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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第10章 人類が滅んでも世界は終わらない
169/224

第124節 砦ゲット問題 難民編

戦いは、勝ったとしても、その事後処理は難しいもの。

勝ったはずなのに、なぜか罰ゲームのような膨大な事後処理が待っていたりするものです。

なんなら、次の戦いに備える必要すらあります。

今回はそう言うお話です。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後55日目朝>

場所:ヴァイスフロストの砦

視点:野中のなか


 昨日、ウーオ帝国とサッシー王国を繋ぐ一番の大動脈、「北の大街道」の関所でもある、ヴァイスフロストの砦を魔王軍から奪還した。

 帝国の皇帝陛下と、魔王軍の司令官である悪魔の討伐で揉めたり、謝罪を要求されたりもしたが、概ね問題なく魔王軍を追い出すことに成功した。

 正確には、この砦周辺を守っていた、魔王軍6000近くの軍勢をほぼ全滅させた。


 結果として、この砦をゲットできたのだが、これに伴う問題が山のように発生した。


 一つは、この砦をどのようにして、魔王軍から守るのかと言う問題だ。


 北の大街道を封鎖できるこの砦は、サッシー王国の王都を攻略中である魔王軍にとっては、重要かつ唯一の兵站供給路であり、万が一の場合の退路でもある。

 魔王軍にとってのアキレス腱であるヴァイスフロスト砦を押さえたことは、人類対魔王軍の戦いを総合的に分析した場合には、人類側にかなり有利にはたらくもの。

 結果として人類側としては、継続して死守したい重要拠点であるし、逆の視点、魔王軍からすれば、すぐにでも取り返さなければならない急所でもある。


 そして、今、そんなとんでも無く重要な砦を、ヨーコー嬢王国という、新参の王国が魔王軍を全滅させて、奪い取ってしまった。

 情報が伝われば、すぐにでも、魔王軍が攻め込んでくることになる。

 しかし、こちらが攻略できたということは、今の砦自体の耐久度は、ほとんど期待できない。

 西側の城壁にいたっては、レインが爆破してしまって、半分以上瓦解している。


 もう一つの問題は、もっと深刻な、生きている人間の問題だった。


 魔王軍は、大魔王に人間たちの魂を捧げるべく、頑張って人間を殺しまくっているところなのだが、どうしても撃ち漏らしは出てくる。

 人類側から見れば、うまいこと魔王軍から逃げ隠れた者が生き残っていることになる。

 そういう立場の避難民からすれば、この魔王軍をやっつけた砦は、希望の光あふれる安全地帯と映るのだ。


 実際問題として、現状では、ほとんど守備力も耐久力も期待できないにも関わらずだ。

 現状、そういった難民を受け入れられるだけの資源もない。

 しかし、そんな事情を難民たちが気遣うことはない。

 なぜなら、難民だからだ。


 生き延びるためにはなんだってやらなければならない立場だからだ。

 そういう人間が、今朝からちらほら砦に来るようになった。

 情報の早いもので。



 資源さえあり、彼らを養えるのなら、国民として迎え入れ、国力を増強したいところだが、それを許してもらえるほど、懐事情は芳しくない。


 だからと言って、放置すれば、すぐに治安は大変なこととなり、3日もすれば、砦周辺はスラム街となるだろう。

 魔王軍よりも、後ろから襲いかかってくる難民に気をつけなければいけない戦いが始まってしまう。

 それでは、魔王軍との戦闘どころではない。

 今はもう、魔王軍の勢いが強すぎて、人類同士で殺し合いをしている場合ではないのだ。


 そうならないために、応急的にいくつかの手を打たなければならなかった。



 朝イチで、マインウルフ60匹により、砦からおよそ1キロ離れた南北に、城壁を築いた。

 これが結局、丸一日かかった。

 不穏な勢力や、人間に化けた魔族が入り込む前に、南北2キロメートルの、我が国の領域を確保した。

 これが一番初めにやらなければいけないことだった。


 なぜなら、砦とその東西にある砦の城壁。

 その北も南も魔王軍の占領下なのだから。

 そのままなら、砦だけで北からの魔王軍も、南からの魔王軍も相手することになる。

 実際問題として、こちらがいくら少人数だとしても無理なものは無理である。


 そして、砦の中心付近に駅を作った。

 ラストが、マインウルフを上手に使って、線路をこちらまで伸ばしてきた。

 これによって、ヨーコー嬢王国の流通網に乗ることができ、兵站を確保できるようになった。


 朝から、避難民が入り込んでいるので、その駅周辺、元々の砦の城壁付近に、避難民には住むように指示した。

 区画を分けて、整然と。

 テントを張るもよし、木材や石材で家を建てるもよし。

 とにかく、スラムとならないように、警告した。


 行商人もいたので、商店を開く許可を出した。

 土地が余っているので、区画を整理して、駅周辺に店を作るように指示した。

 こうして、たった1日で、砦というよりも小さな街となってきたのだ。


 ただ、避難民を出身国で明確に区別した。

 帝国出身者は、旧城壁北側のウーオ区へ。

 王国出身者は、旧城壁南側のサッシー区へ、という具合にだ。

 ちなみに、皇帝陛下は、その帝国出身者たちがいる北側に仮設のテントを立てていた。


 その皇帝陛下の周りには、すでに9人ほど、帝国兵が控えていた。

 森の中からこの砦に来て、皇帝陛下の元へと参じてきたのだ。

 ちょっとしたリトル帝国となっていた。

 彼らの言い分では、帝国領は帝国に返せというのだ。


 それに聞く耳を持とうとは思わない。

 いや、まあ、状況によってはそれを活用することもあるだろう。

 今は、皇帝陛下とその配下に、ウーオ区での国境警備をお願いした。

 こうすることで、僕らの方は、南側の国境警備に専念できる。


 そして、元帝国側に帝国兵がいた方が、帝国からの難民を受け入れやすいし、殺さずに済む。

 帝国兵たちは、僕たちに、これだけの兵力があるのなら、ヴァイスフロストのお城を攻略できると豪語するのだが、それは、無理だ。

 昨日、というか、今日未明に、制圧したばかりのこの地域を安定させないことには、次へとはおいそれと進めない。

 しかし、帝国兵の気持ちもわからないではない。


 なぜなら、早くお城を攻略できればそれだけ、仲間を助けられる可能性が増えるからだ。

 仲間が、自分たちと同じように、森や洞窟なんかに隠れて、機会を窺っていると考えられるからだ。


 皇帝陛下を通して、その話を聞き出したこともあって、方針を変更した。

 城壁ができたので、マインウルフの運用方法を大きく変更した。

 それは、避難民を積極的に探し出す方針にしたのだ。

 そして、それと同時並行に、生き残りの兵士も探し出すことにした。


 そうすることによって、兵力が上がることに気がついたのだ。

 また、ウーバン村でコツコツと生産活動に勤しむ大岩井さんから、トロッコで大量に椎茸のようなキノコが送り込まれてきた。

 できれば、芋がいいのだが、それは、夏前まで待たなければいけないらしい。

 流石の大岩井さんも、気候には逆らえなかったのだ。


 親分が、トロッコに乗っていたので、帰りのトロッコには、大量のイノシシ型魔物を乗っけておいた。

 これで、当分の食料には困らないはずである。

 少なくとも、ウーバン村内に限っていえば。


 避難民たちには、できる限り仕事を割り振った。

 何もしないでいることは、無気力に繋がり、生産力の低下に直結する。

 カツカツのこの状況では、それは断じて受け入れられない。

 掃除でも、料理でも、なんでもだ。


 こうして、なんとか街としてのサイクルを回すことができるようになってきた。

 特に、皇帝陛下がいたことが大きかった。

 帝国側の住民は、文句も言わずに言われたことをしっかりと行っていた。

 民度の高さがうかがえた。


 その結果として、2日目にして、木造建築物や、石材による壁など、街らしい姿が見え始めていた。

 避難民に、そういった職人がいたことも大きかった。


 反対に、王国側は、もう、スラムに足を突っ込みかけていた。

 砦の南側は、ゴミだらけになっていた。

 流石に頭にきたので、住民総出で、強制的に掃除をさせた。

 掃除をするように言ったのだが、なかなか掃除の意図が通じなかった。


 そんなことをしているところで、皇帝陛下にそれを止められた。


「なぜ止める。こんな汚くされて、黙っていられるはずがない。」

「それは、帝国や帝国近くの町や村しか知らないからだ。王国側では、これくらいが普通でな? そもそも、これでも綺麗に片付いている方なんだぞ?」

「な、なんてことだ。それほど、文化が違うのか?」

「いや、身分制度のある王国では、身分の高いものの捨てたゴミを、身分の低い者が拾って活用し、さらにその者が捨てたゴミを、さらに身分の低い者が拾って活用するという、自然に優しい再利用のエコシステムができているのだ。そのシステムを有効活用するためには、ゴミは、拾いやすいところになければならない。結果として、こういう状況が生まれる。」


 なるほど、とは、ならないよ?

 ゴミをきちんと片付けて、廃棄するのが正しいのか。

 ゴミを散らかして、再利用をするのが正しいのか。

 いや、どっちもどっちだよ?


 この結果を受けて、難民捜索係のマインウルフを、帝国側に傾斜配分した。

 当然のことである。

 そして何より、その効果はすぐに現れた。

 マインウルフたちは、その鼻により、帝国兵を数多く発見し、マインエルフに変身して、この砦まで誘導できたのだ。


 結果として、砦を攻略して2日目の夕方には、帝国の兵士数は60人を超えていた。

 もう、国境警備を任せても余るほどだった。


 なら、王国側の国境警備隊員も見つけられそうだと思うのだが、こちらはなかなかうまくいかなかった。

 まず兵士たちは、マインウルフを見つけると切りかかってくる。

 それを学習して、マインエルフとして声をかけるようにした。

 すると、異種族への差別意識から、話を聞いてもらえなかったり、信用されなかったり、はたまた、最悪犯されそうになったりしたそうだ。


 兵士だけでなく、避難民についても同様のことが言えたため、砦周辺の避難民や兵士は、帝国と王国の人数比が7対3くらいまで、差がついていた。


 3日目の朝になって、皇帝陛下が困ったことになったと相談に来た。

 なんでも、部下たちが、どうしても城の攻略に行きたいと言って聞かないのだそうだ。

 彼らとて、魔王軍の強さを身に染みて知っているだろうに。

 なぜ、そこまで慌てるのか。


 皇帝陛下自身がそこまで城の攻略に拘っていないところを見るに、兵士たちにはあの城に、なんらかの問題を抱えているものと考えていた。

 皇帝陛下自身は、それがなんであるのかわからないと言うので、陛下から聞き出すのは諦めて、直接兵士たちから聞き出すことにした。


「あ、社長。おはようございます。」

「ああ。おはよう。帝国兵は朝も早いんだな?」

「ええ。帝国は北国ゆえ、日照時間が少ないので、暗いうちから目が覚めますので。」

「ところで、ちょっと聞きたいことがあるのだが。」

「なんでしょうか、社長。」

「皇帝陛下が困っていてな? 相談されたんだが、いい回答を返せなくてな。力を貸して欲しいんだ。何人か、集まっているといいんだが。」

「では、ご一緒に朝食なぞいかがでしょう。芋の入ったスープを出しますよ?」

「ご馳走になります。」


 決して芋に釣られた訳じゃない。

 これは、名誉のために絶対に譲れない。

 レインを伴って、兵士たちの朝食に混ざることにした。


「で、そちらは?」

「ああ。トレインの精霊、レインだ。ちょっとポンコツだが、対魔族戦では圧倒的な戦力となる。かなりの強者だ。決して敵に回してはいけない。」

「そ、そうですか。魔族を圧倒できるのですか。なるほど、それで。」

「どうした?」

「どのようにして、魔王軍を跳ね除けたのか、興味があったのです。我らは、精鋭が1000人規模で戦っても、同数の魔族に勝てませぬ。なんなら、相手が100程度でも、場合によっては負け戦になります。彼女がいれば、ヴァイスフロスト城の奪還もすぐですね!」


 目を輝かせて、レインを見つめる兵士たち。

 その視線を受けて、えっへんとちょっとドヤ顔を作ってしまっているレイン。 


「その話を聞きたかった。皇帝陛下が聞きたがっていたのは、そこだ。なぜ、ヴァイスフロスト城の早期奪還にこだわるのか、とても気になっていたそうだ。」

「あ、ああ。そうだな。何も知らなければ、確かに妙な動きと取られるだろう。では、一つ、秘密の情報を伝えたい。あの城の中には、秘密のシェルターがある。頑張れば1月くらいはなんとか凌げるような。そこに、ヴァイスフロスト公爵夫妻と公爵令嬢がいるはずなのだ。」

「皇帝陛下に言えないのには訳があるのか?」

「もちろん。そのシェルターは、皇帝陛下に対しても、秘密にしていたもの。バレたら、大変なことになる。決して、皇帝陛下には言えない。」

「なるほどな。で、城ごと公爵を助けたいと。」

「そうだ。なにしろ我らのほとんどは、公爵領の兵士だからな。一部、国境警備隊もいるが。」


 ああ、確かに皇帝陛下には伝えられないだろうな。

 伝えること自体が不義であるからだ。

 もっとも、シェルターをこさえたのはなぜなのかを問わなければ、の話だが。


「ノナカ? ノナカ?」


 そんな秘密の話をしているところに、山神様やまのかみさまがやってきた。

 探しているのは、フリだけだと、もう知っている。

 だって、探す必要ないからね。

 どこにいるか、いつでも把握されているって、もう知っているし。


「どうしましたか、山神様やまのかみさま。」

「ええ、今日は、お友達を紹介したいの。」

「お友達?」

「そう、お友達。こちらの女性。」


 ちびっ子の山神様やまのかみさまの隣には、スタイルのいい大人の女性が立っていた。

 限りなく黒に近い、緑の髪と瞳に、悪い予感がした。


「チーゴ・ターマと申します。以後、お見知り置きを。」


 丁寧に頭を下げてきた。

 その動きで甘くていい香りが漂ってきた。


「チーゴはね、私と同じで、山の精霊なの。西隣の『チーゴ山地』の精霊。」

「ここから東に見える『タマネー山』までが、山神やまのかみキーファのウーバン山脈。そして、西に見える『ナース山』から西が、私のチーゴ山地。お隣です。」


 つまり、精霊仲間なのだろう。

 ここで、山神様やまのかみさまの名前が、さらっと公開された。

 自己紹介された記憶もないので、確かに名前を聞いていなかったが、あるよね、名前くらい。


山神様やまのかみさま、名前、キーファって言うんですか。知りませんでした。」

「え? どうして? 知っていると思っていたの。でも、兵士の皆さんは知っていますよね?」


 いきなり話を振られた、朝食中に国教の崇拝対象が現れて固まっていた兵士たちは、慌てて首を縦にこくこくとフリまくるのだった。


「ね? みんな知っていてくれるの。どうして、ノナカは知らなかったの?」

「え? えーっと、異世界人だから?」

「今度から、キーファって呼んでくれるなら、許します。それ以外の呼び方は却下。」

「キーファさん?」

「キーファ!」

「キーファさま?」

「キーファ!」

「き、きーふぁ。」

「微妙。もう一回。」

「キーファ。」

「合格。今後は、その呼び方。変更は認めないわ。」


 山神様やまのかみさまに、そんな無茶振りをされた。

 隣のチーゴさんが、生暖かい目で見守ってくれている。

 なんだか、あの人は、包容力があって、癒されそうな感じがする。

 いや、キーファだって、癒してはくれるのだろうけれど。



 帝国側の区画を、山神様やまのかみさまキーファと、同じく山の精霊のチーゴさんと見て回った。

 キーファは、帝国では崇拝対象になっているので、姿を見るたびに、帝国民たちはキーファに対して平伏している。

 最初はなんの冗談かとも思っていたが、割とガチで、普通の対応らしいとだんだん感じてきた。

 むしろ、並んで歩いている自分の方が、非常識極まりないと、非難の視線を浴びているくらいだった。


「キーファ。とりあえず、周辺の人間を集めて、暫定的にこの安全地帯に街を作ってみようと思う。それから、落ち着いたら、帝国兵が言う通り、ヴァイスフロストの城を攻略したい。何か、キーファの立場から、問題があれば教えて欲しい。」

「問題ないわ。まだ、ヴァイスフロスト公爵夫妻もその娘も生きているもの。」

「え?」

「私なら、いつでも会えるの。だから、ちょっと励ましてた。皇帝陛下が助けようとしてくれているって伝えたの。」


 えー。

 なに、そのチート。

 あと、帝国兵が助けたがっているのであって、皇帝陛下は、逆に悩まさせられているほうだからね、山神様やまのかみさま



「温泉、入りたいと思いませんか? 近くにあるんですよ?」


 突如として、山の精霊のチーゴさんがそんなことを言い出した。


「どれくらいでしょうか?」

「西南西に、およそ70キロくらい? 1日頑張って歩けば着くかしら?」


 ダメな精霊の人だった。

 山神様やまのかみさまと一緒で、長い距離を歩いて移動とかはされないんだろう。

 空間転移できるしね。


「何もなければ、15時間くらい歩き続ければ到着しますが。高低差も、食事も休憩もなくという条件をつければ、1日で着きますね。」

「そう。ごめんなさい。でも、いい温泉だから、ぜひ入りにきて欲しいの。湖畔の砂浜の砂を掘るだけで、温泉だから。なんなら、砂の上に寝転ぶだけでも、いろいろな病気が治るから。」


 すごい、自分のところの温泉押しだった。

 まあ、分からないではない。

 自前の温泉があったら、自慢したくなるだろう。

 山神様やまのかみさまだって、そういうところあるしね。


「なんだ? 温泉の話をしておるのか?」


 ここで、皇帝陛下が入ってきてしまった。

 うっかり公爵夫妻のお話にならないように、気をつけないと。


「ええ、チーゴ山地には、よい砂場の温泉があると聞きまして。」

「ああ、確かにあるな。ヤキウチ湖のことか? ついこの間、行ってきたばかりだが。」

「あら、皇帝陛下は、もう、ヤキウチ湖を楽しんでくださったのですか?」

「そうだ。ただ、病気の快復のために、立ち寄ったのだ。パーティーメンバーに病人が出てな。すごい回復力だな。感謝する。」

「いいえ、その方の体力によるもの。湖も温泉も、その力を引き出すのを、手伝っただけに過ぎませんわ。」


 聞いていると、温泉に入りたくなってくるのだが。

 いや、まあ、マグマエレメントの皆さんにお願いすれば、天然温泉をどこでも楽しめるのですけれどもね?

 でも、それは、なんだか、負けた気がするので、本当の天然温泉がいいかと。


「それで、ノナカ様。次はどのあたりを、魔王軍から取り戻されるのでしょうか? わたくしとしましては、そのヤキウチ湖周辺が、とてもおすすめなのですが。」

「チーゴ。それは、わがまま。自分のとこを、魔王軍から取り返してって素直にお願いすればいいのに。」

「ストレートにお願いするのは、ちょっとはしたないかなって思いまして。」

「そうなの?」


 そこで、僕に振らないで欲しい。


「攻略すべき場所がたまたま、重なっただけだ。優先的に攻略している訳じゃない。あと、人間同士の戦争になるような場所は、攻略できない。当たり前だ。」

「むぅ。わしも、できれば帝国を取り返して欲しいんだが。」

「皇帝陛下は、ご自分でもできるでしょう?」

「いや、レイン殿たちが手伝ってくれた方が、圧倒的に早く済む。」

「だからって。まずは、ウーオ区から、始めてくださいね。」

「わかっておる。」


 色々な人が、色々な思惑を持っており、そして、その利害関係から、魔王軍からの開放を望む場所がそれぞれ異なる。

 どの場所から手をつけるべきか、どの場所なら今の戦力で取り返せるのか。

 考えるだけでは、先へとは進めない。

 情報収集が必要だろう。


 もっとも、ここにいる山神様やまのかみさまや、山の精霊のチーゴは、そんな情報収集も簡単にしてくれるだろう。


 今の目標は大きく分けて2方面。

 北の帝国か、南の王国か。


 おそらく、南へと進軍すれば、カリマサやフリドラと、再び戦うこととなるだろう。

 北へと進軍すれば、まだ見ぬ、この間の合理的な悪魔と戦うことになるだろう。

 どちらが与し易いとかそう言うことではなく、どちらなら犠牲を少なくできるかを考えていた。

 皇帝陛下の下には、新たに、帝国内から、帝国軍の兵士も集まっている。


 有効活用できれば、かなり強力な戦力となるだろう。

 北側の国境は、皇帝陛下をはじめとする、旧帝国軍の集団が。

 南側の国境は、サイモン率いる、サッシー王国軍関係者が。


 はたして、この砦は、この先いったいどうなってしまうのだろうか。

 生き残りをかけた戦いが、ここにはじまった。

ブックマークありがとうございました。

これを励みに頑張ろうと思います。

新しく手に入れた砦は、波乱万丈の引き金となってしまいます。

みんなのために頑張ったのにね。

それでは、がんばれれば、また。


訂正履歴

 帝国ないから → 帝国内から

 仮説のテント → 仮設のテント ※ 以下2件、誤字報告ありごとうございました。

 キノコを送り込んできた → キノコが送り込まれてきた

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