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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第10章 人類が滅んでも世界は終わらない
172/224

第127節 砦ゲット問題 再建編

今日は、主人公による皇帝陛下の帝国復活計画のお話と、ロッコのクラスアップその後のお話です。

内容的に2本立てです。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後59日目朝>

場所:ヨーコー嬢王国レーベン領ヴァスト砦

視点:野中のなか


 クラスアップしてマインエルフ(女子)に変身できるようになった、60名の元ウーバン村民男子、現在のマインウルフ達。

 ヴァスト砦にいる彼ら2個小隊は、その1個小隊が北側の砦に、もう1個小隊は南側の砦に配置されていた。


 その主な仕事は、城壁の上からの侵入者に対する警戒であり、1分隊10名が担当していた。

 そして、1分隊が休憩。

 最後の1分隊は、砦の外に出て、避難民の確保、というか救助と保護に当たっていた。


 その成果もあって、避難民を受け入れて亡命させ、住民が増えてきている。

 この砦も、徐々に街らしくなってきた。

 帝国側の住民には、家を建てたり城壁を作ったりする職人がいた。

 また、これを手伝う体力のある兵士たちが潤沢にいた。


 結果として、砦の帝国側、区分した名前ではウーオ区では、既に何軒か、石造の平家が建てられていた。

 それと並行して、北側の城壁中央付近に、帝国側の兵舎も作られつつある。

 僕は、ラストにせっつかれたため、そこに駅を作り、ラストは線路を引いた。


 なぜなら、中央の砦からそこまでは1キロ、南の砦からは2キロも離れているからだ。

 何かあった時に、すぐに駆けつけられないのは、致命的だからだ。


 この砦には結構な強さのマインウルフたちが詰めている。

 したがって、そうそう破られることのない国境の砦なのだが、そうであっても不確定要素は多いもので、何が起こるかわからない。

 だから、すぐに全勢力で対応できるようにしておきたいと言うのが本音だ。

 ラストだけは、レールを引きたかっただけらしいが、それは、もう、みんな諦めているので気にする必要すらない。


 こうして、ヴァスト砦での警戒の日々が始まった。


 できることなら、たくさんの住民をこの砦に住ませて町として発展させ、強力な砦としていきたい。

 住民がいて、経済が回れば、それだけ資金が潤沢になり、兵士が増え、武器も調達しやすくなり、その威力も向上する。

 いいサイクルを回すために、僕たちは頑張っていた。


 その一環として、マインウルフ達は、魔王軍の軍勢から逃げ隠れている避難民を見つけ出し、砦の町へと勧誘しているのは、以前と変わらない。

 ただ、日々その方法が洗練されていき、住み着いた住人から、どのあたりで誰を見たという情報がもたらされる。

 そして、その住民目撃情報が、新たな避難民の発見に繋がっていた。


 今日までに、砦の周辺には、500人ほどの人間が、ヨーコー嬢王国へと亡命することを条件に、移住してきていた。

 安全を保障されるのだから、国籍なんぞどうだっていいと言うのが正直なところだろう。


 その最たる者が、皇帝陛下だった。


「ノナカ殿。亡命者がかなり増えてきておると聞いたが。」

「はい。もう合計で500人を超えました。」

「そうかそうか。わが配下の元帝国兵士も70人になった。」

「おおう。結構集まりましたね。」

「だが、わしは、皇帝陛下のままなのだ。」

「何か不都合でも?」

「あいつらばっかりズルい。ワシも、ヨーコー嬢王国の国民になりたいのだよ!」


 いや、お前が言ったらダメだろ、それ。


「皇帝陛下には、帝国を再建したいと言う欲望はないのですか?」

「あるに決まっておるだろうが。あと、欲望って言うな。」

「なら、再建してください。ここで。」

「亡命政府を作れと言うのか?」

「いえいえ、ちょっと考えたのですが、国の運営って、難しいんですよ。それに僕はほら、鉄道会社の社長って肩書きなんですよ。本来は国政に関わっちゃダメなはずなんですよ?」

「いやいや、お前が一番国を動かしているだろ? 今更何言っちゃってんのと罵られたいのか?」


 まあ、そうだろうな。

 でも、こちらには腹案があるのだ。


「ヨーコー嬢王国の、旧帝国側の街を、帝国領として、復活させてはどうでしょうか?」

「何を言っているんだ?」

「ですから、我が国には、旧帝国領である、『イツナの町』と、ここ、ヴァスト砦北半分があります。ここを帝国領として、分離独立させたい。いずれは、ヴァイスフロスト城をおとして、暫定的に帝国の首都として機能させたいという案があるのです。」

「なんの得がある?」

「まだ終わりじゃありません。その帝国と嬢王国とで、実質的に一つの国となるような、強固な同盟関係を結ぶのです。人の往来を自由に許すような。そうですね、『北パーン連合』と言うのはどうでしょうか。表向きは、この世界の人たちに分かりやすいように、『軍事同盟』としておけばいいでしょうし。」


 そこまで説明して、皇帝陛下は、さらに不思議そうな顔をしてきた。


「だから、それでは帝国側ばかりが得をして、そなたらは大損ではないか?」

「はたしてそうでしょうか。皇帝陛下は、少なくともここまで、長い間国政に携わってこられました。他国との太いパイプもありますし、交渉力もあります。誰が見ても、ウーオ帝国の皇帝だと理解できます。連合とすることで、この国の代表として、対外的に活動することが可能になるのですよ? それと、魔王軍に簒奪されてしまった、帝国を復活させると言いますか、取り戻すことも可能なのですから。」


 そこまで、捲し立てた。

 皇帝陛下にやる気があり、帝国を取り戻したいという強い思いがあることは、彼の部下達から聞き出してあった。

 ならば、こちらが箱を用意して、背中を押してやるだけでいい。

 そもそも論になるが、僕も大岩井さんも、国王役の伊藤さんも、所詮は、国の代表としては素人なのだから。


 目の前にプロがいるなら、使わないという選択はない。


 それに、もうひとつ、大切なお話があった。


「皇帝陛下。申し訳ありませんが、帝国は、我が国との北パーン連合として、活動していただくこととなります。そして、その北パーン連合の代表には、山神様やまのかみさまに就任してもらうことを承諾していただきました。」

「な、なんと。」

「ですから、皇帝陛下にも、帝国臣民の皆さんにも、事実上の拒否権が存在しません。」

さかしいぞ、ノナカ。」

「なんとでも言ってください。これも国民のため、人類のためです。そうすることによって、魔王軍からより多くの土地を、人類側に取り戻すことができるのです。そして、取り戻した土地の住民達をまとめるプロとして、山神様やまのかみさまと皇帝陛下には馬車馬のように働いていただきます。」


 そういうことだった。

 この話は、レインと山神様やまのかみさまの3人での密談で、決定された。

 皇帝陛下を抱き込むなら、上に山神様やまのかみさまを付ければいいというアイデアが最高だった。

 そして、実際に効果もあった。


 こうして、ヨーコー嬢王国は、ウーオ帝国と連合を作り、「北パーン連合」となったのだ。

 実質的に、一つの国なのだが、対外的には、二つの国として振る舞おうと言うのだ。

 これを、荒波の国の使節団が来る前に、少なくともこの砦の住人達には周知徹底させておかなければならない。

 実質的に、何も変わらないのだからいいじゃないかとも思うのだが、そういう細かい詰めをおこたると、思わぬところで足元をすくわれる。


 だから、やるからには、確実に、しっかりと計画性を持って実行しなければいけない。


「皇帝陛下。ご存知かとは思いますが、代表である山神様やまのかみさまは、基本的に国内からはお出になりません。国外での代表としての行為は、全て皇帝陛下に委任することになります。」

「ま、まあ、そうだな。山神様やまのかみさまは、ウーバン山脈から離れられないからな。」

「この間のような、皇帝陛下の出席なさっていた国際会議とか、無理ですからね?」

「致し方がないのう。」

「わかっていただければよろしいのです。」

「いやなに、そういう話ではない。サッシー王国めが、ちょくちょく代表者会議に女神様を連れてこられる。それでは山神様やまのかみさまも肩身が狭かろうと言うのだ。」


 あ、この親父でも、そう言うところ気を使えるだけの度量があるのか。

 国を乗っ取られても、皇帝陛下は皇帝陛下なんだな。

 正直、感心した。

 場さえ整えておけば、やはりできる男なのだと感じた。




 今日は、珍しく朝からロッコを見ていない。

 目を覚ました時には既におらず、後になってからマインウルフ達と共に、砦の南へ避難民探しを手伝いに出かけていたことを聞いた。

 皇帝陛下との話を終えた頃、そのロッコが、避難民を引き連れてマインウルフ達と帰って来たところに出くわした。

 マインウルフ達が獲物を引きずっていることを見るに、避難民を魔物から助けていたであろうことが見て取れる。


 はて、クラスアップをしたロッコは、なぜ、そのような行動に出たのか。

 謎は、本人が解いてくれた。


「ん! ん!」


 ちょっとだけ身長の伸びたロッコが、後ろから体当たりをかましてきた。

 体が小さくて軽いので、それほどの衝撃はないのだが、その後、背後から力強くハグされた。


「ん! マスター。ロッコは力が強くなった。」

「いや、だからと言って万力のように締め上げるような方法をとらないでも分かるのだが。」

「別の方法?」

「いやいい。で、何だ?」

「ロッコは、レベルが3になった。力が強くなった。体力がちょっとついた。賢さがあがった。素早さもそこそこ上がった。マスターを魅了する女の魅力が4上がった。」


 いや、4上がったって言われても。

 上がったのか?


「そうか。これまで以上によく働いてくれるのな? ありがとう。」

「ん! ん!」


 なにか、納得していないらしいロッコは、さらに僕の体を万力のように締め上げてくる。

 もはや微笑ましいハグと言っていられないレベルだ。

 徐々に女子プロレスの世界へと、入り込み始めているレベルだった。


「いや、ロッコ、キツくて痛いのだが。ちょっとやめて。」

「ん。マスターにお願い。欲しいのがある。」


 ロッコは、これまで物欲的なわがままを言う子じゃなかった。

 たまには聞いてあげてもいいかなと、ちょっと思ってしまった。


「おう。ロッコにしては珍しいな。僕にできるだけの手配をしよう。高価なものとか、僕の持っていないものは無理だからね?」

「大丈夫。マスターだけにしか、ロッコに与えられないもの。」

「で、何が欲しいんだ?」


 ちょっと俯いて、でも上目遣いの強い口調で、欲しいものを主張してきた。


「マスターが欲しい。ロッコも大きくなって、きちんと独立した精霊になった。これからは、大地の力とか自然界の色々なエネルギーを吸収して、生きていくことができる。マスターに消される心配も、マスターがうっかりロッコにエネルギーを与え忘れて消える心配も無くなった。もう、マスターに心配も迷惑もかけなくてよくなった。だから言える。マスターが欲しい。ロッコのものになって?」


 情報量が多すぎて、ちょっとフリーズしてしまった。

 そして、フリーズする僕を見て、涙目になるロッコ。


「マスター。ロッコのことイヤ?」

「あ、ああ。イヤじゃない。」

「なら、ロッコのものでいい?」

「ちょっと待ってくれロッコ。」

「待たない。ロッコはマスターが欲しい。他はいらない。」


 駄々っ子になってしまった。

 あと、どういうことなのだろうか?

 額面通りに受け取るべきなのか、何か違う意味があるのか、精霊的な話なのか。


「ロッコ。済まないが、何を言いたいのかがいまいち良くわからない。もう少し詳しく、僕にも理解できるように説明して欲しいのだが。」

「ロッコは、マスターがダメ人間なことを知っている。だから、わかるように説明してもいい。でも、マスターは、ロッコに説明させると、さらにダメ人間だと思われる。いいの?」

「いい。ロッコにダメ人間だと思われようが、誤解したまま、ロッコの言っている意味を履き違えたりするよりはよっぽどいい。」


 ロッコは、少し考えていた。

 うんうんと唸りながら、悩んでいる様子。

 そして、なんらかの結論が出たようだ。


「ロッコは、軍用車の精霊レベルが3になった。召喚魔法でチビロッコを召喚できるようになった。溶接魔法で、色々な修理ができるようになった。あと、軍用貨車を作れるようになった。無蓋車むがいしゃだけど。」


 ロッコは、話を変えて、自己アピールに走り始めた。

 ちなみに、ロッコのいう無蓋車というのは、天井のないタイプの貨車のことだ。

 石炭とか、木材とか、トラックの荷台みたいにいろいろと載せられる。

 もっとも、同じことはトロッコでもできるのだが。


「ちなみにこれがチビロッコ。」


 魔法を使うと、ロッコの左肩の上に、身長で言えば30センチくらいのロッコ人形が座っていた。

 これが、チビロッコか。

 かわいい。


「チビロッコは、ロッコと一緒にスキルを使ってお手伝いができる。レベルが上がれば召喚できるチビロッコの数が増える。必ずマスターの役に立てるはず。」


 そして、縋り付くような目でこちらを見上げてくる。


「ダメ?」

「いいとは言えない。ロッコは大切な仲間だ。嫌いなわけじゃない。むしろ静かで落ち着いていて、いろいろと考えて動いてくれるのは、好感が持てる。僕が不安定になったり不安になったりした時には、癒してくれる。僕にはもったいないくらいの大切な仲間だ。伝わっていないかもしれないが、大好きだ。ずっと一緒にいたい。でも、ロッコは、僕の生み出した娘みたいなもの、つまりは家族なんだよ?」

「ダメなの?」

「いや、ロッコの『ロッコのものになって?』という問いに対しては、明確にダメと回答する。なぜなら、初めからロッコは、僕のものだ。家族なんだから、ロッコから見ても、僕はロッコのものだろう。だから、それは今更なお願いで、何を言っても変わることはない。」

「ん! 違う。マスター、ロッコの言いたいことはそうじゃない。」


 要領を得ない。

 家族的な意味合いでのことなら、すでに信頼関係があるはずだ。

 家族的な意味合いのものがある以上、恋人的な意味合いのものが入り込む余地はない。

 精霊としてなら、信頼しているし、大好きだ。


 しかし、ロッコの言いたいことは、そのどれでもないようだ。


「なら、」

「違う! 違う! ロッコは、マスターの奥さんになりたいって言っている訳じゃない! マスターの娘になりたいって言っている訳じゃない! マスターに愛して欲しいって言っている訳じゃない! ロッコは、ロッコは、マスターの隣に立って、レイン様みたいに、マスターの仲間になりたい! マスターのパートナーになりたい! いつでも魔物からマスターを守れる、守ってもらえる関係になりたい! マスターは何もわかってない!」


 あー。

 いや、そこまで直接言われると、ちょっとショックだ。

 まだ、彼女にして欲しいとか、娘にして欲しいとか、愛して欲しいとかストレートに言われた方が、傷は浅かったのに。

 もっとも、娘扱いしているので、それ以外は却下なのだけれども。


 ロッコの望むこと。

 それは、冒険者的なものとして、パーティーメンバーに入れて欲しいと言うことらしい。

 ロッコの言う通り、確かにレインなら、いつでも僕のそばにいるし、お互いかなり酷いことを言い合っても信頼関係が崩れることもないし、戦闘中でも、お互い連携して相手の動きや働きを信頼しているし。

 ロッコが欲しいのは、その立場に、自分も入れて欲しいと言うこと。


 遡って考えれば、ロッコは戦闘で、ポーション係。

 もしくは、「BAN!」のお札係だった。

 特性も踏まえず、いわゆる「アイテム師」だったのだ。

 それならそれで、重要な役どころなのだが、ロッコはその役どころに、疎外感を感じていたらしい。


 いわれてみて、初めてその気持ちが理解できた。

 ロッコは、僕の召喚した、厳密には僕のスキルで生み出した精霊だ。

 僕の近くでしか、活動できない。

 したがって、どんなに疎外感があっても、僕のやることが気に入らなくても、なんなら、僕のことが嫌いでも、イヤでも、離れることができない。


 異世界ものも一ジャンル、「追放もの」なら、自ら出ていくか、追放されるかの立ち位置だろう。

 しかし、ロッコはその精霊としての性質上、そういうことができない。

 なぜなら、それは自殺行為になるからだ。


 自ら僕の元を去ることは、数日で自然消滅する選択だ。

 逆に、僕から嫌がられて追放されるなら、そもそもスキルで存在そのものを消される立場だ。

 ロッコの欲しいものは、「自由」と言い換えてもいいかもしれない。

 もう、僕の思いや意思に縛られない自由。


 いじめなんかと同じで、意思を縛っていた方は、そんなことをしているとは気が付いていない。

 だが、逆の立場では、自身を消されないようにするため、努力が必要だ。

 その一つに、僕に嫌われたり追放されたりしないようにすることが含まれるのだ。

 僕が、ロッコをいい子だと思っていたのは、その努力の賜物。


 ロッコは、そう行動せざるを得なかったのだ。


 でも、ロッコの説明では、クラスアップした以上、もう、僕の手を離れて、一人前の自然精霊になったということだ。

 僕のスキルで、ロッコの召喚を終えることはできなくなったし、僕のエネルギー供給も必要なくなったのだろう。

 ちゃんと確認したわけではないけれども。


 だから今、コントロールパネルを開いて確認した。

 ラストとかパンドラには、消去と言う項目が存在する。

 だが、そもそも召喚メンバー一覧表からロッコの名前が消えている。


 つまり、ロッコの言うことは、「消せない」と言う意味では正しいのだろう。



 ロッコは、僕の役に立ちたかった。

 戦闘で、アイテムを使うだけでは、役に立っていると感じられなかった。

 だから、「軍用車の精霊」になることで、自らも戦闘する能力を手に入れた。

 想いの力が、クラスアップを無理やり捻じ曲げたのだ。


 ロッコのステータスは、物理前衛職としては、既にラストの倍以上の数値だ。

 攻撃力も防御力も、なんなら素早さだって、段違いだ。

 これは、あとでラストが荒れそうな気がしてならない。

 ロッコは、本人の申告通り、そう言う意味で役に立つのだろう。


 腰には軍刀っぽいものを下げているし、なんなら、拳銃っぽいものも装備している。

 正直なところ、ファンタジーの世界観ぶち壊しである。

 さすが鉄道の精霊、軍用車の精霊といったところか。

 なら、男として、きちんと伝えなければいけないことがあるだろう。


「ロッコ。」

「ん。」

「ロッコの希望は、既に叶っている。ロッコには、それがきちんと見えていないだけだ。現実を、歪めて見てしまっているだけだ。」

「んー?」

「ロッコは、僕の背中を預けるに値する、信頼できるパートナーだ。そうだろう?」

「ん? ロッコはまだ、その立場にまでなれていない。レイン様には勝てない。」

「レインに勝つ必要はない。ロッコはロッコで、レインとは違うんだから。張り合うのではなく、ロッコにしかできないことをしてくれればいいんだ。役割分担ができるということは、お互いを信頼しているということ。信頼していないなら、すべて、僕が自分でしてしまえばいいだけのことだろう?」


 ロッコは、納得したような、しないような、微妙な顔をした。

 おそらくそれも、ロッコの求める答えではなかったのだろう。


「ロッコは、独立した精霊になった。でも、マスターのそばにいて良いの?」

「逃げられたら、泣く。傷つくからな。嫌われてたのかよと。」

「ロッコは、ロッコは、マスターが好き。マスターが逃げても一緒にいる。逃がさない。嫌わない。傷つけない。レイン様には絶対に負けない。」


 その言葉に安心して、そして若干不安になる。


 なんだか、恋愛感情が入っていたら、ただのヤンデレストーカーだよ。

 まあ、そういうのではないというのだからよしとするべきなのか。

 どうだろうな?


「それに、マスター。ロッコは、まだ、マスターの正妻の座を諦めた訳じゃない。」


 あ!

 レインが来た。


「ろ、ロッコ! 抜け駆けはずるいのです! マスターは、レインのものなのですよ!!!」

「違う。マスターはレイン様だけのものじゃない。マスターもそう言った。」

「ま、マスター。もう、レインはいらない子なのです? ロッコに乗り換えたのです? やっぱり、クラスアップが必要なのです? レインは、もう、これ以上クラスアップできないのですよ……。」


 ややこしくなってきた。

 そして、面倒なことになってきた。


「いや、レインもロッコも、僕のことを占有しようとしないでくれ。僕は、僕自身のものだ。」

「マスターは、な、ナルシスト? なのです?」

「ん。マスター、それは、きもちわるい。ロッコがそれをちゃんと矯正する。まずは、自分じゃなくて、女の子を好きになる練習からしよ? ロッコが練習台になる。」

「やかましいわ! 僕は、そう言う意味で言っているんじゃない!!!」

「知っているのです。からかっただけなのですよ?」

「うー。レイン様には、まだまだかなわない。」


 ロッコの闇は、思いのほか深いと感じさせられた。

 ロッコの想いを踏み躙るようなことだけはするまいと、心に誓うのだった。

評価ポイントありがとうございました。

さて、本文の半分は、クラスアップを果たしたロッコのかかえる心の問題でした。

本文中で、全く噛み合わない、マスターとロッコの気持ち。

この歯痒くも見ていて焦ったい、リア充爆発しろ的な内容。

そして、結局、何を言いたいのかわからないやりとり。

レイン様には敵わなかったよ。

それでは、がんばれれば、また。

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