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女神様! 御自分で御与えになられた恩寵なのですから、嘲笑するのをやめては頂けませんか?  作者: 日雇い魔法事務局
第8章 オーバーランしても後退禁止ってなぜ?
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第95節 女神教の総本山

現実で女神様を崇める宗教って、あんまりないんですよね。

あっても良さそうなものですが。

日本の神道は、神様がいっぱいいるのでたくさんの女神様が登場しますが。

でも、個別に崇めているかどうかと言われると、厳密にはそうしているのですが、感覚としてはどうなのでしょう。

「神社」に「お参り」に行くのであって、「御神体」とか、「御祭神」とか、あまり気にしている人は少ないのではないでしょうか。


今回は、その女神様にまつわるお話です。ちょっとだけ。

それでは、どうぞ。

<異世界召喚後38日目夕方>

 場所:サッシー王国レーベン辺境区女神教総本山前

 視点:野中のなか


 魔王軍がウーバン村を西から襲ってきた原因は、山を超えて西にあるレーベン辺境区が魔王軍に占領されていたことだった。

 だいぶショックなのだが、とにかく、邪魔なのでレーベン辺境区にいる魔王軍を追い出そうと言う作戦に出ていた。

 作戦は順調に進んで、あとはボスの悪魔2体になったところで、それに気がついた。


 ボスと戦っていた人間は、地元民じゃなくて、クラスメイト達だったと。

 なんなら、親友の猿渡だったと。


「よ、よう。生きていたのか?」


 猿渡からすれば、死地へ飛ばされた僕が生きていることがやや信じられないようだった。


「お前こそ、というか、お前らなぜここに?」


 でも逆に、王城にいるはずの勇者様がなぜ、こんな辺境の地に? という疑問はある。


「それはこっちのセリフだ。」

「こいつらのせいでな。」


 元凶たる悪魔2体を親指で指さす。


「そうか、なら、殺ってしまってもいいんだよな?」


 どう言う根拠があって、その自信が生まれるのか分からないが、ちょっと待って欲しい。


「いや、だめだ。この吹雪の悪魔フリドラとやらは、HPが残り1割を切ると、残りHPに反比例して攻撃力と守備力が倍増する。いきなり10倍からだ。」


 そこで阿部さんの動きがぴたりと止まった。

 目が点になる、阿部さん。

 とりあえず、ダメージを与えるのはやめたらしい。

 だって、無駄だし。


「どうやって一回殺したんだよ。」

「いや、殺されいないぞ。そこ、重要だ。」


 フリドラは、抗議した。

 そこんとこ、プライドが許さないらしい。

 瀕死だったくせに。


「僕の特殊武器でな、HPをじわりじわりと削ったんだよ。そしたら、後もう少しで死ぬところだったのを、転移魔法で逃げられた。」


 フリドラは、盛んに死んでないアピールをしていた。

 確かにこの短時間で回復しているのは正直すごい。

 どんだけすごい回復術師がいるんだよ。


「リベンジだ。今度こそ殺ってやる。倍返しだ!!!」

「いやいや、無理だと思うよ?」


 とりあえず、挑発しておいた。

 吹雪の悪魔の割には、結構暑くなりやすいタイプのようだ。

 看板に偽り有りだ。


「フリドラ。今はまだ、リベンジの時ではありません。一旦引きますよ。」

「カリマサ。怖気付いたのか?」

「引き際を間違えるのは、3流以下ですよ? 1流の悪魔を目指すのなら今は引くべきです。」

「でもよう! こんなの、我慢できるかよ!」

「お気持ちはわかります。ですが、その気持ちはあなたを殺しかねません。」

「やれるものならやってみろってんだ!」


 この時、いきなりダークエレメントのクロウが、僕の腕を引っ張る。

 阿部さん達も、アイスエレメントたちに抱き抱えられて、戦場を離脱させられる。

 猿渡は、ユリに防寒着の首根っこを咥えられて、フリドラからかなりの距離を取らさせられた。


 どうした?

 なんだと言うんだ?


 次の瞬間。

 フリドラの右の胸から、こちらに向かって血が吹き出してきた。

 何かに撃ち抜かれた。

 そういう出血だった。


 そして、一拍空けて、左の胸からも血が吹き出した。

 銃声も何もしていない。

 でも、銃で打たれたような感じだった。


 雪の平原を真っ赤にしていきなり倒れたフリドラ。

 何が起こったのか分からなかった。

 いや、エレメント族とユリには分かっていた。

 ということは。


 そう、エレメント族の攻撃だった。

 これは以前見たことのある、ライトエレメントのエナジナーによる長距離レーザー魔法攻撃。

 周囲の遮蔽物の状況から、これはネトラレ山山頂付近からの攻撃だろう。

 よく見えるよな?


 ああ、ライトエレメントだから、光とかいじるのお手のもんだもんな。

 そりゃこんな距離でもきちんと見えるか。


 この結果を見た以上、エレメント族は絶対に敵に回してはいけない。

 そう思わさせられた。


「君も、死ぬかい? それとも、もうここに来ないと誓うかい?」


 ダークエレメントのクロウが、もう一体の悪魔を脅していた。

 この攻撃をしたのはおそらく、クロウではない。

 でも、おそらく、クロウが合図をすれば、もう一体も同じように死ぬのだろう。


「こ、降参です。エレメント族に逆らって生き延びた種族は、現在、この世界に残っていません。おい、フリドラ。帰りますよ!」


 そう言ってフリドラに魔法をかけると、フリドラは30秒くらいで復活した。


「お、おう。今度は死んでいたのか?」

「ああ。あれですよ。お約束ってやつです。」

「いやいやいや。そりゃないだろ? とりあえず、撤退だ。」

「そうですね。それでは。」


 2体の大きな悪魔は、あっけなく転移魔法で逃げ去ったのだった。



「でだ、猿渡。君たちはどうしてここにいる? おかしいと思うのだが。」

「そうだろうな。何しろ、城から脱走してきた。4人でな。」

「どう言うことだ?」

「詳しくは後で話すよ。今は、総本山の状況を確認しないと。中に女神様がいるんだよ。」

「は? なんだって?」

「女神教の総本山の一番奥に、女神様がいるんだよ。攻撃されていたから、殺されかねないだろ?」


 猿渡は、女神様を大切にする方針らしい。

 ちょっと、今の僕とは相入れなさそうだった。


「個人的には、それでせいせいするんだが。女神のせいで殺されそうになったからな。」

「それはそうなんだけどね。ちょっと、困ったことになっていて。」

「どうしたんだよ?」

「女神に逆らうと女になる呪いをかけられたみたいなんだ。」

「は? お前、何言ってんの?」


 とは口で言ったものの、よく見ると、もともと女顔で低身長だった猿渡だが、なんだか、女顔というよりは、より女を感じさせてきている。


「おい、その呪いですでに女になっていますとかじゃないだろうな? 一月見ない間にかなり女っぽくなったぞ? 冗談抜きでな?」

「言いにくいんだけど、3回逆らうと、完全に女になるって言われた。1回逆らったら、かなり女っぽくなってしまった。」

「どうすんだよ。元には戻らないのか?」

「無理っぽい。なんかいい方法ないかな。」

「やはりここは、女神をヤるしかないだろうな。」


 あの女神め。

 親友を女にするとか、何考えているんだよ。

 もはやこの世界から消えてもらうしかないな。


「いい女だし、やりたいのは山々なんだけど、結構女にされちゃっているから、あそこがちっちゃ……。」

「ちょっと待て。それは大きい声で言っていい内容じゃない。それに、やるしかって、ヒットマン的な意味で言ったんだが。タマ取ったるって。猿渡さぁ、相変わらず性欲だけは旺盛だな。安心したよ。」

「性欲だけあってもダメなんだよ。体がついてこないから。」

「なんだよ、そんな更年期のおっさんみたいなこと言うなよ? 高校生なんだからな?」


 何をしてそうなったのかは知らないが、女神に酷い目に遭わされているらしい。

 逆らったらダメということは、おそらく、助けるように命令されているということだろう。

 でもなぁ〜。

 個人的感情としては、助けたくないんだよな。


 そして、そんな願望を抱いたまま、煌びやかな教団の総本山の大きな建物を見ていると。


 ドッカーン!

 ドッカーン!


 自爆スイッチでも押したのか?

 そう思うくらい、派手に爆発した。

 いやいや、この爆発は見慣れすぎていて、逆に忘れそうだった。


 カメ鶴による空爆だった。


 あの悪魔達は、即座に報復攻撃をしてきやがったということだ。

 安全地帯に空間転移で逃げ帰ると、カメ鶴を派遣して、この辺一帯を更地にするつもりだ。

 レインが急いで空に飛んで行くも、それより早く、集中爆撃がなされた。


 レインが、ほくほく顔で大量のカメ鶴を空間魔法で鞄に収納した後、地上に戻ってきたのだが。

 その頃には、建物は既に跡形もなく、瓦礫の山と、ところどころにクレーターという風景に変化していた。


「猿渡。残念だったな。」

「女神様。大変残念ですが、あいつらの爆撃じゃ、僕たちには何もできませんでした。安らかにお休みください。」

「マスター。今のレベルで女神と対決するのは避けるべきなのです。もっとレベルを上げて、戦えるようになってから、会うべきなのです。今日は会えなくてラッキーだったのですよ?」


 レインが、いいように解釈してくれていた。


「そういうものかね。」

「そうなのです。それよりも、女神は死んでいないはずなのです。きっと、別の場所に空間転移したか、地下だけ、頑丈にできていて全然平気かのどちらかなのですよ?」

「なるほどね。でだ。猿渡達は今後、どうする?

「ここまできたのは、野中の命を救うためだったんだよ。時間はかかったけど、なんとか助けたくて、ここまで来たんだ。」

「ま、逆に助けられていたら世話ないけどね。」


 そうか。

 猿渡のやつ。

 心配してくれていたんだな。

 やはり、持つべきものは、親身になってくれる親友だよな。


「僕たちと一緒にいると、きっと迷惑をかけるから、帰るよ。女神様にいいようにこき使われに。」

「こっちとしては、好きにしてもらって構わないが、その呪い、解けないか調べておくよ。」

「頼む。エロ男爵の名をほしいままにしていた僕が、こんなちっちゃくなっているなんてみんなに知られたらと思うと。」

「いやいや。みんな知っているから。元からそんなに」

「それはいうなぁあ!」


 当てはないけれども、女神が呪いって、立場的にどうなんだろう。

 それは最早、偽物であることを隠しきれていないんじゃないだろうか。


「マスター。今、女神をやるのは諦めるのですよ? その代わり、サービスなのです。猿渡っていうんですか? 可愛らしい子ですね? 本当に男の子なんですか?」

「間違いない。幼馴染だからな。少なくとも最近まではそう、立派じゃないにしてもちゃんと男だったはずだ。うっかり男子トイレで見たからな。」

「ちょっと待つのです。邪悪な波動を感じるのです。お腹、それも丹田の気をおかしくさせるたいへんな変態的魔法なのですよ? 魔力を注ぐだけで、苦しんでのたうち回るような魔法陣があるのです。」


 猿渡の目が点になる。


「野中、このお人形、空飛んでいる上にしゃべったぞ?」

「お前知らないのか、こういうの精霊っていうんだぜ?」

「野中の嫁なのか?」

「そうなのですよ。」

「違うからな。サイズ的に無理だからな。」

「ちょうど今の僕のサイズなら。」

「そういうのはよしなさい。あまりに自虐がすぎる。」


 ロッコが袖を引っ張ってきた。


「マスター。マスターのお友達の呪い、レイン様に壊してもらうといい。」

「なんだと?」

「マスターはバカだな。破壊の女王と呼ばれた狂犬レイン様に壊せない魔法はないと精霊界でも、いたいいたいいたい!。」


 ラストが余計なことを言うので、レインにこめかみをぐりぐりされていた。

 サイズ的に無理なので片方だけだけどね。


「おい野中。なんだ? このかわいい生き物達は? 嫁に欲しいんだが。僕の好みど真ん中なんだが。」

「相変わらず変態だな。お前は自分より身長が低い女なら誰でもいいんだろ?」

「ち、ちがうから。身長は関係ないだろ、身長は。」


 ちらちらロッコとラストに色目を使う猿渡。

 身長が低いことを女子から揶揄われ続けて十数年。

 それが元で女性の好みが歪んでしまい、自分よりも身長が低い相手しか愛せない男となった。

 残念なことに、該当する女性は、幼女ばかり。


 犯罪者予備軍だった。


「僕が魔法で召喚した、召喚精霊だ。こっちの大人しい方がロッコ。で、お前さんの大好きな黒髪ロングのこいつが、自称精霊騎士のラストだ。やらんぞ?」

「そ、そこをなんとか。召喚魔法なら、僕にも一人、召喚して!」


 なんてダメ人間なんだろう。

 いや、欲望に素直と言うか忠実と言うか。

 とにかく、欲しいと言うことだけは強く伝わってきた。


「マスター、ご友人は、ラストのことが好きなのか?」

「まあ、あいつは昔から、ラストみたいな女を嫁にしたいって言っていたからな。」

「でも、ラストにはマスターしかいないからな。嫁に出されないからな!」

「何を言っているんだ? 出すわけないだろう。それは死んでこいと言っているのと同義だしな。」

「分かっていればいいんだ。分かっていれば。」


 大変満足した顔で、ラストは喜んでいた。


 ふと、女子三人を見ると、レインに何かされていた。


「こんな酷いことするのは神としてあるまじきことなのです。許さないのですよ?」


 文句を言いながら、なんらかの魔法を使っていた。


「壊呪魔法なのです。こんないやらしい呪いは、いけないのです。レインの目の黒いうちは、許さないのです。」

「どうしたレイン。」

「酷いのです。例の女神が、この女の子達にいやらしくなる呪いをかけていたのです。とんでもないのですよ? 言うこと聞かないと、いやらしくなってしまうとか、ないのです。酷いのですよ? 許せないのですよ!」


 3人が、気の抜けた顔をしていた。


「野中。この子、すごい魔法使い?」

「精霊だから。」

「そう。ありがとう。」


 ちょっと待て。


「レイン、もしかして、猿渡にもおんなじ魔法、というか呪いがかけられていないか?」

「無理なのです。あの呪いは女の子専用なのですよ? 男の子にはかけられないしかからないのです。」

「念のため見てくれ。違ったとしても、呪いを壊してくれないか? このままだと女にされてしまうらしいんだ。」

「だ、誰得なのですか? その変態な呪いは! 女神は大変な変態なのです! ちょっと待っているのですよ。猿渡、ズボンをおろしてお腹を見せるのです。」

「え、う、いや、その。」

「恥ずかしがっている場合じゃないのですよ? 早く解かないと、もっとちっちゃくなるのです。失ってから大切だったことに気がついても遅いのですよ?」

「わ、わかった。」


 そうして、おずおずと猿渡は、下腹部を晒した。


「可愛いのです。でも、これじゃ、役に立たないのですよ? 将来性ゼロなのです。そのままでいるのです。呪いを無理やり壊すのです!」


 レインが呪文の詠唱に入った。

 お腹の文様が光って抵抗する。

 猿渡が苦悶の表情を浮かべ、苦しそうな声を上げる。


「終わったのです。確認するがいいのです。」


 猿渡の猿渡は、元の見慣れた猿渡に戻っていた。

 今までの梅干しの種くらいの大きさのじゃない、ちゃんとしたサイズになっていた。


「レイン様、ありがとうございます! ありがとうございます! この御恩は、一生忘れません!!!。」

「よいのですよ? あんな呪い、レインにかかれば簡単に消えるのです。これで女神に楯突いても大丈夫なのですよ?」


 猿渡のパーティーは、全員安堵の表情をしていた。

 なにしろ、女神に変態な呪いをかけられ、いろいろと強制されていたのだから。


 しかし、その女神も今や総本山の瓦礫の下。

 さすがに死ぬようなたまではないだろうが。


「レイン。女神が復活したり嫌がらせしてくる前に、撤退しよう。」

「そうするのです。とりあえず、町に泊まるのですよ。」


 一行いっこうはそう言って、町に泊まるべく、総本山から東へ歩いて行った。



「あの女!!! レインめ、ゆるしません。ええ、絶対にゆるしませんから。」


 林の中から女神の怨嗟の声が漏れて、雪原に消えていった。 

ブックマークと評価ポイントありがとうございました。

最近増えるペースが早くなりつつあって、ちょっとびっくりしているところです。

とりあえず、マイペースを崩さないように、好き放題書くスタンスは変えないつもりです。


本文の話は、話の着地点をどこにしようかと、筆者が困っているところです。

ある程度は、プロットで決まっていますので、困ることも悩むこともないのでしょうけれども。

それでも、よりよくしようとすると、このままでいいのかというポイントがいくつか出てくるものです。

エレメント族強すぎ問題とか。

色々と工夫して、面白くなるように進めていこうと思います。

それでは、面白くなっていなくて、凹んで引きこもったりしていなければ、明日も12時すぎに。

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