第102節 ゴブリンスライサー
レーベン辺境区で最初に魔王軍に侵攻された村を救いに行くお話です。
最初に侵攻された村に最後に行くのはどうかとも思いますが、地理的に仕方のないことなので。
今回は、地味に戦闘回です。
でも、それほど激しいアクションの描画はないです。
なぜなら、地味な戦いだから。
それでは、どうぞ。
<異世界召喚後42日目夜>
場所:サッシー王国レーベン辺境区フィール・ド・エッジ村
視点:野中
眼下に広がるフィール・ド・エッジの村は、古典的ながらも大要塞と化していた。
見渡す限り、木組みの防柵が置いてある。
ところどころ、矢盾まである。
完全に、攻撃に備えるつもり満々であった。
この村を今、守っているのは魔王軍。
しかし、どう見ても今回は悪魔も魔族もいない。
なんと魔物のみだ。
楽勝か、とも思ったが、僕たちとしては初見の相手となる、ゴブリンだ。
しかし、そうなってくると、レインのチート魔法「BAN」が使えない。
魔物のみなら、知能的な部分で有利かとも思ったが、ゴブリンでそこを埋めてこられた。
ゴブリンシリーズ、総出撃っぽかった。
敵も考えたのだろう、レインの「BAN」対策を。
こちらとしては、高台から十分に偵察できるので、調べるだけ調べてから乗り込める。
かなり有利だとはいえ、それを補ってあまりあるほど相手はすごい数だ。
今までで一番多く、ぱっと見だけでも1000以上。
建物とか森の中に隠れているのも計算に入れれば、2000に届くかもしれない。
「ゴブリンか。」
「プレーンゴブリンが9割、フォレストゴブリンが残りの1割なのです。」
「違いがわからん。」
「プレーンゴブリンは、木の棒とか棍棒が大好きなのです。大雑把な性質なので、繊細なことはできないのですよ? 対してフォレストゴブリンは、弓を使えるのです。精密射撃でうさぎとかを狩って食べるのです。人間も、普通に狩って食べるのですよ?」
「マジか!!!」
「食物連鎖なのですよ? 人間が頂点じゃないのです。」
いやいやいや。
ゴブリンの方が食物連鎖で捕食者側なのかよ!
おそろしいな、異世界。
「身長が1メートルあるかないかのちびっ子の方が、フォレストゴブリンなのです。視界にはほとんど入らないのですが、木の上とかから、弓矢で狙ってくるいやらしい相手なのです。身長が100センチから150センチくらいのがプレーンゴブリンなのです。」
「もちろん、他にもいるのだろう?」
「見えている範囲にはいないのですよ? でもです。この規模のゴブリン集団がいるのなら、必ず上位種がいるはずなのです。こんなに集まることはないのですよ?」
「ちなみに、どんなのがいるんだ?」
「魔法を使ってくるゴブリンマギ、落とし穴とか、防柵を作るゴブリンビーとかが、いるはずなのです。あと、頭のいいゴブリンブレーンとか、ゴブリンサージェント、ボスとして、ゴブリンジェネラルがいるはずなのです。」
ゴブリン、種類多すぎ。
理解が追いつかない。
とにかく、いろいろ役割分担をして、強さに違いのあるゴブリンがそれぞれ配置されていると。
じゃあ、もう、単純に、人間の城に攻め込むのと同じなんじゃないのか?
あ、まあ、人間なら、攻撃してきても、食べられることはないんだがな。
「ちなみに、これは重要なことなんだが、ゴブリンっていうのは、やっぱり魔物なのか? 魔王軍にいるくらいだし。」
「当たり前なのです。大魔王の支配する魂を持っているのです! 容赦無く魂を回収するのですよ?」
「そ、そうだよな。あれは、異種族って訳じゃないんだよな?」
「見た目だけじゃ、分かりにくいのです。でも、魔王軍の魔族や悪魔が、魂を簒奪しようとしないところに注目すればわかりやすいのです。」
ああ、そういうことか。
それは、わかりやすい。
彼らからすれば、女神の管理する魂を簒奪したいわけだから、普通なら襲いかかってくる。
でも、自分と同じように、大魔王の管理する魂を簒奪するわけにはいかない。
「でだ、レイン。現有戦力で、あの村を開放するのには、どう考えてもすんごい時間がかかると思うのだが。」
「そうなのです。でも、例えばなのですよ? ファイアーエレメント5体があそこで暴れれば、1時間経たずに殲滅できるのですよ?」
「どうする? 戦力を変更するか? こっちにはキース君もいることだし。もう、一度来てしまえば道案内は必要ないしな。」
キース君が寄ってきて抗議してきた。
「そんなさみしいこと言わないでください。僕だって魔法使いの端くれなんです。何かあった時は、父とともに、魔物を燃やしてきたんですから。」
「火炎系魔法使いなのか?」
「そういう家系なんです。一族みんな、ファイアーボール! って言いながら生まれてくるって言われています。」
「いや、さすがにそれはウソだろ?」
「そう、思っていたこともありました。ええ。」
「マジなのか? いきなり言葉を喋る子どもって。」
「一族に、炎魔術師転生の呪いがかけられていて、死んでも死んでも、この一族に生まれ変わるらしいんです。僕も、小さい頃から大魔法が使えましたし、火炎魔法限定ですが。」
「おい、レイン。キース君、もしかすると戦力になるんじゃないのか?」
「嘘なのですよ? キースくんが火炎系魔法使いなのは本当なのです。でも、それは、オルローに教わってから身についたもので、いまだ初級魔法使いなのです。そんな変な呪いとかないのですよ? 厨二病も大概にして欲しいのです。」
「おいおい。やっぱりグレイトソーン出身だけのことはあるんだな?」
キースくんは、明後日の方を向いて、できもしない口笛を吹いていた。
空気の通る音しかしないけどね。
改めて、今のパーティーを確認した。
まず、僕、そして、鎖帷子に擬態しているシルバースライムのカタリナ。
レインとロッコとラストの精霊三人衆。
ハイドウルフのユリとマインウルフが15匹。
そのうち4匹はマインエルフにクラスアップしている。
エレメント族は、ホーリーエレメントのモンドとダークエレメントのクロウがいる。
グレイトソーンの村長の息子であるキースくんもいる。
彼は、初級魔法使いで火炎系の魔法が使えるらしい。
普通に考えれば、人数が少なすぎるので、戦うべきじゃない。
総勢24人? だ。
対する相手は1000体から2000体。
戦力が二桁違うよ。
でも、エレメント族の2人には、今回の戦いでダメージを受けそうな要素がほとんどない。
だから、全滅だけはあり得ないのだが、そう言う問題でもない。
もしやるにしても、作戦が必要だった。
そして、その場における小一時間の作戦会議の結果。
なんと、攻め込むことになった。
理由は簡単。
マインウルフ達が、圧勝すると豪語したからだ。
遠吠えをして村から仲間を呼び寄せ、25匹になっていた。
走ってくるの早いな、おい。
ちなみに、作戦は教えてもらっていない。
言ってもわかりにくいからと、拒否された。
ただ、簡単にいえば、正攻法だと。
どういうことだ? まあ、お手並み拝見といったところか。
弓を持ったマインエルフ8人と、マインウルフ17匹、そしてハイドウルフのユリ。
その一団が、闇夜に紛れて出発した。
ユリが殿だ。
マインウルフ以外は、ユリよりも前に出ないように言われた。
どうやら、ユリが指揮官で、いろいろな指示を出しているらしい。
らしいと言うのは、ウルフ語的な何かで指示を出しているから、こちらには一切理解できないからだ。
そして、最初の5分が経過した。
ユリの傍には、フォレストゴブリンが20体ほど、積み上げられていた。
作戦は簡単だった。
まず、ユリが殿として一番後ろから、後方の安全を確保する。
もっとも、ユリと一緒に、このパーティーの一団がいるのだから、まあ、安心だ。
マインウルフ達は、闇夜に乗じて、音も立てずに忍び寄り、一体、また一体と暗殺して回っていたのだった。
モンドは、光すぎるので、高台の上で待機してもらっていた。
戦力としては圧倒的なのだが、如何せん、居場所がバレてしまう。
高台の上にいる分には、焚き火か何かと誤認してもらえるだろう。
希望的観測で。
本人はだいぶいじけていたけど。
積み上がっていくゴブリン達を、生死の確認も兼ねて、レインが空間魔法で収納していく。
開始30分が経過して、討伐したゴブリンの数は150体になっていた。
なお、いまのところ、僕たちの攻撃はバレていないとのこと。
マインウルフ達は、かなりいい仕事をしている。
人間も食べてしまえるようなマインウルフなのだから、それよりも小さなゴブリンからすれば、天敵以外の何者でもないのかもしれない。
近くのゴブリンを討伐し終えると、ちょっとだけユリが前進する。
そこに、落とし穴とか、防柵とかがあったりするけれど、逆に利用させてもらう。
落とし穴は、穴を開けて、防柵は向きを逆にするだけだが。
攻撃開始から、2時間が経過して、討伐したゴブリンが700体を超えたところで、ユリが休憩を指示したらしい。
25匹が揃っていびきや歯軋りをしながら寝始めた。
だいぶ疲れたであろうマインウルフ達に、とりあえず、食料と水を与えようとしたが拒否された。
活動前には、飲み食いは自殺行為なんだそうだ。
胃捻転で死んでしまうと。
マジか。
相手を2000と想定すれば、やっと三分の一を討伐し終えたところだ。
しかも、徐々に村に近づいているので、この周囲にはゴブリンがいないにしても、そのうち討伐されまくったことに気がつかれることは間違い無いだろう。
それがいつなのかはわからないが、できるだけ先延ばしできるように工夫して戦っているようだ。
ちょうど日付が変わるころに、マインウルフ達はもそもそと起き始めた。
どんだけすごい体内時計なんだよと突っ込んだが、そもそも休憩で寝ていないと言い張っていた。
あんだけ歯軋りして、いびきをかいておきながら、ぬけぬけと言い切っていた。
まあ、寝ていないんだろうな、マインウルフ達の中では。
そして、再び、すんごい勢いでユリの傍に、ゴブリンが積み上げられていく。
また、2時間で、休憩に入った。
2時間での討伐数はゴブリン500体。
少なくなってきたのは、村に接近したためだ。
村に接近すればするほど、バレずに討伐するのは困難になる。
村から、ちょっと森の中に入ったら、即マインウルフの餌食なのだが。
ここからは、作戦が変わるようだ。
村の中に入り込む作戦に。
逆にいえば、村の防柵の外側にいたゴブリン達は、全滅したと言うことになる。
マインウルフの鼻からは、どんな生き物も逃れられない。
彼らの鼻計算では、残り500〜700だと。
どんだけたくさん、村に残っているんだよと。
できれは、これをさらに半分以下にしてから攻め込みたかったと言うのだが。
どんだけ気づかれずに攻撃する気なのか。
でも、そんなステルス攻撃も、もう終わりだった。
なぜなら、森から村までの間には、篝火が焚いてあるので、物見櫓で警戒しているゴブリンに見つかってしまうからだ。
でも、マインウルフ達は、まだまだ暗殺しまくる気のようだ。
どんだけリスクを回避したいんだよと思って気がついた。
マインウルフ達、そもそも元はただの村人だし。
一方的に攻撃できるなら、それに越したことはないわけで。
それゆえに、ユリの策士ぶりがさらに発揮された。
今いる森から一番手前の篝火を倒したのだ。
しばらくは燃えているものの、すぐに消えた。
一つなら、周囲に敵影もないので風か何かで倒れたのかな、と思わせることができる。
でも、やっぱり心配になってゴブリンが確認に来る。
確認にきたゴブリンは、暗がりに入ったところで、マインウルフの餌食となる。
帰ってこないので、さらにゴブリンがきて、マインウルフの餌食となる。
しばらくすると、ゴブリンが来なくなった。
そこで、ダークエレメントのクロウが、さらに内側の篝火を倒してくる。
もちろん、誰も闇夜でクロウを視認できない。
同じように、ゴブリンがきて、マインウルフにやられる、を繰り返した。
地道に1時間ほどやっていたら、村の南西がわ4分の1の篝火を消すことができた。
すでに、物見櫓からすれば異常事態だったのだが、向かわせたはずのゴブリン達は、帰ってこない。
じわりじわりと暗がりが増えていく。
徐々にいなくなっていく仲間達。
何が起こっているのかわからないが、何かが起こっていると言う恐怖。
でも、物見櫓から、逃げることはできない。
南西の物見櫓の足元は、真っ暗になっていた。
物見櫓の上には、4つの篝火がある。
同時に全てを消すことはできない。
なら、逆に燃やしてしまえばいい。
なにしろ、木でできているのだから。
マインエルフが物見櫓の直近から、4つの篝火を弓矢で狙い打った。
そして、すぐさま退避する。
篝火の燃料となる火のついた薪が飛び跳ね、地面へと落下した。
全ての篝火を落とすことができたわけじゃ無いので、物見櫓の上は、まだ明るい。
ところが、それだけでは済まなかった。
物見櫓の下も、明るくなったのだ。
落下した火のついた薪が、物見櫓自体を燃やし始めたからだ。
すぐに物見櫓のゴブリンは気がついたが、物見櫓の下を守っているはずのゴブリンがいない。
そして、火が回り始めてしまい、ゴブリンは物見櫓からはしごで降りることもできなかった。
でも、そのままそこにいても、もちろん危険なことに変わりはない。
自分の仕事を放棄して、物見櫓から無理矢理降りた。
燃えたまま、倒壊していく物見櫓。
物見櫓から降りたゴブリンは、その下敷きにならないように、明るい方に逃げようとした。
でも、そこまでの間には、暗がりを通らねばならない。
そして、そのゴブリンも、暗がりにてマインウルフの餌食となってしまった。
物見櫓の一つが炎上して倒壊したことで、流石に攻め込まれていることにゴブリン達も気がついたのだが、もう、手遅れだった。
まだ、村の4分の3は無事なのだが、パニックになってしまえばそれも意味をなさない。
ハイドウルフのユリと、ダークエレメントのクロウが、その性質を生かして、どんどん村の中の篝火を消していく。
ハイドウルフとしては、目がそんなにいいわけじゃない。
鼻で匂いを嗅げれば十分なのだから、篝火が消えた方が有利になる。
物見櫓の一つが倒壊して5分後には、村の中で無事に残っている篝火は、残り二つの物見櫓の上だけとなっていた。
暗くなってしまえばマインウルフの独壇場だった。
30分しないうちに、村の中で生きているフォレストゴブリンとプレーンゴブリンはいなくなっていた。
「社長、ボス戦です。もう、全員出撃していいですぜ?」
マインエルフの姿で僕たちにそう伝えてきた、元ウーバン村民。
「分かった。で、相手は?」
「ゴブリンジェネラルと、魔法を使うゴブリンです。あと、1匹だけ、回復魔法を使うのと、回復魔法以外で、死体を動かす魔法使いがいますぜ?」
「それは、ゴブリンマギと、ゴブリンプリーストなのです。ゴブリンプリーストは、回復魔法を使う系統のと、死霊魔法を使う系統に分かれるのですよ? あと、ゴブリンジェネラルの手下の、ゴブリンサージェントも残っているはずなのです。全部強敵なのですよ?」
「やるか。」
「爆破するのです。ゴブリンは、魔法抵抗も、物理抵抗も弱々なのです。属性抵抗もないのですよ? 爆破するのに最適なのです。」
そう言うと、精霊3人衆は、ユニットになって飛び出していった。
すぐに、爆発音が聞こえ始める。
あれだ、村人とかいたらどうするんだよ、ほんとに。
「で、ここにいたはずの村人達はどうなんだ?」
「ほぼ全滅です、社長。やはり魂を持っていかれたものと。」
「そうか。森とかに避難していたりはしないのか?」
「これだけ大規模に、ゴブリンが展開していた森に、隠れおおせることができるとはとても。」
「だな。」
レインの爆破と、ウルフ達の物理攻撃によって、残りはゴブリンジェネラル1体だけにまで減らすことができた。
問題はそこからだった。
「社長。村以外からも、魔物と、あと魔族の匂いがしていますぜ? この村の中だと思っていたんですが、お外だったようで。国境の方ですぜ?」
「社長。おれもおれも。あと、同じ方向から、人間の匂いもする。何人かの人間のにおい。血の匂い。やられている感じだ。助けに行かないと。」
マインエルフ達が、自慢の鼻で判別することには、村人が瀕死ではあっても生き残っている可能性があるようだ。
ただ、魔族や魔物を相手にしているらしい。
罠の可能性が高い。
なぜなら、この期に及んでなぜ、殺されていないのか、と言う疑問があるからだ。
でも、とにかく今は、目の前のボスをなんとかしよう。
レインが何度か爆破しようとしたものの、ゴブリンなのに爆破抵抗が結構あるようで、爆砕されない。
ウルフ達が物理攻撃、魔法攻撃両方で攻撃するも、なかなかHPを削れていない。
エレメント族の攻撃もあまり効果はなかった。
有効打を欠いた状態で、とりあえず、ラストが攻撃を受け流すのに専念していた。
「ちょっと待つのです。このゴブリンジェネラル、強すぎるのです。おかしいのですよ? ちょっと覗いてみるのです。」
そういうと、レインは両手の親指と人差し指で長方形を作ると、魔法使って、そこからゴブリンジェネラルを覗いた。
レインには、今、ゴブリンジェネラルの詳細なステータスが見えているはずだ。
「すごいのですよ? 好物は、鳥の唐揚げとか出てるのです。どこかで、鳥の唐揚げを食べさせられているのです。日本人が関わっているはずなのですよ?」
「いや、そういうのいらんから。弱点を教えてくれ。」
「こいつは、『ゴブリン・オブ・ゴブリン』なのです。いわゆるマザーゴブリンなのですよ?」
「メスなのか?」
「そこじゃねーんですよ!!! マザゴブは、やばいのです。防御特化の面倒なやつなのです。あと、ゴブリンをすんごい勢いで増やすのです。危険なのですよ。特に人間の男子にとっては。」
ちょ、ちょっと待て。
悪い予感しかしないんだが。
いまのところ、レインのいう略称マザゴブとやらの前にいる人間男子はぼくだけじゃん。
なんで危険なんだろうね。
ぼく、わかんないとか、かまととぶって言ったりしないけど。
もし予想通りなら、僕は、ここにいちゃだめだろ。
「レイン。村人救出の方に行こうか。このままじゃダメだ。主に僕の貞操が。」
「確かにそうなのですよ。でも、無理なのですよ。もう、ロックオンされているのです。」
言われてマザゴブを見る。
明らかに目があった。
どうしよう、もう。
身の毛がよだつとは、このことだろうか。
「おい、レイン。なんとか攻撃しないと。」
「無理なのです。攻撃がほとんど効かないのです。」
「まずいまずいまずいまずい!!!」
僕に向かって突進してくるマザゴブ。
身長250センチはある巨漢の雌ゴブリンだった。
比較的巨乳だった。
肌は、ゴブリンらしく緑色だけどな。
「ノナカ、しっかりしろ! それでも男か?」
バシンッ!!!
いきなり局部を叩かれた。
気合を入れられたという、穏当な表現の方がいいだろうか。
カタリナが、はっぱをかけてきたのだ。
「殺るぞ、兄弟!!!」
「マジか? マジなのか?」
「突っ込め!!!」
僕の手には、カタリナが。
動かれると思っていなかったのか、間合いが取れなかったのか。
マザゴブのグーパンチは、僕の後ろの建物にヒットしていた。
一歩前に出て横凪にしたカタリナの刃は、マザゴブの左足を太ももからあっさりと切断していた。
勝負あった。
返す刀で、背後から、心臓を突き刺した。
断末魔の叫び声を上げることもなく、マザゴブは大地に倒れ、そして、レインに収納された。
切断された足だけ。
すぐさま、カタリナで解体して、収納する。
これをもって、この村のゴブリンは全て討伐できたことになる。
もう、朝日が登り始めていた。
爆睡したい。
この村は、なぜか無事な家が多かったので、少しだけ交代で休憩させてもらうことにした。
さすがに皆、しんどい状態だったのだから。
そして、この休憩が、生死を分けることとなったのだった。
激しく動く、バトルものも好きですが、今回のように、いつ殺されたのかわからなくなるような、暗殺系の話も大好物です。
厨二病の人達にとっては、こっちのがいいんじゃないでしょうか。
絶対という価値観はありませんが、いかに姑息に攻め込むかを日々考えている自分が怖いです。
闇の中で、息の根を止める。
かっこいいじゃないですか、厨二病的には。
ああ、もう、恥ずかしいな。
それでは、恥ずかしすぎる文章に自爆していなければ、明日も12時から13時くらいに。