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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第8章 オーバーランしても後退禁止ってなぜ?
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第104節 魔王軍の相手を引き受けるリスク

異世界召喚ものですから、召喚された勇者が、大魔王を討伐するのが最終目標となります。

当たり前すぎて、たまに忘れそうになるのですが、変化球な物語じゃない限りたいていはそうなります。

でも、勇者だけで、魔王軍の大軍勢を倒せるのかというと、ちょっと無理なんじゃないでしょうか。

多勢に無勢。

RPGみたいに、一度に相手にする魔物の数に制限があったりしないので。

なんなら、4人対10万とか、あり得るわけで。

必殺技で、全部一瞬で消し去るとか、まったく対応方法がないわけじゃないですけれども。

でも、そういうの、すぐに対策されちゃいますよね。

運営側に、チート対策とかゲームバランス対策として。

今回はそういうお話です。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後43日目午後>

 場所:サッシー王国レーベン辺境区フィール・ド・エッジ村

 視点:野中のなか


 国境の砦攻略が終わった。

 今回の救助できた成果は、女性一名。

 コソナ砦で、国境警備をしていた金ピカ鎧を纏う「隊長」と呼ばれていた人だ。

 国境警備隊だと言っていたのを記憶している。


 HPが危ないことになっているので、とりあえず回復薬を飲ませようとしたが止められた。


「マスター。かわいそうなのです。こっちを使うのですよ?」


 僕は普通の回復薬を使って、とりあえずHPを瀕死状態から脱しようと考えていた。

 これって、いわゆる普通の発想だった。

 男性目線の発想といってもいい。

 とにかく、今回の場合は、適切な選択ではなかったらしい。


 レインの取り出している回復薬は、ドライアド族のニースが作ってよこしたあれだ。

 限りなくエリクサーに近い、どろっとした液体状の何かだ。

 とりあえず、いろいろ常識を無視して回復する効果がある。

 それを売るなんてとんでもない的なものだ。


「まあ、確かにそっちの方が手っ取り早いが。」

「そうじゃないのですよ? 女の子なのです。こっちなら、お顔も綺麗に元通りなのですよ?」

「あ、あー。そういうこと。そうね、そういうことね。」

「気が回らないのです。女の子の顔の傷はダメなのですよ。消し飛ばすのです。」


 そう言うと、気絶している彼女に例の薬を飲ませていった。

 この薬の問題点は、すぐには全回復しないこと。

 当たり前といえば当たり前なのだが、それでも30分もすれば、HP以外は全回復する。

 HPも最大値の半分までは遅延回復する。


 あ、ただし、途中で別の回復呪文とか回復薬を使うと、遅延効果はキャンセルされるので注意が必要だった。

 じわりじわりと回復する代わりに、傷が塞がって消えたり、毒とか精神的な不安定さとかも消えていく。

 そんな危険な香りのする、優秀な魔法薬だった。

 ちなみに、王都とかで売ろうとすると、この手の薬は暴動の原因になるらしい。


 なので、正しい売り方としては、オークション方式がいいと言うのが聞き齧った噂だ。

 逆にいえば、サッシー王国の王都には、オークション会場があるいうこと。

 あと、その会場に入ることさえできれば、レアアイテムを入手できるということ。

 そういうことを知ることができていた。


「うぅっ。ぬ? こ、ここは、ここはどこだ?」

「すまない。魔王軍はグレイダガー砦とか言っていたが、地元の人間がなんと言っていたのかはわからない。フィール・ド・エッジ村の北にある、帝国との国境にある砦だ。」

「魔王軍は? 魔王軍はどうした?」

「やっつけてやったのですよ? 尻尾を巻いて逃げていきやがったのです!」


 レインが自慢げにドヤ顔でサムズアップしていた。

 まあ、レインの活躍で撤退したようなものだし、うざいけど生暖かい目で見守ることにした。

 金ピカ隊長は、その話を聞いて目をカッと開いて驚いていた。


「なんだと? 悪魔が2、3体はいただろう? 魔族だって数えられないくらいいたんだ? どうやって撃退したんだ? お、お前らも魔族が擬態した偽者なんだろ!!!」


 そう言って、床から飛び起きようと身じろぎしたが、例の薬は遅延効果なので、まだ全然回復していない。

 そのまま寝ていることしかできていなかった。


「偽者は、倒したのですよ? レインが全部魔法で消し飛ばしたのです。コソナ砦の時と同じ魔法なのです。」

「そ、そうか。すまない。あまりの体験に、取り乱してしまっていた。私は、そうか、助かった、助かってしまったんだな?」

「どう受け取るのかは、自由なのです。でも、急いでするべきことがいろいろとあるのですよ? レイン達は、情報が欲しいのです。ここで、何があったのか、魔王軍は、どうしてここに攻め込んできたのか、そういう情報が欲しいのです。」

「わかった。だが、もう少し回復してからでいいか? ちょっとまだ辛い。」

「よいのですよ? エリクサー的なものを使ったのです。1時間もしないうちに、心も体もほとんど回復するはずなのです。」

「ありがたい。」


 金ピカ隊長の面倒は、ロッコに任せた。

 膝枕とかするという役割で。


 最初は、高位の回復魔法が使えるホーリーエレメントのモンドにお願いしようとした。

 やはり、レインに止められる。


「モンドは、誇り高きホーリーエレメントなのです。傷を負った人間を任せると、遅延回復効果を無視して、回復魔法を使ってしまうのです。傷が残ってしまうのですよ?」


 と、小声でささやいてきた。

 あ、そういうことねと。

 できる者独特の問題点だった。

 目の前で助けられる人間がいるのなら、助けないという選択ができない。


 しばらく安静にしていれば回復しますよ。

 そういう対応に我慢ができないタイプと言われれば、確かにそうだった。

 普段なら、有り余る能力を遺憾無く発揮していただいてなんの問題もない。

 今回は、女性の顔や体についた傷跡問題があるので、譲るわけにはいかないようだ。


 例によって、このひそひそ話は、モンドに筒抜けなのだが、まあ、聞かれないように言っていることを察して、聞こえてないふりをしてくれていた。

 心の広いことで。

 後で突っ込まれたのだが、小声で話したにもかかわらず、聞こえていなかったのは、金ピカ隊長だけだったと言うなんとも残念な話だった。

 なんてことだ、内緒話もできないのか、このパーティーは。


「まず、何から始めるのです?」

「とりあえず、金ピカ隊長を回復させているので、次は、この砦の検索かな。もしかしたら、かくれている敵や人間がいるかもしれないしな。」

「じゃあ、マインウルフにお任せなのです。」

「ユリ、呼んできて?」

「ばふぅ。」


 微妙な吠え声で返事をしたハイドウルフのユリ。

 最近の活躍により、レベルだけなら20代後半と、抜きん出ている。

 レインが言うには30くらいまで上がれば、クラスアップできるかもしれないとのこと。

 もう少し、レベル上げを頑張ろう。


 あ、でもおそらくは、ハイドウルフから、ハイドエルフになるのだろうけど。


 ばう!! ばう!

 わん!! ワン!


「その、なんだ。金ピカ隊長というのは、やめてもらえないだろうか?」


 マインウルフが次第に集まってきた中で、言いづらそうに金ピカ隊長が話しかけてきた。


「あ、ああ。すまないな。じゃあ、隊長で。」

「いや、そうじゃない。私にもとラーマスティーヌ言う名前があってな。隊の皆は『ラーマ』と呼んでくれていたのだ。それでお願いしたいのだが。ダメだろうか?」

「ラーマ隊長か、ちょっとな。」

「ラーマ隊長? なのです?」

「いや、『ラーマ』で。『ラーマ』でお願いしたい。」

「いや、やはりだめだ。いろいろあって、それはダメだ。じゃなければ、『マスティー』と呼ばせてもらいたい。」

「マスター、呼び名がかぶっている上に、女の子にはちょっとかわいそうな名前なのです。」


 確かに。

 かぶったか。


「じゃあ、スティーヌで。これなら文句ないだろ?」

「わ、分かった。それでいい。もう、それでいい。」


 金ピカ隊長は、結構不本意そうだった。

 集まってきたマインウルフ集団が、金ピカ隊長の匂いを嗅ぎまくる。

 ちなみに25匹もいるのだから、ちょっとしたパワハラだ。


「あ、おーよしよしよし。かわいいなもう。よしよしよし。」


 何も知らないということは幸せだった。

 相手が何も知らないことをいいことに、金ピカ隊長の顔を舐めまくるマインウルフ達。

 犬特権を行使しまくっている。

 ちくしょう、羨ましすぎる。


「ああ、聞いていたのもいるかもしれないが、国境警備隊の隊長のスティーヌだ。」


 そう名前を紹介すると、マインウルフ達は皆、固まった。

 まじですか?

 そう言う顔をして、こちらを凝視する25匹。

 何か変なことを言ったか、僕は?


「捨て犬なんて酷いこと言わないであげて欲しいです。」


 耐えきれなくなった1匹が、マインエルフに変身して、抗議してきた。

 意味がわからない。


「いや、捨て犬なんて言っていないんだが。」

「この人、隊長から捨て犬にされたんですよね? かわいそうな隊員さんなんですよね?」

「なぜ? この人が隊長なんだが?」

「え、でも……。」


 むう。

 何がいけなかったのか。


「スティーヌが隊長なんだが。」

「だから、そんなに本人の前で捨て犬、捨て犬って言わないであげてください!」

「いや、言ってないし。」


 ぷぷぷぷっ。

 うふふふふふっ。


 我慢できなくなった、金ピカ隊長が、笑い出した。


「ステイヌっていうのが私の新しい呼び名なんだよな? マスター?」

「ち、ちげーし。スティーヌってちゃんと言ったし。」

「そうかそうか。ステイヌか。私も落ちたものだな。」

「だから、そうじゃなくてだな。」

「ああ、もう、だからもうよせ。かわいいなもう。よしよしよし。」


 金ピカ隊長に群がって顔とか色々なところを舐めまくって、誤魔化しに入るマインウルフ達。

 まあ、大きい括りで犬だから、敏感に反応したんだろうな、捨て犬という単語に。

 あと、おまえら、どさくさに紛れてかなりエロいところまで舐めまくっているがダメだろ?

 金ピカ隊長が何も知らないからといって、やっていいことと悪いこととがな?


「わかった、スティー隊長。これでどうだ? もう、言葉遊びはさせない。」

「ああ。それでいい。だが、なぜラーマはだめなんだ?」


 マインウルフ軍団に舐められまくりながら、そう問いただしてきた。

 大変答えにくいので、オブラートに包んで説明した。


「ああ、僕らの国では、そもそも男性名なんだよ。伝説上の理想の君主の名前でもあるんだけれど、高名な食べ物の名前でもあるんだ。流石に、食べ物の名前をつけられてはだめだろ? 呼ぶ方が精神衛生上よろしくない。呼ぶのには、抵抗がある。」

「そ、そうか。私の愛称は、お前達の国では食べ物の名前なのか。ちなみにどんな食べ物だ?」

「言えない。それは、いろいろあるので言えない。」


 男性名とか、理想の君主とかそっちに食いつかんかい!!!

 なぜ、面倒な方に食いつくし?


「そんなケチなことを言わなくてもいいだろ? あとで作って食べさせろとか言わないから。」

「わかった。あとでな。あとでこっそり教える。」

「それでいい。」


 レインが、手鏡を空間魔法で取り出した。


「見るのです。悪魔の傷が癒えたのです。完璧なのですよ?」


 スティー隊長が、鏡を覗く。


「おい、こんな高価な物、お前達はなんで持っているんだ?」

「高価なのか? 鏡が?」

「そうだ。それに魔術用具だからな。付加魔法がかかっていれば、なお高価だ。」

「レイン。なんか付加魔法がかけられるらしいんだが?」

「何を言っているのです? ただの手鏡なのです。お顔を見るだけなのですよ?」

「そ、そうか。確かに、傷ひとつないな。というより、前にあった傷まで消えているんだが。」


 スティー隊長は、顔を見て、ボサボサの髪の毛を見て、そして、胸元を見て、それをみんなに凝視されているのに気づいて、真っ赤になって抗議してきた。


「いや、マスターとやら。あの、だな。流石にこの格好は、恥ずかしいのだが。何か羽織るものをもらえないだろうか?」

「あ、ああ。気が回らなくてすまなかった。とりあえず、金の兜なら、回収しておいたぞ?」

「いや、私の視線を遮っても意味はないだろう。お前のエロい視線が気になると言っているんだ。なんならしばらくお前がこれをかぶっていろ。」

「でも、見えるんでしょう? 一応、穴、空いていますし。」

「だから、気を使って見るなと言っているんだ。どんだけ私のこと好きなんだよ?」


 自意識過剰にも程がある。

 もっとも、視線を外せないのにも訳があるのだが。

 大魔王の呪い「カース」のせいだ。

 あの「80センチ」とかいう、ふざけた呪いのせいだ。


 ああ、ということは、彼女の胸は80オーバーだということになる。

 感心している場合ではないのだが、気になって仕方がない。

 呪いのせいなのか、性癖のせいなのか。

 失礼になるとは分かっているので、とりあえずの応急措置として、金の兜をかぶってライナーをおろした。


 視界がかなり狭い。

 その狭い視界で、ガン見してしまっているので、かえって逆効果だった。

 それしかみえないのだから。


 視界にラストが入り、スティー隊長に毛皮をかけた。

 毛皮しか見えなくなった。

 残念な感じだった。

 逆にエロくなってしまったのは、気のせいということにしておきたい。


「ああ、そうだ。マインウルフ達を呼んだのは他でもない。」


 そう話しかけると、マインウルフ達はこちらを見て、犬的に笑っていた。

 最近、その表情、よくわかるようになってきた。

 あれだろ、金の兜、似合わねー、とか思っているんだろ。

 僕だってそう思うし。


「この砦に、魔族とか、人間とか、残っていないか確認して欲しいんだ。」

「かくにんしましたー。どっちもいませんー。」


 というような返事を、マインエルフに変身したマインウルフの1匹が言い放った。

 いじわるな小学生かよ!

 また、この犬っころたちは、僕のことを笑っていた。

 もう、いやだ、このやりとり。


「あと、地下にたくさんの書類がころがってました。地図とかも。魔王軍の資料かもしれないので、すぐに確認してください。」


 そして、切り替えの早いマインエルフだった。

 いきなり、真顔になると、そんなことを言ってきたのだ。

 今後の侵攻経路を知ることができるかもしれない。

 それに、帝国内の状況も確認できるかも。


「悪魔とか、魔族の文字は、難しいのですよ?」

「そうなのか?」

「ああ、それなら俺が読めるぜ?」


 ダークエレメントのクロウが言い出した。


「いや、ほんとか? ダークエレメント的に活躍の機会がなかったから、無理やりぶっ込んできていないか?」

「そう言うなよ。気にしてんだよ、ちょっとは。少しくらい活躍させろよ。この戦いで、ぜんぜん役に立ってなかっただろ?」

「ま、まあな。」

「認めんなよ!」


 どっちなんだよもう。

 モンドといいクロウといいめんどくさい感じの性格だった。


「一緒にしないでいただきたい。」

「心が読めるのは知っているから、モンドさん、せめて突っ込むのはやめて。」


 自分の行動が、そのままめんどくさい感じになっていることに気づいて欲しいものだ。

 と、このモノローグもバレているんだった。

 気をつけなければ。


「分かっていて、思っているんじゃないんですか? 社長?」


 モンドさんは、ちょっとお怒りだった。

 美人なので、そんな表情も可愛いのは罪だと思う。


「ま、まあ、いいです。いいんですけどね。」


 わかりやすかった。


「だから、そういうところですよ。それ、そういうところ!!!」


 周りの人たちは、何が起こっているのかわからない様子だったが、まあ、だいたい察してくれている。



 と言うわけで、マインウルフに先導されて、地下室へと向かった。

 灯りのない暗い部屋だったのだが、モンドが部屋中央に立つだけで、十分明るかった。

 そして、中央に置かれた広いテーブルの上に、大きな地図やら、メモやらがあった。


「この地図は、ウーバン山脈周辺のものよ?」


 いきなり目の前に湧いて出てきた山神様やまのかみさまがそう言ってきた。


「びっくりしましたよ。いつのまに。」

「あなたのことは、いつでも見ているの。わたし山神、今、あなたの目の前にいるの。」

「いや、そういう怖いネタ、地下室とかで無理ですから。今日、夜、寝られなくなっちゃいますから。」

「添い寝する?」

「そういう流れなんですか、今日は?」


 僕と机の間にきれいに収まった状態で出現した山神様やまのかみさま

 ロッコとラストが引き剥がしにかかる。


「ん! 添い寝は、私たちのしごと。」

「山神は、自分の仕事をするんだ。私の大事な仕事を奪おうとするんじゃない!!!」


 そうなんだ。

 あの、夜くっついてくるのは、彼女らなりの仕事だったのか。

 なんか、エネルギー補充してますって言っていたのに。


「えっとね。ノナカ。ここが今いる、ドエッジ砦。そして、東側が、ウーバン村。西側のここが、ナース伯爵領。帝国との大きな街道があって、すごく大きな町があるの。北には、帝国のヴァイスフロスト城とその城下町があるの。西側は、その大きな街道があるあたりまでが、ウーバン山脈の範囲になるわ。ちゃんと覚えておいて?」

「なぜ?」

「範囲外には、わたし行けない。」


 節目がちな表情を「作って」、そう言ってきた。

 まあ、そういう性質の精霊というか神というか。

 そういうものだからとしか言いようがないけれども。


「流石に、大街道があるのなら、サッシー王国も、北のウーオ帝国もがっちり守りを固めているんだろ?」

「落ちちゃったの。」

「へ?」

「魔王軍の攻撃で落ちちゃったの。国境も、町も。」


 いやいやいや。

 どんだけ魔王軍、同時攻撃しているんだよ。


「魔王軍は、たくさんの配下がいるから、ウーバン山脈を占領しようとして、東西に薄く長い攻撃網を作って、南下してきたの。ノナカたちのいるところは返り討ちにできたけど、魔族に対抗する手段なんて、普通の人間にはないから。ほとんど全滅。ノナカ……。」


 上目遣いでこちらを見る山神様やまのかみさま

 それが目的か。

 こんなタイミングよく、ここに来られたのは。

 山神様やまのかみさまの掌の上で踊らせせられている感じだった。


「おい、社長。山神様やまのかみさまのいうことは、本当だぜ? こっちの資料に書いてある。『南南戦区の戦果について』とか『南南戦区の戦闘予定について』とか。さらに南下するらしいぞ。最終目標として、王都を落とすとか書いてある。」


 ダークエレメントのクロウが、魔王軍の資料を読み漁っていた。

 現状で、この魔族文字が読めるのは彼しかいなかったから。


「ノナカ? こっちの文書。これ、いけないわ。」

「いや、読めないのだが。あと、山神様やまのかみさま読めるのですね?」

「そうなの。クロウ、読んであげて。」

「お、おう。なになに『人間を魔族に変える種族変更の実験』か。これは、学術論文だな。種族変更とは恐れ入った。これがうまくいったら、大変だぞ?」


 ちょっと引いた。

 レインがいきなり怒り出す。


「そ、それは許されないのです!!! 魂の管理権を生きたまま簒奪する方法を、開発したということなのです。もし実用化されると、人間は殺されるんじゃなくて、魔族に直接変化させられるのです。まずい、まずいのですよ?」


 そして、目に見えて慌てていた。


「マスター。その実験、今すぐ止めに行きたいのです。クロウは早く解読するのです。戦闘中に、人間たちがその魔法をかけられて魔族に寝返ってしまったら、安心して戦えないのです。知っている人をBANするのは、もう嫌なのですよ!」


 言われてみれば、確かに切羽詰まるような魔法だった。

 もう、レインのBAN魔法が、チートと呼べなくなるような、チート魔法だった。

 開発は是非阻止したいところだ。

 でも、それって、魔王軍の本拠地に乗り込むってことじゃ。


「実験は、ウーオ帝国内で実際に行われているらしいぜ? 今まで消してきた大量の魔族も、もしかしたら、元々はウーオ帝国の臣民だったのかもな?」


 クロウの話に、閉口する一同。


 この情報から、すぐに話し合いが行われて、今後の方針が大きく変化するのでした。

PVが7万を突破しました。

ブックマークとか評価ポイントを下さった方もありがとうございます。

これを励みにして、今後もがんばります。


本文の話です。

今日は、戦いのお話ではなくて、バックヤード的なお話でした。

魔王軍は、どんな感じに動いているのか。

何を考えているのか。

どうしたいのか。

直接は触れませんでしたが、そういうお話にしたつもりです。

それでは、そういうお話になっていませんよ? というつっこみに耐えきれなくなっていなければ、明日も12時から13時くらいに。

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