第130節 お城ゲット問題
魔王軍との戦いは、常に騙し合い。
魔王軍は数にものを言わせて力技で攻めてくることも多いものです。
なら、こちらは、小手先のテクニックである程度誤魔化していく必要があるのです。
今回はそう言うお話。
それでは、どうぞ。
<異世界召喚後61日目朝>
場所:ウーオ帝国ヴァイスフロスト領ヴァスト砦
視点:野中
魔族が来た。
「あの〜、すみませんが、うちの魔族が200人ほど、行方不明なんですけれど、こちらに来ていませんか?」
あ!
あの数字と一致する。
完全に一致だ。
昨日のことだが、クラスアップを果たして「鉄建」の精霊になったラストと、あと1レベルでクラスアップできるハイドウルフのユリが、ハイテンションでレベル上げに出かけていった。
たしか、砦に北方であったことは間違いない。
そして、彼らは、ボロボロになって帰ってきた。
激しい戦闘を潜り抜けてきたであろう姿だった。
なお、ラストは、万が一魔族と接敵した時のために常日頃から持っている、魔族を一瞬で消滅させる「BAN!」のお札100枚に加えて、レインからさらに100枚追加でもらっていた。
合計200枚である。
帰ってきたラストは、その全てを消費しきっていた。
なお、魔族からの戦利品として、ポーチタイプの空間魔法式収納アイテムをゲットしていた。
そして、今日、この魔族の捜索隊である。
状況証拠だけで、もう、ラストがやったに違いない。
ユリも当然加担しているに違いない。
彼らは、女神様の元へと魂となって旅立ち、ラストとユリの経験値となったのだ。
「少なくとも、こっちには来ていませんよ? そんなに大挙して押し寄せてきたら、流石に応戦しますけどね? BAN! しますよ? 一応、魔王軍は敵なんですから? 何度も攻め込まれていますし。」
「そうなんですけど、昨日のお話で、山の上にあるいい感じの砦に引っ越そうとしているんです。荷物を持った1回隊が、移動中に忽然と姿を消したのです。2回隊も、3回隊も、問題なかったのにです。」
「ちなみに、それって、近くを通りました? うっかり、哨戒中に殲滅するくらい近くに。」
「それはありません。バレないように、森の中を通過するようにしていました。」
「ちなみに、バレていたとして、それは、近くですか。」
「うっ。確かに近くです。しかし、人間の能力では見つからないように隠蔽魔法を使っていたので、わからないはずですし、接敵できないはずですが。」
「あー、うちは、サッシー王国と違って、異種族がたくさんいる王国なんです。哨戒中の兵士の中には、ウルフ何かも普通に混じっているくらいです。その魔法は、匂いとかも誤魔化せるのでしょうか?」
「無理です。視界と音を誤魔化す魔法ですから。」
「じゃあ、砦の近くを通ったので、ウチの兵士に殲滅された可能性はあります。具体的にはどのあたりを通られたのでしょうか?」
「えっとですね、あのあたりから、こう、まっすぐですね、こうです。」
魔族の男は、北の砦の正面にある森、これは、砦から200メートルほど離れているのだが、その森の中を、西に向かって移動したと言うのだ。
「いや、そんな近くを大軍が移動したら、普通、戦闘になりますよね? 消されても文句言えませんよね? なんで、そんな近くを通ったのですか?」
「だって、この間は、砦の目の前まで行っても攻撃してこなかったじゃないですか。だから、魔族の者達は、森の中なら余裕で攻撃されないと判断したのです。それに、上級悪魔のボスが、そのルートでいいと言っていたので。」
「ご愁傷様です。戦果は、これと言って具体的に聞いていませんが、おそらくそんなことができるのはうちの戦力だけだろうと思います。もしそうじゃないなら、魔王軍をも脅かすような、第三者の強力な敵がうろついていることになりますから。ちょっと待ってくださいね、一応、疑いのある者たちに聞いてみましょう。」
「ご迷惑をおかけします。」
「いえいえ。次からは、もう少し、攻撃されないルートを選定してください。お互いのためにも。」
「ええ。もちろんです。」
そして、砦の門の前に待たせておくと、レインに聞いた。
「やったのか?」
「やっていないのです。昨日はずっと一緒だったのですよ? やったのなら、マスターも共犯なのです!」
「それなら僕はやってない。」
「当たり前なのですよ!!!」
まあ、レインは初めから除外だ。
だって、ほとんど一緒にいるからな。
ロッコも、大体一緒にいた。
離れた時も、南側の砦だったし。
疑いの濃厚な者たち、ラストとユリに聞いた。
「やったのか?」
「200体ほどやったぞ!!! レイン様からお札を補充したから、まだまだいけるぞ!!!」
「私も、お札をいただければ、できますかね? とりあえず、頑張れば、魔族も殺れますよ?」
こうして、誰がやったのかはっきりした。
本人は、自白し、後悔も反省もしていない。
まあ、当然の行為だったのだから、責められないしな。
そして、再び、門の前の魔族と相対した。
「でだ、確認の結果、200人ほど、近くに来ていた魔族を討伐したと言う者がいた。ウチの仕事で間違いない。アンノウンの存在はとりあえず否定させてもらおう。」
「うっかり近づかないように、よく、言い含めておきます。」
「で、結局引っ越しして、無血開城するのか?」
「いえ、昨日の件で、それは無くなりました。もっとも、大半は引っ越しましたが、城を明け渡すメリットがないと、上級魔族が言い切りました。あの策、知ってしまえば、あなた方は用済み、だそうです。一応、説得はしたのですが。」
「よろしい。ならば殲滅だ。」
「ですよね。その上級悪魔は、今もまだ、お城の玉座にいます。城の守備隊は、1割くらいしか残っていません。」
「なるほどな。」
「じゃ、そういうことで。よろしくおねがいしますね。」
「もしかすると、将来のためには、そいつは生かしておいた方が、人間のためになるんじゃ。」
「いえ、お互いのためになりません。だから、どうぞ心置きなく。」
その魔族は、そそくさと立ち去っていった。
お城の方向ではなく、森へ入ると、西へと向かっていった。
新しい拠点へ向かったのだろう。
あいつが、頭になったら、結構戦うのは大変そうだな。
「やらないのです?」
「今はまだな。あと、皇帝陛下に伝えよう。城を攻めるぞと。」
「本気なのです? 守るだけで精一杯なのですよ?」
「行くのは、皇帝陛下と僕と精霊軍団のみだ。敵方で守りは魔族のみ500。あとはボスが上級魔族1。これを削り切れば、今ならお城が手に入る。罠じゃなければだがな?」
「絶対、罠なのですよ? 騙されるのですよ?」
「まあ、騙されたなら、帰ってくればいいだけのこと。」
「そうなのです。では、すぐに行くのです?」
「お札を配ってやってくれ。」
「ハイなのです!」
こうして、今日も魔族退治に出かけることになった。
メンバーは予定通りだが、ユリもついてきた。
お城まで、歩いて2時間ほどの至近距離。
レイン以下の精霊たちの活躍で、城にいる魔族は、ほぼ全滅させることができた。
そして、玉座である。
「お前らが、あれか、ヨーコー嬢王国の手先か。我のような上級魔族と敵対するとは、アホだな。死にたいのか?」
「いや、お前、状況掴めていないのか? 今、この城にいる魔族は、お前らだけだぞ?」
「何を馬鹿なことを。おい、誰でも良い、玉座の間へ入ってまいれ!!!」
結構な大きい声だった。
魔力も乗っていたので、魔族なら、城の大半の場所で聞こえたであろう。
待つこと、1分。
誰もこず。
2分。
変化なし。
5分。
流石に痺れを切らした。
「なぜだ。なぜこないのだ? 裏切りか?」
「すまん、ここまでアホだとは思わなかった。全員やっつけておいたと、遠回しに言ったはずだが。」
「聞いてないぞ?」
「いや、言ったし。『この城にいる魔族は、お前らだけだぞ?』と。聞いたよな。」
「む、むぅ。確かに言ったな。そう。」
「なら、なんで自信満々に、もうお亡くなりになった部下を呼んだし? 女神様の元へと魂を送ったから、ネクロマンシー的な魔法を使っても、復活したり死体を動かしたりできないぞ? 死体ごと消したからな?」
魔王軍のボスは、ぷるぷる震えていた。
どうやら、激おこのようである。
両サイドにいる、最後の魔族2人が、どうしようかと悩んでいる。
部下に心配されているようでは、上官失格だろう。
「貴様ら、許さんぞ。部下を皆殺しにしたと言うことだろう?」
「さっきからそう言っているのだが。あと、同じ手法で、お前さんも、一瞬で消せるのだが。部下の二人は既に気がついていて、お前の命の心配をしてくれているぞ? 上司なら、早くそれに気がついてやれよ。」
「うるさい。なぜだ? どこで間違った?」
「おそらく、間違ってはいまい。ただ、敵が圧倒的に強かっただけだ。何か最後に言い残すことは?」
「せめて、普通に戦って死にたいものだ。」
「いいぞ? じゃあ、ユリ。ゴー!」
ユリが、音も立てずにその魔族3人の前に立つ。
ちなみに、ここまで魔族をいい感じ倒しているので、レベルは5まで上がっている。
「なんだ、エルフが相手か。しかも素手だと? 馬鹿にしているのか?」
「ボス、おそらく、勝てませんぜ? あいつは、ただのエルフじゃねえ。忍者エルフだ。」
「忍者エルフ?」
「そうだぜ、ボス。あいつは、いろいろな忍術と呼ばれるスキルを使って、こちらを翻弄してくる、スカウト系職業の上位職『忍者』と同等以上の能力のあるエルフということだ。」
「マジかよ。暗殺、されちゃうのか、俺たち。」
「いや、こんな堂々とした暗殺もないだろ。まあ、戦うには戦うが、瞬殺だろうな、俺たち。まあ、幸にして、痛みは感じないだろう。瞬殺ならな。」
「どうすんだよ。逃げ延びる方法とかないのかよ?」
「無理。戦って勝つくらいしかない。」
忍者エルフと呼ばれた、ユリ。
そうなのか?
「ユリ、お前、忍者エルフだったのか?」
「ぜんぜん違いますが。このポンコツ魔族たちは、何を盛り上がっているのでしょうか。あれでしょうか、忍者とか大好きな、厨二病なのでしょうか。」
あ。
その指摘で何となく気がついた。
確かに、そんな感じがする。
厨二病のボスか。
技とか、名前を叫んじゃう系かな?
割と楽しみだ。
「戦う前に、名乗りぐらいあげるべきでしょう。私は、ハイドウルフのユリ。マスターは、このノナカというパッとしない少年だ。ちなみにお前たちの言うような忍者ではない。」
「おれは、上級魔族スタンチだ。右にいるこいつがムホッハ。左がヘルエル。3人とも幼馴染でダチだ。連携の取れた攻撃を受けてみよ!!!」
「え? 兄さん? 俺たち、いつ幼馴染になったんすか?」
「兄貴? 今日はそういう設定で行くってことですか?」
「お、おまえらっ!!! 設定って言うな!!!」
連携はもちろん取れていなかったし、幼馴染というのも嘘だった。
早いな、バレるのが。
あと、ユリ、お前はあとで説教な。
ナチュラルにご主人様をディスりやがった。
許さぬ。
「あ、マスター。もう、この姿では尻尾、生えていませんのでお尻を凝視するのはやめてください。そちらを見ていないのにマスターのエロい視線を感じます。」
「いや、おかしいだろ? 今、僕、スタンチ3兄弟の方を見ていたよね? 間違い無いよね?」
「なぜ、本当は3兄弟だとバレたんだ? どこかにバレる要素でもあったのか?」
おいおい、自分でばらすなし。
ノリで言っただけだし、深い意味はないのだから。
エルフになったユリの戦い方は、どうなのだろうと思ったが、どうなのだろうではなかった。
戦い始めるにあたって、変身してハイドウルフに戻っていたのだ。
確かに、その方が戦い慣れていますもんね。
賢いと言うか、期待外れというか。
しかし、そこからが問題だった。
ユリの戦い方は、僕の知っている今までの戦い方と違っていた。
ハイドウルフは本来、こう戦うのですよと言う戦い方になっていた。
言葉で言うのは容易いが、実際に見ると恐怖でしかない。
ユリが、激しく動き回る機動戦を仕掛けるところまでは一緒だったのだ。
ところが、その「動き回る」に問題があった。
今までなら、前後左右に素早く動き、攻撃して、相手の攻撃を回避するという常識的なもの。
ところが、今の機動力では、自分の影に飛び込んで消えたり、相手の影から飛び出してきたりして、相手の不意を突く動き、というか物理法則を無視する動きを多用していた。
それだけならまだしも、相手の背後の影から顔だけ出して足に噛みつき、その影の中に引き摺り込むとか言う、見ている方にはただただ恐怖しか残らない攻撃を仕掛けていた。
相手の魔族2人、ムホッハとヘムエルは、影の中に落とし込まれて消えていった。
影の中で生きているかもしれないと期待したが、無駄のようだった。
しばらく待ったのだが、這い出してくる様子もない。
この攻撃による生死判定は、一体どうなっているのだろうか。
ユリ、恐ろしい子。
流石に1対1の戦いでは、なかなかそういう攻撃は通用しない。
だが、攻撃は相変わらず一方的だ。
どちらかと言うと、魔王軍側の悪魔や魔族がそう言う戦いをしてくると思うのだが。
スタンチは、防戦一方だった。
影さえあれば、どこからでも遠隔攻撃できるのだから、恐ろしすぎる。
もし、暗闇で戦ったのなら、どうなるのだろうか。
圧勝することだけは間違いないだろうが。
最終的には背後から首を噛みつかれて、自らの影に飲み込まれて消えていくスタンチ。
ユリはもう、チートと言うべきか、元から普通に強かったのに、抵抗されずに虐殺できる領域まで達していた。
こうして、ヴァイスフロストのお城は、あっさりと僕らのものとなった。
いいように言えば、実質的には無血開城だったのだ。
本来は、これの十倍の戦力がいたはずなのだから。
このスタンチとかいう、上級魔族がうまいこと部下を使いこなせなかったおかげで、部下に不満が溜まり、その溜まった不満を、僕たちが晴らしたかたちだ。
いいように利用されたとも言える。
そう思ってしまうと何だか納得いかないが、それはそれとして、飲み込むことにした。
城を制圧した後は、地の利のある帝国兵たちのアドバイスに従い、城下町に残っている魔物たちを掃討していった。
こうして、ヴァイスフロストのお城とその城下町を取り戻すことができたのだ。
皇帝陛下は、ご満悦だ。
すぐに、マインウルフたちが、周辺に逃げていた住民たちを発見してきて、この城下町だけでも1000人規模の人口を回復することができた。
ただ、魔王軍から再び攻め込まれたら、また、占領されてしまうだろうことは、簡単に想像できる。
だから、対策を打った。
城の北側に、さらに城壁と砦を作ったのだ。
こうすることによって、東西を山に挟まれたヴァイスフロストは、北側から攻め込めない安全地帯となり、ヴァスト砦とド・エッジ砦との三角形で、帝国領がかなり広がった。
魔王軍は、なぜ、この城を事実上手放したのか。
これには、いくつかの理由があるが、大きな理由は2つだ。
一つは、僕の入れ知恵があった。
魔王軍のサッシー王国討伐隊に、補給やら、増援やらをしたいのなら、地上は無理なので、上空を通過すればいいじゃないと。
ちなみに、ヨーコー嬢王国上空をカメ鶴などの航空戦力で通過しようとした場合、かなり高い精度で、ライトエレメントのビーム攻撃に遭い、撃墜される。
ほぼ、間違いなく。
魔王軍もそれを知っていたので、困っていたのだ。
だから僕はいってやったのさ。
「ヨーコー嬢王国がダメなら、ガガ多種族連合王国の上空を通過すればいいじゃない。」
と。
ガガは多種族の国だけあって、我が国よりも潤沢な航空戦力があり、中途半端な上空では、すぐに撃墜されてしまう。
だから、カメ鶴に、高度7000メートルで、いろいろ運ばせればいいよと。
ガガも流石に、その高度には、対抗できなかった。
成功事例ができたので、魔王軍は方針を転換したのだ。
僕のお勧めした、とある山の山頂付近に、新たな拠点を作ればいいよと。
山頂付近が平らな高原となっていて、基地としても、物資の集積地としても使える場所。
かつ、魔王軍の占領下の土地。
さらに、カメ鶴に物資輸送させるのに適した高地。
完璧な場所だった。
実際に実験してみると、ものの見事に物資の輸送は成功した。
兵站がつきかけていて、特に魔物が飢え始めたところに届いた物資。
この成功体験は、そうそう手放すことができない。
次は、兵士の輸送をしてみたらしい。
これも、成功する。
ただし、兵士の輸送できる数はとても少ない。
当たり前だが、鳥が、巨体を持ち運べるはずもないからだ。
だが、それでも成功は成功だ。
物資が運べて、人員も輸送できる。
その上、攻め込まれにくく守りやすい完璧な立地。
すぐに基地としての機能を拡充すべく、魔族たちは、建物まで立て始めた。
ここまでは順調だったのだ。
彼らの計算が狂い始めたのは、その後だった。
確かに輸送計画は、数こそ少ないものの成功している。
成功すると、現場からは、もっとよこせとせっつかれるのだ。
その指示に従うべく、カメ鶴たちは、ヘビーローテーションを余儀なくされた。
もとよりそれほど頑丈ではなく、魔王軍でも協力的ではないカメ鶴が、そんな労働を強いられたらどうなるか。
結果は簡単で、カメ鶴たちは、あっさりと逃げ出したのだ。
そして、高すぎる空を飛べるカメ鶴たちを捕獲できる他の航空戦力は、魔王軍にも存在しない。
内部崩壊だった。
僕には、ある程度予想できていた。
ちょっとしかできないことを提示すると、できないよりはできたほうがいいと飛びつく。
しかし、与えられた方からすれば、少ないよと、もっと欲しいよとなる。
そこで、力関係により、無理をさせる選択しか取れなくなるのだとすれば、こうなる。
爆撃による、相手の国のインフラを破壊できる強力な手札が機能しなくなった魔王軍は、ある意味怖くない。
地上戦力だけを叩けばいいのなら、与し易すぎる相手と化してしまうからだ。
もちろん、基礎的な戦力はそれでも尚、強力だ。
真っ向から勝負したいとは思わない。
そして、一度手放してしまった、ヴァイスフロスト城には、既に僕たちがいて、取り返せる目処も立たない。
それどころか、周辺に城壁と砦が作られ、さらに街道を占有されてしまった。
こうなってくると、もう、魔王軍側の新しい基地には、意味がない。
もう、手放してもいいような場所であった。
しかし、そこを撤退するにしても、問題が発生していた。
その山頂にある高原の基地は、じゃあ、一つ手前の魔王軍の基地へと向かおうとしたところ、ヴァイスフロスト城の周辺区域を通過しなければならないのだ。
つまり、退路が絶たれていた。
最初は、僕らが何もしなかったので、物資や人員を運び込むタイミングでは気がつけなかったのだ。
その魔王軍の基地に、十分に物資や人員が集まってから、梯子を外すように、砦や城壁を北の大街道上に設置したのだ。
つまり、その基地にある人員・資材が、塩漬けになったのだ。
「マスター。今回は、かなりズルいのです。どっちかというと、マスターの方が魔王軍にみえるのですよ?」
「ここまでしても、魔王軍はなかなか弱まらないからな。でも、サッシー王国はどうなるだろうな? ここまでサポートしたのだから、魔王軍をなんとかしてくれるんだろうな? 流石にこれ以上は面倒見きれんしな。」
「なら、ヴァスト砦の南側の町もいくつか占領するのです。国土を広げるのですよ? 魔王軍も、サッシー王国も、お互いの戦争で疲弊しているのです! 漁夫の利なのですよ?」
「レインも、かなり小狡い方法を考えられるようになってきましたね。」
「それほどでもないのですよ?」
「褒めてないからね?」
「よいのですよ? マスターは素直じゃないのです。」
こうして、僕たちは密かにサッシー王国の対魔王軍戦をアシストしていた。
だって、まだ、王国には僕たちのクラスメイトがいるんだろ?
死んでもらっては困るし、最悪、異世界転送用の魔法陣だけでも、確保しておきたい。
こうして、僕とレインの、さらに小狡い計画が練られていくのであった。
ブックマークありがとうございました。
今後のモチベーションの糧にしていきたいと思います。
さて、今回は、ほんとにどうなのと言うお話でした。
単純に、お城を何とかゲットする方法を考えた場合、その戦力差から、どうやっても無理という結論に達していました。
じゃあ、別のにしようかとも考え、いろいろアイディアを練っていたところ、騙し打ちを逆にこちらがやってしまうのはどうだろうかと思いついてしまったのです。
コンプライアンスの叫ばれるこのご時世で、それはどうなのとも思いましたが。
それでは、がんばれれば、また。
訂正履歴
つうか → 通過
具体的ににいて → 具体的に聞いて ※ 以下3件誤字訂正ありがとうございます。
陰 → 影
もの達 → 者たち