう。うまく行けば、だけどな。」
そして、とうとう、詠唱が終わる。
13人の魔族は、闇色の粒子になって、魔法陣に吸い込まれていった。
魔法が発動する直前、突然割ヶ谷の体が動いた。
小松崎先生を、一瞬で魔法陣の中へと引きずり込んでしまった。
先生も抵抗していたが、かなりの力のようで、魔法陣の中央に投げ飛ばされる。
転がって止まる先生は、気を失っている様子。
そんな術者の戦闘不能にも影響を受けず、魔法陣からは円筒状に光が立ち登る。
その光の柱は、転移魔法が発動したことを意味しているのだろう。
眩しい光が部屋を、光の闇へと誘っていた。
明るすぎに逆に何も見えない。
10秒もすると、光は収まり、魔法陣だけが残っていた。
世界転移魔法実験の成否は、先生とともに消え去ってしまった。
なぜ、割ヶ谷が動いたのか。
その謎を残して。
「私、殺されちゃったの?」
首の繋がった割ヶ谷が、仁王立ちの状態で、背後から僕にそう聞いてきた。
プロットをよく理解できていなかったせいで、話の繋がりがおかしくなりかけていました。
この章のお話を、再構築した上での投稿となりました。
ちょっと時間がかかりました。
続きもがんばれれば、また。
訂正履歴
帰れな方 → 帰れなかった
じゃーがねーよな? → しょーがねーよな?