第128節 ガガ多種族連合王国使節団来る
今日も、ちょっと訳のわからないお話です。
味方になるかもしれない、一番強い国から、出来立ての小さな国に来た使節団。
彼らの求めるものは一体何なのか。
今回はそういうお話です。
それでは、どうぞ。
<異世界召喚後60日目午前中>
場所:ウーオ帝国ヴァイスフロスト領ヴァスト砦
視点:野中
「ノナカ殿。予想以上の早さでヤツらが来てしまった。どうする?」
ウーオ帝国の皇帝陛下が、特段慌てた様子もなく僕に聞いてきた。
「どうすると言われましても。ここじゃ、歓迎できるような施設もありませんし。」
「あるだろう。ここだ。」
そう言われてみれば。
今いるところは、ヴァイス砦駅。
貨物駅だが、レベルが3まで上がっている。
なぜなら、物資の輸送が頻繁に行われたから。
毎日せっせと親分が頑張った結果、レベルは3となり、それなりに大きな駅となっている。
駅自体は1面2線の橋上駅なのだが、その橋上は、中央の砦の上だったりするので、見ようによっては砦の一部にも見えるし、小さなお城のように見えなくもない。
いや、見えないか。
かなり無理はある。
とにかく、もうすこしで、帝国側の砦にヤツらが到着してしまうらしい。
こっちは、代表となるものがいない。
強いて言えば僕と山神様くらいだが、それはそれで不安だ。
とりあえずは、分割統治としたので、皇帝陛下の活躍に期待したい。
その点で、山神様とは、あらかじめ一致していた。
「マスター。何が来るのです?」
「あ、ああ。この間来た荒波の国、ガガ多種族連合王国の使節団が来るらしい。どうもてなそうか、考えているところ。あ、そこ、机動かして。」
「ん。ロッコは力持ちになった。これくらいお安い御用。」
「ロッコばかりずるいぞ! ラストもクラスアップさせろ!」
「いや、ラストはまだ、16だから。」
「19! レベル19になったぞ!」
「20になったらな? どの道、いくら抜け道の精霊レイン様でも、レベルが足りてない精霊をクラスアップさせることはできないからな?」
「マスター、トレインの精霊なのですよ? 抜け道の精霊じゃないのです!」
僕らは、その駅にて、使節団を受け入れるべく早急に作業を実施していた。
そして、なんとか応接セットを中央に設置し、それっぽくすることができた。
山神様も皇帝陛下も準備万端だ。
ラストとロッコが、入り口に門番よろしく儀礼的に立つ。
何か、魔王軍的な混ざり物があれば、ここで見抜けるはず?
準備は整った。
そして、帝国兵が使節団を駅に案内してきた。
駅の階段を登った見晴らしのいいところで、その一団を山神様以下で出迎えた。
「遠いところ、我が国まで来ていただき、ありがとうございます。」
僕が、とりあえず、儀礼的に謝辞を述べた。
なお、本心では、早すぎるよ! ちょっとは準備をする時間を考えろよ! と思っていた。
皇帝陛下の話によると、荒波の国は、東西に長い大国。
しかも首都は西の端の方だと言うではないか。
だから、こんな短期間に準備をして来るはずがない。
ちょっとおかしいよと思いつつ、顔に出さないように気をつけながら対応をしていた。
「ご歓待ありがとう。私は、ガガ多種族連合王国の外交大臣、シート・ケット。国王陛下より、この交渉に際して全権を委任されている。」
「ご丁寧にありがとう。私は、ウーバン山脈の精霊キーファ。皆さんは山神と呼んでいるようです。今は、ウーオ帝国とヨーコー嬢王国の上で、北パーン連合の代表をしています。」
「な、なんですと?」
立ち話ながら、ざわつく使節団。
「初耳、ですが。」
「ええ、ですが、こういうことは、対外的にすぐ発表しないのも戦略。北パーンの生きとし生けるものを守るための方策です。」
「うぬぬぬぬっ。」
ぱっと見では、大臣は白い虎頭の獣人。
いきなり噛みついたり襲いかかってきたりはないかと、不安で仕方がない。
しかも、山神様の話に、唸り声を上げる始末。
檻にでも入れとかなくていいのか?
後ろで、一緒についてきた使節団の面々が、びびっているよ。
「立ち話、と言うわけにもいきませんので、みすぼらしいとってつけた小屋ですが、こちらへどうぞ。今は、この砦くらいしか、安全を確保できておりませんので。」
「よい。では、入らせてもらおうか。」
そして、室内に入る。
中身がおっさんのマインエルフ達が、今日はメイドの格好をして、給仕などの仕事についている。
知っていれば噴飯物なのだが、知らなければ、こう言う反応になる。
「旧サッシー王国領内には、異種族を排斥する邪教が蔓延っていると聞いているが、これほど多くのエルフを召使いとして抱え込んでおるとは。貴国は、どうなっておるのだ?」
「ええ。エルフ達は、今日だけ、このような格好、仕事をさせていますが、普段は魔王軍と戦う先兵達です。貴国と同じように、魔族や悪魔と渡り合い退けている戦士達です。」
外交大臣の言葉に、僕は少し話を盛って、返答しておいた。
マインエルフ達が、笑いを堪えている。
ばれるから、こらえてくれよ?
「それに、斥候、失礼。伝令の話では、このような建物の話は聞いておらなんだが。昨日今日で建てられるはずもなし。相当な技術力をお持ちで。」
「ええ。魔法の技術を建築など、軍用以外にも広く使っておりますので。」
「なんと。これを生活魔法で作り上げたと言うのか? にわかには信じ難いが。失礼だが、おぬしは?」
「ええ、これは失礼をしました。」
「彼は、私の将来の夫。ノナカ。よろしく?」
「というのは、山神様の冗談で、ヨーコー嬢王の代理です。貴国で言うところの、内政大臣に当たります。」
立場はそうだけれども、実際は社長だしね。
まあ、ものはいいようだ。
うそじゃないし。
「そうですか。では、この砦の作成なども。」
「ええ。この建物は、私の魔法で。」
「なんと。なるほど、なるほど。」
大臣は、立ち上がると、ガラスの窓に触り、窓を開けたり閉めたりした。
その後、雨戸を出し入れしたり、カーテンを触ってみたり。
絨毯や応接セットを触って、感触を確かめて、再びソファーに座った。
「どれも、一級品だと思うのだが、どの品も、我が国にはない素材で作られておる。これらのものは、貿易で、我が国に輸入することも可能なのか?」
「無理です。国内限定の製品です。」
「ぜひ、王に献上したいのだが。」
「なにしろ、魔法の製品です。移動中に環境の変化で、魔法陣に狂いが生じて壊れてしまいます。今は、それがこの製品の課題です。国内流通の上では、何ら問題はないのですが。」
「国内には、同じものがいくつかあるのかね?」
「そうなります。」
「むう。では、こうしよう。国交を結んだのち、大使館を置かせていただきたいのだが。」
「それは、国交を結ぶときの交渉でお願いします。内政というわけではありませんので。」
「そうでしたな。それにしても、技術力だけで、かなり上を行かれている。魔王軍が怯えるのも理解できようもの。」
おい。
今、何か変な情報が混ざったぞ?
魔王軍が怯えるだと?
その話詳しく。
「怯える? とは?」
「そうですな。貴国のせいで、我が国に攻め込んでくる魔王軍の勢力が倍増しているのだよ。捕まえた悪魔や魔族に言わせれば、貴国に攻め込んだ魔族達は、一人も帰ってきていないと。悪魔も何体も消滅させられていると。殺されたくないので、しかたなく我が国にせめこんでいるとか言うのだよ。貴国は、何をしてくれているのだ?」
あー。
そういうこと。
そういう結果になるのね。
自国を魔王軍から守ったことが、他国へと影響するとは。
「魔族は、レインが消し去ってやったのです。魔王軍は、全て、消し去ってやるのですよ!!!」
面倒なタイミングで、レインが交渉のテーブルの上に仁王立ちして、そう言い放った。
「あっ。レイン様。」
「 山神は、黙っているのです。」
「いや、レイン。レインは面倒ごとを引き出すので、しばらくお前こそ黙っていてくれ。」
「イヤなのですよ? こいつらからも、魔王軍の匂いがぷんぷんするのです。BAN!してもいいのです?」
なんてことだ。
早く来たなと思ったら、そういうことか。
魔王軍の偽物だったと。
「やれ。レイン。」
「はいなのです! BAN! BAN! BAN! なのです。」
レインが、使節団の面々に、BAN!魔法をかけた。
魔族なら、一発でこの世界から登録抹消されてしまう、チート魔法だ。
なるほど、魔族が化けてきていたのな?
情報がどこから漏れたのかは知らないが、やりおるな。
そして、門番のロッコもラストも、そこまでは判別できないのな?
実力の程は、よくわかった。
「な、何をする。無礼者めが! 精霊とはいえ、ただでは許さんぞ!!!」
「ちょっと待って欲しい。貴国では、魔族を臣下として運用しているとでも言うのか?」
「そんなことあるはずもないだろう? 貴国同様、魔族討伐に明け暮れているのだぞ?」
「今、精霊レインが行ったのは、魔族をこの世界から抹消する魔法、『BAN!』ですが。貴国の使節団の7割近い人員が、魔族だったと言うことになりますが。」
「なんだと? そんなはずはない!」
消えなかっただと?
大臣は本物なのか?
それとも、魔族ではなく、悪魔が化けているのか。
「レイン。この大臣は、大丈夫なのか? 悪魔が変化しているとかじゃないのか?」
「大丈夫なのですよ? BAN!魔法は、悪魔にも大ダメージを与えるのです。触ったところが消えるくらいにはダメージが入るのです。だから、額とか、頭を触るのですよ? 悪魔でも、頭が消えたら、クリティカル、なのです。」
「じゃあ、消えていないのは、魔王軍じゃないということだな?」
「そうなのです。これで安心して、交渉できるのですよ?」
つまり、残ったのは、本物であると。
いつ、どこですり替わったのか。
すり替えられてもわからないのは何故なのか。
謎は、逆に深まるのだが。
「一体、悪魔が混ざっていたと。」
頭だけが消し飛んだ兵士が、一人だけいた。
そして、その兵士の消えていない部分も、悪魔が消える時のお約束とは言え、端から徐々に灰になって、空気に消えていった。
「何ということだ。我が国でも、これでは。」
「大丈夫なのですよ? レイン達にかかれば、一瞬でBAN! なのです!」
「いや、そうじゃない。そういう訳ではないのだよ。いつすり替えられたのか、まったく気がつかなかったのだよ。」
「悪魔が1体いたのなら、そういう高度な隠蔽魔法を使われていたのだろう。現に、この砦の入り口に立っていた、儀仗兵の女子2人。あれも、精霊だからな。見破れなかったけれども。」
「なんと。信用されていなかったということか。」
「いや、これが魔王軍の基本戦術なので。皇帝陛下のウーオ帝国も、これでやられている。学習して対策を取らないと、いずれ我が国ですら陥落しかねない。」
「むう。これだけでも、今の魔法を見ただけでも、来た甲斐がありましたな。伝令からは拒否されていると聞き及んでおりますが、是非とも、正式に国交を開きたいものです。少なくとも友好条約や通商条約を。」
「なくても、国としては認められているし、行商人は、交易をしている。国家間での大規模なやりとりを、我が国はするつもりがない。全て、商人達に任せている。」
「ならば、せめて軍事同盟だけでも。相手国には攻め込みませんという確約だけでも欲しい。」
「それも却下だ。もし、貴国が帝国のように魔王軍に乗っ取られたら、その条約が命取りになる。下手な条約を結ぶよりも、首脳間の信頼関係がある方が、重要だ。違うか?」
なんとか、条約を結ばせずに、お帰りいただきたい。
条約を結ぼうという約束もしたくない。
親密な外交関係があることを、第三国が知るだけで、いいのだ。
それだけで、十分な武器となるのだから。
ガガ多種族連合王国と敵対関係にある、サッシー王国を除いては。
「それでは、本題に入らせていただきたい。」
「本題?」
「そう。本題だ。そもそも、何をしに我々がここまで足を運んだのか、ということだ。7割近くも魔族や悪魔が混ざっていたことの原因でもある。」
「きな臭いな。」
「そう。我らがここまで急いで来たのは、魔王軍対策の情報を交換したり共有したりしたいがため。外交大臣が来ることで、目眩しになるかと思ったのだが、魔王軍は甘くなかったな。優秀な兵士や文官を大量に失っうことになった。」
「確かに魔族達がすり替わる段階で、魔王軍に殺されていることだろう。お悔やみ申し上げる。」
「その、魔王軍だ。貴国は、精霊の力を借りて、手っ取り早く魔族を消し去っておられるようだが。」
「見ての通り。これだけ簡単に討伐できると知られれば、魔王軍からは、攻め込みにくい。」
「何度となく、魔王軍の侵攻を跳ね除けたと聞いている。我が国以外では初耳だ。」
「たまたま、優秀な戦力が整っていたもので。」
「何か、こう、魔族を討伐するための、コツや効率化はないのか?」
「魔王軍討伐に近道はない。地道に討伐するのみ。それに、人間と同じで、魔族や悪魔はその性能も千差万別。統一した弱点というのは、そもそもない。」
「むむむむ。」
外交大臣は、正直に魔王軍対策の情報交換をしたいと言ってきた。
しかしそれは、一歩間違えば、我が国の防衛配置を曝け出すことに等しい。
もしそれを、魔王軍に売られたら、我が国は終わりだ。
信頼関係を作ろうという段階で、公開していい情報じゃない。
それに、相手は大国だ。
余裕を持って、何らかの情報を提示することで、こちらから譲歩を引き出す戦術をとってくるものと想定していたのだが、それすらしてこない。
何か、目ぼしい情報があったら、タダでくれという、なんとも独りよがりな、自国本位のわがままですらある。
そんな相手に、貴重な情報をくれてやる必要はない。
逆に言えば、信頼関係を作ろうという矢先にこれでは、この先もタカが知れている。
足元を見られていると表現するのはいかがなものかとも思うが、まさに言葉通りなのではないだろうか。
しかし、ここで関係を拗らせて、敵対関係となることは、大局的にみれば、魔王軍を利することとなる。
どうしたものか。
「マスター。ちょっといいのです?」
「お、おう。どうした。」
「なぜ、謝罪と賠償を要求しないのです?」
「なぜとは?」
「この、外交大臣は、我が国の皇帝陛下や連合の代表のいる場所に、魔王軍の悪魔と魔族を引き連れてきたのですよ? どうして、平気で交渉しているのです? もし、レインがいなかったら、今、ここには、みんなの死体の山が築かれていたのですよ? 許していいのです?」
レインの言葉に、こちら側の面々は、外交大臣を見る。
おそらくは、知らずに連れてきたものだろう。
もし、魔王軍と示し合わせていたとするなら、大問題でしかないが。
外交問題としないためにも、ここは、知らなかったことにするしかない。
少なくとも、相手側にとっては。
「どうなのです? 大臣?」
レインは、大臣の目の前に仁王立ちになって問い詰めた。
「我が国の首脳が邪魔で、一網打尽にするために来たのです! 許されないのです! このことは、各国に広報するのですよ? いいのです?」
「あ、いや、その。これは、わたくしも、知らなかったことでして、」
「なら、なのです。どうして、何も言わないのです? どうして、一言もその件についてないのです? なんなら、レインに非難がましい言いがかりをつけていやがりましたよね? 今度は、レイン達が、同じことをそちらの国の中枢で行ってもいいのです?」
「そ、それは、それは困ります。」
「言うことがあるのではないのです? ないのならお帰りはあちらなのです。」
その言葉と同時に、ロッコとラストが入り口の扉を勢いよく開けた。
そして、扉を固定する。
2人は部屋に入ってくると、パンドラと合流して、外交大臣を無理やり立たせた。
「お前は、レイン様を怒らせた。お帰りいただこう。」
「ん。許さない。」
「レイン様を怒らせるなんて。私が直接手を下してもいいのですが。我慢しましょう。」
3人で両脇を押さえて駅から外に追い出した。
外交大臣は、虎頭の巨漢の男であった。
しかし、クラスアップしたロッコの相手ではなかったのだ。
抵抗虚しく部下ともども追い出され、扉は閉められた。
「本当なら、ガガ多種族連合王国とは手を結びたかったのだがな。レイン。」
「ごめんなさいなのです。」
「いや、いい。完全に下に見て対応してきた大臣が悪い。ここで、そのまま何事もなかったとして国に帰していたら、もっと下に見られる。あの国には、逆らえないと思っていると、思われてしまうのは、損失でしかない。」
「でもです。面倒なことになるかもなのです。」
「いやいや。そうはさせない。だって、なあ。」
「うむ。ここは、この老人が、一肌脱いでしんぜよう。」
つまりは、こう言うことだ。
あっちが来たのだから、こちらも行ってもいいだろうと。
「今回の無礼、もしくは失態。どう謝罪するのか楽しみでしかないぞ。早速、行ってくる。」
「いや、待ってくれ。うっかりすると、もっと偉い人が無理やり来てしまうかもしれないだろ?」
「もっと偉い、か。もう、国王か王族くらいしかいないぞ?」
「流石にここでもてなすわけにも。」
「そうだな。城の一つや二つなければ、それこそ国力を疑われる。それに、あれでも、西側の国だからな。東側のわれわれを田舎者と蔑む差別意識があるのだ。西国などはその最たる国なのだが。」
「差別ね。こんなファンタジーな世界にも、そんなものがね。」
「ふぁんたじーが何かは分からぬが。人がたくさん居れば、差別ややっかみ、ねたみやそねみと言ったものはいくらでも発生する。わしも帝国で身分制度をなくすなどの努力はしたが、差別意識を全て無くすことはできんかったし、そこまで面倒を見るつもりもない。」
「皇帝陛下にしては、弱気だな?」
「逆だ。もし、差別ややっかみ、ねたみやそねみなんかの全くない、『きれいな人間だけの世界』になったとしたら、おぬしはそこに住みたいか?」
単純に、住みやすく生きやすい世界じゃないかと思うのだが。
生活しやすいだろ、それ。
そんな世界があるとしたなら、それは清く正しくうつくしい。
けれどもそれは、方法論として現実的に、根本的に困難だ。
まず、差別なんかをしないようにすることは、8割方の人間に対しては可能だ。
みんなでそう言うことをやめましょうと推進すれば、教育の力や地域の力でがんばってやれば8割の人間はそうしてくれるだろう。
だが、ステータス、つまり、能力値の問題がある。
他者を差別しないでいられる能力というのは、結構ハイレベルの能力だったりする。
周囲が差別を行なっている中で、自分だけしないようにするともなれば、さらにハイレベルだ。
実質的に、それは、周囲から異端と思われるほどの高レベルだろう。
そしてその後、本末転倒なことに、差別の対象となってしまうだろう。
差別をする側は、その能力値が低いのだから、いくらだめだと言ってもそもそも無理なのだ。
なにしろ、能力値が足りないのだから。
だめだと言われたところで、止めることができないのだから、どうしようもない。
逆に、こういう人たちも、さらに輪をかけて差別の対象となりやすいものだ。
この残りの2割問題をどうにかすることができれば「差別のないきれいな世界」の完成だ。
それが可能な国家形態は、専制主義国家でしかありえないけれども。
国家に逆らったら、即刻消されるような、そう言う国だ。
人権を守るためなら、他者の人権をないがしろにするという方法論は論外だ。
差別を放置することも、もちろん他人の人権を蔑ろにすることに含まれる。
目的は崇高で理想的だったとしても、人間の能力や方法論という視点から非人道的なやり方とならないように気をつけなければならないのだ。
なるほど、そこまで考えれば、住みたくはない。
それを維持しているシステムを考えるにそら恐ろしい。
「まあ、ほどほどがいいということですね。ほどほどが。」
「そういうことだ。要は、バランス感覚の問題だ。差別をする側の心の闇まで、面倒見きれんからな。」
そうだな。
かの有名な、無免許医師も言っていたからな。
人の心の闇までは治療できないと。
「話は逸れたが、それで、その王族、どうする?」
「城を用意しろ。来るまでに、城を一つ、魔王軍から取り返せばいいだろう? おあつらえ向きに、ちょっと北にヴァイスフロスト城という、かなり大きな城のある都市があるのだから。」
皇帝陛下は言いきった。
ないなら、占領すれば良いと。
ヴァイスフロスト城を。
いや、そこ、魔王軍の一大拠点ですからね。
皇帝陛下の無茶振りに、今日も振り回されるのでした。
PVが10万を超えました。
みなさまありがとうございます。
今後とも、継続して頑張っていこうと思います。
それでは、がんばれれば、また。
訂正履歴
時刻を → 自国を ※ 以下6件、誤字報告ありがとうございました。
国家間でも → 国家間での
侵攻をな → 侵攻を
魔王軍にうられ → 魔王軍に売られ
対極的にみれば、敵に利する → 大局的にみれば、敵を利する
避難がましい → 非難がましい