第100節 裏村長オルロー
裏メニューとか、裏技とか。
裏なんとかって、興味をそそりますよね。
明らかに動かしているのは別の人っていうの、現実でも結構ありますし。
今日はそんなお話です。
それでは、どうぞ。
<異世界召喚後40日目朝>
場所:サッシー王国レーベン辺境区グレイトアロー村
視点:野中
テーブルの向かい側には、髪の毛の寂しい40代くらいの中年男性と、その隣にオルローが座っていた。
そのかなり後ろ、交渉の邪魔にならないところから、オルローと一緒にパーティーを組んでいた戦士のサチーヒとウミーヒが、ソワソワとこちらの様子を伺っている。
彼らにとって、幼馴染であり、ある意味自分の女であるところのオルローが、他の男に取られかねない危機的状況、という認識なのだろう。
心中は察するが、こちらがどうこうできる状況でもないので放置することとした。
テーブルの手前側には、僕を中心に左にロッコ、右にラストそして、左肩にレインという布陣。
やっと山のてっぺんから朝日が差し込んできた9時過ぎ。
グレイトアローの村の中心に生き残っていたテーブルと椅子を並べた。
村人達が見守る中、今後の村の行く末を決める、この会議は始まった。
「お願いします!」
いきなり、オルローが椅子から立ち上がると、頭を下げて手を出してきた。
握手して欲しいということなのだろうか。
とりあえず、挨拶なのだろうからと手を出そうとする。
あわてて、両脇のロッコとラストがはがいじめにしてくる。
「お断りするのですよ!」
レインが高らかに宣言した。
いや、まだ何も始まっていないから。
「マスター? 安易に手を出してはいけないのです。これは、これは策略なのです! 罠なのですよ? 手を出したが最後、オルローに責任を取らさせられるのです!」
「いや、何を言っているのかサッパリ分からないのだが。なぜ、会議最初の挨拶で、握手してはいけないのか詳しく。」
「これは、挨拶ではないのです。村人達の圧力をバックにして、その圧力を狡猾に利用した、姑息な愛の告白なのです! 実質的に嫁にもらって下さいと言われていたのですよ?」
「いやいやいやいや、そんな訳ないでしょう。まさか、そんなわけ……。」
ここで、そんな訳あったことに気付かされる。
村人達は、両手の平を上にあげて、やれやれのジェスチャーをしていた。
オルローはギャン泣きしていたし、村長は真っ青になっていた。
「社長殿。うちの娘の何が気に入らないのですか? 答え次第では村全員が敵に回りますぞ?」
真顔でそんなことを言ってくるあたり、冗談でもないらしい。
困ったことに巻き込まれたようだ。
騙し打ちお見合いじゃねーんだよ!
絶対に違うよな? な?
「そもそも、この村のこれからについて話し合おうとしている場面で、なぜ、嫁にもらって下さいという話が出てくるのか訳がわからない件について説明を求めます。」
「ま、マスター。それはちょっと酷いのですよ? オルローの心のHPが0になってしまうのです。もう少し容赦してあげて欲しいのですよ?」
事情のわかっていないのは、僕だけのようだった。
オルローの後ろで、サチーヒとウミーヒが喜んで小躍りしているのは、ちょっとムカつくが。
「ごほん。僭越ながら。今回、村をあなた方に救っていただきました。もちろん、あなた方が冒険者で、この件に関して報酬を支払わなければならないことを、我々は理解しています。ですが、見ていただいている通り、この村には支払えるようなものは何一つございません。そこで、うちの娘1人で、なんとか手を打っていただけないかと。これでも、村一番の器量良しだと、親バカ抜きで思っておりますが。」
視界の隅でサチーヒとウミーヒが、うんうんと腕組みをしながら頷いていた。
気になる。
村長より、こっちのが気になるよ。
村長には、恥ずかしい説明をさせてしまっていた。
つまり、魔物の討伐報酬がオルローだというのだ。
それは、さすがにいただけない。
村の子ども達と、あとサチーヒとウミーヒに恨まれるだろう。
僕は、それには耐えられない。
この村には、オルローが必要だ。
それが明白なのになぜ。
「オルロー。君のことがダメだと言っている訳じゃない。他の女をよこせとか、この女じゃダメだとかそういうことじゃない。報酬は、そういう形でもらいたくないと。そう言っているんだ。それに、もう、報酬としてもらいたいものはあらかじめ決まっているからな。」
「な、なんと。わ、わしはだめだぞ? 妻も子も愛人もいるからな?」
ダメな村長だった。
娘がダメなら父親を求めると、そう考える斜め上の発想に、頭痛がした。
なぜ、そこを求められると思うのか。
もしかすると、この世界では、これが標準なのか?
心配だ。
この世界の行く末がとても心配だ。
「この村が欲しい。だめか?」
「は?」
周りで聞いていた村民一同が、固まってしまっていた。
何を言われているのか、理解が追いついていない様子だった。
「もう一度言おう。この村が欲しい。なにも村長をやらせろというんじゃない。」
「男同士はちょっと。わしには妻がおると言っただろ?」
しなを作ってモジモジするな中年男子!
なぜ、顔を赤らめる?
「そういう意味じゃない。僕をこの村の村長に就任させろと言っている訳じゃない、という意味だ!」
ダメだこいつら。
すぐに男女の関係の話に持っていこうとする。
それがダメなら男色関係の話に持っていこうとする。
さらにダメな人たちだった。
「僕たちは、ウーバン村周辺を占領して、ヨーコー嬢王国を建国した。ところが、周辺から魔王軍に攻め込まれる日々が続いている。そこで、攻め込んできた魔王軍を反対に殲滅することと、魔王軍から取り返した町や村を嬢王国に組み込む活動をしているんだ。だから、報酬として、この村を我が国の1村として、加えさせてもらいたい。ちなみに、グレイトソーンの村は、我が国の村となった。」
捲し立てた。
村長はポカーンとしていた。
娘の方もびっくりしていたが、立ち直りは若い分早かった。
心や思考の柔軟性が父親よりも高かったのだろう。
「悪い話ではないと思います。お父様、いかがいたしましょうか。」
「オルローの代わりに、村そのものを差し出せとな。それで、この村の処遇は? 植民地なのか? 全員奴隷か? 結局オルローはお前の妻か?」
「いやいや、なぜそうなったし? いたって普通の村のままだが。そもそも植民地にできるほど、スタッフがいない。村としては今まで通り生活してもらって構わない。むしろ、サッシー王国よりは、税金が安くて、軍事力が高い分、生活しやすくなるとは思うのだが。ただ……。」
言葉に詰まった。
大事なことを忘れていたからだ。
「モンド、ここに来てくれ。」
「どうしました?」
白い光の集まりでできた全裸の美女、ホーリーエレメントのモンドが僕の隣に立った。
「サッシー王国との大きな違いは、人間至上主義じゃないことだ。例えば、このエレメント族のモンドにも、国民としての権利が与えられている。アホかと思われるかもしれないが、なんなら、後ろに控えているマインウルフ達にも、国民としての権利が与えられている。そういう、異種族が無理というのであれば、早めに拒否した方がいいだろう。」
そう言うと、村人達はキョトンとしていた。
「人間至上主義なのは、王都の方の都会だけですよ? あれは、国の都合でそう言っているだけで、こんな田舎にまで浸透してはいないんですよ? なんなら、レーベン領は国境を接しているので、普通に帝国から異種族の者が商売とかで入ってきますし。」
オルローが反論してきた。
自分たちまで人間至上主義者だと、思わないで欲しいと。
「宗教か? 女神教が人間至上主義なのか?」
「いえ、女神教自体は、全ての生きとし生けるものの繁栄を至上とする宗教ですので、むしろ、他種族を排除することには否定的ですらあります。ただし大魔王以下悪魔や魔族、魔獣は除くとも言っていますが。」
「じゃあ、どうしてこの国は?」
「もともと、この国が、異種族の国だったからです。それを人間族が占領して、異種族を追い出した歴史があります。もちろん、それには異国から来た王家が関わっているのですが。つまり、王国として異種族を排除しているのです。」
お、おう。
あまり、関わり合いになりたくないような面倒な話が絡んできそうだった。
でも、異種族を認める僕たちの国が大きくなったら、サッシー王国と揉めそうだ。
早いうちにこの話を聞けてよかった。
簒奪された国だったのなら、逆に奪い返すのも悪くないしな。
「そうなのか? 異種族として長生きしてきたモンドは知っているのか?」
「ほんの50年くらい前の話です。つい最近の話ですよ? それにエレメント族は排除しようとしても無理ですから。大抵の人間の攻撃は効きませんし、反撃したらすぐに死んでしまいますし。」
「あ、う。そうだな。そうだよな。サッシー王国は、なんでまたそんな自爆行為を。」
「わたしは人間族ではないのでそう言うことには疎いのですが、あれですね、ガルダ族が人間族に言われた言葉として、人間族以外は紛い物だというのがあるのだそうです。選民思想というか、なんというか。神はそんなこと望んでいませんのに。」
モンドは、ホーリーエレメントだから、女神やら神やらといろいろあるのだろう。
少なくともモンドの言い分では、この世界の神は、それを望んでいないようだ。
大丈夫なのか? サッシー王国。
「それでどうなんだ? 我が国に入るのか、それとも他の報酬を用意できるのか? 人間はいらんぞ?」
「人間しか残っていません。お父様、よろしいんじゃないですか?」
「そうだな。よし。グレイトアローも貴国の支配下に入ろう。細かい部分を詰めても?」
「わかった。手続きやらなんやらは、精霊達に任せてある。レイン。」
「お任せなのです。絶対にマスターは渡さないのですよ!」
「ん。死守する。」
「ま、マスターは、私のものだ。誰にも渡さないからな。」
と言って、グレイトアローの面々を牽制する精霊3人組。
村人達からは、生暖かい目で見られてしまっている。
恥ずかしいのでそういう勘違いはやめて欲しい。
僕の顔、今真っ赤だよ、きっと。
「その交渉は、村の話が終わってから、詳しく。」
オルローもやる気だった。
なんだか、村の話そっちのけで始まりそうで怖い。
あと、その話があるうちは、話がこじれそうな予感しかしない。
真面目にやって欲しいものだよ。
「グッジョブ。」
「いやぁ、安心した。見直したよ。」
サチーヒとウミーヒが、僕に握手を求めてきた。
訳がわからない。
あ、あれか。
オルロー争奪戦に参加しなかった件か。
「で、オルローは、どっちの女なんだ? 横取りするとか、そういう趣味はないんでね。」
「でも、おまえさぁ、ネトラレ山超えてきたから、てっきり。」
「この村の伝承では、ネトラレ山を冬に超えてきた男は、村の女をすべて寝とっていくという、空恐ろしい話が伝わっていてですね。しかも過去に数度、それは実際にあった話だというのです。なんなら、僕たちこの村の住人のほぼ全員が、ネトラレて生まれてきた子供の子孫だと。」
恐ろしい山だなおい。
絶対にこの村には住みたくないな。
どんなジンクスだよこんちくしょう!
あと、人妻を寝とったりしないし。
「それよりちょっといいか? そもそも、なんで子供だけ、あんなところに集まっていたんだ? 魔王軍から避難していたのか?」
「そんなことはないんだ。偶然なんだよ。オルローが突然、子供を全員連れて、ピクニックに行こうって言い出して。ボクたちは、オルローには逆らえないからね。惚れた弱みってやつかな。だから、滝までピクニックに行ったんだよ。」
「それ、オルローは知っていたんじゃないか? 魔王軍が攻めてくることを。」
というか、怪しすぎるだろ。
絶対に、避難してただろそれ。
「でも、よく帰ってきて全滅しなかったな?」
「ああ、帰ろうとしたら、オルローが滝の上で村の方を見て、村が爆破されているのを見つけたんだ。これはしばらく帰れないぞと。だから、滝の裏でしばらく暮らしていたんだ。最後の方は、食べ物に困ったけどね。」
「ウシロヤの滝には、魔物は来なかったのか?」
「来たさ。もちろん。でも、オルローと僕たちで退治したんだ。むしろ、食料を運んできてくれてありがとうって感じだった。」
同じ感覚の人間だった。
魔物を見て、それを食べ物と感じる、そういう種類の人間だった。
ああ、だから、魔物の肉でも子供達は普通に食べていたんだ。
慣れていたのな?
「結構強いのか?」
「お前達ほどじゃない。でも、この村は、オルローの魔法と僕ら2人の剣で守ってきたんだ。ああ、サーバは大盾での防御専門だけど、それはそれで活躍するんだよ?」
つまり、その4人が、この村での唯一の戦力だった訳だ。
知らされていないとはいえ、将来のために、戦力として温存されたんだろうな。
戦える人間が生きていれば、村は生き延びられると。
「あと、他の村人に心当たりは? 全員逃げきれなかったということもないだろ?」
「そうだな。温泉にいるかも。見てこようか。この村からちょっと歩くけど、西側の山中に洞窟温泉があるんだ。そこに隠れているかもしれないね。」
「温泉か。いいな。」
「あ、ごめん。言い忘れていたけど、沸騰しているから、入ったら死ぬよ? 逆にだからこそ、温泉のそばにいれば安全なんだけどね。」
サチーヒの話から、さらに村人がいるかもしれないとわかった。
なら、行ってみようと。
精霊3人衆と村長とオルローは、話し合いの最中だった。
話し合いの言葉の端々に、マスターとか、ノナカさんとか、なぜか僕を指す言葉が混入しているのがとても気になる。
話が脱線しまくっているご様子。
「それならば、娘を連れて行ってはいただけないでしょうか?」
「だから何度も言っているのです。オルローはいらないのです! 押し付けるなし! なのです!」
「わ、私だって戦力になるから。次はもう一つ北の村に行くというのなら、私の道案内が必要なはず。」
「いらないのですよ! けっ、けっ、なのです! マスターには近寄らないで欲しいのです。寝とるつもりなら受けて立つのですよ!」
「は、はぁ? 何言ってるのこの精霊! 寝とるってあなたじゃ、そもそも寝取られることすらできないでしょ? 私なら、ノナカを骨抜きにできるから。もう、私なしじゃダメにできるから。」
「そ、そういうところがあぶないのです! マスターを自分の思い通りにしたいとか、そう言う性癖を押し付けないで欲しいのです! 大変な変態なのですよ!」
「ち、ちがうし。そういう変態じゃないし。」
すでに、村の話はなされていなかった。
細かい話はすでに終わっていると期待したい。
「おい、自称お前らの女、ボクのことを骨抜きにするつもりらしいぞ。オルローがいないとダメにされちゃうみたいだぞ。お前らみたいに。」
「ちょ、待てよ。俺たちは骨抜きにもされていないし、オルローがいないとダメにもされていないし。だが、あの女は魔性だ。ノナカにはまだ早い。」
「ああは言っているが、俺に惚れているからな。照れ隠しみたいなものさ。」
サチーヒは、あまり自信がないのだろう、あと、完全に骨抜きにされていた。
ウミーヒは、自信過剰だった。
二人とも、なんだかんだ言って寝取られやすそうな性格だった。
「ちょっといいか? 村長、他の住人が、洞窟の温泉に避難しているんじゃないかってサチーヒ達が言うんだが? どうなんだ?」
「わしらがいたのもそこだ。行ってみるか?」
この混乱した話し合いから逃げ出したい気持ちが、村長のことばからも漏れていた。
「そうだな。ちなみに、なぜ、温泉の近くに村を作らなかったんだ? 名物になるだろ?」
「そうしたいものなのだが、街道がここを通っているからな。街道を逸れると、人が寄らなくなる。お金を稼ごうとすると、どうしてもな?」
「街道を変更するとか無理なのか? 遠回りになるのか?」
「そうだ。ただ、遠回りだが、坂が緩やかになる分、あっちの方が楽に登れるんだがな。」
「ほほう。」
話相手の村長の後ろで、ラストの目が光っていたのを見逃さなかった。
「村を移動しよう。おそらく、温泉のそばに村を作った方が、今後は儲かるはずだ。」
「どういうことだ?」
「この村も、異種族の国に入ったということだ。いろいろな移動手段の種族がいるからな。人間と違って街道とか関係なく、温泉の湯気が上空からの目印になる、そういう種族もいるだろ。ガルダ族とかな。」
「ほう。そうだな。そうか。よし、そうしよう。」
いまだ姦しく言い争っている精霊3人衆とオルローをなんとか説き伏せて、新しいグレイトアロー村となる温泉に向かった。
30分ほどで、目的地に到着した。
周辺が湯気だらけで視界がとても悪い。
温泉の匂いと言われている、硫化水素の匂いがしない。
逆に心配になる。
一番問題なのは、この辺りの地面がそもそも暖かいので、冬なのに寒くない。
そのため、この辺りには雪が積もっていない。
「うむ。いいじゃないか。こういうのでいいんだよ、こういうので。」
ラストが地面を触って、なにやら納得していた。
こっちも悪い予感しかしない。
山肌から、ところどころお湯が流れている。
というよりも、山肌に、横穴が開きまくっている。
もしかして、住めるんじゃ?
とか思っていたら、避難していたらしい住民達が、横穴から顔を出してきた。
なるほど。
あたたかいし、天井もあるし、避難場所というか生活するにはいいところらしい。
それに源泉が熱すぎるので、魔物対策にもなるようだし。
「みんな、集まってくれ。ちょっと伝えたいことがある。」
オルロー父である村長が、穴から首を出して様子を見ていた村人達に呼びかけた。
しばらくすると、40人ぐらいが穴から出てきた。
これで、村人は総勢120人くらいになった。
「村を魔物から救ってもらった。村に帰れるんだが、そもそもの提案として、この温泉地を我が村として立て直そうと思う。どうだろうか。」
「いやいや、そしたら、流通に絡めなくなる。旅人が一泊するだけでも、だいぶ違うんだぞ?」
村人達は反論した。
彼らにとっては、これが常識なのだろう。
「わかっている。だから、根本を変えてみた。我が村は今日、村を守れなかったサッシー王国から離脱して、あたらしいヨーコー嬢王国に加入する。これからは、異種族でも差別なしだ。」
「そうか。商売の幅が広がるな。でも、大丈夫なのか。」
「守ってはくれなくても、攻め込んではくるだろ?」
「すでに、グレイトソーンの村も、ヨーコー嬢王国に加入している。この村は、国境じゃない。」
「すごいな。じゃあ、ここに家を建てるのか。温泉宿とか儲かりそうだな。」
「村長始まったな。」
「いやいや、きっとオルローの入れ知恵だよ。」
「そうかそうか。でも、なら安心だろ。」
この村では、村長よりもオルローの方が信頼されているのがよくわかった。
あと、村の政策で、何か変化をつけるのは、どうやら彼女の役目だったようだ。
もう、オルローが村長でいいんじゃないだろうか。
やっぱり、若い女は舐められるとかそういう理由なんだろうか。
「ちょっと待って欲しい。ここに村を再建するのはいい。だが、指定する土地を空けておいて欲しい。この新しい村の一番中央だ。」
いきなりラストがぶっ込んできた。
「ラストさん。あの話ですか? 坂道がキツくて無理だとか言っていましたよね?」
「ここなら大丈夫だ。隣のグレイトソーンまで、線路を引く。だから駅を作れ、マスター。」
「いけるのか? 結構な距離になるんじゃないのか? あと雪。雪積もるだろ。」
「積もってないじゃないか。この温泉を有効活用すればいい。なに、難しくない。」
そう言うと、精霊3人衆とマインウルフ達は、示し合わせていたのだろう、森をグレイトソーンに向けて、切り開き始めた。
なお、この時に切り取られた木の一部は、村再建のための建材として流用されることとなった。
「じゃあ、これはグレイトソーンで聞いて、ダメだったんですが。この村の人ならばと。現在、ラストが作っているのは、鉄でできた馬車のようなものとそれ専用の馬車道です。結構スピードも出ますし、たくさんの荷物や人を運べます。このあたらしい馬車の御者と、料金を回収する人、そして、馬車の駅を管理する人を雇いたいのだが。村長、この村でそういう人材は出せそうか?」
「ラストさんから聞いています。グレイトソーンは保守的ですから、無理だったのでしょう。この村からなら、いくらでも出しますよ。たしか、トロッコ、とか言うのを運転するのは、脚力のある男がいいと言っていましたな。ちょうど冬で仕事がないので、男衆が代わり番で。」
「通年で活動するので、できれば専任者が欲しいんだが。」
「話し合って、決めます。どのみち、多いことはあってもいないと言うことにはなりませんよ?」
頼もしい限りだった。
グレイトアロー駅をラストの指定した、温泉地の中央やや西に設定した。
Lv 1の貨物駅。
その立派な建物に、村長達は息を呑んだ。
「お、おい。これできるんなら、村人全員分の家、作ってくれよ!」
早速ウミーヒが飛びついてきた。
普通に考えればそうなるよな。
僕だって同じ立場ならそう言う。
「資材とか、MPとかの関係で、無理。これ、資材は必要だし、莫大なMP使うから。あと、この駅の建物な? 我が国のものだから。国の出張所みたいなものだから。あと、今日から、マインウルフが駐留するから。」
「そ、そうか。」
「そうだ。」
「だから、頑張って、自分たちの家とか、温泉宿とか建設するの頑張ってくれ。こっちは、ものを移動させるのには協力できそうだし。あと、ラストが木を切っているから、建材として分けてもらうといい。」
「わ、わかったよ。洞窟もあるから、家は急ぎで必要ないしな。」
「分かればいい。あと、こういうの他人に頼ると、癖になってダメ人間になりやすいからな。」
「わかってるよ。そんなことしたら、オルローを落とせなくなるだろ?」
基本、ウミーヒの価値基準はオルローだった。
彼女に認められるかどうかが、その基準になっていた。
今は、とてもありがたい。
でも、将来的にはどうなんだろうな。
とりあえず、今日のところは、復興を手伝うことに専念した。
主に、魔物肉の炊き出し要因として。
おお、勇者よ! 温泉があるのに活用できていないとはなさけない。
今日はそういうお話でした。
でも、日本にもたくさんの温泉がありますが、今現在としては、ほんとにそんな状況です。
コロナは本当に恐ろしい病気ですからね。
でも、全員が感染対策をしっかりしていれば、本来感染しないんですよ?
逆説的にはどんなにがっちり感染対策をしても、感染対策をしていない人が1000人に1人いれば、十分他の人に感染させられるだけの感染力があるのが問題なだけで。
ほとんどの病院の医師が感染しないのもそのためですし、逆に感染して病院や施設がクラスターとなるのも同じ理由ですし。
今の日本では、全員に感染対策を求めるのはできますが、やってくれない人が必ず一定数いますので。
ウイルスの性質的には、ちょっと無理なのかなって。
日本の法律と、日本人の知能の限界という弱点を突かれているなって感じます。
明日は、何もなければ12時から13時くらいに投稿予定です。
13時投稿で予約しておきます。
政府の強い要請で、お昼の休憩時間が大幅に遅くなってしまいましたので。