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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第10章 人類が滅んでも世界は終わらない
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第122節 当たり前じゃない異世界常識

常識って、よくコミュニケーションをとっておかないと、いつの間にか変わっていたりして、トラブルの元となったりします。

あと、常識のない人が、自分中心主義的な常識を振りかざして、周囲に迷惑を撒き散らすこともあります。

今日は、そういうお話です。

例によって、「ざまぁ」はしません。

あくまでもするする詐欺です。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後52日目午後>

場所:ヨーコー嬢王国レーベン領ソーン砦

視点:野中のなか


「作戦会議をするのです!」


 猿渡たち、勇者奪還部隊が南に向けて旅立っていった後、遅い昼食を食べつつ、レイン先生が大きな声で言い放ってきた。

 なんだか前にも聞いたような気がするけれど、まあよしとする。


「作戦会議って、さっき猿渡が出発したばかりなのだが。」

「さっきまでの話を聞いていて、猿渡たちのアシストをする方法を思いついたのです!」


 悪い予感しかしない。


「あら、レイン様。奇遇。私も思いついたの。」


 そして突然湧いて出た山神様やまのかみさま

 さらに悪い予感がしてくる。

 あれだ。

 山神様やまのかみさま的に、利害が一致する話だ。


「ヴァイスフロストの砦。奪還するのです!!!」

「いや、そもそも僕らのじゃないから。奪還じゃないから。強奪だから。」

「どちらでもいいのです。魔王軍から奪い返すのですよ!!!」


 レイン先生はのりのりである。


「そうなの。ノナカ? 私からもお願い。魔王軍からヴァイスフロストを解放して。」


 そして、微妙に噛み合っていないオーダー。

 レイン先生は、砦攻略。

 山神様やまのかみさまは、都市攻略。

 固有名詞が同じだから、同じことを言っているように聞こえるけど、話は違うからね。


「砦を攻略すると、魔王軍は退路が断たれるのです。孤立部隊は、消耗して、最終的には自滅するのがセオリーなのですよ? 王都を攻めている魔王軍の部隊をボッチにするのです!!!」


 レインにしては、考えた作戦だった。

 というよりも、猿渡たちと話していた内容そのままだよね。

 それに、気をつけないと、そこを狙っているのは、魔王軍だけじゃない。

 ガガ多種族連合王国とかも、攻め込んでくるかもしれない。


「確かに、その作戦が成功すれば、猿渡たちの作戦の成功率は格段に上がるだろう。しかし、そうは簡単にいかないだろう?」

「ノナカ? 私が全面的に協力する。山の向こうで、何が起こっているのか、手にとるようにわかるわ。お役に立ちます!」


 あ、こっちはこっちでチート精霊がいた。

 土地神様的な立ち位置の精霊でしたね、山神様やまのかみさまは。

 同時に並行して、何人も存在できる器用な方でしたね。

 生きている世界の次元が(比喩ではなく物理的に)おそらくちょっと違うんですよね。


山神様やまのかみさまの要望は、どの道砦を奪還しないと叶いませんよ? それに、確かヴァイスフロストは、城下町でしたよね。大きなお城があるんですよね?」

「そうなの。お城の領主のオシメも替えてあげたことがあるの。領主は、何でも私の言うことを聞いてくれるのよ?」


 なんか、それを聞いてしまうとダメな領主像しか出てこないんだが。

 いや、違うか。

 ウーオ帝国では、山神様は、国教で崇拝対象だ。

 なんなら、現人神的な位置付けだ。


 そりゃ、何でも言うこと聞いてくれるだろ。

 怒らせたら、地形が変わりそうだしな?


「レイン。結局のところ、戦力が足りない。領土が広がった分、魔王軍に攻め込まれる場所も増えてきた。簡単には戦端を伸ばせない。やりすぎると退路を断たれるのは、こちらになる。」

「また、何か小狡いことを考えて、何とかするのです。野中のところの昔の人たちは、旧日本軍でそうやって戦ったのですよ?」

「そして物量に負けたけどな?」

「何とかならないのです? 少しは戦力が増えたのです。皇帝もいるのですよ? ちょっとは、帝国の領土を取り返してもバチは当たらないのです。」


 いや、皇帝をだしにするなし。

 そんなこと言ったら、領土返せとか言われるから。

 なんなら、海岸沿いの帝国領、掠め取っているから。

 殺されてもおかしくないですから。


「ノナカ殿。こちらのお嬢さんは? っ!!! これは、山神様やまのかみさま。」


 いきなり土下座というか、頭を床に擦り付けんばかりにひれ伏す皇帝陛下。

 それに倣う、帝国のプーシキン商隊の面々。


 え?


 山神様やまのかみさま自体が国教の崇拝対象とは話には聞いていたけれど、こんな感じなの?

 皇帝陛下よりも、すごくえらい感じなの?


「ノナカ? どう? ノナカも、私のこと国教にして、こういう風に崇拝してもいいのよ?」

「だ、ダメなのです! マスターはレインのものなのですよ? あげないのです!!!」


 ふーーーっ!!!

 ふーーーーっ!!!

 って、お前ら猫の喧嘩じゃないんだから。

 威嚇しあうなし。


「メリットがない。あと、もうすでにレインがいるし。信教の自由は、日本人としては守っていきたいところ。国内の一部勢力が、レイン神とか言って崇拝し始めているし。」

「マスターは、『レイン神』禁止なのですよ!」

「わ、分かったよ。言わないから。で、まず、その砦までどうやって攻め込む? 雪山の向こうだろう? 移動だけでも簡単じゃない。」

「考えるのですよ。ここにはたくさんの地元民がいるのです。抜け道の一つや二つ、知っているに違いないのです!」


 というので、商人たちの顔を見る。

 そして視線を逸らす商人たち。

 全員が、望み薄な表情だった。

 そんな抜け道あったら、とっくに使ってますよね?


「レイン。ダメみたいだ。」

「頑張るのですよ。もっとがんばれば、いい道を教えてくれるのですよ!」

「いや、レイン。一番よく知っている人がいるじゃないか。山神様やまのかみさまだ。」

「ごめんなさい。いい抜け道はないの。」

「じゃあ、せめてこことターゲットの砦がどんな位置関係になっているのか教えてください。」


 期待に満ちた瞳で、山神様やまのかみさまに頼ってみた。

 だって、協力してくれるって言ったし。


「いい? このソーン砦の西に見える高い雪山が『タマネーさん』。この山の西側に、ヴァイスフロイスの砦につながる、『北の大街道』があるわ。帝国首都のブラウレッタ城から、サッシー王国の王都まで繋がっているの。ここからだと、タマネー山を南回りで迂回していくしかないわ。雪山に突入するのはもうダメ。」


 つまり、正攻法では、一旦南に迂回しなければ無理ということ。

 でも、そうすると、南側の町をいくつか通過することになる。

 とうぜん、そこには魔王軍が待ち構えている可能性が大きい。

 できれば、避けたいのだが。


「むう。ちょっとやる気になっていたのだが、やはり物理的に無理なのか。できるのなら、もうやっていただろうし、逆に、魔王軍だって、いい抜け道があったら、そこから攻め込んできていただろうし。」


 うんうんうなって、なにか小狡い案はないものかと考えていると、背中を突かれた。

 マインウルフである。

 濡れた鼻で突かれた。

 微妙だ。


「な、何だ? 何かあるのか?」

「社長。我らにお任せを。」


 白い煙を撒き散らして、ちびっ子マインエルフに変身したマインウルフが、自信満々に言い放った。


「えっと、誰だっけ?」

「ウーバン村南区のギボンです。社長。我らマインウルフにお任せください。あと、ラスト様に協力していただければ完璧です。」

「いや、そうじゃなくて。一体、何をしようっていうのか説明してくれないか? みんな分からなくて困惑している。何となく察しはするが。」

「流石です社長さま。ですから、線路を伸ばすのです。ヴァイスフロイスの砦に向けて。真っ直ぐに。若いのが2匹、一走り偵察に行ってきましたが、ドエッジ砦の西の塔からヴァイスフロイスの砦までは、走った感じでおよそ5キロ。ここを岩石魔法でいい感じに土木工事して、線路を引けばいいんです。2日で完成させて見せます。」


 言うと思った。

 前回、ドエッジ砦から、旧国境警備隊本部まで、結構短時間で山岳地帯の中を線路で結べた成功体験が、彼を後押ししているらしい。

 おそらく、何もないのなら、言う通り可能だろう。

 しかし、ギボンは一つ、大切なことを忘れている。


「確かに、その案は魅力的だし、可能だろう。一つの条件を忘れればな。」

「何か重要な条件を忘れていましたか?」

「何のために、ヴァイスフロイスの砦まで僕らは行かなきゃならないんだ?」

「そりゃ、魔王軍を倒すためです。」

「魔王軍のど真ん中に線路を引きに行くのか?」

「うっ!!!」


 そうなのだ。

 彼の計画の提案は、正直嬉しいし、実施者の立場だから、可能だと言うのなら可能なのだろう。

 ただ、僕ら、魔王軍と戦う人間からすると、魔王軍のど真ん中に線路を引けるのかといえば、それは無理な相談だった。


「まあ、使えない訳じゃない。そうだな。3キロ。3キロでどうだ?」

「はあ、それなら、1日でなんとか。」

「そうだな。3キロ先に駅を作ろう。そこから攻め込めばいい。敵は、完全に油断しているだろう。なにしろ、山から攻め込んでくるとは思わないだろうからな。」

「了解です。仲間に伝えて、さっそく魔法で掘り始めます。」

「ちょ、ちょっと待て! ラストも行く! ロッコも着いて来るんだ! マスターもあとですぐ来るんだぞ? もし、魔物が出たら、戦うんだからな?」

「分かっている。」


 こうして、マインウルフ工作部隊が、さらに西へと線路を伸ばすべく、山の中をいじる作業に取り掛かってしまった。

 もちろん、山神様やまのかみさまは、ご機嫌ななめである。

 もっとも、そんなことを気にしていては、魔王軍を撃退することはできない。


 そこのところを理解してくださっている山神様やまのかみさまは、文句がたくさんありそうな膨れっ面になってはいたが、直接は何も言ってこなかった。


「ノナカ殿。ちょっといいか? 今のエルフは?」


 皇帝陛下が疑問を投げかけてきた。


「え? ああ。エルフですが何か? サッシー王国と違って、異種族も国民として平等に扱いますよ。ええ。国民として。」

「いや、そんなことはどうでもいい。わが帝国でも同じことだ。だから、エルフだ。なぜ、エルフがいる? おかしいだろう?」

「いや、エルフくらい、いてもおかしくないでしょう? ウーオ帝国にだって、たくさん住んでいのでしょう? 異種族を拒まないと言っていたのですから。」

「そうじゃない。エルフという種族は、この小大陸にはもういないんだぞ? 知らなかったのか?」

「え?」


 なんですと?

 皇帝陛下は、とんでもないことをぶっ込んできました。

 エルフが絶滅?

 どういうこと?


「知らんのか? 元々、このヒノパーン小大陸に住んでいたエルフは、ほぼ全てがここ、サッシー王国のある場所に住んでおった。それを、小大陸の外から来た蛮族が、無理やり占領したのだ。エルフたちは逃げ惑って隠れたりもしたが、結局のところ、一人残らず、殺されてしまった。そして、今のサッシー王国がここにある。」


 ちょ、とうしよう。

 エルフの隠れ里的なの、国内にあるんですけど。

 まずいな。

 王国に知られると、まずいな。


「じゃあ、ヒノパーン小大陸の外からの流れ者じゃないですかね?」

「そうか? ワシは聞き逃さなんだ。マインウルフを南に派遣するときに言っておったな。『エルフもたくさんいるから。』と。」


 うっ。

 そうだよ、言ったよ。

 だって、ほんとうのことだし。

 そんな経緯、知らなかったし。


 それに、あれだ。

 ガーター町の人たち、一部はおおっぴらにエルフだったじゃんかよう。

 あー、あれか。

 呼び方を変えればセーフなのか?


 ドワーフとか言っておけばセーフなのか?


「まあ、帝国がどうこうではなく、王国がどうこうではなく、我が国の国家機密ということで一つ。」

「そういうことにしておいてやろう。」

「そうなの。これは、私とノナカの秘密なの。皇帝も理解して?」


 そして、山神様やまのかみさまがフォローを入れて来る。

 まあ、山神様やまのかみさまも大々的に関わっているしな。

 今更裏切られても。


 しかし、そんな僕らの緊迫した空気を読んでか読まずか、僕のところに今日はやけに何度も、マインエルフが報告に来ている。

 その度に、場に緊張が走るのだが、彼らにとっては、どうしてそうなっているのか理解できない。

 皇帝陛下の手前、マインウルフたちに指示を出すわけにも行かないしな。

 というよりもだ。


 こいつら、分かっていてやっているんじゃないだろうか。


 だって、マインウルフたちは耳、とんでもなくいいんだぜ?

 だったら、ここの会議の内容、全部聞きとられていても不思議じゃない。

 それで、無駄に姿を見せているのではないだろうか。

 だとすれば、これは、ちょっとしたアピールなのか。


 この国には、エルフもいますよという。

 もし、そういうアピールを皇帝陛下の前でして来るということなら、さらに不安要素がある。

 異種族軍団だ。


 ある程度、色々な人たちと会話をする中で、異種族と言っても、段階があることを知った。

 帝国でも、よく見かけるのは、獣人に分類される、人間と、動物の間くらいの異種族だ。

 あとは、エルフとか、ドワーフとか。

 まあ、エルフはいないことになっているのだけれども。


 ここまでが、常識の範囲。

 つまり、我が国には、常識の範囲外の異種族が結構いることになる。

 エレメント族とかの、無機系異種族。

 ドライアド族とかの、植物系異種族。


 あと、明らかに動物の姿をしている、マインウルフを異種族と認める国は、我が国以外にはありえない。

 動物は、きちんと動物としてカウントするそうだ。

 そして、精霊族も、国民としては、カウントしない。

 当たり前といえば、当たり前すぎるのだが。


 我が国では、きちんとカウントしていますけれど。


「皇帝陛下。異種族について、あの、本人たちにバラされる前に、心の準備をしておいてください。我が国には、多種多様な異種族がおります。おそらく、皇帝陛下の知っている埒外の。」

「どんなだ? 昆虫系の異種族か? それとも、海洋生物系の異種族か? どんな異種族でも、驚いたりせんぞ? エルフがおるくらいだしな。」

「エレメント族って、帝国では、異種族に入るのでしょうか?」

「入るわけなかろうよ、たわけが。あやつらは精霊だ。異種族ではないぞ?」

「精霊は異種族ではないと。」

「何を当たり前のことを。まさか、国民として生活させているんじゃないだろうな?」

「あ、やっベー時に来ちまったかな?」


 絶対タイミング待っていただろお前!!!


「エレメント族のダークエレメント、クロウって言います。ネトラレ山山頂の砦に住み込みで働いています。魔王軍が攻め込んできたら、存在ごと消してやります。」

「おいノナカ殿。これはない。これはないぞ?」

「いや、国民だしな。お互い助け合って生きていかなきゃいけないんだ。領地内に住んでいて、意思の疎通ができて、仲間になってくれるのなら、もうそれは、異種族とカウントしても、実害ないので。」

「まあ、帝国には実害あるかもな? 俺たち、ちょーーーっと、強いからな、人間よりも。」


 ヘイトを稼ぐのはやめてください。

 帝国の皇帝陛下と、プーシキン商隊の面々がぷるぷるいっていますよ。

 まあ、もう、帝国も瓦解してダメなんだけれどもね。


「ノナカ殿。もしかして、軍事利用とか、していないよな? な?」

「いえ? 国境警備隊を買って出てくれています。魔王軍に対して、圧勝です。」

「あー。そういうことか。分かった。理解した。ヨーコー嬢王国が、なぜ、魔王軍に対して圧倒的に勝利しているのかを。」

「いえいえ。何度も滅ぼされかけていますよ? 死にそうになったこともありますし。ね?」

「なーー。」


 クロウは、何か思うところがあるのだろう。

 皇帝陛下を散々挑発していた。

 そして、満足したのか、帰っていった。


「どういう国家運営をしたら、あやつらが国境警備隊になるんだ? おかしいだろ? ん? 国境警備隊だと? あやつら? ま、まさか、複数いるのか? というか、隊を組むほどいるというのか?」

「結構いますね。まあ、自分の住む場所は自分で守りますよと、そういう契約ですし。こちらからも、大規模爆破実験とかしない限りは無干渉ですし。」

「お、おう。もう、何と言っていいのか。おそらくだが、この小大陸で、最強の軍事力を持っているのは、この国の可能性が高いぞ?」

「またまた。そうやって持ち上げても、何も出ませんよ?」

「いや、正直な話なのだが。流石に、ドラゴンとかはいないよな?」

「当たり前です。というかこの世界にはいるのですか? ドラゴンが。」


 逆に驚かれる。


「聞いていないのか? ドラゴンは、竜はたくさんいるぞ?」

「あれ、リザード族とかとの勘違いじゃないですよね?」

「も、もちろんだ。リザード族もあまり見ないがな。いるんだな?」

「は、はい。おりますが。」

「もういい。そういう国だと諦めよう。」

「そうじゃなくて、ドラゴンはどこにいるのです?」

「秋になると、畑に火を放ちに来る。特に小麦や稲の畑を焼き滅ぼすのが趣味のようでな?」

「あー、確かにそれは、聞き齧ったことがあります。この国の庶民の主食が芋なので、なんでパンを食べないんだと、ライスを食べないんだと聞いたときにそう言われましたね。てっきり、土地が痩せていて、作れないのをドラゴンという架空の生き物のせいにしているものとばかり。」


 ドラゴン、秋になったら襲って来るらしい。

 早く対策をとっておかないと。

 流石にレイン一人では荷が重すぎるだろ?

 ドラゴンに対応するのは、エレメント族なら圧勝しそうだけど。


 あんまりエレメント族に頼るのも良くないと思うから。


「ドラゴンは、話せないんですか? 異種族ではないんですか?」

「もちろん人語を解するし、会話も可能だ。だが、我々とは異なった理論で生きているので、なかなか分かり合うことはできんぞ? 親の仇のように、小麦を燃やすしな。あと、麻薬類も、作ろうとすると、燃やされるな。」

「いいやつじゃないですか。」

「いや、被害甚大だ。やつらは、小麦を燃やすときに、『トーシツ』だとか『ダイエット』だとか、訳のわからない言葉を並べ立てて、火を放つのだ。」


 え?

 もしかして、奴らは、逆ベジタリアンなのでは?

 まあ、ドラゴンだから、肉しか食べなかったとしても、不思議はないし。

 それを人間に強要しないでほしいんだが。


 でも、なんで芋は許されるのか。

 小麦よりも、芋の方が糖質的には重罪な気がするんだが。

 まあ、ドラゴンとコミュニケーションをとるような機会があったら、試しに聞いてみよう。

 案外、話が合うかもしれないしな。


「マスター。お昼ご飯も終わったのです。線路を延ばしに行くのですよ?」

「そうだな。マグマエレメントたちにも、一言断っておかないとトラブルになりそうだしな。」

「ノナカ? 私にも一言断ってほしいの。」

「じゃあ、一緒に向かいながらでも宜しければ。」

「いや。ドエッジ砦西の塔のマグマエレメントたちのところにいる私から、先に言ってるおくわ。ちょっと工事でうるさくしますって。」

「早いな。」

「まかせて。なんなら、タマネー山の向こう側で、魔王軍の動きを偵察している私もいる。今のところ、大した動きはないの。今がチャンス。」


 まあ、帝国では神様として崇められているんだし、これくらい神様みたいな能力があっても不思議じゃないし。

 ほんと、言われてみれば不安になる程、化け物級の能力を持った者たちのあつまりになったな、我が国は。

 皇帝陛下じゃなくても、ちょっと呆れちゃうのは仕方のないことだよね。



 なお、商人たちは、しばらく、砦でキャラバンを張るとのこと。

 軍事用品で儲かるからね。


 砦については、桜井さんたちに、いちおう、お願いしておいた。

 難しいことは、エルフを一人つけておいたので、面倒を見るように言っておいた。

 砦を守るためのマインウルフが1分隊、残っているからね。

 

 僕とレインは、だいぶ大きくなってレベルも高くなってきたユリと一緒に、工事現場へと急ぐのであった。

思いのほか、許容範囲の広い国だったのだと、改めて考えさせられました。

犬を国民として扱っているくらいですし、そうなりますよね。

次からはまた、魔王軍との戦いがメインのお話になってきます。

線路を引くのが先ですけれども。

それでは、がんばれれば、また。

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