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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第10章 人類が滅んでも世界は終わらない
166/224

第121節 魔王軍のアキレス腱

人が集まれば色々な知恵が生まれます。

そして、それゆえにできることも多くなります。

そこで必要なのはすり合わせ。

妥協点とも言い換えることができます。

今回はそういうことをうまくやろうというお話です。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後52日目午前中>

場所:ヨーコー嬢王国ウーバン領ウーバン村

視点:野中のなか


 魔王軍の軍勢から逃げるため、この砦にはいろいろな人が集まってきた。


 まず、猿渡とその仲間達。

 江藤さんと桜井さんと、阿部さんだ。

 聞いた話では、この女子3人は、王城でクラスメイトに酷いことをされて脱走したとのこと。

 だから、王城からここまでの全行程以外に新しい情報はない。


 猿渡の救ったローラン商会とかいうキャラバン。

 隊長はローラン、隊長の妻のハーマ、娘のシンシア。

 他商隊員が6名。


 次に、先ほど合流した、神佐味かむさびとその仲間達。

 洞川どろかわと修行僧の高野たかの

 そして、女子3人の重光・張本・ぶんのは、洞川ファンクラブだった。

 こちらからは、魔王軍の状況とか、各自のスキルとか色々と話を聞いておきたい。


 神佐味と一緒に来た者は、結構多かった。

 まず、ウーオ帝国の皇帝陛下。

 そして、サッシー王国の聖騎士サイモン。

 さらに、神佐味の救ったメイドも含めた家族4人。

 最後に、馬車の持ち主でもある、帝国の商隊の人たちだった。


 立場も違えば考え方、職業も違う雑多な集まり。

 揃えるならば、戦う者達と商う者達で2グループにできるけれども。

 とにかく、情報のすり合わせが必要だった。


 まずは、神佐味たちもいるので、僕たちウーバン鉱山強制転送組3人が、どうやって生き残ってここまで来られたのかをかいつまんで説明した。

 魔王軍に何度も攻め込まれていることや、町の人たちと戦ったことなども話したので、素直に驚かれた。

 精神的な抵抗は無かったのかとか、怪我はないのかとか、いろいろ聞かれた。


 次に、猿渡が、4人で王城から脱走した経緯と、それからここまでの旅路についての話をした。

 猿渡のスキルの詳細については語らなかった。

 ローランの妻を復活させたのは、「エリクサー」の効果ということにした。

 娘を救ったのは、誤魔化さなかったが。


 最後に、神佐味かむさびたちの話だ。

 こっちにいた人間としては、何が起こったのかとても知りたかった。

 帝国へと派遣されるようになった経緯や、職業を得た話などを聞くことができた。

 あと、魔王軍との戦いで砦が破られ敗走した後の話を詳しく聞いた。


 敗走中に、土地勘のあるサイモンが目ぼしい洞窟で休憩しようとして、商人の家族と出会ったこと、魔法で回復させて、さらに東へと進む中で、帝国の商業キャラバンに出会ったことを話してもらった。


 ここから、キャラバンの話を聞きたくなったので、説明を受けた。


「はい。私が、帝国から商業キャラバンで来た、プーシキンです。ヴァイスフロストの城下町で商会を開いて、広く浅くいろいろな商売をしていました。」

「なぜ、こちらの国に?」


 一番気になる点を、真っ先に確認しておきたかった。


「まず、ウーオ帝国なのですが。皇帝陛下の御前で言いにくいのですが、帝国の中枢が、魔王軍に乗っ取られたという情報が、商人ギルドの情報網に乗りました。そして時間をおかずに、帝国内はどんどん魔族に占領されていったのです。そこで、我々商人は、我先にと、とりあえずサッシー王国へと逃げ込みました。」

「逃げるあてはあったのか?」

「そうです。商人ギルドの情報では、今回の魔王軍の侵攻を食い止めることができるのは、ガガ多種族連合王国と、ヨーコー嬢王国だけだと。生き残ると言う意味では、南の海の大トネニーズ諸島連邦も生き残りますが、それは、魔王軍が単に攻め込めないだけのことで。」


 また出てきた。

 この世界にはいろいろな国があるのだが、名前だけでは、よくわからない。

 ただ、大トネニーズとやらは、南の海の島の集まりだというのはイメージできた。

 魔王軍としても、ちまちま島に攻め混むのは、ちょっと面倒そうだ。


 しかし、ガガについては、なかなか情報が出てこないのだ。


「すまない。話の腰を折って申し訳ないが、その『ガガ多種族連合王国』というのは、何なんだ? そもそもどこにある国なんだ? 田舎者なので分からないのだが。」

「あ、ああ。これは申し訳ございません。ここから西にある東西に長い沿岸国家です。北側を帝国と接しており、魔王軍の侵攻はこちらと同じようにあったのですが、圧倒的戦力により、魔王軍を退けています。今のところは、安泰です。ただ、サッシー王国やアーターツ神権国が魔王軍の手に落ちると、多方面から攻め込まれることになるので、それでも持ち堪えられるかどうかは、未知数ですが。」

「それほどまでに強いのか?」

「はい。世界最強の軍事国家といっても過言ではありません。国名にもある通り、多種族が力を合わせて作り上げた国です。いろいろな種族がそれぞれの長所を活かした軍隊。これは他の国にはほとんどありません。そしてそれは、それが故に圧倒的強者として君臨します。ただ、西の方の国では、このことをおおっぴらに言うと、最悪極刑になりますのでご注意を。」

「は?」

「シーハイランド皇国というこっちの方では西国と言われているガガのさらに西にある大国が、自分の国の軍事力が一番だと言って認めないのです。本来なら、ガガが一番で、大トネニーズが二番。西国はその後塵の三番手か、四番手か。この辺りにサッシー王国が入ったりします。」


 かなり、国力の計算をしている。

 商人ギルドとやらは、おそらく優秀な諜報機関でもあるのだろう。

 国家を跨ぐ、多国籍企業のきらいもある。

 これは、冒険者ギルドや職業安定署についても同様のことが言えそうだ。


 国がなかなか口を出しにくいと言う意味では、微妙な位置付けだ。

 その、微妙な位置付けを確固たるものにするためには、それ相応の努力や金銭が必要になっているのだろう。

 逆に言えば、そのためのギルドでもある。


「ありがとうございます。なるほど、それで、こちらに来られたと。」

「そのとおりです。もっとも、商業ギルドとして、帝国がダメだと明確に判断したのは、そちらの聖騎士サイモン様が、魔族の化けていた偽物の皇帝陛下を真聖波で攻撃できたことを知ってのことです。ま、自業自得というか。」

「サイモンはよく死ななかったな。」

「死にかけていたんだ。ちょっと前までな。」

「では、その後、帝国にいた魔王軍は、サッシー王国に攻め込んできたということですね。」

「皇帝陛下が偽物であることを知られてはいけないと、サイモンやそれを知った国の重鎮たちをどんどん魔族が殺そうとしていきました。しかし魔王軍は、商人ギルドの情報網と伝達速度を甘く見積もっていました。もっともそれが原因で、この国は攻め込まれたとも言えます。」

「どういうことだ?」

 

 甘く見積もったのなら、そもそも、攻め込む必要はないはず。

 なぜ攻め込んでくる必要があったのか。


「魔王軍が、方々にサイモンや皇帝陛下偽物説を知っている者たち殲滅するために魔族を国内南部に大量派兵したのです。しかし魔王軍の想定よりかなり早い段階で、国境付近まで情報がたどり着いていました。そこで、サッシー王国にこの件がバレては攻め込まれると判断し、魔王軍はサッシー王国も、計画に無い早さで、占領することにしたのです。」

「なるほど、それが現状の攻め込まれる原因と、攻め込むスピードが異様に早い訳だな。」

「そうです。ですが、それ以外の要因もあります。本来ならばすでにサッシー王国は、陥落しているはずなのです。遅くなった要因は、ヨーコー嬢王国にあります。」

「いや、それほど対して役に立っていないはずなんだが。」


 思い出しても、それほど軍事侵攻を邪魔したつもりはない。


「戦略的に、ウーオ帝国からサッシー王国へと大軍で攻め込むルートは、船を使うことを除けば2箇所しかありません。その要衝がコソナ砦であり、我らがヴァイスフロストの関所とその砦です。」

「なるほど、それでヨーコー嬢王国は攻め込まれまくっていたのか。」

「そういうことです。そもそもコソナルートが本命でヴァイスフロストルートは、あまり使いたく無かったと言うのが、魔王軍の本音です。」


 なんでだよ?

 実際に陥落したのは、我が国じゃないのに?


「一つ重要な情報が理解できていないようですので。現状、魔王軍よりもガガ多種族連合王国の方が圧倒的に強いのです。一応、魔王軍も申し訳程度にはガガの西の端を北側から攻撃こそしていますが、逆に返り討ちにあって、ウーオ帝国の一部地域を奪い返されるくらいの状況です。」

「つまりどういうことなんだ?」

「簡単です。ヴァイスフロストくらいまで、ガガ多種族連合王国が攻め込んでくる可能性もあると言うことです。そして、そうなった場合、魔王軍が勝てる見込みはないと。コソナルートが使えない今、もし、後ろからヴァイスフロストルートを占領されたら、魔王軍はどうなります?」

「退路が、……絶たれる、ということが。それは、使いたくないだろうな。」

「だから、ヴァイスフロストの砦周辺には、そうならないように強力な守備隊が待っているはずです。街道としては太いですが、魔王軍としてはとても細いアキレス腱になってしまっています。これも、ヨーコー嬢王国が、こんな形に国家を形成しているからですよ?」


 つまり、ヨーコー嬢王国が横長の国土を形成したために、魔王軍は、嬢王国とガガとに挟まれた、狭いルートを通って王国に攻め込んでおり、今のうちにここを叩けば、袋の鼠になると。逆に言えば、早くここをなんとかしないと、ガガにもっていかれると。

 これは、まずいな。

 いや、僥倖かもしれない。


「そして、神佐味たちが守っていた、そのヴァイスフロストの砦は、先日陥落して、圧倒的多数の軍勢で魔王軍がなだれ込んできたと。」

「そういうことになりますが、同時並行的に、コソナ砦も魔王軍の侵攻に遭っていたはずです。ところが、その悉くを新興のヨーコー嬢王国が跳ね除けたとして、商業ギルド内では話題になっています。我々以外の商人にも、安全地帯として、商売基盤として、注目されているところです。」


 なるほど、そういうこと。

 逆説的に、コソナやこの近辺での魔王軍侵攻を抑え切ったことで、魔王軍にはヴァイスフロストの砦を攻め落とすしかやりようがなくなったと。

 そして、魔族に対抗する手段を多く持たないそちらの砦を、大量の魔族で圧倒して、無理やり通過したということだろう。

 しかし、それは僕らのせいじゃない。


 それに、僕らが踏ん張ったから、10〜20日は、魔王軍の侵攻が遅くなったと考えられる。


 そこで疑問だ。

 サッシー王国は、今回の魔王軍の侵攻を阻止できるのだろうか。

 できないのなら、サッシー王国もウーオ帝国同様、魔王軍の手中に収まってしまう訳だが。

 その上、先生をはじめとする、まだ王城にいるクラスメイトも……。


「サイモン殿。貴殿の持っているサッシー王国軍のデータ的には、王都は魔王軍とどれだけやり合えると予想される?」

「聞きにくいことを。まあ、嫌いじゃない。そういう鋭い確認も。もって20日。早ければ戦い始めて10日で陥落する。勇者たちが覚醒していなければ、魔族や悪魔を倒せる戦力がほとんどない。我ら聖騎士くらいのものだ。しかし、聖騎士の大半は、国境警備隊に配属されていたので、もう、望み薄だ。」

「もっと聞きにくい質問をしていいか?」

「なんだい?」

「この世界の地理に詳しくはないのだが、魔王軍は、どこまで攻め込むつもりなんだ?」

「それは、世界全土だろう。この辺りは、ヒノパーン小大陸だ。とりあえず、この小大陸とその付属する島々を占拠するのが当面の目的だろうが、君達も知っての通り、その占拠が終わるまでに、あと100日前後と、女神様は予想されている。予想というよりも、確定した未来を我々に開示してくださっている。」


 これは、終末時計のことだろう。

 つまり、この周辺の国が全て魔王軍に飲み込まれるのにあと100日弱。

 最終的には、ガガとか、大トネニーズ、そして、ここヨーコー嬢王国も手に入れることを考えれば、妥当な日数かもしれない。

 魔王軍に僕たちが抵抗したことで、多少は日数が増えているかもしれないしな。


「嫌なことを聞いて申し訳ないが、僕らがサッシー王国の王都に援軍を送ったとして、これは受け入れられるのか?」

「無理だな。私が言うのもなんだが、サッシー王国の軍隊は、プライドの塊だ。もし滅ぶとしても、他国の手は借りないだろう。それをよしとする風潮もないし、むしろ、そんな提案をしたら、不敬だとして、即刻斬り殺されるかもしれない。無理な発想だ。」

「じゃあ、指を咥えて滅びを待つしかないのか。でも、王城には、勇者たちがまだ残っているのだろう? そいつらだけでも助けたいのだが。」

「……そうだな。こういうのはどうだろうか。王国軍に偽装して、王国軍を助けると言うのは。」

「どういうことだ?」

「目の前の街に、ダメ人間の集団ではあっても、200人ほどの王国軍が生き残っている。これに我々が加われば、実際に私は王国軍の軍人なのだし、援軍が敵の背後からやってきたと言う風に捉えてもらえる。そもそも、見た目だけじゃ、サッシー王国の人間なのかヨーコー嬢王国の人間なのか、見分けはつかないだろう。」


 悪いことを考えているのが透けて見える。

 もし、その作戦で成功したならば、王国軍が、魔王軍を撃退したことになるだろう。

 実態として、その能力がないにも関わらずだ。

 するとどうだろう。


 国民は、王国軍にもっと過剰な期待を持ちはしまいか。

 魔王軍にとられた土地を取り返してくれと。

 なんなら、他国へ攻め込んで領土を拡大しろと。


 国民はともかく、国王やその周辺の貴族が黙っていないだろう。


 そうなったときに、困るのは実際に戦っていた兵士たちだ。

 なんなら、強制的に僕たち離脱組の勇者も、その王国軍に組み込まれてしまうかもしれない。

 やりようはいくらでもあるのだ。

 非道な用法ではあるが、城に残っている勇者を人質として活用する方法すらあるのだから。


 そして反面、もし、この戦略でもどうにもならなかった場合は、ヨーコー嬢王国へ責任をなするつけることができるだろう。

 どっちに転んでも、美味しい話でしかない。

 ただし、命懸けの戦いになることは避けられないのだが。

 どうしたものだろうか。


 助けには行きたいし、実際猿渡は、僕を助けるつもりで、ここまで来てくれた。

 その行為と気持ちは正直とてもうれしかった。

 しかし、僕が首班である救助部隊が残存勇者を救いに行って、反発されないだろうか。

 言いたくはないが、僕のクラスには明確にいじめが存在する。


 だから、メンバーによっては、むしろ助けたくない。

 魔王軍が殺してくれるのなら、むしろありがとうと言いたいくらいの相手もいる。

 そのドス黒い自分のなかの悪魔が囁く迷いが、僕の判断を明確に鈍らせていた。


 それに、助けに行くのなら、この国の防御体制はどうなる?

 今でも、ウーオ帝国には、こちらに攻め込めるだけの十分な魔王軍戦力があるのは間違いない。

 ならば、いつでも戦えるようにしておくこそが大切ではないか。

 戦力を分散して、どちらもだめでしたと言うのは、違うと思う。


 そして、考えた結果。


 それなら、自分が行かなければいいじゃないかと。

 いじめとは縁遠いメンバーで行けばどうかと。

 それなら救援救助に問題は発生しないだろう。

 戦力は元に戻るが、この国も守り抜けるだろうと。


 そもそも論なのだが、サッシー王国は異種族に対して差別意識が強い。

 つまり、異種族主体の我が国の戦力は、今回、もとより活用できないのだ。

 この考え方を主軸として、メンバーを選定すればいい。

 なんだか、うまくいきそうな気がしてきた。


「猿渡、きついことを頼んでもいいか?」

「嫌な予感しかしない。」

「王都の勇者たちを、助けに行ってもらえるか?」

「それは出来ない相談だ。軽く話したと思うんだが、僕はいいとして、僕以外の女子3人は、過酷ないじめというか暴行に遭ってあの城から逃げ出してきているという経緯があるのを忘れてもらっては困るんだ。」

「もちろんそれは知っている。僕は、指揮官としての猿渡の力が欲しいんだ。女子は、こっちで面倒を見よう。なに、伊藤さんや大岩井さんに預けておけば悪いようにはしないだろう。」

「そうか、じゃあ、神佐味たちも行くか?」


 そう言うと、神佐味かむさびに話を振っていた。


「どんな人間が相手であれ、人命を助けることに是非はない。協力させていただく。お前らもいいか?」

「もちろん。」

「そうじゃ。」


 神佐味以下男子3人は、話を受諾していた。

 これで、猿渡以下4人になった。


「洞川さまが行くのなら、私たちももちろん同行いたしますわ。」


 当たり前のように、洞川ファンクラブの女子3人も同行することになる。

 洞川たちが、あからさまに嫌な顔をする。


「もちろん、私もご一緒します。自国の滅亡を回避することこそ、騎士の勤めですから。」


 聖騎士サイモンも、この話に乗ってきた。


「野中。だが、これではダメなんだ。」

「どうした、猿渡。結構な戦力だと思うのだが。」

「確かにそうなんだが、こっちのメンバーには、残念なことに魔族や悪魔に対抗する手段がない。」

「そうだな。そうなると、どうにもならないな。一応、猿渡の魔法は、効くんだろう?」

「そうだけれども、逆に言えばそれだけしかない。」

「あ、あと、私の真聖波も、魔族には有効ですし、私なら、魔族を倒すことができます。しかし、このメンバーだけでは、ヴァイスフロストでは善戦しましたが、同じことの繰り返しになる可能性が。」

「じゃあ、そうだな。マインウルフ軍団を、一個中隊出そう。100人規模だ。結構な数がマインエルフに変身できる。必ずや、役に立つだろう。後から追いかけさせる。とりあえずは先行部隊として1分隊ここから連れていけばいい。魔法で防御もできるし、エルフがいるから、自分たちで部隊運営をしてくれる。強力な戦力になるだろう。レベルが上がれば、みんなエルフになるからな。」

「いいのか?」

「なに。問題ない。こっちは、こっちで、自国をしっかりと守ればいい。守るくらいなら、奥の手があるからな。攻め込む訳じゃなければ、どうとでもなる。それで、出発はいつにする? 村で物資を調達してからにするか?」


 すると、キャラバンから商人たちが寄ってきた。


「なぜ、村まで行く必要があるのです? ここに、必要な物資を大量に抱えたキャラバンが2つもあるんですよ? せっかくなんで活用していただきたいものです。」

「こちらも、売れるときに売っておきたい。」

「何がある?」


 すると、馬車の中から、いろいろなものを取り出して見せてきた。


「まずは、携帯食料。干し肉が中心になりますが。塩なんかの調味料も一応ありますよ? 高価なものでは、結晶砂糖もあります。あとは、ポーションとか、HPポーションに毒消しポーションもありますよ? 必須アイテムです。」


 猿渡と一緒に来た、ローランは、主に薬品類や食料類を扱う商人のようだ。

 それとは真逆に、帝国から来たキャラバンは、武器防具の類をたくさん乗せていた。


「ええと、お金は嬢王国が支払ってくださると言うのなら、強力な武器防具があります。例えば、魔族や悪魔に対応した、神聖属性の剣があります。同じように、神聖属性の防具も。単純な魔族の攻撃なら、無効化できる程度にはすごい防具ですよ?」

「でも、お高いんでしょう?」

「もちろん、勉強させていただきます。大量に購入していただけるのであれば。」


 需要は間違いなくある。

 そして、供給もある。

 手元にそれを支払えるだけの金銭があれば、の話だが。


「おぬし、名はなんと申す?」


 皇帝陛下がその商人に声をかけていた。


「はい。プーシキンと申します。プーシキン商会をヴァイスフロストを中心とした、帝国南部で営んでおります。」

「いやなに、不思議に思っておったのだよ。我が帝国には、なぜか、魔王軍に対応できる人材も、武器防具もかなり少なくてな。それにも関わらず、お主はそれを売ることができると商品を持っておる。見ただけで本物であることに疑いはないのだが、なぜそれを、帝国では売っていなかったのかを問いたい。」

「ええ。当然の疑問です。答えは簡単でございます。帝国から売買を禁止されていたからです。」


 おいおい。

 どういうことだよ!

 しかも、それを皇帝が知らないとかない。


「聞いておらんぞ?」

「もちろんそうだろうと商業ギルドでは考えていました。しかし、我がギルドには皇帝陛下とのパイプがありませんでしたので、進言することができませんでした。」

「しかし、何故。」

「簡単なこと。帝国政府内部に結構な人数の魔族が入り込んでいたのですから。自らを傷つけかねない、見破られかねない武器防具を、放置するはずもありません。ただ、おおっぴらにすると、逆に疑われてしまいます。そこで、ギルドに直接ではなく、商人一人一人に、魔族が役人として直接伝える形で、神聖属性の武器防具を国内で売買してはならないと言いわたされました。」


 さすが、魔王軍。

 細かいところまで行き届いたサポート体制。

 国の内部から、魔王軍と戦えなくする、その策略。

 まさに悪魔としか言いようがない。


 魔王軍に対抗しなければいけないという状況で、神聖属性の武器防具が売られなくなる。

 素人が一見して感じるのは、需要が増えたので、店頭から在庫が消えたという風にだろう。

 でも実際は、在庫ではなく販売権が消えていたのだと。

 なるほど、帝国もあっさりと敗れる訳だ。


「こう言う時のためにと、帝国の大金貨や白金貨があるが、それで売ってはもらえるのか?」


 皇帝陛下は、お金を出すと言われている。


「ワシは、帝国を取り返さねばならん。少なくとも、サッシー王国の王都へと同行することはできん。だからせめて、武器防具だけでも提供させてくれ。」

「もちろんです。帝国の商人が帝国のお金を拒否するはずもありません。そもそも、帝国の大金貨や白金貨を持っていると言うことは、帝国政府と直接の商いがあると言う証拠になります。持っているだけで、帝国商人としては、大いに箔がつきます。ただ、武器の方も額が大きいので。」

「どれ、では、このくらいでどうだ?」

「いやいや、このくらいで。」

「なんだと? この剣、埃をかぶっているではないか。手入れをしておらんな。この位がせいぜいだろ?」

「うっ。でしたら、このくらいで。」

「よし、買った。」

「うっ。やられた。」


 皇帝陛下は、神聖属性の武器防具を、買い占めて下さった。

 そして、それぞれに装備させる。


猿渡  研究者  レベル12

装備:ホーリーロット、ホーリーローブ、聖なる帽子


神佐味 祈祷師  レベル21

装備:ホーリーソード、聖なる小手、聖なる胸当て、聖なるはちまき


高野  僧兵   レベル17

装備:聖なる骨杖+12、聖なる服+3、聖なる帽子+7


洞川  スカウト レベル19

装備:聖なるナイフ、聖なる服、聖なる帽子、聖なる盾


重光  無職   レベル 5

装備:ホーリーロット、ホーリーローブ、ホーリーティアラ


張本  無職   レベル 5

装備:聖なる鉄杖、聖なる小手、聖なる胸当て、聖なるはちまき


豊   無職   レベル 5

装備:聖なる縦笛、聖なる服、聖なる帽子


 そして、不安になる。

 後衛職が多いことに。

 まあ、なんとかなるかな?

 これだけ装備が整えば。


 ただし、なんかの宗教組織にしか見えない。

 だって、みんな同じ白と青を基調としたおそろいの服になってしまったのだから。


 そして、必要な消耗品の類を調達し終えると、マインウルフたちとともに、南へと旅立っていった。

 ほんとうにこれで、よかったのだろうか。

それぞれのキャラクターにそれぞれの思惑があって、とっ散らかっている感があります。

小説ではなく、実際の現場ではよくあることですが、読み手側からするとわかりにくくて読みにくいのではないかと。

あと、キャラクターが多くなりすぎて、把握するのが難しいかと。

できるだけ、グループ化して、わかりやすくなるように努力します。

それでは、がんばれれば、また。

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