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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第9章 防衛戦勝利後の残念な事後処理
156/224

第116節 人間はこうもままならないもので

人を呪わば穴二つ。

まさしく、そんなお話です。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後49日目昼>

場所:ヨーコー嬢王国レーベン領ソーン砦

視点:野中のなか


 ソーン砦で朝から続いていた魔王軍との戦いは、なおも続いていた。

 大きなどんでん返しでもなければ、決して負け戦にはならない状況。

 そこまで戦いは進んでいたにもかかわらず。

 僕たちは明確な勝利を掴めずにいた。


「何度でも言おう。魔王軍の軍門に下ることはない。お帰りはあちらだ。」


 そう言って、悪魔フリドラを待っているフリドラの上司であるカリマサを指さした。

 レイン先生をはじめとした精霊軍団が、攻め込んできた魔族を全てBANした。

 マインウルフ軍団が、城壁まで攻め込んできた魔物たちを魔法で殺しまくった。

 いま、魔王軍で残っているのは、悪魔2体のみ。


 遠く、町のあたりにたたずむカリマサと、目の前のフリドラだけだった。

 悪魔カリマサは、グレイトフィールの廃墟に陣取っている。

 早く帰れ!

 心の底からそう思った。


「絶対に後悔することになる。後で、『フリドラ様、御御足おみあしをお舐めしますから、どうか仲間しにして下さい。』とか言っても殺すからな?」

「いや、ならんし。どの道殺されるなら、足を舐める分損だろ。」

「もったいない。む? むむ? 話が違う。」


 魔族を殲滅し終えた精霊軍団が、僕のところに帰って来た。

 僕の左肩に座る、身長40センチくらいのレイン。

 ラストとロッコ、そしてパンドラは、3人とも身長120センチくらいの痩せ型。

 この4人を見て、フリドラが絶句した。


「おぬし、そうか。大魔王様も間違うことがあるのだな。」


 何か、重大なあやまりを発見して、納得しているようすだった。


「マスター、この悪魔、何かいやらしいことを考えているのですよ?」

「あ、ああ。セクシーダイナマイト大魔王が、僕を勧誘してこいと言っていたらしい。中間管理職のフリドラは、上司のはちゃめちゃで困っているところだ。」

「大魔王様には、社長、貴様もロリコンだったと報告しておこう。」

「ちょ、な、なんでそうなる。違うぞ? ちゃんと大魔王の呪い、効いているからな? 巨乳を愛する勇者だからな? そこのところは誤解しないで欲しい。」

「そうか、ロリ巨乳が好きなのか。悪魔よりも業が深いな……。」


 フリドラは遠い目をしていた。

 いや、だから、ロリから離れてくれ。

 あれか?

 ロッコたちがちびっ子なのがいけないのか?


 こいつら、僕のハーレム要員だとか思っているんじゃないだろうな?

 ち、違うからな?


「マスターは、何でもいけるのですよ? 男だって大丈夫なのです! 悪魔フリドラ! フリドラも気をつけないと、マスターに『あ”ーーー!!!』っていわされるのですよ?」

「ま、マジか。これはいかん。かなり引くぞそれは、一旦引く!」


 悪魔は急いで町の方へと去って言った。


 これは……、これを勝利と言えるのだろうか。

 そうだとしても、むなしい勝利だ。

 ちなみに、レイン先生は、勝利のVサインを僕の頬に突き刺して遊んでいらっしゃる。

 地味に、イラつく。


 敵勢力の99%以上を狩り尽くした僕らの戦果を、少なくとも敗北とは言わないだろう。

 でも、相手の親玉が2体、無傷で残っている。

 明確に勝利したとも言いがたい。

 その上、その悪魔は、悪魔らしく囁いて来た。


 世界の半分をとかいう、どっかで聞いたような魔王軍への勧誘だったり。

 お前の仲間は、すでに魔王軍に買収されてるんだぞと言う、ブラフだったり。

 こちらの心を惑わす言葉を囁いてくる。

 違う違うと思いつつも、心のどこかには、そうなんじゃないかという疑惑の芽が生まれる。


 ちょっとでもそう思った時点で、ある意味悪魔の勝利だった。

 悪魔らしい勝利条件だった。

 そして、こちらは、ほとんど無傷にもかかわらず、ある意味敗北していた。

 拠点防衛的には負けではなかった。


 しかし、長い目で見て、味方同士での疑心暗鬼は、戦力の低下を招きかねない。

 1回なら、何とかなる。

 しかし、このハラスメントが何回も続いたら、どうだろうか。

 10回、20回と続くにつれて、本当にそうなんじゃないかと思い込む。


 結果として、お互いに信じられなくなった状況は悲惨だ。

 猜疑心の塊になると、最悪相互の殺人にまで発展するだろう。

 魔王軍なら、もしかすると町単位、国単位での人間による相互殺人を増やせるのではないか。

 直接手を下さなくていい分、コストカットにもなるし。


 昼前に、この悪魔2体は撤退していったものの、心にざわつきを残して去っていった。

 もう、そういうハラスメント攻撃は本当にやめて欲しいものだ。

 

 そうして、猿渡を買収疑惑で問い詰めようとした時、猿渡が南を指さして言ってきた。


「おい、野中。あいつら、マジか?」

「なんだ?」

「あれだよ! 王国軍だよ! 自爆行為だよ!」

「はぁ?」


 目を疑った。


 町に戻って2体だけになった悪魔に対して、町の西側1.5キロくらいで陣を張っていた王国軍が、どういうわけなのか攻撃に転じて進軍を開始していた。

 単純に考えれば、2体の悪魔対1200人規模の人間の王国軍。

 数字の上だけでは、圧勝だろう。

 3桁多いしな?


 でも、常識的な判断ができれば、悪魔に普通の人間がかなうはずがない。

 それは勇者だってそうだ。

 圧倒的戦力でもなければ、一方的な虐殺になるだけ。

 僕らは、特殊な能力を持った仲間たちがいたのでなんとか戦えただけだ。


 少なくとも、勇者の能力だけでガチで戦っても、勝てる相手じゃない。

 ライトエレメントの超長距離レーザー攻撃。

 シルバースライムたちの、銀の刃攻撃。

 そういったものがあって、初めて互角に戦えた。


 そして、フリドラには、死に汚い、というか実質死なない特技がある。

 HPが残り1割を切ると、攻撃力と防御力が10倍以上に跳ね上がるのだ。

 さらに悪いことには、フリドラの上司カリマサは、回復系悪魔。

 この間、ほぼ殺したはずのフリドラを復活させていた。


 本気で危険な相手だ。

 2人を相手にするなら、カリマサから討伐しなければ、戦闘は終わらない。

 でも、もちろん上司のカリマサの方が戦闘力は格段に上。

 ただの人間が、この相性の良すぎるコンビをどうやって追い詰められるのだろうか。


 それに、今まで王国軍を率いて来た指揮官の生き汚なさを考えれば。

 絶対に、こんなリスクの塊のような作戦行動はしないはずだ。

 何かがおかしい。

 何が起こっているのか気になる。


「ラスト、何が起きているのかわかるか?」

「わからないのですよ? でも、先頭のおじさんが、いつもと違う人なのです。」

「はぁ?」

「いつものあの、絶対に攻め込まない指揮官はどこ行った?」

「いないのですよ? 逃げたのかもです!」


 なにぶん1キロ以上南に離れた戦場のことだ。

 大人数の侵攻に、土埃が待って視界を遮る。

 詳細不明だが、おそらく、判断に狂いが出るような何かが起こっているのだろう。

 どうしたものか。


 正直、あの王国軍が全滅したところで、こちらとしては痛くも痒くもない。

 むしろ、猿渡たちを拘束して、変な魔法道具を使って来た敵だ。

 敵の敵も敵だが、一応相手は人間。

 助けてやるべきか、否か。


「どうする。目の前で殺されるのが分かっている王国軍を助けるか? あいつらは、お前らを拉致った奴らだが。」

「野中? 確認している段階で、助けない選択肢があるのか? 助けるつもりがないのなら、確認しないだろ? 僕はいいぞ、どのみち、人が死ねば死んだ分だけ魔王軍が強くなるんだろ?」

「そうなのです。できるだけ、人間を魔王軍に殺させてはいけないのです。魂を持っていかれてしまうのですよ。」


 なら、やるべきことは決まっている。

 さっさとあの悪魔2体に、ご退場いただこう。

 殺すもよし、転移魔法で逃げられるもよし。

 勝利条件は、悪魔2体がここからいなくなること。


 とにかく、攻め込んで圧力をかけて、おかえりいただこう。


「よし、行くぞ!」

「了解なのです!」

「僕たちだけでいってくる。猿渡のパーティーは、ここで防衛線を張っていてくれ。」

「いかなくていいのか? しかたがないな、わかったよ。」


 こうして、僕たちの対悪魔戦第2ラウンドが始まった。



「なぜ、こちらに攻めてくるのです? ここの王国軍はおかしいんじゃありませんか?」


 悪魔カリマサが、頭を抱えていた。


「あいつらバカなんじゃないか? 戦いをちゃんと見ていなかったんじゃないのか?」

「攻め込んでくるからには、勝機があるということでしょう。」


 悪魔二人は、もう、この人間たちの自爆的な行動が理解できなかった。


「そうなのです? レインには、全く勝機はないと思うのです。魔王軍の圧勝なのですよ? レインたちがいなければ。」


 そして、慌てて飛び退く2体の悪魔。


「あなたは!」

「また来たのです。水臭いのですよ? なんで逃げるのです? まだ、戦いは終わっていないのですよ?」

「いえいえ。フリドラだって、ここまで撤退して来たんですし、ここは穏便に見逃してはいただけないのですか?」


 なんと、敵のお偉いさんがレイン先生に、許し請うている。

 あの、人間に恐れられている、恐怖の代名詞「悪魔」が、である。


「見逃してもいいのです。でも、対価が必要なのです。」


 いや、見逃すんかい。

 ツッコミどころ満載だった。


「何がよろしいのですか?」

「魔王軍は、あんまりお金とかもっていないのです。だから、情報でいいのですよ?」

「わたくしに、魔王軍を売れというのですか? それは悪魔なので無理だとご存知でしょう?」

「そうだ。悪魔は、上下関係や契約を破ることができないからな。」

「いいのです。魔王軍を裏切る必要はないのです。問題はそこじゃないのですよ? マスターをたぶらかそうとする泥棒猫の情報が欲しいのです。レインに喧嘩を売ったこと、死んでも後悔させてやるのですよ。」


 ひぃぃっ。

 レイン先生が、ここ一番で怖い顔をなさっています。

 なんでやねん。

 対価にする情報、全然役に立ちそうにない。

 あと、それって、逆に魔王軍の最重要機密情報なんじゃ?


「それは……。大魔王様の情報こそ、無理です。」

「無理だ。無理。」

「ならです。あの、王国軍に仕掛けた罠と、猿渡たちにかけた罠を教えるのです。自分たちでやったことなのです。キリキリ吐くのですよ?」

「うっ。なぜそれを?」

「ぜんぜんばればれなのですよ? 裏工作とか暗殺とかは、気づかれないようにやるのがプロの仕事なのです。まだまだしろーとなのですよ?」

「なんてことでしょう。」

「カリマサ、それだけでいいなら話してしまおう。」

「ええ、そうですね。背に腹は変えられません。」


 レイン、恐ろしい子。

 恐怖の代名詞、悪魔を強請っていた。

 どんだけだよ?

 こんな怖い子初めて見たよ。


「まず、王国軍の指揮官は、部下を何人か操って暗殺しました。」

「なぜなのです?」

「あの指揮官、腰抜けだからだ。全然攻め込んでこない。」

「攻め込んでこないことには、魂の回収的に、時間がかかるので。」

「今から回収するのです?」

「いや、死にたくないから逃げるさ。」

「当たり前です。あなた方、本当に疫病『神』ですね。」


 いや、それほどでも。

 まあ、逃げてくれるなら、設定した勝利条件を満たせるからよしとしよう。


「あと、猿渡さんのことですが、実はあれ、私たちではありません。」

「そうだ。あれをやったのは、王国軍だな。俺たちじゃない。」

「何をされたのです? 首の爆弾なら、空間魔法で収納したのです。」

「いえ、それじゃありませんよ? あなたがいる以上、すぐに解除されるものを私たちが仕掛けるはずもありません。猿渡さんですか? 彼は、そうですね、私たちから見れば、人間に呪いをかけられた、というのが正しいのでしょうか?」

「よくわからないんだが、なんか、悪魔が憑いたというか、悪魔になったというか。」

「ちゃんと詳しく話すのです。」


 レイン、ちょっとオコだ。

 悪魔とか魔族とか、本当に嫌いなんだな。

 あと、猿渡、お前はとことん人間に酷い目に遭わさせられるのな?

 元の世界でもそうだったけど。


 そろそろ、人間不信になって、開いちゃいけない扉とか開いちゃうんじゃないか?

 悪に目覚めたとしても、なんの違和感もない状況なんだが。


「あの猿渡とかいうのには、社長についているお前のような『悪魔』のような何かが憑けられている。詳しくはわからん。ただ、お前らの情報は、その『悪魔』のような何かから、俺たちに筒抜けだったぞ?」


 あらいやだ。

 もう、そういうこと、早く言ってよね?

 猿渡としていたエロい話とか、全部聞かれていたってことじゃない。

 どうしよう。


 もう恥ずかしくて死にそう。


「社長は、そう、恥ずかしがらなくとも良い。それくらいの欲望がないと、逆に悪魔が心の隙間に入り込む。男はみんなエロい。これは、一生向き合っていくべき業なのだから。」

「悪魔に言われたくないわ! そんなこと言うなんて、お前は氷雪系の悪魔じゃなくて、エロ系の悪魔じゃないのか?」

「おれは、インキュバスじゃない。残念だったな。あとで紹介しようか?」

「いらんわっ! 帰れよ!!!」

「ああ、あと、これはサービスというかアドバイスなんだが。猿渡に憑いているの、『悪魔』そのものではないから注意しろ? もしかすると俺たちにとっても脅威になるかもしれない存在だったら嫌だからな?」

「王国軍は、なんでそんなすんごいの、持っているんだよ?」

「知らんわ。ちょうど攻め込んできたんだ。聞き出せばいい。」


 そう言うと2体の悪魔は、空間魔法で虚空に消え去った。

 同時に、王国軍が、廃墟の街になだれ込んでくる。


「今ここに、悪魔が2体いなかったか?」

「いたのですよ?」

「あいつらをどうした。隠していないで出せっ!!!」


 王国軍の先頭は、おそらく指揮官で、偉そうな若造だった。

 まあ、僕らよりは年上だけど。

 それでも周りが言うことを聞いていると言うことは、それなりの地位があるのだろう。


「悪魔2体なら、尻尾を巻いて逃げたのです。脅しておいたので、しばらくはこないのですよ?」

「お、脅しただと? 悪魔をか?」

「そうなのです。なんなら、あの悪魔は、一度殺しているのです。復活して帰って来たので、もう一度殺そうかって脅しておいたのです。怖がって逃げていったのですよ?」

「ま、まじかよ。おまえら、どんだけ強いんだよ?」

「何か言うことはないのです? レインは怒っているのですよ?」


 ああ、またはじまった。

 面倒なことになりそうだ。

 あと、この指揮官は、声からして女性のようだ。

 珍しい。


「は、はあ。こちらも、いきなり指揮官が毒を盛られて。」

「悪魔が部下を操ったと言っていたのです。」

「そうか。操られていただけなのか。」

「クーデターとかではないのです? 悪魔の言うことが100%ではないのですよ?」

「わからん。こんなことでもなければ、私が指揮官をすることなどないはずだったのだが。」


 頭を抱えている指揮官。

 そして、周りの様子を見るに、結構慕われている感じだった。

 あと、対応から、身分が結構高そうだった。

 面倒なことになりそうな予感しかしない。


「そんな王国軍の事情はどうでもいいのです。猿渡たちに、爆殺のチョーカーをつけたのは誰なのです? 今から処刑するのです。」

「なっ。処刑?」

「そうなのですよ? レインがいなかったら、今頃4人とも死んでいたのです。少なくとも、つけた人間には死んでもらうのですよ? 倍返ししない分だけありがたいと思うのです。」

「そ、そんな。」


 指揮官は泣きそうだった。

 というか、部下たちも、ざわついている。

 もしかするといい人なのかもしれない。

 でも、なんでそんな非道なことを。


「それは、おそらく、死んだ指揮官が。実行役は誰だ? 用意したのは?」


 部下に確認をとっていた。

 流石に部下をむざむざ殺されたくはないだろう。

 できれば、死んだ人のせいにしたいところだ。

 死人に口無しって言うし。


「そうか。すまない。」

「分かったのです?」

「あ、ああ。あの道具は、死んだ指揮官が、行商人からこの町で買ったものだ。初めて見る相手だったそうだが、まあ、ああいうアイテムで儲ける後ろめたい商売をする奴は、一箇所に長居できないものだからな。」

「そうなのです? 何を買ったと言っているのです?」

「『爆殺のチョーカー』と、『スピーカーおばさん憑き』という呪殺具。」


 ああ、その「スピーカーおばさん憑き」っていうのが、今、猿渡にかかっている呪いみたいなのね。

 なんてわかりやすい名前。

 ご近所のスピーカーおばさんを、魔道具にした感じなのね?

 なぜ呪殺具なのかは分からんが。


 社会的に殺されるってことか?


 そして、砦にいるはずの猿渡たちの声が、頭の中に聞こえて来た。


「で、あれか? お前は野中とどう言う関係なんだ? できているのか?」

「できている? どういうこと?」

「付き合っているのかと聞いているんだ。私はこれでも、そう言うのに寛容な方だからな。止めはせん。」

「いやいや、流石に男の人は。ちゃんと女の子に興味があるよ?」

「女の子、な? 幼女の間違いか?」

「ちがうよ! どうしてそうなるかね。ほら、身長にコンプレックスがあるから、僕よりも身長の低い女の子がいいなって。」

「それをロリコンと言うのではないだろうか。貴様は低身長だからな。」

「気にしているんだよ。ちょっとはオブラートに包んでよ。」

「そうかそうか。たしかにそれなら、野中はないな。大きすぎるからな。」

「ああ、それにあいつ男だし。親友だけど、男だし。」


 おい。

 これのことか?

 あいつらの砦でしているくだらない会話がダダ漏れだぞ?


「お前も苦労しているんだな?」

「同情されたくないわ!」


 王国軍の兵士たちが、同情する目でこちらを見てくる。

 やめてよ、本当に。


「で、あれだ猿渡。そのよくわからない呪殺具の方は、解除できないのか?」

「解除方法がまったく、わからない。教えて欲しいくらいだよ。」

「教えてあげないよ?」

「出てくるなよ! お前のこと話してるんだよ。」

「知ってるし。でも、ここ、居心地いいから出ていってあげなーい。」

「まじか、ちくしょう!」


 なんか、知らない女の声が混じっていた。

 こいつが、そのスピーカーおばさんなのか?

 声だけしか聞こえないけど、若いな。

 でも、猿渡が平然と罵倒していると言うことは、そこまで若くはないのだろう。


「で、こいつにはどんな効果があるんだ?」

「わからない。今のところ、何の効果もないからな。うざいだけなのかも。」

「じゃあ、慌てて解除しなくてもいいか。」

「そうだな。」


 いやいやいや。

 お前たちだけだよ!

 気がついていないのは。

 これは、ちょっとやっかいだな。


 どう説得しようか。


「猿渡さん、その子、いいなって思っているの? あの、猿渡さんのお気に入りのラストとか言う子によく似ているよね。」

「いやいや、だって、小さいだろ。レイン様と同じくらいの大きさしかないし。あと、僕の体に出たり入ったりするし。」

「いやらしい。」

「ちがうよ! そう言う意味じゃないよ?」

「そう言う意味? どう言う意味なの? もっと激しく出入りしたほうがいいの?」

「お前は黙ってろよ! いいか! 絶対に追い出すからな!」


 あー。

 なんだか、もう、どうしよう。

 これから毎日、猿渡と離れたら、こんなの聞かされ続けるのか。

 ラジオみたいで面白くはあるけど。


 でも、内容がなー。


「そうだぞ? あの猿渡は、悪だ。早く討伐したほうがいいぞ、マスター。ラストの貞操の危機だ!」


 そっちの心配かよ!

 まあ、その心配も的外れではないのだろうけど。


「レイン。早くなんとかしないと。」

「もう少し、このまま泳がせておきたいのです。土下座して、『レイン様、悪霊憑きをなんとかしてください!』ってお願いに来たら、やっつけてやるのです。」


 レイン先生は、相変わらずの腹黒さなのでした。 

レイン先生が日々腹黒くなっていくのをなんとかしたいところです。

自分のお腹まで黒くなってしまわないように気をつけます。

それでは、がんばれれば明日も。


訂正履歴

 ハーレム要因 → ハーレム要員

 勝利条件満たせる → 勝利条件を満たせる

  以上2件、ご指摘ありがとうございます。

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